見慣れた星の光景!
2013年NYで久しぶりにMoMAを訪ねたとき、以前と比べ作品に対する観客の注目度がだいぶ変わっていた。時代の変遷とともに人々の好みも変わるということをまざまざと見せつけていたのはアンリ・ルソー(1844~1910)。‘眠れるボヘミアン’と大作‘夢’の前には大勢いの人がおり、画面の隅から隅まで食い入るようにみていた。
25年前はじめてこの美術館に来たときとは大違い。当時はルソーはこれほどの人気はなかった。ところが、今はこのファンタジックな画風が若い人たちにおおいに受けている。NYのような大都市に住んでいると‘眠れるボヘミアン’に描かれているような空にきれいな星が輝く夜の砂漠地帯にひょいと飛んでいき、少し離れたところからこの怖くないライオンと呑気に眠っている女性をながめていたい気持ちになるのかもしれない。
マグリット(1898~1967)が描いた‘アルンハイムの領域’にはヴァージョンが数点ある。これは空に星が描かれているもの。マグリットのシュールさが魅力的に感じられるのは作品のなかにすっと入っていけるから。確かにこの絵では大きな鳥と岩山がダブルイメージになっているが、突起した岩の部分がこのようななにか別の見慣れたものにみえることはよくあること。マグリットだけが特別な感覚をもっているわけではない。
小さい頃空にできる雲の形をみて人物とか動物をいろいろ重ね合わせて想像をふくらまることがあったが、マグリットはそんな心をずっと持ち続けている画家、ダリのように夢をみたりミロのように空腹になって幻覚をみるようなことまではせず、自然を素直にみつめ意表をつくモチーフの組み合わせによって別の形のシュールさを表現してきや。
38歳の若さで亡くなった有元利夫(1946~1985)には星を描いた作品が3点ある。そのものずばりの‘流れ星’、‘土星’、そして‘七夕の夜’、いずれも天国に召される1年前の作品。お気に入りは‘流れ星’、幾筋もひかれた黄金の線が流れ星のイメージをかきたてる。
昨年三菱一号館美ですばらしい回顧展があったヴァロットン(1865~1925)も星座を描いている。ロキレックはブルターニュ地方の小さな港町、一見すると子どもが描いたような感じもするが、白い壁が印象的な家の向こうにきらめいている星々がロマンチック。
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