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2015.03.15

初物の‘グエルチーノ展’!

Img‘聖母のもとに現れる復活したキリスト’(1630年 チェント市立絵画館)

Img_0003  ‘聖母と祝福を授ける幼児キリスト’(1629年 チェント市立絵画館

Img_0001     ‘ルクレティア’(1638年)

Img_0002     ‘聖フランチェスコの法悦’(1620年)

上野の西洋美で行われている‘グエルチーノ展’(3/3~5/31)をみてきた。ヨーロッパにある美術館をまわるとグエルチーノ(1591~1666)という画家には時々出会う。でも、その作品を時間をかけてみたというのは1点だけ、たいていはさらっとみて終わり。だから、これまでグエルチーノは印象の薄い画家だった。

そんな馴染みのない画家の回顧展が東京で行われることになった。作品の数は全部で39点、その多くがグエルチーノが生まれたチェントにある市立絵画館が所蔵するもの、チェントはフェラーラとボローニャの中間に位置しており、ボローニャからも11点来ている、また周辺のモデナ、パルマ、そしてグエルチーノが2年あまり滞在したローマにある作品も集結した。

今回作品をみるとき頭に浮かべた基準作があった。それは5年前ローマのカピトリーニ美でみた‘聖ペテロネラの埋葬と被昇天’。これは新しく教皇になったグレゴリウス15世に呼ばれてローマにやってきたグエルチーノがサンピエトロ大聖堂の礼拝堂のために描いた大きな祭壇画。声を失うほどの見事な絵で立ち尽くしてみていた。この一枚でグエルチーノのイメージが一変した。こんなスゴイ絵を描いていたのか!

この絵が目に焼きついているので、出品作が楽しめたかどうかはこれとの比較になる。だから、展示室に入ってからずっとテンションがあがることはなかった。正直なところ、長く見ていたのは3点だけ。チェント市立絵画館蔵の‘聖母のもとに現れる復活したキリスト’と‘聖母と祝福を授ける幼児キリスト’、そして最近発見されたという‘ルクレティア’。

この3点はグイド・レー二(1575~1642)の作品から大きな影響を受けている。絵の様式としては古典主義、人物が理想化されているのでカラヴァッジョのような生の感じがない。だから、ほかの作品に比べると魅了されるが、好みの画風は200%カラヴァッジョなのでカラヴァッジョ風のところがある‘聖ペテロネラの埋葬と被昇天’のようにまたみたいという気持ちがおこらない。

ロンドンの個人が所蔵している‘ルクレティア’は大収穫、レーニの描いたものよりぐっと惹かれる。これまでレンブラントの描いたルクレティアがお気に入りだったが、基準作はこのグエルチーノのものに変わった。暗い背景にルクレティアの白い肌が浮き上がっており、金属の質感がよくでている短剣や深いえんじ色の衣裳の描写がすばらしい。

‘聖フランチェスコの法悦’は一度ドレスデン国立美でみたことがあるのですぐ反応した。こういうカラヴァッジョを連想させる作品は見逃せない。横にあるレーニが同じ画題で描いたものからはすぐ視線がこちらにむかった。

宗教画の展覧会で知名度の低いグエルチーノとなると、多くの人を集めるのは難しいだろう。館内にいる人の数は風俗画が人気を集めているルーヴル美展(国立新美)の1/5くらい。ところで日曜美術館はこれを取り上げるのだろうか?

バロックというとすぐ思いつくルーベンスの絵のように色が鮮明で構図にダイナミックな動きがあり生き生きした人物描写といったものをイメージして出かけると消化不良になる。‘よみがえるバロックの画家’は確かにそうだが、カラヴァッジョやルーベンスで想起されるバロックとは距離がありすぎるからこの際忘れたほうがいい。

そして、カラヴァッジョとの関連性もそれほど意識することもない。カラヴァッジョよりもグエルチーノが近づきたかったのはラファエロ、画業の後半は第二のラファエロになろうとしたレーニを凌駕して第三のラファエロになったかもしれない。それがこの展覧会の一番の見どころ。

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コメント

私も開幕一週間後にワクワクして、グエルチーノ展に行ってきました。行くしばらく前からイタリアバロック絵画について本やインターネットで再学習もして、気合も入れました!(笑)

私が行った時もルーヴル展に比べ、ずっと空いていたので、ゆっくり観賞できたのは幸いでした。

さて全体的感想としては、残念ながら強い個性が感じられなかったことです。おっしゃるように様式にはラファエロ、そしてヴェロネーゼら16世紀ヴェネツィア派の影響が感じられ、部分的にカラヴァッジョ的な写実の折衷かな、と。

大作も多く、十分に楽しんだのですが、同じ17世紀の巨匠、カラヴァッジョ、ルーベンス、ベラスケス、レンブラント、フェルメールなどとつい比較してしまい、独創性、技量、内容の深さで及ばないものを感じてしまいました。

とはいえ、グエルチーノの作品をまとめて見たのは初めてだったので、貴重な機会を提供してくれた国立西洋美術館に感謝です。

投稿: ケンスケ | 2015.03.16 22:19

to ケンスケさん
グエルチーノやレーニの一番の傑作はローマの
教会とか地元のチェントやボローニャにあるの
ですから、われわれが知る海外の有名美術館で
はサプライズのものには会えないということで
しょうね。

その点では今回群をぬいていい‘聖母のもとに現
れる復活したキリスト’は有難い展示だったですね。
好みはカラヴァッジョなので、生感覚のキリスト
でなく物語が感じられないこの絵に惚れるという
ことはありませんが、カラヴァッジョ亡き後ローマ
ではレーニやドメ二キーノの絵に人気が集中し、
レーニのあとをついだグエルチーノももてはやさ
れますから、この大作は貴重な体験です。

最高傑作といわれるカピトリーニにある祭壇画の
ようなカラヴァッジョ風の作品がもうすこしあると
思ってましたが、見事にはずれました。今回は
ルクレティアに会えたのでよしとします。

投稿: いづつや | 2015.03.17 00:05

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