2014年 新発見!画家の作品に影響を与えたもの
デ・キリコの‘神秘的な動物の頭部’(1975年 パリ市近美)
美術の本を読んだりTV局が制作する美術番組をみたとき強く心に刻まれることがある。それは昨日とりあげたドガの歌手の絵のように画家が作品を仕上げていくときインスピレーションを受けたものとか参考にしたほかの画家が描いた作品。
今年そんなサプライズが2つあった。ひとつは12/7にアップした竹久夢二が描いた‘黒船屋’、この絵に影響を与えたのはドンゲンの黒猫を抱いた絵と思っていたら、夢二はなんと同世代の日本画家山村耕花が描いた美人画からも人物のポーズを借りていた!
これまで絵画にかぎらずいろいろな美術品をみてきたが、才能豊かな芸術家ほど古典に学びほかの作家の作品も貪欲に吸収する。そしてそれらを十分消化して独自の作風を生み出す。こういう話はごろごろある。例えば、ダ・ヴィンチの‘モナリザ’から肖像画を学んだラファエロ、カラヴァッジョの絵から大きな影響をうけたベラスケス、ラ・トゥール、そしてレンブラント。
ピカソだって‘ゲルニカ’を制作する際、ゴヤの‘1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺’をしっかり研究している。そして、今年春日本で回顧展のあったバルテュスはピエロ・デッラ・フランチェスカにどっぷり嵌っていた。
今月の10日に汐留ミュージアムでみたデ・キリコ、出品作のなかに‘谷間の家具’というタイトルのついた不思議な絵があった。画面の中央に洋服入れと椅子がどんと置いてある。その背景にはなぜかギリシャ神殿が小さく描かれている。この絵に刺激されたのがマグリット。同じように石でできた馬鹿デカい椅子が浜辺でそびえるように立っている。
デ・キリコが最晩年に描いた自画像‘神秘的な動物の頭部’、馬の頭部はパッと見るとアンチンボルドを意識したのかなと思う。アンチンボルドは人間の顔を果物、花、木、魚、鳥、動物で形づくったが、この馬は神殿など壊れた建物の一部を積み上げて表現している。
この自画像を2010年ローマでみたときからアンチンボルドのアイデアを借りたと思っていたが、6月‘美の巨人たち ボルゲン・スターヴ教会’をみてそれは捨てた。デ・キリコはひょっとするとヴァイキング船の船首に飾られていた竜頭柱をみたのではないかと。
このごつごつ彫られた竜の頭の形と施された模様の感じが馬の頭部とよく似ている。直感的にひらめいたのだが、デ・キリコはニヤッとするだろうか?
| 固定リンク
コメント
夢二と山村耕花ですか、髙島屋の展覧会でも出ていて、ドンゲンの影響とはありましたがー。
確かに、構図は似ていますね。
キリコも、良い展覧会でしたね。
だんだん混雑が激しくなって、会期中ですが、図録も売り切れたと。
まだやっているんですよね。
投稿: oki | 2014.12.22 22:51
to okiさん
夢二は西洋画の画家や日本画家の作品を貪欲に
吸収し、絵画の描き方を幅広く研究してます。
デ・キリコ展は人気が高いようですね。出かけた
ときも大勢の人がいました。質の高いライン
ナップが口コミで広がっているのでしょう。
投稿: いづつや | 2014.12.23 00:44