« 2014年11月 | トップページ | 2015年1月 »

2014.12.31

今年 My‘好きな女性画’に加わった作品!

Img  ホイッスラーの‘白のシンフォニーNo.3’(1867年 バーバー美)

Img_0001  ホドラーの‘ラルデの娘の肖像’(1876年 オスカーラインハルト美)

Img_0002       鏑木清方の‘花見幕’(1938年 島根県石見美)

年末にはいろいろとまとめのルーチンがある。年間に読んだ本の数、TVで放送された美術番組で出来栄えのよかったベスト5の選定、感動を与えてくれた大リーガーのプレイ、動画で何度も聞いた歌,そして出かけた展覧会のふりかえりとお気に入りの美術品のリストアップ。

心を奪われた美術品のなかでもとりわけ楽しい気分にさせてくれるのが女性を描いた絵。今年は3点がMy‘好きな女性画’に加わった。
★ ホイッスラーの‘白のシンフォニーNo.3’
★ ホドラーの‘ラルデの娘の肖像’
★ 鏑木清方の‘花見幕’

‘白のシンフォニーNo.3’はホイッスラーの画集でみているときは正直それほどぐっとくる絵ではなかった。ところが、横浜美で対面した瞬間、うわー!と思わず声がでた。こんなにいい絵だったの、という感じ。チラシの2面にこの絵が使われていたのも即納得、絵画の鑑賞はやはり本物と対面しないとダメだということをあらためて認識した。

ホドラー展の収穫の一つがこの少女の絵、ホドラーの肖像画では自画像がお気に入りだったが、この可愛らしい少女には200%KOされた。じっとみていたら、ボストン美にあるサージェントの3姉妹を描いた作品が頭をよぎった。

日本画で嬉しい出会いがあったのが鏑木清方、腹の底から惚れている清方の美人画はルノワールとともにMy‘好きな女性画’に多く登録されている。新たにメンバー入りをした‘花見幕’、心がとろけるようないい姿。

今年も拙ブログにおつきあいいただきましてありがとうございます。
皆様よいお年をお迎えください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.30

南部鉄瓶から生まれたカラーティーポット!

Img_2   パリの紅茶専門店に並んだカラーティーポット

Img_0001_2

Img_0002_2      フランスの家庭に定着するカラーティーポット

先月みたNHKの‘美の壺 鉄瓶~進化する南部鉄器~’にとてもおもしろい話がでてきた。それは南部鉄瓶に色をつけて生まれたカラーティーポット。発案者はパリの老舗の紅茶専門店で働いている男性。このティーポットは人気があり今ではすっかりフランスに定着しているらしく、これが日本製であることを知らない人もいるという。

19世紀後半ジャポニスムがブームとなったフランス、この国の人々の日本趣味は浮世絵だけでなく現在でも身近な生活雑器にまで広がっている。フランスは本当に日本が好きな人が多い。

ボルドーに住み南部鉄器をコレクションしている女性の家庭ではみんながカラーティーポットで紅茶を楽んでいる。若い男性が憎いことをいう。‘この金属音が良いんだ。伝統を感じさせるけど今の現代的な生活にも調和するのがおもしろいよね。この紫色がティーカップのピンクに合うんだ’、フランス人は心が豊か!

盛岡の職人たちは最初鉄瓶のカラー化には戸惑った。それはそうだろう。黒や茶色が南部鉄瓶の色と決まっているから、ほかの色に変えるというのは考えられない。ところがフラン人はちがった。職人が鉄に漆などの黒い仕上げ剤を塗っているのをみてほかの色で仕上げることも可能なはずと思う。

そこで、東京で北斎の絵の複製プリントを買ってこの赤、この青をだしてほしいと職人に頼み込む。フランスでも南部鉄瓶の魅力はカラー化することでしっかり引きだせると直感し商品化に突き進んでいく。このフランスの男性の眼力はたいしたもの。南部鉄器に興味が湧いてきた。まだ盛岡には縁がないがいつか出かけてみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.29

心に強く刻まれた工芸の名品!

Img_0003     ‘奈良三彩壺’(重文 奈良時代・8世紀 九州博)

Img_0002     鹿児島壽蔵の‘志賀島幻想箕立事’(1967年)

Img     黒田辰秋の‘赤漆流稜文飾箱’(1957年 東近美)

Img_0001     板谷波山の‘彩磁瑞花祥鳳文花瓶’(1916年 MOA美)

浮世絵同様、今年は工芸も年のはじめに大きな展覧会があった。60回をむかえる日本伝統工芸展を記念して行われた‘人間国宝展’(東博)、今回は展示の仕方に工夫がなされ、人間国宝の作家の作品と一緒に古典の名品も展示された。

人間国宝の優れた作品をみるだけでいい気持になるのに、昔の名品も目を楽しませてくれる。この展示のおかげで実感されるのは日本の美がぎっしりつまった工芸では伝統の技と職人の魂がしっかり受け継がれており、人間国宝の作家たちはそこからさらにまた新たな名品を生み出していること。

初見で嬉しかったものがいくつもある。そのひとつが加藤卓男のつくった三彩の花器の横に展示してあった‘奈良三彩壺’、この重文を追っかけていたのでじっくりみた。

その造形にハッとさせられたのが紙塑人形の‘志賀島幻想箕立事’、購入した図録におもしろいことが書いてあった。志賀島の漁村では漁師は夜仕事をする。そのため夫婦のラブタイムは昼間、家の玄関に箕が立ててあるときは今はダメよという合図だった。この作品はその習慣を人形で表現している。

2月横浜そごうで開催された黒田辰秋の回顧展にはすばらしい作品が並んでいた。これまで民藝作家物語に欠けていたワンピースが黒田辰秋。これでコンプリートになった。魅了される木工作品が多くあるなかでとくに惹かれるのは目に焼きつく赤とそのモダンな造形が印象的な‘赤漆流稜文飾箱’。

没後50年の節目の年となった板谷波山、出光と泉屋博古館分館で回顧展があった。博古館にでていたものはまだみ残していたものが多く大きな満足がえられた。そして、久しぶりにみた名品もあった。MOA美が所蔵する‘彩磁瑞花祥鳳文花瓶’。大きく羽ばたく鳳凰の姿は見ごたえ十分。言葉を失ってみていた。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2014.12.27

浮世絵は楽し!

Img     鈴木春信の‘縁先に立つ美人’(1767年 パリ ギメ美)

Img_0001  喜多川歌麿の‘北国五色墨 切の娘’(1789~1801年 ギメ美)

Img_0003     葛飾北斎の‘渡し舟’(1798年 ボストン美)

Img_0002     歌川国貞の‘石川五右衛門’(1852年 太田記念美)

来年開催される展覧会の情報が美術館のHPや手に入れたチラシなどによりだいぶ集まってきたが、そのなかにまだ気を惹く浮世絵展が入ってこない。ちょっと心配。

今年は年初からいきなりビッグな浮世絵展があった。場所は江戸東博、有名な浮世絵の傑作を全部見せます!という主催者の意気込みがどーんと伝わってくる‘大浮世絵展’、こんな質が高くてオールラウンドな浮世絵展はこの先20年くらいないだろう。

お蔭で追っかけていた鈴木春信(1725~1770)の‘縁先に立つ美人’や喜多川歌麿(1753~1806)の‘北国五色墨 切の娘’など心が躍る傑作を数多くみることができた。ギメ美や大英博のコレクションは浮世絵本に載っているお宝中のお宝、それらがどどっと日本に里帰りするのだからたまらない。

このほかに出かけたのは新発見された歌麿の‘深川の雪’が公開された箱根の岡田美(4~6月)、ボストン美蔵浮世絵展の第3弾、‘北斎’(上野の森美 9~11月)、そして太田記念美の‘歌川国貞展’(10~11月)。

葛飾北斎(1760~1859)の回顧展をほかの絵師に比べれば多く体験しているとはいえ、ボストン美のような定評のあるコレクションが展示されると、驚嘆する作品が次々と目の前に現れる。滅多にみれない摺物‘渡し船’も収穫のひとつ。

太田記念美で開かれた歌川国貞(1786~1864)の回顧展も予想を大きく上回るすばらしいものだった。これでやっと国貞の立派な図録が手に入った。ときどき表紙に使われている‘石川五右衛門’などをみてニヤニヤしている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.26

今年出会った気になる作家3人!

Img    ANAインターコンチネンタルホテルにある須藤玲子の作品

Img_0001    須藤玲子の‘幕 和紙垣’(2013年)

Img_0003      福本潮子の藍染め作品

Img_0004     神農巌の‘堆磁線文壺’(2012年)

ここ数年TVの美術番組をみていて強く惹かれるのが工芸、お気に入りのNHKの‘美の壺’と‘イッピン’で関心のあるものが登場するときはとても楽しく見ている。

今年もいろいろ収穫があった。益子焼、唐津焼、薩摩焼、藍染め、植物染め、会津塗り、土佐紙、博多帯、南部鉄器などなど。こうした番組をみているとときどき才能豊かな作家に出くわす。そのすばらしい作品に心を奪われたテキスタイルデザイナーの須藤玲子(1953年~)さんと藍染め作家の福本潮子(1945年~)さん。

日本の布を使った新しい感覚の織物が海外でも高く評価されている須藤さん、その作品がANAインターコンチネンタルホテルやマンダリンオリエンタル東京に飾ってあるようなのでいつかこの目でみてみたい。このデザイナーのことはどこかのTV局で放送していた‘夢の扉’を偶然みて知った。

昨年10月東近美で‘日本のプロダクトデザイン展’が開催され、須藤さんの幔幕、‘幕 和紙垣’は多くの人々の心をとらえた。展覧会のことはインプットされていたがなんとなく気が向かずパス、今から思うと惜しいことをした。もっと注意を向けるべきだった。

藍染めを芸術作品の域にまで高めたのが福本潮子さん、青のグラデーションの美しさとぼかしによって生み出された大胆な模様が透明感のあるやさしい世界へと誘ってくれる。作品をもっとたくさんみたくなった。この作家の個展があれば足を運ぼうと思っている。

陶芸家、神農巌(1957~)のやきものとの出会いも今年の大きな収穫。東近美工芸館であった‘青磁のいま’に飾ってあった5点には200%驚かされた。この柔らかさ、美しい丸みは何なんだ!こんなスゴイ造形感覚をもった陶芸家をこれまで知らなかった、自分自身にぼやっとするな、とカツを入れたい気持ち。これからは見逃せない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.25

訪日外国人旅行者数1300万人達成!

Img_0001   成田空港で行われた1300万人達成の記念セレモニー

今週月曜の22日、日本を訪れる外国人旅行者が1300万を突破した。1000万人の大台にのった昨年から今年はさらに300万人の増加、ここ数年海外からの観光客は大変な勢いで増えている。

円相場は今1ドル=120円、これほど円安になると日本への旅行はかなりのインセンティブが働く。銀座をはじめいたるところに中国人がいるのは相変わらずだが、ヨーロッパやアメリカなどから来た人たちも最近はものすごく増えている。

今日お昼のTV番組をみていたら、上野のアメ横にも外国人観光客が大勢いた。今ではここには外国人がやっている店が10店くらいあるそうで、中華料理の店などは大変賑わっている。来年東博へ出かけたとき、その人気の店へ行ってみようと思う。

また、ネットにはドン・キホーテの来店客の4割が外国人という話がでていた。外人観光客による消費が日本経済を押し上げる一因になっていることは間違いない。

ビザが免除になったタイから日本にやって来た女性が質流れになった高級ブランドを販売するセールで手に持ちきれないほどバッグを買っていた。お国に帰って売るのだそうだ。主催者側も中国やアセアンから来た女性たちの強い購買力に支えられ毎年商売繁盛が見込めるだろう。

美術館巡りをするとき何回も利用する地下鉄、このごろは車内で地下鉄マップを手にしている外国人観光客を多く見かけるようになった。彼らは出入り口のドアの上に設置されている文字案内ボードに流れる英語表示を熱心にみている。

次の駅は英語でアナウンスされ、このボートにでてくるので目的の駅には心臓がそうドキドキすることなく着けそう。慣れてしまえば日本の案内表示ほど親切な地下鉄は世界中どこにもないから移動の便利さを実感するにちがいない。

観光庁は2020年までに訪日客を2000万人にする目標を掲げている。来年は受け入れのホテルや旅館の数の問題もあって200万人の増加を予想、そうすると1500万人。

このペースでいくと2018年くらいには2000万人に到達するのでは、このとき街でみかける人々の光景は今とは相当変わるだろう、外国人がここにもあそこにもいるという感じかな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.24

メリークリスマス!

Img_0003     リッピの‘聖母の礼拝(降誕)’(1463年 ウフィツイ美)

Img_0002 コレッジオの‘幼いキリストを礼拝する聖母’(16世紀前半 ウフィツイ美)

Img ピエロ・デッラ・フランチェスカの‘キリストの降誕’(1475年 ナショナルギャラリー)

Img_0001   ルーベンスの‘東方三博士の礼拝’(1620年 ベルギー王立美)

クリスマスの日になると今年もあと少しだなという感じになってくる。ケーキ屋さんの前を通ると大勢の人がいて注文の順番待ちをしていた。

以前はクリスマスイブというとステーキを食べてそのあとショートケーキをいただくのが習慣になっていたが、今はケーキをひとつ食べるのはヘビーなのでもっと軽いスイーツですましている。今年はプディンがでてきた。わが家の夕食をかざるメインディシュは牛肉と決まっているが、チキンやターキーを食べる人も多いかもしれない。

行きつけのスーパーではちょっと離れたところにあるケンタッキー・フライド・チキンが店内の一角を借りてフライドチキンを販売していた。わが家では隣の方がチキンがダメなので食卓にこのご馳走はのぼらない。だから、手羽先などをおいしくいただくのは友人とのお酒の席だけ。

食事のときの飲み物はいつもはワインだが、今年は缶ビールをいただくことが多くだいぶたまっているのでクリスマス、大みそか、正月はビールでの乾杯が続く。

今月10日東京都美のウフィツィ美展にでかけ久しぶりにルネサンス絵画を楽しんだ。目玉はボッテイチェリ、結構な数展示されていたので満足度は高い。来年はBunkamuraでボッテイチェリの第2弾がある。昨年がラファエロ(西洋美)、そして今度はボッテイチェリ、ルネサンス好きにとってこれは願ってもない流れ。Bukamuraに期待したい。

クリスマスにふさわしいキリストの絵を4点選んでみた。リッピ(1406~469)とコレッジオ(1489~534)の生まれたてのキリストを描いた作品はウフィツイ美のコレクション。

ロンドンのナショナルギャラリーにあるピエロ・デッラ・フランチェスカ(1420~1492)の‘キリストの降誕’もお気に入りの一枚。キリストのまわりで翼のない天使が弦楽器を奏でる構成にとても惹かれる。

ルーベンス(1579~1640)が描いたのはお馴染みの東方三博士の礼拝、バロック特有の登場人物の生気あふれる表情や身振り手振りがじつに印象深い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.23

ホイッスラー展のビッグなオマケ!

Img_0003  ホイッスラーの‘ノクターン:ソレント’(1866年 ギルクリース美)

Img_0004     ‘ノクターン:青と金色’と歌川広重の‘京橋竹がし’

Img_0001      歌川広重の‘牡丹に孔雀’(1834年 ロンドン V&A博)    

Img  ‘青と金色のハーモニー:ピーコックルーム’(1877年 フリーア美)

現在、横浜美で開催中の‘ホイッスラー展’は来年の3/1まで3か月間のロングラン興行。展示されている肖像画、風景画は予想を大きく上回る豪華なラインナップ。だから、もう一度出かけるかもしれない。

風景画‘ノクターン:ソレント’は‘バルパライソ’や‘ノクターン:青と金色’同様心にとても響いた作品、これほど静寂さを感じる海の光景はほかに体験したことがない。ノクターンのイメージと絵の雰囲気がまさにぴったり合っている。とにかくホイッスラーの風景画に200%魅せられた。

今回嬉しいオマケがついていた。それはホイッスラーの作品の横に飾られていた浮世絵版画。大英博のコレクション7点とヴィクトリアアンドアルバート博のもの2点。摺りの状態がとてもいいものなので目をかっと開いてみた。

視線が釘づけになるのが広重の‘名所江戸百景 京橋竹がし’に摺られた海と空の青。こんな深い青にお目にかかれるのは日本では数点しかない。

そしてサプライズの作品が最後に展示してあった。広重の‘牡丹に孔雀’、この絵は美術本でみたことがなく興奮した。ホイッスラーのパトロンが所蔵していたもので、後にV&A博に寄贈されたという。

ホイッスラーが‘ピーコックルーム’の室内装飾に孔雀を描くときこの絵を参考にしたらしい。フリーア美は昨年訪れこの部屋にも入ったので、この話は大変興味深い。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.22

2014年 感動の展覧会 ベスト10!

Img_0001     徽宗の‘桃鳩図’(1107年)

Img     喜多川歌麿の‘深川の雪’(1802~06年 岡田美)

Img_0002  ホイッスラーの‘白のシンフォニーNo.3’(1867年 バーバー美)

Img_0003     バルテュスの‘地中海の猫’(1949年)

今年展覧会に足を運んだ回数は52回、複数出かけたものもあるから展覧会としては45。このなかから‘感動の展覧会 ベスト10!’を選んだ。いつものように順位はつけず開催された順番に並んでいる。

★ シャヴァンヌ展    1/2~3/9    Bunkamura

★ ウォーホル展     2/1~5/6    国立新美

★ 歌麿 深川の雪   4/4~6/30    岡田美

★ バルテュス展    4/19~6/22   東京都美

★ キトラ古墳壁画   4/22~5/18   東博

★ ヴァロットン展    6/14~9/23  三菱一号館美

★ 菱田春草展     9/23~11/3   東近美

★ 東山御物の美   10/4~11/24   三井記念美

★ 日本国宝展     10/15~12/7  東博

★ ホイッスラー展   12/6~3/1    横浜美 

こうして大きな感動をもらった展覧会を10選んでみると、今年も絵画をはじめとするすばらしい美術品といくつもめぐりあったなと思う。日本美術関連の展覧会で前半最も期待値の高かったのははじめてみる‘キトラ古墳壁画’、長い時間列に並んだが念願の壁画に会えたので大満足。

今年は浮世絵の歴史的な展示があった。日本で発見された喜多川歌麿が描いた幻の肉筆画‘深川の雪’が4月箱根の岡田美で公開されるというので喜び勇んで出かけた。こんな歌麿の傑作を日本でみれるのだから嬉しくなる。

後半のハイライトは‘東山御物の美’と‘日本国宝展’、長年追っかけていた‘桃鳩図’と‘阿弥陀聖衆来迎図’と対面したときは天にも昇るような気持だった。これぞ傑作中の傑作という感じ。そして、東近美で行われた菱田春草展にも200%魅了された。春草の名画全部みせます、という豪華なラインナップは昨年の竹内栖鳳展同様、東近美の高い企画力の証。本当にビッグな回顧展だった。

西洋絵画は待ち望んだ画家の回顧展が2つあった。4月のバルテュスと12月のホイッスラー、予想をはるかに上回る傑作の数々、テンションが上がりっぱなしだった。‘地中海の猫’と‘白のシンフォニーNo.3’には腹の底から参った!

Bunkamuraであった‘シャヴァンヌ展’とパリとアムステルダムで話題を集めた‘ヴァロットン展’も長く記憶に残るエポック的な展覧会。とくにこれまでお目にかかった作品が数えるほどしかなかったヴァロットン、魅力のある作品をこれほどたくさん描いていたとは、いっぺんに嵌った。


   


| | コメント (2) | トラックバック (2)

2014.12.21

2014年 新発見!画家の作品に影響を与えたもの

Img_0003     竹久夢二の‘黒船屋’(1919年 竹久夢二伊香保記念館)

Img_0002             山村耕花の美人画

Img     デ・キリコの‘神秘的な動物の頭部’(1975年 パリ市近美)

Img_0001    ヴァイキング船の竜頭柱

美術の本を読んだりTV局が制作する美術番組をみたとき強く心に刻まれることがある。それは昨日とりあげたドガの歌手の絵のように画家が作品を仕上げていくときインスピレーションを受けたものとか参考にしたほかの画家が描いた作品。

今年そんなサプライズが2つあった。ひとつは12/7にアップした竹久夢二が描いた‘黒船屋’、この絵に影響を与えたのはドンゲンの黒猫を抱いた絵と思っていたら、夢二はなんと同世代の日本画家山村耕花が描いた美人画からも人物のポーズを借りていた!
 

これまで絵画にかぎらずいろいろな美術品をみてきたが、才能豊かな芸術家ほど古典に学びほかの作家の作品も貪欲に吸収する。そしてそれらを十分消化して独自の作風を生み出す。こういう話はごろごろある。例えば、ダ・ヴィンチの‘モナリザ’から肖像画を学んだラファエロ、カラヴァッジョの絵から大きな影響をうけたベラスケス、ラ・トゥール、そしてレンブラント。

ピカソだって‘ゲルニカ’を制作する際、ゴヤの‘1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺’をしっかり研究している。そして、今年春日本で回顧展のあったバルテュスはピエロ・デッラ・フランチェスカにどっぷり嵌っていた。

今月の10日に汐留ミュージアムでみたデ・キリコ、出品作のなかに‘谷間の家具’というタイトルのついた不思議な絵があった。画面の中央に洋服入れと椅子がどんと置いてある。その背景にはなぜかギリシャ神殿が小さく描かれている。この絵に刺激されたのがマグリット。同じように石でできた馬鹿デカい椅子が浜辺でそびえるように立っている。

デ・キリコが最晩年に描いた自画像‘神秘的な動物の頭部’、馬の頭部はパッと見るとアンチンボルドを意識したのかなと思う。アンチンボルドは人間の顔を果物、花、木、魚、鳥、動物で形づくったが、この馬は神殿など壊れた建物の一部を積み上げて表現している。

この自画像を2010年ローマでみたときからアンチンボルドのアイデアを借りたと思っていたが、6月‘美の巨人たち ボルゲン・スターヴ教会’をみてそれは捨てた。デ・キリコはひょっとするとヴァイキング船の船首に飾られていた竜頭柱をみたのではないかと。

このごつごつ彫られた竜の頭の形と施された模様の感じが馬の頭部とよく似ている。直感的にひらめいたのだが、デ・キリコはニヤッとするだろうか?

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.20

心にとまった言葉! ‘ドガは人物に動物的な要素をとりいれた’

Img_0004     ダーウインの‘人間と動物の感情表現’(1872年)

Img_0003     ドガの‘黒い手袋の歌手’(1878年 フォッグ美)

Img_0002     レンブラントの‘驚いた表情の自画像’(1630年)

Img     フリートの‘嘆き悲しむ男’(1631年)

10月に放送された‘美の巨人たち’で衝撃を受けたドガの話の余韻がまだ残っている。番組で取り上げられたのはリヨン美にある‘カフェ・コンセール レ・ザンバサドゥールにて’、だが目が釘付けになったのはこの絵より1872年に発表されたダーウインの論文‘人間と動物の感情表現’(フランスでは1874年に出版)。

ドガはこの論文に大変刺激を受けたようで人間と動物の感情表現の仕方に共通点が多いことに驚いたという。そして、フランスの女性美術史家は‘ドガは描く人物に動物的な要素をとりいれた’という。この話を聞いてこれまでずっと頭のなかでくすぶっていたドガの人物描写に対する疑問が一気に解決した。

ハーバード大のフォッグ美にある女性歌手が大きく口を開けて歌う姿を描いた作品はその顔を意図的に猿の顔に似せていた!女性は感情が高まると男以上に野性的になり、それが見る者の心を揺すぶる。ドガはその一瞬を見事にとらえた。

こういうドキッとする異色の人物画がもう一点ある。‘犬の歌’、こちらは犬の顔を連想する。ダーウインの論文にとびついたドガ、常日頃人が発する感情に大いに関心がありそれをストレートに生々しく表現したいという思いを強くもっていたにちがいない。

西洋絵画にはドガと同じように感情表現に卓越した画家がいた。そう、オランダの巨匠、レンブラント、若いころの自画像では怒った顔、笑った顔、驚いた顔、苦しんでいる顔といろいろな表情をみせている。こういう驚いた顔や怒りの表情はたしかに猿とか獰猛な虎などが危機が迫ったときや獲物に襲いかかるときにみせる表情とも重なってくるところもある。

フリートはレンブラントが描いた‘銀貨30枚を返すユダ’にもとづいてユダを描き出しているが、この横顔がじつに荒々しく野性的。レンブラント、ドガ、そしてダーウインがつながっていたことがわかったのは‘美の巨人たち’のお蔭。やっぱりこの番組は毎週見逃せない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.19

心にとまった言葉! ‘柔らかい素材で強い構造体にする’

Img_2     吉岡徳仁の‘ハニーポップ’(2001年)

Img_0001_2

Img_0002_2     吉岡徳仁の‘パーネチェア’(2006年)

Img_0003     ‘アヤ・ソフィア’(537年 イスタンブール)

今年3月Eテレの‘達人×達人’という番組が偶然目に入った。それまでみたことなかったが、昨年東京都現美で個展があった吉岡徳仁と作曲家の白石譲がトークをするという。ともにトップア―ティストなのでどんなことをしゃべるのか期待がもてそう。

対談が行われたのは吉岡徳仁の作品が展示してある東京都現美、美術館にやって来た白石に吉岡が創作のコンセプトや作品のつくりかたを説明するという形で番組は進行していった。心にとまる言葉が出てきたのは最後の部屋に飾られていた2つの椅子。

120枚の紙を広げハニカム構造にすることによって椅子の形にした‘ハニーポップ’、そしてポリエステル繊維の塊を丸めて紙管にいれ釜で焼きつくりだした‘パーネチェア’。これを昨年実際にみたときは目が点になった。どちらも使われている素材は柔らかい紙と繊維、ところがハニカム構造にしたり釜で焼いたりするとしっかり強度のある椅子に変わる。まるでマジックをみているよう。

吉岡は自然の中にある蜂の巣が軽くて強い強度をもっていることに着目し、柔らかい素材で強い構造体をつくることを思いついたのだという。従来の考え方だと硬いものを使って構造体の強度をあげる、吉岡は逆の発想をし紙や繊維という柔らかいものを組織化し強度のある椅子を生み出した。考えていることの深さが全然ちがう。この椅子をMoMAやポンピドーなどがコレクションしたがるのはよくわかる。

この柔らかい素材で構造体を強くするという話は‘地球ドラマチック’(Eテレ)で2ヶ月くらい前放送された‘奇跡の建築 アヤ・ソフィア 耐震構造の秘密’にもでてきた。537年に建設されたこの大聖堂が地震の多い土地で1500年の時を乗り越えてこられてきたのはその優れた耐震性構造のため。

耐震性は中央のドーム、アーチ、壁など構造上の要素が適度なバランスを保つことで生み出されており、壁のつくりかたにも工夫がいろいろ施されている。

レンガをくっつけるために使われたモルタルは柔らかいので地震によっておこる構造上のゆがみに対応できる。そして、ほかの建造物とちがいレンガよりもモルタルのほうが層が分厚い。このためモルタルがクッションの役割を果たしている。

さらにレンガにも耐震性の秘密があった。当時のレンガは現代のレンガよりずっと軽量だった。建物が軽いと地震の揺れに合わせてしなやかに揺れることができる。柔軟で頑丈な構造になっていた。

当時は重量のあるどっしりとした建築で耐震性を高める考え方が主流だった。だが、アヤ・ソフィアは建物を軽く柔軟にすることで耐震性を高めた。これは現代の建物の耐震構造と同じ発想。まさに奇跡の建築!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.18

心にとまった言葉! ‘幸福の3つのレシピ’

Img     バシュキルツェフの‘ミーティング’(1884年 オルセー美)

Img_0001 ルパージュの‘10月、じゃがいもの収穫’(1878年 ヴィクトリア国立美)

Img_0002セザンヌの‘頭蓋骨を前にした青年’(1898年 バーンズコレクション)

今年Eテレで放送されている白熱教室を4回みた。1月に楽しんだのが‘幸福学’、確か4回くらい続いたと思うが、みたのは最初だけ。この講義を担当したエリザベス・ダン博士(カナダ・ブリティッシュコロンビア大学心理学)はなかなか興味深い話をしていた。

ここ数年心理学や行動経済学に関心を寄せているため、心理学者の話にはいつも敏感に反応する。彼女は人が感じる幸せは人それぞれだが、十人十色の幸せにも欠かせない共通する要素があるという。

ケーキをつくるのには小麦、砂糖、卵が必要なように‘幸福のレシピ’がある。それは‘人との交わり’、‘親切心’、‘ここにいること’の3つ。‘ここにいること’は目の前のことに集中するという意味。

ほかの博士が行った幸せ度調査の結果をみると、幸せな人たちには運動好きもいればインドア派もいる、信心深い人もいれば無神論者もいる。上位10%の人たちに共通しているのは社会との結びつきが強いことだった。内向的な人も人と交わることで幸せを感じていた。普段の生活でほんの少しでも人と関わるだけでわれわれは幸福を感じることができる。

親切心と幸せのむすびつきはボランティア活動を思えばすぐ理解できる。最近亡くなった高倉健さんも‘人に親切にすると自分の心が豊かになる’といっている。

最後の‘ここにいること’は心にとまる言葉、目の前のことに集中することが幸せなんだというのはすごくいい!嫌な仕事やおもしろくないことには集中できないが、そうでない場合はたしかに目の前のことに集中しているほうが物思いにふけるよりは心は充実している。

ダン博士はテクノロジーの進化によって日常的に注意力が散漫になっていることを考えると、ここにいること、今この瞬間に集中することは人の幸福にとって重要なことだという。ルパージュとセザンヌの絵に描かれている人物の表情をみればこの話が腹にすとんと落ちる。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.17

心にとまった言葉! ‘見飽きない光景 見やすい光景’

Img       ‘洛翠庭園’(京都南禅寺界隈別荘群)

Img_0001          ‘流響院’

Img_0002          ‘對龍山荘’

世の中にはお寺巡りや庭園巡りをするのが楽しみという人がたくさんいる。こういう人にとって京都や奈良は自分の庭みたいなもので、世間にはあまり知られていない穴場的なところにも精通している。

京都へは毎年1回くらいは出かけており、訪問した寺院の数も増えてはいるがみたい名所旧跡はまだいっぱい残っている。例えば予約をとらないとみれない桂離宮や修学院離宮、そして苔寺などもまだ縁がない。さらに夢の空間もある。それは南禅寺界隈の別荘群。

今年この南禅寺界隈別荘群がNHKと‘美の巨人たち’でとりあげられた。NHKは2010年にも同じテーマで番組を制作しており、今回はパート2、3月と7月2回放送された。‘美の巨人たち’がスポットをあてた庭園は明治に活躍した庭師小川治兵衛(七代目 1860~1933)が作庭した‘洛翠庭園’。

南禅寺界隈にある庭園は一般公開されてないので、これからもまず見る機会はない。だから、その庭園の様子はこうしたTVの美術番組で映像として目にするだけ。実際に庭を体験しなくてもTVの画質はとてもいいから、その絶景の光景を間接的でも楽しめる。

‘洛翠庭園’で心にとまる話がでてきた。庭を構成する石、水、樹木、芝、苔などはすべて視線を下に向けるようにつくられている。十一代小川治兵衛さんはその理由をこういう。

‘見飽きない光景をつくりたいということと同時に見やすい光景とつくろうと思っているから。斜め上をみているとしんどくなる。で、まっすぐ直線を見る、これもしんどい。一番リラックスして見える目線というと、ちょっと斜め下で見ていると長く見ていられるしリラックスでき心が落ち着くんです’

この‘洛翠庭園’を1909年に作った小川治兵衛の言葉、これが味わい深い。
‘人間は困ったとき目線が自然と下がり足元をみる。すると例えば、蟻のような細かい生き物や土やそんなものが目に入り観察できる。それは自然の摂理がわかることであり、人の気持ちもわかることに結びつく’

庭づくりは奥が深い。‘洛翠庭園’やほかの‘流響院’や‘對龍山荘’といった名園をみることは叶わず夢のままに終わりそうだが、小川治兵衛の作庭の精神にふれることができたのは大きな収穫。これからどこかで庭をみたときはこの話が頭をよぎるだろう。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.16

2014年 心にとまった言葉! ‘勇気 元気 根気’

Img     福王寺法林の‘ヒマラヤの朝(エベレスト)’(2002年)

Img_0001     福王寺法林の‘ヒマラヤの朝’(2002年)

Img_0002     福王寺法林の‘白光のヒマラヤ’(1991年)

毎日、新聞を読んだりTVをみたりして社会とのかかわりがとぎれることなく過ごしている。だから情報はいろいろ入ってくる。そのなかで常日頃深い関心を寄せている美術や野球にはすぐ食いつく、例えば喜多川歌麿の幻の肉筆画が発見されたいう話とか、ソフトバンクと契約した松坂の話題とか。

また、TVから流れてくるおもしろいCMにも敏感に反応している。ヒットするCMで使われる言葉はやはりよくできている、気に入ったのはどこの会社のCMだったか忘れたが外人の女性が口にする‘たかお、わかった?’、これを今わが家ではとりいれている。

今年はとてもいい言葉にであった、2か月くらい前TVで登山家の三浦雄一郎さんがこんなことを言っていた。‘勇気 元気 根気’、すぐメモした。昨年5月81歳の三浦さんは3度目のエベレスト登頂に見事成功し最高齢登頂者になった。

3,4年前80歳の登頂をめざして毎日空気の薄い部屋に入り苦しいトレーニングを続けている三浦さんの姿をみて感銘を受けた。それ以降、水泳をしていて辛くなったときは三浦さんのことを思うようにしている。

そして、82歳の三浦さんからまたいい言葉をもらった。勇気はチャレンジ精神、元気は決心したらそれを毎日元気に実行すること、そしてすぐやめるのではなく根気強くやること、そういう意味だと思う。根気という言葉を今若い人は口にする?死語だろうな。

ここに紹介した絵は2012年に亡くなった日本画家、福王寺法林が描いたヒマラヤ。一連のヒマラヤシリーズに200%心を奪われている。こんな嶮しく崇高な山に三浦さんは三度も登ったのか、つくづくスゴイ人だなと思う。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.15

今年手に入れたご機嫌な図録!

Img_0001      ‘ヴァロットン’ 6/14~9/23 三菱一号館美

Img

Img_0003     ‘日本国宝展’ 10/15~12/7 東博

Img_0002     ‘ボストン美浮世絵名品展 北斎’ 9/13~11/9 上野の森美

先週の10日にホイッスラー展など4か所を回ったが、今年の展覧会鑑賞はこれをもって終了、感想も書き上げたので今日からは今年一年の振り返りに入りたい。

例年だとすぐ‘お気に入り展覧会ベスト10’の検討をはじめその選択に悩まされるのだが、今年は新たな趣向として展覧会をみたあとミュージアムショップで手に入れた図録でとくに魅了されたものを3点選んでみた。

1年間にでかけた展覧会は全部で52回。ここ数年は月に一回のペースで出動し、4~5つの美術館をはしごする。だから、このくらいの数になる。図録は以前のように毎回購入しておらず、今年は30冊ほど。そのなかから選んだ‘お気に入り図録ベスト3’は次の通り(順位はつけない)。

★‘ヴァロットン’ (三菱一号館美)
★‘日本国宝展’ (東博)
★‘ボストン美浮世絵名品展 北斎’ (上野の森美)

本というものがとにかく好きで、いい本がそばにあると満ち足りた気分になる。だから、秀逸な図録が用意されていると展覧会の印象がより深くなると同時に美術館に対する好感度は一段と高まる。この3点はご機嫌な図録。

‘ヴァロットン’で感心するのは論考にでてくる作品の図版のすべてに色がついていること、たいていは白黒だからこういう図録にでくわすと心が浮き浮きしてくる。すばらしい!そして章のはじめの絵柄のデザインセンスがとてもいい。

ここにあげたのは3章 抑圧と嘘、この図録はパリ、アムステルダムで開かれたのと同じ絵柄を使い日本語に翻訳したもの、話題を呼んだ展覧会にふさわしい図録に仕上がっている。

‘日本国宝展’をみられてこの図録を購入された方が多分同じ思いをされているのではなかろうか、手にとったときの皮のような触感がなんともいい。この素材の選択は大ヒット!弁当箱のなかの料理も箱も豪華といった感じ。

ボストン美の浮世絵名品展の図録は過去2回ともgood jobだったから、今回の‘北斎’も楽しみにしていた。これで浮世絵の立派な図録が3冊揃った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.14

ウィレム・デ・クーニングの‘女’シリーズ!

Img_0003     ‘サッグ・ハーバー’(1965年)

Img_0001     ‘ふたりの女’(1965年)

Img_0002             ‘歌う女’(1965年)

Img_0004     ‘青い眼の女’(1965年)

アメリカで花が開いた抽象表現主義、ポロックとともにその中心的人物として活躍したのがウィレム・デ・クーニング(1904~1997)、抽象絵画といっても幅があり色彩オンリーで形が具体的な対象と結びつかないものが大多数をしめるなか、具象的な形がみえ作品との距離がぐっと近くなるものもある。

デ・クーニングのイメージは作品の全部がそうではないが半具象的な‘女’シリーズでできあがっている。MoMAにある2点が強烈なインパクトをもっていた。どちらも1952年に描かれ、大きな黒の瞳は半端ではない目力を感じさせる。‘女Ⅱ’が笑っているのに対し、‘女Ⅰ’は怒りの形相。これがド迫力、まるで不動明王の憤怒の姿をみているよう。その荒々しい筆致から生み出された感情丸出しの女はデ・クーニングの名を聞くたびに思い出される。

ブリジストン美で現在開催されているデ・クーニングの回顧展(10/8~1/12)に展示されている‘女’シリーズは初期の作品から10年以上のちに描かれたもの。ちがいは目が黒々と描かれてないことと赤や黄色などの色が明るいこと、だが勢いのあるブラッシュワークはまったく同じ。

35点あったなかで女の輪郭がつかみやすい作品の前にどうしても長くいることになる。昨年1月ワシントンでハーシュホーン美を訪問したとき運のいいことにデ・クーニングの女性画4点と遭遇した。そのデジャブが起きているような感じ。似たような作品がずらっと並んでいる。日本でこれだけの数の‘女’シリーズがみれるのはもう二度とないかもしれない。

‘サッグ・ハーバー’は鼻が大きくたれ目の女のイメージ、‘ふたりの女’は右の横向きの女が口をあけて何か叫んでいるところがおもしろい。今回とても興味深くみたのが‘歌う女’と‘青い眼の女’、2点をじっとみているとある絵が浮かんできた。

それは出光美が沢山所蔵している仙厓の人物画、顔を上にむけ口を大きく開けている万才師や布袋の姿が‘歌う女’と重なる。そして‘青い眼の女’は仙厓の蛙の絵を彷彿とさせる。デ・クーニングと仙厓が時空を超えてコラボしているとは思ってもみなかった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.13

謎だらけのデ・キリコの世界!

Img_0001     ‘謎めいた憂愁’(1919年 パリ市近美)

Img     ‘不安を与えるミューズたち’(1974年 デ・キリコ財団)

Img_0002     ‘神秘的な動物の頭部’(1975年 パリ市近美)

Img_0003     ‘田園風景のなかの静物’(1948年 パリ市近美)

汐留ミュージアムで行われている‘デ・キリコ展’(10/25~12/26)、出かけるかどうか迷ったが、日曜美術館でおもしろい話が聞けたので訪問することを決めた。

デ・キリコ(1888~1978)の絵というと人気のない街の一角に建物の影が長くのびている作品というイメージがこびりついている。描かれているのはものだけ、人物は一人もでてこない。街のモデルとなったのがトリノ、一度訪問したことがあり街中につくられているアーケードも体験した。絵とはちがって通りを進むと多くの人に出会った。

ところが、日曜美術館に登場した地元の美術史家が興味深いことをしゃべっていた。デ・キリコがトリノに滞在していたころは街にはフィアットなどのいくつもの工場がつくられれ工業都市をして発展していた。多くの人は工場に働きに行き昼間街には人がほとんどいなかったという。

だから、デ・キリコの絵に人が登場しないのは街の静寂さをつくるためにそうしたのではなく当時の実際の光景だった!そういうことだったのか、という感じ。これだから美術番組はやめられない。これまで読んだデ・キリコ本にはこんな話は一切出てこなくて形而上絵画についての理屈っぽい解説ばかり。

4年前ローマを旅行したとき幸運にも大規模なデ・キリコ展に遭遇し、分厚い図録(イタリア語)もしっかり手に入れた。今回の回顧展は数こそ少ないが展示されている作品の質の高さは同じレベル。じつはチラシに大きく使われている‘古代的な純愛の詩’や初期の作品‘謎めいた憂愁’、そして画業の後半に描かれた‘エブドメロスの帰還’、‘神秘的な動物の頭部’などはローマでもお目にかかった。

初見で収穫だったものが予想外に多かった、これはこの展覧会が一級の回顧展であることの証、だからものすごく得した気分。ローマでみたと完璧に思ったのが‘不安を与えるミューズたち’、初期の作品とほとんど変わらないから、日曜美術館をみていなければこれ前みたよ、となったにちがいない。50年後に描かれたリメイク版からは地面に遠近法を示す線が消えている。

静物画は3点、どれも長くみていた。お気に入りは風景を背景にして果物を描いた‘田園風景のなかの静物’。これも一種のシュールな絵。また、デ・キリコの作品?というくらい写実性豊かな風景画もある、みてのお楽しみ!

日曜美術館に背中を押された格好になったが、出かけたのはいい選択だった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.12

収穫の多いホイッスラーの風景画!

Img_0001     ‘バルパライソ’(1866年 テートブリテン)

Img  ‘オールド・バターシー・ブリッジ’(1875年 テートブリテン)

Img_0002‘オールド・ウエストミンシター・ブリッジの最後’(1862年 ボストン美)

Img_0003    ‘オールド・バターシー・ブリッジ’(1863年 アディソン美)

横浜美はここ数年いい展覧会を行っているので好感度が上昇している。京近美から巡回してきた‘ホイッスラー展’(12/6~3/1)も大ホームラン、日曜美術館でホイッスラー(1834~1903)が取り上げられ、作品一点々が作曲家千住さんが選んだベートーベンやショパンの名曲を流して紹介されていたので、その作品の前では流れていた曲想を思い出しながらみていた。

‘ノクターン’がタイトルにくっついてないが、このシリーズの一枚としてもおかしくないのが1866に描かれた‘肌色と緑色の黄昏:バルパライソ’、描かれているのはチリの要港バルパライソに多くの軍船がひしめきあって停泊している光景。だが、港内はいたって静か、黄昏時、陽が落ちてだんだん暗くなっていく感じがじつによくでている。

この絵がすごく穏やかな気分でみられるのは船の配置が緻密に計算されているから。動きを止めるため多くの船が画面の中央で横にぽんぽんと並べられている。ほかの作品でも船が数隻でてくるときはホイッスラーはこのように縦とか斜めとかではなく水平に描いている。

一見して浮世絵の影響を強く受けたことがわかるのが‘ノクターン:青と金色 オールド・バターシー・ブリッジ’、この絵の横に歌川広重の摺りのよい‘名所江戸百景 京橋竹がし’(大英博)が展示してあるので、ジャポニスムの影響力を実感する。

この縦長の橋のフォルムがすごくインパクトをもっているため、遠くで打ちあげられた花火が金で描かれていてもあまり反応しない。橋の太い橋脚と小舟をこぐ男のシルエットがこの絵を一生忘れられないものにしている。

今回とても嬉しい絵が目の前に現れた。画集でみて追っかけ画のリストに載せていた‘オールド・ウエストミンシター・ブリッジの最後’と‘オールド・バターシー・ブリッジ’、チラシにこの2点はなかったのでびっくりした。急に宝物が出現したみたい。どちらも橋だけでなく、その上を歩く人々や川沿いでたむろしている人たちも描かれているので風景画というよりロンドンの日常の光景を描写した風俗画をみている気分。

ホイッスラーの作品の魅力をあますところなく伝える大回顧展、200%満足した。ミューズに感謝!

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.11

予想を上回る傑作が揃った‘ホイッスラー展’!

Img     ‘白のシンフォニー NO.3’(1867年 バーバー美)

Img_0002  ‘6つのマークのランゲ・ライゼン’(1864年 フィラデルフィア美)

Img_0004     ‘灰色のアレンジメント 自画像’(1872年 デトロイト美)

Img_0001     ‘トーマス・カーライルの肖像’(1873年 グラスゴー美)

横浜美ではじまった‘ホイッスラー展’(12/6~3/1)を早速みてきた。アメリカ人のホイッスラー(1834~1903)はイギリスで名が知れた画家なので画集に載っているいる作品の多くがテートブリテンなどイギリスにある美術館の所蔵。

その一つバーミンガム大学にあるバーバー美からすばらしい傑作がやって来た。‘白のシンフォニー NO.3’,テートブリテン蔵の‘白のシンフォニーNO.2’とともにチラシで大きく扱われているこの作品、チラシを眺めているときみたいという思いは手に団扇をもち顔が後ろの鏡に映っている‘NO.2’のほうが強かった。

ところが、隣同士に並んだ2枚をみると、心は一気に‘NO.3’のほうに傾いた。とくに視線が釘づけになるのが左にいる女性。身に着けている衣服の白いこと。この白の輝きが整った顔立ちをいっそうひきたてている。普通の肖像画とはちがい2人の女性は舞台で芝居を演じている役者がみせるようなくだけたポーズをとっている。だから、どこかゆったり気分で女性の美しさを感じることができる。Myお気に入り女性画に即登録した。

ジャポニスムの話には日本の浮世絵や美術品に心を奪われた画家やデザイナー、工芸家がたくさんでてくる。ホイッスラーもそのひとりで浮世絵や陶磁器の収集にも励んでいた。そうした日本熱が高じてホイッスラーは一人の西洋の女に着物を着せ200%ジャポニスムの香りがする作品を3点描いた。

2点はワシントンのフリーア美にある‘陶器の国の姫君’と‘金屏風’、もう1点は今回フィラデルフィアからお出ましいただいた‘紫とバラ色:6つのマークのランゲ・ライゼン’、昨年現地でもお目にかかったが、この絵が日本にやって来るのは2度目。今ではジャポニスムというと真っ先にこの絵を思い浮かべる。

男性の肖像画で大変魅了されたのは展示室に入るとすぐ出迎えてくれる‘自画像’とオルセーにある母親の肖像と同じように横向きで描いた‘トーマス・カーライルのの肖像’、画集でみて気になっていたが本物はまさに肖像画の傑作だった。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.10

ボッティチェリと上野で対面!

Img ボッティチェリの‘パラスとケンタウロス’(1485年 ウフィツイ美)

Img_0001 ボッティチェリの‘聖母子と洗礼者聖ヨハネ’(1505年 パラテイーナ美)

Img_0002ギルランダイオの‘聖ヤコブス 聖ステファヌス 聖ペテロ’(1494年)

Img_0003     サルトの‘ピエタのキリスト’(1525年 アカデミア美)

会期が残り5日となった‘ウフィツイ美展’(12/14まで)を東京都美でみてきた。10/11に開幕するまではパスの予定だったが、気が変わったのは出品されているのはウフィツィ美術館のものだけではないことがわかったから。

今回の目玉ボッティチェリ(1445~1510)はウフィツイのほかにも同じフィレンツェにあるパラティーナ美、捨て子養育院美、アカデミア美からもやって来ている。ボッティチェリが大好きなだけにこれがすごく気になる。だから、今回のお目当は‘パラスとケンタウロス’ではなく3つの美術館にある作品。

とはいってもみごたえのある‘パラスとケンタウロス’にもご挨拶はしておくのがファンとしての礼儀というもの。このパラスはびっくりするほどの美形、もう完璧に美しい。‘ヴィーナスの誕生’や体がふにゃっとなる‘マニフィカートの聖母’に描かれた女性は純でアンニュイな感じの乙女という印象をだが、パラスはその美貌で周囲の人たちの目を釘づけにする成熟した女性のイメージ。そして長い金髪も男の心を虜にする。髪をパラスにつかまれ大人しくなっているケンタウロス、パラスの引き立て役にすぎないから見ている時間もすこしだけ。

パラティーナにある‘聖母子と洗礼者聖ヨハネ’は収穫の一枚、この美術館があるピッテイ宮殿は一度訪問したが、ずいぶん前のことなのでこの絵と会ったかどうかよく覚えてない。ここではラファエロの傑作‘小椅子の聖母’や‘大公の聖母’に夢中だったから、注意のおよんでないボッティチェリは見れど見えずの精神状態だったのかもしれない。

今回アカデミア美が所蔵するギルランダイオ(1449~1494)の作品に心を奪われた。聖人の着ている赤の衣服が目に強烈にしみこむ‘聖ヤコブス、聖ステファヌス、聖ペテロ’、一度みたことがあるが久しぶりにみて名画の力に感激した。また、サルト(1486~1530)のフレスコ画‘ピエタのキリスト’も長くみていた。フレスコ画をこういう展覧会でみることができるのは滅多にないこと。フィレンツェの教会のなかにいるような気分だった。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.12.09

ズームアップ 名作の響き合い! 1972年

Img_0005     ウォーホルの‘キミコパワーズ’(パワーズ・コレクション)

Img_0002     ホックニーの‘富士山と花’(NY メトロポリタン美)

Img     イサム・ノグチの‘エナジー・ボイド’(イサム・ノグチ財団)

Img_0001     ドナルド・ジャッドの‘積み重ね’(パリ ポンピドー)

ウォーホル(1928~1987)はこの2年間でぐっと近くなった。日本でウォーホルをたっぷりみせてくれたのは国立新美、昨年が‘アメリカン・ポップ・アート展’、そして今年は2月に回顧展を開催。また、アメリカでもワシントンナショナルギャラリー、NYのMoMAとメトロポリタンで名作との出会いが実現した。

関心のあるアーチストの場合、作品をそこそこの数みるとその才能の輝きが実感されるようになる。ウォーホルのデッサン力、色彩感覚はやはり群を抜いている。アメリカンポップアート展に展示された肖像画のうち一番時間をかけてみたのは‘キミコパワーズ’、それはこの日本人女性の着物姿が大変魅力的に思えたことと口紅の色に吸い込まれたから。

メトロポリタン美で西洋絵画を鑑賞するときはラファエロなどの古典絵画からはじまって印象派までの作品に多くの時間を割くことが多い。これで満腹になって引き上げると楽しみの極みにまでいかないかもしれない。ここには現代アートの傑作もずらずらと揃っている。

だから、事前に作った必見リストにそれらはしっかり書きとめておく。だが、美術館の図録に載っていてもお目にかかれない作品もある。昨年残念な思いをしたのはホックニー(1937~)の‘富士山と花’、日本の富士山をモチーフにしているので当然親近感がわく。次にMETを訪ねたとき、運よく飾ってあるだろうか。

イサム・ノグチ(1904~1988)の作品で最も衝撃を受けたのは重量感たっぷりの‘エナジー・ボイド’、街の一角に置かれているパブリックアートで一番見ごたえのあるのは大きな立体、この‘エナジーボイド’で感じる圧倒的な存在感はスケールの大きなパブリックアートとまったく同じもの。今、ノグチの作品で狙いを定めているのはNYの金融街にある‘レッド・キューブ’(1968年)、心がはやる。

ドナルド・ジャッド(1928~1994)の作品は建築物の一部に施された装飾的なアクセントをみている感じ。先が赤く彩られている厚い板の突起が全部で9つ等間隔で壁にくっつけられている。ここだけをみせるからアートになる、建物としてならその印象は相対的に薄められる。つまり形や色が見る者の目にどっと焼き付けられればアートとして認識される。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.08

ズームアップ 名作の響き合い! 1971年

Img_0001     ニキ・ド・サンファルの‘白い踊るナナ’(ニキ美)

Img_0003     オルデンバーグの‘幾何学的なネズミ’(パワーズ・コレクション)

Img_0002  フンデルトヴァッサーの‘心を移した恋人を愛しつつ待つのはつらい’

Img     ビュフェの‘ダニエルとヴィルジニー’(ビュフェ美)

ニキ・ド・サンファル(1930~2002)という女性の作家に遭遇したのは2006年、大丸ミュージアム・東京で開かれた回顧展、予備知識がなかったがチラシに誘われて出かけた。

その作品は小さい頃楽しんだ海水浴で必須のビニール製の浮き袋とかアヒルの玩具のイメージ。表面がつるつるし柔らかそうな‘白い踊るナナ’、おもわず手で触れたくなる。足を大きくひろげダイナミックに踊るナナの姿はどうみてもキンチョウのCMにでてくる大阪のオバちゃん、たぶん調子のはずれた歌も歌っているな。

栃木県の那須町にサンファルの作品を集めたニキ美があるという、この作品はこの美術館のコレクション。この展覧会をみたときこちらの方面に旅行したときは訪問しようと思ったが、まだ実現していない。楽しそうなところだから行ってみる価値はありそう。

昨年国立新美で開催された‘アメリカン・ポップ・アート展’でオルデンバーグ(1929~)に開眼した。長くみていたのはぐにゃっと形が押しつぶされたドラムセット。もうひとつはっとさせられたのが赤で彩色したアルミニウムでつくられた‘幾何学的なネズミ、スケールB’、瞬間的にミッキーマウスの形が頭をよぎった。確かにこの作品は思いきりポップしている。

フンデルトヴァッサー(1928~2000)とビュフェ(1928~1999)は同い年でサンファル、オルデンバーグもほぼ同世代。ウィーンに住んでいたフンデルトヴァッサーが1971年に制作した‘心を移した恋人を愛しつつ待つのはつらい’はとてもおもしろい作品。玉ねぎが屋根にくっついたような3つの建物の窓をみると涙が落ちている。逃げた女を追って大泣きすることはないのに。

ビュフェは子煩悩だったようで子どもは3人いた。左がダニエル(8歳)で右がヴィルジニー(9歳)、女の子はバルテュスが描いた少女をちょっと連想させる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.07

美術に魅せられて!優秀な学芸員の仕事

Img     竹久夢二の‘黒船屋’(1919年 竹久夢二伊香保記念館)

Img_0002     ドンゲンの‘猫を抱く女’(1908年 ミルウォーキー美)

Img_0001             山村耕花の美人画

Img_0003    ヴァロットンの絵が載っている夢二のスクラップブック

今日の日曜美術館に登場したのは竹久夢二、TV番組ガイドでこの情報を知ったとき今なぜ夢二?という感じをもったのが正直なところ、横浜高島屋で開催された夢二展が巡回しているとはいえこれをとリあげるのはタイミングがちょっとずれている。

みてみると夢二の画業を真正面からとらえている、しかもその内容がとても新鮮。夢二ファンとしては一生忘れない美術番組になりそう。感謝のメールを送りたい気持ちにさせるのは番組を通して解説していた金沢21世紀美のキュレーター、高橋律子さん。

サプライズの話がでてきたのは竹久夢二(1884~1934)の代表作の‘黒船屋’、夢二がこの絵をオランダ人画家ドンゲン(1877~1968)の描いた‘猫を抱く女’を参考にしているということは夢二好きにとってはたぶん定説、ところが夢二はドンゲンだけに影響を受けていたわけではなかった!

それはなかなかいい美人画を描く日本の画家、山村耕花(1885~1942)の作品、ここからもしっかり構図のアイデアをいただいていた。この図版を高橋さんは夢二が使っていたスケッチブックのなかに見つけたという。いい仕事をされますね。拍手!

これまで夢二の展覧会を見逃さずにでかけ図録を沢山ため込んできたが、このスクラップブックのことは情報がなかった。夢二は歌麿などの浮世絵へ関心を寄せていただけでなく西洋画の吸収にもとても貪欲でスクラップブックにはゴッホ、ムンク、マティス、そして驚いたことに三菱一号館美であったヴァロットンの‘怠惰’まで切り貼りしていた。‘怠惰’には猫が描かれているので気になったのかもしれない。

常々、美術の研究には女性のほうがむいているのではないかと思っている。海外の美術館では女性の館長はとても多いし、日本の美術館で仕事をしている女性学芸員も最近はTVの美術番組によく登場し、鋭い分析を披露してくれる。今回の番組がそうであり、菱田春草展を担当した東近美の鶴見香織さんの話もとてもよかった。

日本美術の世界にはTV慣れし受け狙いのコメントに終始しfactsを示さないつまらない男性美術評論家が多いが、TV局もこうした人物にはもう出演を依頼しないで地道に研究し成果をだしている優秀な女性の学芸員たちにしゃべってもらうほうがいい。そうすれば番組の質はぐんとあがる。その動きが加速することを強く望みたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.06

ズームアップ 名作の響き合い! 1970年

Img_0003      ウォーホルの‘花’(ピッツバーグ ウォーホル美)

Img_0001     イサム・ノグチの‘真夜中の太陽’(横浜美)

Img     デュビュッフェの‘冬の庭’(パリ ポンピドー)

Img_0002     ボイスの‘フェルトのスーツ’(ロンドン テートモダン)

ウォーホル(1928~1987)の作品をみればみるほど感心することがある。それは色彩にたいする感覚が抜群にいいこと。‘マリリンモンロー’や肖像画シリーズでもそのことはすごく感じられるが、人物画だと顔の表情に気を取られる。

だから、ウォーホルの色彩を楽しむなら色彩の組み合わせがそのまま作品の魅力となっている‘花’シリーズがいい。この浮かび上がる赤や黄色などの花びらをみるとウォーホルは生まれながらのカラリストだなと思う。

今日から待望の‘ホイッスラー展’がはじまった横浜美、ここで企画展があるときは見終わったあと必ず館蔵の作品も楽しむことにしている。そこでいつもじっとみてしまうのがイサム・ノグチ(1904~1988)の‘真夜中の太陽’、はじめてみたときすぐ海にいるウミヘビを連想した。胴体の黒がこのジャンボドーナツの模様と重なる。代表作のひとつである太陽シリーズ、ここにはもう一点‘下方へ引く力’も一緒に展示してある。

デュビュッフェ(1901~1985)の大きなオブジェ‘冬の庭’はこの作家に惹かれるきっかけになった作品、1991年パリへ出かけたとき、新装なったジュ・ド・ポーム国立美で行われていた‘デュビュッフェ展’に遭遇した。

そこにでていたのがちょっとした部屋になっている作品‘冬の庭’、東北の冬の風物詩、かまくらを体験する感覚で中に入った。壁は不定形な曲線で形づくられる変形円でうめつくされているが、これが結構柔らかく居心地がいい。いっぺんにデュビュッフェのファンになった。

ヨーゼフ・ボイス(1921~1986)とフェルトという素材は切っても切り離せない。グランドピアノをフェルトで覆いかくし、別の作品ではまともにフェルトそのものをみせる、‘フェルトのスーツ’はそのひとつ。あまりに身近なので拍子抜けがする。

スーツを部屋になかでこんな風に掛けているところをみせたかったわけ?作品のつながりを知ってないとこう思ってしまう。ボイスのこだわりはフェルトそのもの。アートでは素材も重要な要素であることがよくわかる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.05

来年5月 東京富士美で‘アンギアーリの戦い’公開!

Img     ダヴィンチ?の‘アンギアーリの戦い’(16世紀 ウフィツィ美)

Img_0003     ルーベンスほかの‘アンギアーリの戦い’(模写 ルーヴル美)

今日の新聞報道によると、来年5月、八王子にある東京富士美でダヴィンチの未完の壁画‘アンギアーリの戦い’の下絵?が公開されるという。ビッグニュースというにはおおげさだが、関心はおおいにある。

ダヴィンチ物語でミケランジェロと競作した戦争画の話は欠かせないワンピース。美術本によく載っているダヴィンチの‘アンギアーリの戦い’とミケランジェロが描いた‘カッシナの戦い’、どちらも作品そのものはない。あるのはその下絵と模写。

下絵はちょっとややこしい。‘アンギアーリの戦い’の下絵を描いたのはダヴィンチ本人なのか、それともほかの人物なのかナゾのまま、このため作者不詳という扱いになっている。それはそれとして、この馬に乗った兵士たちが軍旗を奪いあう場面は臨場感にあふれ迫力満点、だから下絵でもみてみたい気持ちは強い。

記事の中に驚くことがあった。この‘タボラ・ドーリア’と呼ばれる油彩画は2年前まで東京富士美が所有していた(1992年に購入)! 現在は富士美が寄贈したウフィツィ美にある。かなり長い期間八王子にあったのなら、展覧会などでみる機会があったもよさそうだがその情報は聞いたことがない。それとも富士美で公開された?

これまでこの下絵は画集では個人の所蔵となっていた。だから、これは海外のコレクターのもとにありまだ縁のないルーベンスらによる模写(ルーヴル美)と比べれば鑑賞できる可能性はほとんどないと思っていた。

ところが、もとあったところにまた戻ってくる。これは見逃せない。会期は5/26~8/9、ミケランジェロの下絵の模写も同時に展示されるという、期待して開幕を待ちたい。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2014.12.04

ズームアップ 名画の響き合い! 1969年

Img_0001     フンデルトヴァッサーの‘バルカンの彼方のイリーナの国’

Img     ウォーホルの‘キャンベルスープⅡ’

Img_0003     リキテンスタインの‘赤い納屋Ⅱ’(ケルン ルートヴィヒ美)

Img_0002     ニューマンの‘エリコ’(パリ ポンピドー)

2006年、日本ではじめてフンデルトヴァッサー(1928~2000)の回顧展(京近美)が行われた。そのためわざわざ京都へ。この画家のことを知ったのはこの展覧会の6年前、NHKで放送されたミュージシャンの石井竜也がニュージーランドに住んでいるフンデルトヴァッサーを訪ねていくという美術番組。これでいっぺんにファンになった。

その思いをさら強くさせたのが2003年のウイーン旅行、喜び勇んで‘フンデルトヴァッサーハウス’に足を運び、ファンタジックな家や鮮やかな色彩や渦巻き模様にあふれる作品の数々を目いっぱい楽しんだ。‘バルカンの彼方のイリーナの国’は最も魅せられている作品。

この絵をみてミュージカル‘キャッツ’を思い浮かべる人が多いかもしれない。画家自身はどうイメージしているのか知らないが、猫のかぶりものをした人物がぴったり。おもしろいのはダブルイメージを思わせる顔のしわ。一体この猫顔はどこに浮遊しているのか?例えば湖の上にいて水の波文と連動して顔のしわが横にのびているのか。勝手に想像が膨らむ。

ウォーホル(1928~1987)はフンデルトヴァッサーと同じ年に生まれている。キャンベルスープ缶はウォーホルの代名詞、昨年国立新であった回顧展でも4点お目にかかった。生活のなかにある身近なものを作品にとりこみアートにしてしまうのは錬金術みたいなもの。これを最初に思いつくのが才能。こういう人しか芸術家になれない。

二度目のケルン行きがあるかわからないが、もし実現したらルートヴィヒ美に寄ってみたい。お目当てはリキテンスタイン(1923~1997)、ここにはいい作品がいくつもあり‘赤い納屋Ⅱ’はその一点。モネの‘積み藁’を題材にしたものやこうした風景画をみるとリキテンスタインの絵心は本当に豊か。鑑賞欲を強く刺激される一枚。

縦や横の大きな長方形の画面がすぐ頭をよぎるニューマン(1905~1970)、ポンピドーにあるこの作品はニューマンには珍しく黒の三角形、そして真ん中で垂直にのびる赤のジップ、この黒と赤の組み合わせがとてもいい。まだ縁がないので遭遇する幸運を祈っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.03

人気の錯視アート!

Img  宝島社の‘大人の錯視入門’(2014年12月7日発行 1000円)

Img_0002     北岡教授の‘蛇の回転’(部分 2003年)

Img_0003     エビングハウス錯視

ものごとに興味をもつとときどき関連する情報が不意に飛び込んでくることがある。今日はそんな日だった。

散歩の途中、行きつけの本屋に‘和楽’1・2月号に載っている琳派関連の展覧会情報を確認するため立ち寄った。ページをパラパラとめくってみたが、琳派の話を無難に編集していた。展覧会情報はすでに知っているものが多かったが、京博の琳派展がでてなかった。どこかで間違った情報がインプットされたみたい。それとも、2016年?収穫はひとつあった、日本橋三越で行われる箱根の岡田美が所蔵する琳派コレクション展(1/21~2/2)。

この後美術雑誌のコーナーでおもしろい本がないか探していたら、まさに求めていたものにぶち当たった。宝島社の出版ほやほやの‘大人の錯視入門’、開いた瞬間購入を決めた。

今年わが家は錯視の話でおおいに盛り上がっている。きっかけは放送大学の番組で偶然みつけた‘錯覚の科学’(全15回 4月~9月)、見だしたのは8回目から。じつはこの講座は後期(10月~3月、金曜日のAM5:15~6:00)も行われていて、見逃した7回までのうち3回以降をうまくリカバリーした。

この講座は毎回おもしろくみたので、宝島社の本にもすぐ反応する。興味深い錯視アートがいくつもでてくるが、そのなかの傑作が立命館大学の北岡教授が2003年につくった円盤がぐるぐる回る‘蛇の回転’。2年くらい前ミレイの‘オフィーリア’を取り上げた番組があり、この作品がでてきた。

静止画なのになぜか円盤が動く、その不思議さに強烈に引き込まれた。3、4周遅れの情報かもしれないが、この作品はレデイ・ガガのアルバム‘アートポップ’のデザインに使用されたそうだ。だから、北岡教授は今や人気の錯視アーティスト!

‘錯覚の科学’や今200%のめりこんでいる行動経済学や認知心理学に錯視の例がいろいろでてくる。そのなかで絵画作品をみるとき起こっていそうなのが‘エビングハウス錯視’、中央の黒い円ふたつはどうみたって同じ大きさにはみえない。大きいグレイの円に囲まれているほうが小さくみえ、小さな円に囲まれているほうが大きく感じる。ところが、ふたつは同じ大きさ。

錯視には脳の働きがかかわっている。興味はつきない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.02

ズームアップ 名画の響き合い! 1968年

Img_0002     ニューマンの‘アンナの光’

Img_0004     ケリーの‘黄色 オレンジ’(NY MoMA)

Img_0001     ステラの‘バスラ門Ⅱ’(福岡市美)

Img     バゼリッツの‘樵たち’(NY MoMA)

バーネット・ニューマン(1905~1970)の‘アンナの光’は川村記念美の自慢の現代アート作品だった。横浜からは遠い道のりの川村記念美、ここの定番のお楽しみはロスコ、ステラ、そしてニューマンのこの赤一色の大作。

ところがこの作品は昨年の10月、この美術館を離れた。およそ100億円で海外の企業に売却された。だから、今はここを訪れても会えない。100億円もの値段がつく作品が日本に存在していたこと自体すごいことだが、この美術館は公的な美術館ではないので企業が財務的に厳しい状況に立たされるとこういう悲しいことが現実に起きてしまう。この目の覚める赤に出会うことはもうないだろうが、一体どこの国の企業のコレクションに加わったのだろうか、やはりアメリカ?

抽象絵画は現実の対象を再現しないので魅力のポイントは色彩、そのスタイルはあまり多くない、黒のみで画面をつくる、すっきりとした色彩で端正に表現する、ぼかしを入れたり色を重ねたりして色彩空間を揺れ動かす、ケリー(1923~)は終始一貫してすっきり派、黄色、オレンジの2色だからじつに明快。

ステラ(1935~)の作品も色彩の純粋な美しさをみてくれ、という感じ。ケリーとの違いは色数が多いこと。この分度器シリーズでは黒を含めて7色。半円を色の帯で埋めていくのに真ん中の赤だけが左右で連続しているが、ほかの色は異なっている。緑が遠くに離れているので分度器が立体的にみえてくる。このあたりがとてもうまい。

ドイツ人のゲオルク・バゼリッツ(1938~)の絵のおもしろいのは人物が逆立ちしているところ。‘樵たち’では緑の服を着た人物が二人いるが背の高いほうは下に頭がある。はじめてみたときドキッとした。これを描くのは別に苦労はいらない、一人描いたらキャンバスをくるっとまわして描けばいい。さかさま画法を体験したのは2点のみ、ほかの作品もみてみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.12.01

日本の美! 秋の紅葉 光琳 乾山 抱一 其一の楓図(7)

Img_0001      尾形光琳の‘十二カ月歌意図屏風 九月’(17世紀)

Img_0002           尾形乾山の‘楓図’(18世紀)

Img     酒井抱一の‘朱楓図屏風’(1818年)

Img_0003     鈴木其一の‘四季花木図屏風’(左隻部分 19世紀 出光美)

日本の花の美しさをモチーフにして描かれた美術品をシリーズ化した‘日本の美!’、秋の定番紅葉はこれまで6回とりあげた。お気に入りのものはまだある。新たに4点を琳派から選んでみた。

琳派といえば今日の新聞に雑誌‘和楽’の大きな広告がでていた。1.2月号の特集は琳派、‘なぜ琳派はこんなに人気なのか!?’ときた、琳派狂いにはたまらないフレーズ、興味をそそる内容のひとつが‘2015年 琳派展覧会カレンダー’。

来年は琳派が生まれて400年、また光琳没後300年の節目の年なので大規模な展覧会が行われる(京博?)ことはチラッと聞いたが正確な情報はつかんでいない。完全網羅したとあるから複数の美術館で琳派展があるのだろう、早速本屋へ行って確認したい。

尾形光琳(1658~1716)の楓の絵は2年前根津美であった光琳展ではじめてお目にかかった。縦長の画面に上から垂れさがってくる楓の枝振りがなかなかいい。弟乾山(1663~1743)の楓は光琳とは逆に上のほうにむかってのびている。紅葉のグラデーションがよく表現されていてとても魅了される。2点はともに個人のコレクション、だから二度目の鑑賞はないだろう。

金地の背景に描かれた楓の赤、川の群青、そして土坡の緑青が鮮やかに映える‘朱楓図屏風’、酒井抱一(1761~1821)が描いたこの屏風をはじめてみたときは立ち尽くして言葉がでなかった。太い幹の楓をどんとまんなかに配置するという意表をつく構図が心を突き動かす。

師匠のこの構図を意識したようなの鈴木其一(1796~1858)の‘四季花木図屏風’も魅力いっぱい。抱一の紅葉がかたまっているのに対し、其一は一枚々を離し濃淡をつけスッキリみせている。出光がこの屏風を所蔵し、根津美がもう一つの傑作‘夏秋山水図屏風’をもっている。ブランド美術館にはやはりいい絵がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年11月 | トップページ | 2015年1月 »