ウィレム・デ・クーニングの‘女’シリーズ!
アメリカで花が開いた抽象表現主義、ポロックとともにその中心的人物として活躍したのがウィレム・デ・クーニング(1904~1997)、抽象絵画といっても幅があり色彩オンリーで形が具体的な対象と結びつかないものが大多数をしめるなか、具象的な形がみえ作品との距離がぐっと近くなるものもある。
デ・クーニングのイメージは作品の全部がそうではないが半具象的な‘女’シリーズでできあがっている。MoMAにある2点が強烈なインパクトをもっていた。どちらも1952年に描かれ、大きな黒の瞳は半端ではない目力を感じさせる。‘女Ⅱ’が笑っているのに対し、‘女Ⅰ’は怒りの形相。これがド迫力、まるで不動明王の憤怒の姿をみているよう。その荒々しい筆致から生み出された感情丸出しの女はデ・クーニングの名を聞くたびに思い出される。
ブリジストン美で現在開催されているデ・クーニングの回顧展(10/8~1/12)に展示されている‘女’シリーズは初期の作品から10年以上のちに描かれたもの。ちがいは目が黒々と描かれてないことと赤や黄色などの色が明るいこと、だが勢いのあるブラッシュワークはまったく同じ。
35点あったなかで女の輪郭がつかみやすい作品の前にどうしても長くいることになる。昨年1月ワシントンでハーシュホーン美を訪問したとき運のいいことにデ・クーニングの女性画4点と遭遇した。そのデジャブが起きているような感じ。似たような作品がずらっと並んでいる。日本でこれだけの数の‘女’シリーズがみれるのはもう二度とないかもしれない。
‘サッグ・ハーバー’は鼻が大きくたれ目の女のイメージ、‘ふたりの女’は右の横向きの女が口をあけて何か叫んでいるところがおもしろい。今回とても興味深くみたのが‘歌う女’と‘青い眼の女’、2点をじっとみているとある絵が浮かんできた。
それは出光美が沢山所蔵している仙厓の人物画、顔を上にむけ口を大きく開けている万才師や布袋の姿が‘歌う女’と重なる。そして‘青い眼の女’は仙厓の蛙の絵を彷彿とさせる。デ・クーニングと仙厓が時空を超えてコラボしているとは思ってもみなかった。
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