あらためて雪舟!
今年一月、日曜美術館に雪舟(1420~1506)が登場した。このタイミングでなぜ雪舟なの?という思いで番組をみているとだんだん番組スタッフの狙いがわかってきた。それから3ヶ月が経ち、つい最近同じタイトル‘中国でよみがえる雪舟’をつけてEテレでも流された。これは番組づくりではよくやる‘一粒で二度美味しい’という編集方式だが、情報量はこちらのほうが多かった。
二つの番組からいくつか新情報が入ってきた。そのひとつが中国で開かれるオークションで水墨画や書の人気が高まっていること、中国人コレクターが高値で競り落とし、うん億円という落札価格が飛び交っている。このため、美術商たちは世界中にでかけ水墨画を集めているという。4,5年前、中国人が日本の寺などをまわり中国の古い絵を探しているという話を聞いたことがあるが、こういう動きはオークションでの人気を反映したものだった。
そして、とても興味深かったのが昨年6月杭州の大学で開かれた雪舟のシンポジウム、番組はこのシンポジウムを主導した書道家と水墨画家二人に密着取材し、なぜ今雪舟が中国美術界のなかで高く評価されているかを浮き彫りにする。彼らが関心を寄せているのは雪舟だけでなく、日本に数多く存在する夏珪や牧谿などの南宋絵画。二人が訪れた鎌倉の円覚寺で牧谿の猿の絵を興奮してみていたのが印象的だった。また、書道家は山口県の防府市まで足を運び、待望の国宝‘山水長巻’を息をのんでみていた。
広島にいたとき毛利博へクルマを走らせたからこの絵には特別な思い入れがあるが、このときは横に中国人がいることは想像もできなかった。それから17年くらい経ち、雪舟を研究する中国人がこの絵をみるためにわざわざ杭州からやって来る。日本で画聖とたたえられた雪舟に水墨画の本場中国で熱い視線が注がれる。そんな時代になった。日中で雪舟をめぐって画家や研究者の交流が盛んになるのはとてもいいこと。実りある成果を期待したい。
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コメント
『中国でよみがえる雪舟』を私も見ました。
雪舟の絵は、私にはモノクロの水墨画であっても色彩を連想させずにはいられません。そして霧や靄のかかった湿潤な大気の表現。遥か彼方まで暗示する、空気遠近法の世界ですね。
想像をかきたてずにいない、豊かな墨の世界は普遍的で、中国人にも大いに訴えるものがあるのでしょう。
投稿: ケンスケ | 2015.04.23 22:15
to ケンスケさん
Eテレでは中国で今南宋文化への関心が集まっている
という話のなかで画家たちが雪舟の絵を熱く語って
ました。とても刺激的だったので、南宋時代のこと
をまたレビューしてます。
こういう機会に雪舟の水墨画をみますと、あらためて
雪舟のすごさを意識します。
投稿: いづつや | 2015.04.24 00:44