近代日本美術の煌き! 1924年(大正13) その二
最近新聞記事やTVの番組で‘犬派、猫派’というフレーズをみかける。どうやら今は猫派のほうが多いようだ。そういうことが関係しているのかもしれないが猫を使ったおもしろいCMもよく流れる。
好みでいうと昔から犬派だが、絵画とのつきあいが長いのでどの画家が猫を得意としているかはおおよそインプットされている。浮世絵師から思い浮かべてみると歌川国芳、その次が幼いころ国芳のところにいた河鍋暁斎、そのあとは竹内栖鳳、奥村土牛、加山又造と続く。
竹内栖鳳(1864~1942)の‘班猫’は大変有名な絵。2年前東近美であった大規模な回顧展で久しぶりに会った。毎度ドキッとするのが青緑の目、猫をいつもながめている猫派にはこういうポーズになんの違和感も感じないだろうが、ときどきみるくらいだとこんなに猫の体が曲がるのだろうかと思う。
鶏を多く描いた伊藤若冲にもアクロバティックな姿をみせる鶏が登場するが、栖鳳も猫の体の動かし方をを何度も何度みたにちがいない。そして、この姿がもっともぐっときたのだろう。これほど真に迫ってくる動物画はそうはない。猫派でなくてもこのまだら猫には200%魅了される。
小川芋銭(1868~1938)というとすぐ河童の絵描きというイメージをもつが、五島美にとてもいい絵がある。それは風にゆれるとうもろこしが目にとびこんでくる‘夕風’、描かれているのは農村の祭りに心がはずむ村人たちが中央にいるきれな白馬と一緒に行進している場面、とうもろこしの躍動感あふれる描写は楽しそうな祭りの気分をそのまま投影しているよう。つい列の後ろに並びたくなる。
新海竹太郎(1868~1938)の‘鐘ノ歌’は5年前、三の丸尚蔵館でとても惹かれた彫刻。鐘をつくる鋳物師の仕事ぶりを彫刻にするという発想に強く刺激され、ぐるぐるまわって食い入るようにみていた。鑿の跡を残し力強く彫られた鋳物師、その仕事ぶりは真剣そのもの。
ブリジストン美が所蔵する小出楢重(1887~1931)の‘帽子をかぶった自画像’がとくに印象に残っているのは二つの理由から。ひとつは小出が左利きだということ。もうひとつはどこかへ出かけるような服を着て絵を描いていること。この小出の制作スタイルをみてシュルレアリストのマグリットが頭をよぎった。
| 固定リンク
コメント