« 2014年10月 | トップページ | 2014年12月 »

2014.11.30

猿橋の紅葉!

Img     山梨県大月にある猿橋

Img_0001      歌川広重の‘六十余州名所図会 甲斐さるはし’(1853年)

Img_0003     歌川広重の‘猿橋冬景図’(1848~1852年 MOA美)

Img_0002       歌川広重の‘諸国名所 甲陽猿橋之図’(1836年頃)

2日前のニュースに山梨県大月にある猿橋の紅葉がでてきた。今が見ごろだそうだ。歌川広重(1797~1858)の浮世絵で有名なこの橋、一度楓の紅葉がきれいな時期に出かけてみたいと思うのだがなかなか実現しない。

まわりにこの橋をみたという人がいないのでイメージが膨らまないが、手元の本によると場所は甲府の北50キロくらいのところ。下を流れる桂川から31mの上空に架けられ橋の幅は5.5m、長さは31m、その姿は橋脚がなく宙に浮いているようにみえるらしい。日本三奇橋のひとつと呼ばれているのだからやはりみてみたい。

広重は天保12年(1841)4月甲州旅行へ出ており猿橋をみている。旅日記にこう書いている。‘、、、かはる絶景、言葉にたへたり、拙筆に写し難し’、旅から12年後に描かれたのが‘六十余州名所図会’シリーズの一枚‘甲斐さるはし’、今盛りの紅葉はこんな景色だろうか。

広重は肉筆画でも猿橋を題材にしている。これは天童藩のために描いたもののひとつで、いわゆる天童広重、橋の左右からつつみこむように広がる紅葉が肉筆ならではの丁寧な筆致で美しく描かれている。

紅葉がでてこない猿橋の絵は‘甲陽猿橋図’(天保末期)がよく知られているが、もうひとつ富士川の富士、小金井橋の桜と組み合わせた‘諸国名所’で甲陽の猿橋を描いている。ただし、この絵は旅行する前の作品だから、ほかの絵師の手になる名所図会のようなものを参考にして仕上げたものと思われる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.29

国宝 ‘過去現在絵因果経’の全場面展示!

Img_0003     国宝‘過去現在絵因果経’(奈良時代 8世紀)

Img_0002     国宝‘訶梨帝母像’(鎌倉時代 13世紀)

Img_0001     ‘不動明王像’(重文 平安時代 10世紀)

Img     俵屋宗達の‘舞楽図屏風’(重文江戸時代 17世紀)

京都の醍醐寺へは2度足を運んだことがある。お楽しみは五重塔をみることと霊宝館に展示されている国宝などとの対面。出かけるときはHPで公開されている国宝を事前にチェックする。これで5年くらい前は狙っていた‘文殊渡海図’をようやく目にすることができた。

ところが、もうひとつ追っかけている‘過去現在絵因果経’は2回ともでてこなかった。3つある国宝の‘絵因果経’、2つは運よく見たがここにあるものとはなかなか縁がむすばれない。ところが、ようやく鑑賞の機会が巡ってきた。京都ではなくて、東京で。

久しぶりに出かけた渋谷の松濤美、ここで11/24まで‘醍醐寺展’が開催され、念願の‘過去現在絵因果経’が全場面公開されていた。15メートルもあるこの日本最古の絵巻を夢中になってみた。小さいころ遊んでいた紙芝居と同じような心持で釈迦のお話に感情移入していく。

クライマックスは魔王が大勢の怪物を引き連れて釈迦の修業を妨害するところ、まったく動じない釈迦。こういう風に悟りをひらくまでの道のりが絵でインプットされるとイメージしやすい。思わぬところでこの国宝がみれたのは本当に幸運だった。

今回作品の展示が前期と後期に分けてあったが、後期は国宝の‘訶梨帝母像’がでていた。これは西洋画でいうと聖母子のような絵。自然と心が和む。‘不動明王像’は目に特徴がある。なぜかバセドー病のように目がとび出ている。だから、よく記憶されている。

これもきていたのか、と思わずニンマリだったのが宗達の‘舞楽図屏風’。この屏風でいつも視線が向かうのが左隻の右上の羅陵王。その鋭いまなざしに釘付けになる。やっぱり宗達はいい、いい、と心のなかで呟きながら館を後にした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.28

歌川国貞の表現力に目が点!

Img        ‘七代目市川團十郎の暫’(1830年 太田記念美)

Img_0001     ‘月の陰忍逢ふ夜 行燈’(1833年 太田記念美)

Img_0002     ‘東海道五十三次の内 庄野 中野藤兵衛’(1852年)

Img_0004     ‘御あつらへ三色弁慶’(部分 1860年 太田記念美)

今週の月曜日まで開かれていた歌川国貞(1786~1864)の没後150年を記念した回顧展をみてきた。浮世絵の専門の美術館がてがけるものだから、質量は保障されている。予想通り後期だけでも沢山出ている。

広重や国芳のひとまわり年上の国貞、これまで回顧展は静嘉堂文庫で一回出くわしただけ。でも、東博の浮世絵コーナーで国貞はお馴染みの絵師、今回130点くらいが一気に上積みされたので国貞にも済みマークがつけられそう。

国貞の美人画はあまりぐっときてない、魅了されているのは役者絵のほう。靴を脱いでみる座敷のところにご機嫌な肉筆画‘暫’があった。腰をかがめた七代目市川團十郎の姿がばっちり決まっている。長い大太刀の形にもすっと視線がむかう。

今回の収穫は‘月の陰忍逢ふ夜 行燈’、しばらくみていたのは行燈の光の描写、はじめ黒の部分が何なのかよくわからなかったが、やがてこれは行燈からもれる光が後ろの屏風にあたっていないところを描いていることに気がついた。光があたっているところと色が変わっているというわけ。この光の表現はすごく現代的なデザイン、200%参った。

地下の展示室にもはっとするものがあった。広重の東海道五十三次を絵のなかに取り込み宿場と関連する歌舞伎の配役とコラボさせている。これははじめてみた。お気に入りの‘庄野’だから目にも力が入る。

もう一点、国貞のイメージをくつがえす作品が現れた。三枚続の‘御あつらへ三色弁慶’、背景の絵柄がなんともモダン、上から青、赤、黒の格子模様が三層構造になっている。3人の人物は完全にこの模様に食われて、しっかり記憶にとどまらない。こんな豊かなデザイン感覚が国貞にあったとは!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.27

祝 和紙 ユネスコ無形文化遺産に決定!

Img      喜びに沸く美濃市

Img_0001       石州半紙の職人

日本の和紙が昨年の和食に続き、ユネスコ無形文化遺産に登録されることが決定した。拍手々!いろいろある和紙のなかで登録されるのは‘石州半紙’(島根県浜田市)、‘本美濃紙’(岐阜県美濃市)、‘細川紙’(埼玉県小川町、東秩父村)。

NHKの美術番組に工芸に焦点をあてたものがふたつある。Eテレの‘美の壺’とBSプレミアムの‘イッピン’。これまで和紙は‘美濃和紙’、‘土佐紙’が登場、そしてつい最近、美濃和紙を‘美の壺 障子’とBS朝日の‘アーツ&クラフツ商会’でたてつづけにみた。

おかげで和紙の原料である楮のことや流し漉きの作業、和紙を使ったものなどがだいたいわかってきた。興味深いことがいくつもある。例えば、紙の漉きに欠かせないのがねばねばしたトロロアオイ、これが楮の繊維を均一に拡散させ丈夫な紙に仕上がるという。

2年前のちょうど今頃イッピンをみたとき驚くことがあった。パリのアパルトマンの窓に飾ってあったのが美濃和紙で作った‘雪の結晶’、美濃の若い世代の職人が商品化に成功しヨーロッパで人気を集めているのだという。それから2年経ったが、その需要はどんどんのびているにちがいない。

また、日本の和紙は海外にある日本画や絵巻の修復には必要不可欠の材料になっているというし、古い書籍の保存や修理などにも重宝されているという話も聞く。今回、無形文化遺産になったことで和紙の美しさ、丈夫さはさらに注目されいろいろな方面で使用の機会が増えていくことだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.26

‘東アジアの華 陶磁名品展’で思わぬ収穫が!

Img_0003     ‘青磁亀形水注’(高麗時代 12世紀 韓国国立中央博)

Img_0002     ‘台付壺’(重文 弥生時代・後期 3世紀 東博)

Img_0001     ‘三彩有蓋壺’(重文 奈良時代 8世紀 東博)

Img     ‘色絵獅子牡丹文銚子’(重文 江戸時代 17世紀後半 文化庁)

東博本館の特別5室で‘東アジアの華 陶磁名品展’が11/24まで行われていた。展示がはじまったのは3ケ月前、いずれ足を運ぼうと思っているうちに国宝展まで引っ張ってしまった。

チラシに紹介されていたもので気になっていたのが韓国の国立中央博から出品された高麗青磁‘亀形水注’、これは日本でいう国宝のやきもの。蓮台に亀が座るというユニークな造形に大変魅了された。2002年東博であった‘韓国の名宝展’ に同じモチーフのものがでたが、そのときは宝物(日本の重文)、やはり今回の亀のほうがいい。

中国のものにはこれは、というのがなかった。残念、だが、日本のやきものに思わぬ追っかけ作品がまじっていたから、国宝の高麗青磁とあわせると満足度200%になった。

1992年、東博の創立120年を記念して‘日本と東洋の美’展が開催された。このときつくられた図録は東博の図録といっていいくらい充実しており、以来これを東博鑑賞の手引きとして使ってきた。図録に載っている作品でもまったく記憶にないものが沢山ある。これは当時注意がおよばない作品は見れども見えず状態だったから。

それで平常展に通い国宝と重文を追っかけている。まだ全部に済みマークはついてない。そのなかの2つがひょいと目の前に現れた。3世紀につくられた‘台付壺’と奈良三彩の‘三彩有蓋壺’、とくに嬉しいのが奈良三彩。これで国宝、重文に指定されている奈良三彩は4点全部みることができた。次のターゲットは正倉院のもの。これにはまだ縁がない。

もうひとつ、心を躍らせるものがでてきた。五彩手古九谷様式の‘色絵獅子牡丹文銚子’、Myカラーが緑&黄色なので古九谷には強い思い入れがあり、この文化庁が所蔵する銚子も長年追っかけてきた。だが、なかなかみる機会に恵まれなかった。ここでお目にかかれるとは想定外。腹の底から嬉しさがこみあげてくる。青と緑の輝きを目に焼き付けた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.25

気になるお宝 ‘金印’と‘善財童子立像’!

Img     ‘金印’(弥生時代・1世紀 福岡市博)

Img_0003     快慶の‘善財童子立像’(鎌倉時代 奈良・安倍文殊院)

Img_0001     ‘黄色地鳳凰瑞雲霞文様紅型紋紗衣装’(18~19世紀)

Img_0002     ‘土偶 縄文のヴィーナス’(縄文時代中期 茅野市)

‘日本国宝展’(12/7まで)をみるため外で並んでいたとき、整理係の人から‘金印’のところだけは列ができていることを知らされたので、入館するとすぐ第二会場へ急いだ。今回の目玉の国宝だし並びついでということもある。

追加20分の待ちのあとようやく最接近のポジションにきた。大きさはイメージの半分、一辺2.35㎝の小さなものだった。だから、図版ではよくわかる取っ手の表面にできた小さな凹は単眼鏡を使ってもしかととらえられない。こういう歴史の教科書に出てくるお宝がみれるのは長いアートライフのなかでも特別の体験。図版に日付を書き入れておいた。展示は11/30まで。

昨年国宝に指定された快慶作の‘善財童子立像’、手元にある快慶の本にこの彫刻が載ってないので国宝に格上げされなければずっとその存在に気づかなかったかもしれない。その造形はきわめてユニーク、横をみながら歩いている姿の彫刻はこれまで見たことがない。だから、この動きの表現が強く心をとらえる。彫刻好きの隣の方も同じく熱心にみていた。

4年前サントリー美で行われた紅型展で味わった感動が蘇った。2点でている。ひとつはサントリーでお目にかかったが、鳳凰文様のものは初見。チラシでみて期待していたが、やはり心が高揚する。サントリーで10点、そしてプラス1点、一体国宝の紅型はいくつあるのだろうか、15点くらい?そのなかで最もいいのでないかと思うものとまだ縁がない。それは‘龍宝珠瑞雲文様’、これをなんとしてもみたい。

土偶で国宝になっているのは5点、11/21~12/7は5点がずらっと並ぶ。これは壮観、一番のお気に入りは肖像画にならって‘縄文のヴィーナス’、吊り上がった目がかたい印象なのに胸、胴回りや腰のふくらみはなんとも柔和。元気な赤ちゃんをみているよう。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.11.24

お楽しみ満載の‘日本国宝展’!

Img     ‘阿弥陀聖衆来迎図’(12世紀 和歌山 有志八幡講十八箇院)     

Img_0001     ‘山越阿弥陀図’(13世紀 京都・禅林寺)

Img_0002     ‘孔雀明王像’(北宋時代・11世紀 京都・仁和寺)

Img_0004     ‘辟邪絵 天刑星’(12世紀後半 奈良博)

遅い出動となった東博の‘日本国宝展’(12/7まで)、‘東山御物の美’同様お目当ての作品が出てくるのをじっと待っていた。長年追っかけていたものがうまい具合に後期にかたまってくれたので1回の訪問で済んだ。

30分くらいで入館できると思っていたが、これは甘かった。12時をすぎるとみんな腹が減ってくるためか退館する数が増えてきて当初の80分待ちが早まり60分でなかに入れた。作品が全部国宝というのはもうイベントのようなもの。ここにもあそこにも名品があるのでテンションは上がりっぱなし。

今回もっとも期待値が高かったのが‘阿弥陀聖衆来迎図’、ようやくみれたので嬉しくてたまらない。この世に別れを告げるときはこの絵のことを思い浮かべることにしているので、しっかり予約をとりつけてきた。大勢いる菩薩のなかでお気に入りは真ん中手前にいるふたりの右のほう。白くてぽっちゃりした顔をうっとりしてながめていた。

楽器を演奏している菩薩たちを一人々じっくりみるとそれぞれ個性があってすごく愛着を覚える。二人笑っている。どこにいるか?みてのお楽しみ。以前みた同じサイズの模写でも十分楽しめたが、本物を前にすると心の高まりはその数倍。まさに天にも昇る気分とはこのこと。

日曜美術館で解説してくれた‘山越阿弥陀図’、当時は親指のところから五色の糸が垂れ下がり極楽へと旅立つ死者の手に握りしめられていた。その穴のあとを単眼鏡で確認した。

仁和寺にある‘孔雀明王像’ともやっと対面が叶った。昨年京都へ行ったとき、展示されていたのでバスを乗り継いで途中までたどり着いたが新幹線の時間が迫ったためあきらめた。これほど早いリカバリーができるとは思ってもみなかった。本当によかった。

久しぶりにみた‘辟邪絵 天刑星’、胴体を食いちぎるド迫力の天刑星。この絵をみるたびにゴヤの‘わが子を喰らうサトゥルヌス’が頭をよぎる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.23

‘東山御物の美’ 工芸品の収穫は茶入!

Img  国宝‘油滴天目’(南宋時代・12~13世紀 大阪市立東洋陶磁美)

Img_0003     ‘唐物大海茶入 銘打曇大海’(南宋時代・13世紀)

Img_0002     ‘唐物茶壺 銘夕立’(南宋時代・13世紀 徳川美)

Img_0001     ‘青磁筍花瓶’(重文 南宋時代・13世紀 根津美)

‘東山御物の美’(三井記念美 11/24まで)と‘日本国宝展’(東博 12/7まで)を同じ日にみたので、中国と日本でつくられた極上をやきものをたくさんみることができた。素直に嬉しい。

三井記念美の展示室は全部で7つある。入ってすぐの1室と突き当りの2室はやきものとほかに工芸品にあてられている。2室はとびっきりの名品を展示する場所、今回は大阪からやってきた国宝の‘油滴天目’が目を楽しませてくれる。この天目は器全体に無数に広がる銀色の点々はじつに美しい。そして、やきものをはなれて抽象絵画をみているような気分にもなる。

茶入は4点、この美術館自慢の‘北野肩衝’(重文)と‘銘遅桜’、もうふたつは初見の大海茶入‘銘打曇大海’と小さなもの。茶入の名品には肩の張ったような形の肩衝が多いが、平茶入で口の広い大海はとても少ないためみる機会がほとんどない。だから、手元の本に載っている‘銘打曇大海’と出会えたのは幸運だった。広がったVの字を思わせるなだれを夢中になってみた。これは大収穫!

茶色やこげ茶の美を感じさせるものがもう一点、どっしりとした丸い形が特別の存在感がもたらしている唐物の茶壺、銘‘夕立’。3度目の対面だが、いつもその丸さ具合に深く魅せられている。

足利将軍家の会所では欠かせない茶道具として飾れていた青磁、根津美からは二つの重文が並んでいた。‘筍花瓶’はお気に入りの一品。大きいので筍のイメージがすごく伝わってくる。5点あった青磁のなかではどうしてもこの花瓶の前にいる時間が長くなる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.22

やっと会えた‘桃鳩図’!

Img_0001     徽宗の国宝‘桃鳩図’(北宋時代・1107年)

Img     李安忠の国宝‘鶉図’(南宋時代・12~13世紀 根津美)

Img_0003     牧谿の国宝‘漁村夕照図’(南宋時代・13世紀 根津美)

Img_0004     故直夫の国宝‘夏景山水図’(南宋時代・12世紀 山梨・久遠寺)

三井記念美にでかけ待望の‘桃鳩図’をみてきた。今ここで開かれている‘東山御物の美ー足利将軍家の至宝’(11/24まで)がはじまったのは10/5なのに、この時期まで出動を遅らせていたのはひとえにこの絵の展示を待っていたから。

10年前根津美であった南宋絵画展で‘桃鳩図’が展示されたのはわずか5日、当時広島にいてこのタイミングで上京の日程を調整できなかったので見逃してしまった。そのあといつみれるか見当がつかなかったが、ようやく対面の機会がめぐってきた。

10時ちょっとすぎに入館したが、チケット売り場にはつぎつぎと人がやってくる。‘桃鳩図’に熱い思いをいだいているひとたちが多くいるのだろう。最初の部屋の茶入なども気にはなったが、それはさらっとみてどんどん進んでいった。

2人が単眼鏡を使ってみていた。まさに桃鳩フィーバー真っ最中といったところ。思ってたよりは小さい絵。美術本では大きな図版になっているため羽の精緻な線描までみえるが、本物ではそれを肉眼で確認するのはむつかしい。単眼鏡の助けを借りないと図版のイメージにはとても近づけない。

しっかりみたのはこの絵をはじめてみたときから魅了され続けている鳩の頭のうす緑、そして目、また桃の花びらを彩る胡粉の白にもしっかり単眼鏡の焦点をあわせた。鳩の足はちょっと紛らわしい、枝をつかんでいる足なのか、足は羽の裏に隠れみえているのは枝なのか。単眼鏡でみると足だろうな、という感じ。

この絵がいい気分でみられるのは構図がとてもいいから。ふっくらとした鳩は右向きで横に寝かせたVの字のような形になっている枝と枝の間にぴったりとおさまっている。ちょっと左寄りでもまたちょっと右寄りでも目の心地よさを奪いそうなちょうどいいところに描かれている感じ。噂にたがわず傑作中の傑作だった!

展覧会の入館料1300円はこの一枚でもとをとったのであとはお気に入りの作品を気楽に楽しんだ。なんだか南宋絵画展のデジャブがおきているかのよう。根津美からはお宝の‘鶉図’と‘漁村夕照図’がきているし、強い風が吹き荒れる様を巧みに描いた‘夏景山水図’もある。ミューズに感謝!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.21

ズームアップ 名画の響き合い! 1967年

Img_0001    ウェッセルマンの‘スモーカー1’(NY MoMA)     

Img     インディアナの‘LOVE’(NY MoMA)

Img_0003     ホックニーの‘大きなスプラッシュ’(ロンドン テートブリテン)

Img_0002     マザーウェルの‘スペイン共和国へのエレジー’(NY MoMA)

昨年国立新美で開催された‘アメリカン・ポップ・アート展’で大収穫だったのがウェッセルマン(1931~2004)、それまでお目にかかった作品は片手くらいしかなかったのに一気に14点プラスされた。お蔭でリキテンスタインやウォーホルと並んで気になる作家になってきた。

‘スモーカー1’はMoMAのコレクション、ドキッとするセクシーな絵柄は強いインパクトをもっている。顔の全体は描かれず、タバコとそれをくわえる真っ赤な唇だけが白の背景に浮かび上がる。扉を開け暗いバーに入ったら女性がタバコを吸う姿を脳は案外こういう風に認識してるのかもしれない。

文字が画面のなかに登場する作品で最初に出会ったのはピカソのコラージュ、次がクレーの作品、現代アートになるとすぐ思いつくのがロバート・インディアナ(1928~)、でも知っているのはこの‘LOVE’だけ。文字の赤色が強い磁力を放っているのは青と緑との組み合わせがいいから。この作品を立体化したものがNYの街中に設置されていた。一度みてみたい。

明るい日差しが画面をあふれる作品が心をひきつけるホックニー(1937~)、昨年だったか?2年前だったか?ロンドンでこの作家の大規模な回顧展があった。そのときそこへ居合わせられないことが恨めしく思われた。ホックニーが気になりはじめたのは2008年にボストン美を訪問したとき。美術館のパンフレットにホックニーのモダンな風景画が使われており、ほかの作品もみたいと思うようになった。

その2年後ロンドンのテートモダンへ足を運んだ際は、ホックニーに会えるものと期待した。ところが、どういうわけか‘大きなスプラッシュ’は姿を見せてくれなかった。何年か先、お目にかかれるといいのだが。Bunkamuraとか国立新美でホックニー展が望めないだろうか、やっぱり無理か。

マザーウェル(1915~1991)は勝手に分類している黒の画家のうちのひとり、1949年から描きはじめたシリーズ‘スペイン共和国へのエレジー’はスペインの市民戦争にインスパイアーされて描いたものだが、タイトルと絵は直接結びつかず翼を広げた大きな黒い鳥が右から左へ飛んでいるイメージが強い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.20

ズームアップ 名作の響き合い! 1966年

Img     オルデンバーグの‘ソフト・トイレット’(NY ホイットニー美)

Img_0001     ボイスの‘グランド・ピアノのための均一な浸透’(ポンピドー)

Img_0002     アルマンの‘秋の愛の色彩’

Img_0003     パスカーリの‘ダイナソー’(ローマ国立近美)

オルデンバーグ(1929~)が1966年に制作したソフトスカルプチャー、‘ソフトトイレット’をみていてすぐ連想するのはデュシャンの‘泉’、同じトイレなのにデュシャンのほうはどこでつながっているのかよくわからない‘泉’となり、オルデンバーグはビニールなどの合成樹脂のもつ質感からトイレットの前にソフトをくっつけている。

この作品の全体の形と合成樹脂のつるつるしたイメージからもうひとつ思いつくのはゴルフバック。上の口が開いている部分をみると、キャディーさんにどのクラブがいいかアドバイスを求めている場面がついでてくる。

ドイツ人アーテイスト、ヨーゼス・ボイス(1921~1986)のピアノ作品は17年前東京都現美で開催されたポンピドーコレクション展に出品された。グランドピアノがなんとフェルトと布で覆われている、これにまず大きな衝撃をうける。そして、アクセントとなっている赤十字。これもわからない、だからこそ強く印象に残っているのだろう。

ガスマスクをびっちり詰め込むオブジェで強烈なメッセージを発信したアルマン(1928~2005)、次は作風をごろっとやわらかくし透明なポリエステルを使った女性像、肌色をしたマネキンよりもっと艶めかしく、血液が下腹部へぞくぞくと流れこんでいるのであまり長くはみていられない。

ローマのボルゲーゼ美の近くにある国立近美は幸運なことに2度訪問する機会があった。一回目のときはバッラやボッチョーニの作品を夢中でみたが、もういちど出かけたときは館内のレイアウトが頭に入っているのでじっくりみてまわった。

記憶によくのこっている作品のひとつがピーノ・パスカーリ(1935~1968)の‘ダイナソー’。自然史博物館に展示してある恐竜の骨をみるのと同じ感覚。これも彫刻作品としてはありなんだ、と感心した。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.19

やさしい大観の富士!

Img_0001     ‘秋之霊峰’(1941年 山梨県美)

Img_0002   ‘山に因む十題 砂丘に聳ゆ’(1940年 霊友会妙一コレクション)

Img     ‘群青富士’(1917~18年 静岡県美)

Img_0003     ‘富士山’(1943年 慶應義塾幼稚舎)

会期の終了が近づいてきた‘横山大観の富士’(平塚市美 11/24まで)、二度目の出動のタイミングをはかっていたが午前中にあった所要がスムーズにいったのでささっと出かけてきた。

お目当ては後期に展示される6点。そのなかでとくに気になっていたのが‘秋之霊峰’、タイトルの漢字4文字からすると重々しいイメージだが、画面はじつにやわらかくてやさしい色合いで彩られている。横山大観(1868~1958)が長い画家人生のなかで数多く描いたのが富士、そのなかで1940年と1941年に描かれたものは色彩的な魅力が際立っている。大観はこのとき73歳、富士や裾野の木々、草花をやさしくほわっと描いている。

再会した山十題の‘砂丘に聳ゆ’の前でも長くいた。画面構成がとてもいい。視線はまず手前の波にいき、次に小山のような砂丘、そこにのびる松の木を横にみて最後に雄大な頂をみせる富士山へと吸い込まれる。波と松の‘動’に対する富士の‘静’、この見事なコントラストにより魅力あふれる吉祥画に仕上がっている。

会期中出っ放しの‘群青富士’、このみごたえのある屏風は静岡県美のお宝のひとつ。目の覚める群青の富士と緑の山々を斜めに配置し、そのまわりはもこもこした雲でおおいつくす。そして雲のむこうにはここが天界のようにおもわせる黄金の輝き、一見すると装飾性豊かな琳派の絵のよう、無駄なものを一切排除し富士の美を象徴的にみせる大観の表現力には真に圧倒される。

慶応義塾幼稚舎にも富士の絵があった。富士は雲海に囲まれて姿を見せるのはてっぺんのところだけ。黒い部分はよくみると墨の上から濃い群青が塗りこめられており、その深い色合いからは富士の神々しさ厳しさというものがひしひしと伝わってくる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.18

高倉健さん 亡くなる!

Img

今日はとても悲しいニュースが入ってきた。あの大スター高倉健さんが悪性リンパ腫のため亡くなった。享年83、昨年の今頃文化勲章を受章し元気な姿をみせていたので、この突然の死がちょっと信じられない。健さんは90歳になってもそのカッコよさは変わらないだろうと思っていたのでショックを受けている。心からご冥福をお祈りしたい。合掌!

健さんの映画で心に強く残っているのは、
★‘飢餓海峡’(1965年)
★‘幸福の黄色いハンカチ’(1977年)
★‘八甲田山’(1977年)
★‘駅ステーション’(1981年)

ここ十年くらいは映画を楽しむ時間がきわめて少なくなったが、その前はビデオレンタル屋へはよく通っていた。好きなのは刑事もの、健さんが若い刑事役で出演した‘飢餓海峡’は日本映画史に燦然と輝く傑作、ときどきビデオを再生しているが隣の方からは‘またみるの’とあきれられている。今年は三国連太郎が亡くなったときBSプレミアムで放送されたのでまたのめりこんだ。

1977年に製作された‘幸福の黄色いハンカチ’(山田洋次監督)は健さんの魅力が最大限にでた心にしみる映画。ぶら下げられた何十枚もの黄色いハンカチが風で勢いよくたなびく光景をじっとみつめる健さんの顔がじつに感動的。こういう終わり方をする映画は一生忘れない。

健さんが演じる網走刑務所帰りの男が夕張に住む昔の恋人に‘もし、まだ一人暮らしで俺を待っててくれるなら黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ、それが目印だ’と言い伝える。おもしろい筋立てだが、山田洋次監督はこれをギリシャ神話から着想している。

英雄テセウスはクレタ島でミノタウロスを退治したあと、島々をまわりながらアテネに帰還する。最後の寄港地デロス島から出帆してさあアテネというときにテセウスは大失敗をやらかす。帰国の喜びのあまり、黒い帆を白い帆に張り替えるという父王との約束を忘れてしまった。

そのため岸辺でテセウスを待っていた父アイゲウス王は、水平線上に現れた黒い帆の船を見て、息子が死んだものと早合点して海に身を投げて自殺する。エーゲ海(アイガイオン海)という呼び名はアイゲウス王の名から始まったといわれる。

健さんのこの映画を思い出すたびにテセウスの話が頭をよぎる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.17

古代エジプトの絵が‘鳥獣戯画’と時空をこえてコラボ!

Img_0002       古代エジプト時代に描かれた動物戯画(紀元前13世紀)

Img_0003     猫が鳥を追い立てている場面(エジプト考古学博)


Img        ‘鳥獣戯画 兎と猿の水遊びの場面’(12世紀後半)

Img_0001     ‘兎と猿が弓に興じる場面’

2,3週間前、興味深い美術番組が二つあった。ひとつは日曜美術館と美の巨人たちが取り上げた修復が完成し京博で公開されている‘鳥獣戯画’、そしてもうひとつはBS朝日で放送された‘BBC地球伝説 古代エジプトの至宝(3回)’(2014年制作)。サプライズの話がでてきたのは‘古代エジプトの至宝’の3回目

何に驚いたかというとオストラコンと呼ばれる陶器や小さな石の破片に描かれた絵、古代エジプトの神殿などに描かれている絵のなかには王が戦車に乗って馬にひかれている場面がよくでてくる。でも、ここでは馬が驢馬に王がネズミになっている。へえー、 今から3200年前の古代エジプトで日本の‘鳥獣戯画’(12世紀後半)と同じようなユーモラスな絵が描かれていたとは、これは参った。古代エジプト文明 恐るべし!

このオストラコンが発見されたのはエジプト中部、ルクソールのはずれの山間にあるデル・エル・メデイーナという村、ここは普通の村ではなく神殿の墓をつくる石細工の職人や彫刻家たちが暮らしていた。この村のことは2年前NHKで放送された‘大英博物館’にもでてきたが、オストラコンの話はなかった。

当時この村に住んでいた人たちの間ではオストラコンは絵を描いたり、メモや手紙として使われていた。だから、これは実際の生活がどんなものであったかを伝える貴重な遺品、絵は伝統的な形式にとらわれない動物戯画のほかに太った石細工職人を描いたものもあった。

番組ではカイロのエジプト考古学博にある同じタイプの絵を紹介していた。それは猫が鳥を追い立てている様子を描いたもの。立ち上がった猫は人間のような仕草で多くの鳥たちを動かしている。犬でなくなく猫が仕切っているのがおもしろい。

この博物館を訪問したときはツタンカーメンの黄金のマスクや棺に鑑賞エネルギーは使い果たした。だから、ここに鳥獣戯画を思わせる絵が展示されていることなど知る由もない。もし、二度目のエジプト行があったらじっくりみてみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.16

来年は訪問が多くなりそうなサントリー美!

Img     久隅守景の国宝‘夕顔棚納涼図屏風’17世紀末 東博)

Img_0001     久隅守景の‘鍋冠祭図押絵貼屏風’(17世紀後半)

Img_0002     尾形乾山の‘銹絵梅図角皿’(重文 17~18世紀 藤田美)

Img_0003     尾形乾山の‘八橋図’(重文 17~18世紀)

今年サントリー美へ足を運んだのは3月の‘のぞいてびっくり江戸絵画’の一回だけ、昨年の3回と比べるとだいぶ縁が薄くなった。だが、来年は忙しくなりそう。発表された企画展はこうなっている。

★‘若冲・蕪村展’    3/18~5/10
★‘乾山展’       5/27~7/20
★‘藤田美コレクション’ 8/5~9/27
★‘久隅守景展’     10/10~11/29

期待の大きさからいうと、まず‘若冲・蕪村展’、次が秋に行われる‘久隅守景展’。久隅守景の回顧展はまだ一度も体験してない。4,5年前石川県美であり心がちょっと動いたが、以前訪問し‘四季耕作図屏風’(重文)をみたので出かけるのは控えた。

その久隅守景の作品をサントリーがみせてくれる。待てば海路の日和あり、である。この絵師の画集をもってないので作品の情報は少ない。東博の平常展示で3点くらいみたような気がする。そのひとつが有名な‘夕顔棚納涼図屏風’、これは国宝、夏の時期この絵をみると200%心がゆるっとする。

追っかけ画リストに入っているのはおたふく顔の女が目に焼き付いている‘鍋冠祭図屏風’、サントリー美が赤坂見附にあったとき行われた展覧会でこの絵が登場した。でも、残念ながら展示替えのため対面が叶わなかった。
過去に展示実績があることを考えれば‘久隅守景展’にもたぶん出品される。1年先のことだが、リカバリーが果たせそう。

尾形乾山についてはこれまで出光であった回顧展(2007年)や京焼展(2006年 京博)を体験したので、満足度が大きくなるか普通に終わるかは未見の作品の登場次第、やきもので追っかけているのは兄の光琳との合作の角皿‘銹絵梅図’、これは藤田美コレクション展のほうででてくるかもしれない。2つの展覧会で可能性があるから楽しみ。

絵は京焼展のとき展示のタイミングが合わず見逃した‘八橋図’、個人が所蔵するこの絵、9年ぶりに公開されるだろうか。とにかく一度はみたい。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.11.15

ビッグニュース! 来年3月サントリー美で‘若冲・蕪村展’

Img     与謝蕪村の‘紅白梅図屏風’(重文 1780年 京都 角屋)

Img_0001     与謝蕪村の国宝‘夜色楼台図’(1778~83年)

Img_0002         伊藤若冲の‘蝦蟇図’(江戸時代 18世紀)

来年の7月MMIHO MUSEUMで‘若冲・蕪村展’が開かれるという情報を今年の春くらいに得たので、ちょっと遠いがクルマを走らせようと思っていた。この時点では東京でも開かれるという話は入ってこない。

だが、9月になり東京でも行われることがうすうすわかった。下旬の朝日新聞に長らく行方不明だった与謝蕪村(1716~1783)の幻の大作がシンガポールで発見されたという記事が載り、この見つかった‘蜀桟道図’は来年の3月からサントリー美、7月からはMIHO MUSEUMで公開されることが明らかになった。これでサントリーでも若冲・蕪村展がみれることが確定、わざわざ信楽まで遠征する必要がなくなったから安堵々。

サントリー美のHPで展覧会の概要をチェックしてみるとしっかり記載されていた。会期は3/18~5/10、
蕪村と若冲は1716年の同じ年に生まれている、だからこの回顧展は生誕300年を記念して企画されたもの。さて、どんな作品がでてくるだろうか、

蕪村で期待したいのは京都の角家(揚屋遺構)にある‘紅白梅図屏風’なのだが、無理かな?6年前MIHO MUSEUMで開催された与謝蕪村展にも出品されなかったから、この屏風は外には出さない方針なのかもしれない。角屋にはもうひとみたい作品がある、‘武陵桃源図’、ふたつOKかそれともNGか、生誕300年なのだから2点○ということにしてもらいたい。

国宝の‘夜色楼台図’、これは必ずでてくる。蕪村の作品ではこの絵に最も魅了されている、なかなかみれないから再会が楽しみ。

伊藤若冲(1716~1800)は日本にある作品でみたいものはかなり目のなかにいれたが、まだ数点残っている。そのひとつが個人蔵の‘蝦蟇図’、ユーモラスなこ三本足の蝦蟇が姿を現してくれたら気分は最高なのだが、はたして。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.14

チューリヒ美とビュルレ・コレクションの統合!

Img     スイスの地図

Img_0001     チューリヒ美

Img_0002 階段吹抜け壁面に飾られたホドラーの‘無限へのまなざし’(1916年)

Img_0004   セザンヌの‘赤いチョッキの少年’(1890~95年 ビュルレ・コレクション)

9月で終了したBS朝日の美術番組‘世界の名画’が最後に訪問したのが今国立新美で展覧会(12/5まで)が行われているチューリヒ美。展覧会へでかける前の放送だったので、目に力を入れてしっかりみた。

番組の案内によって美術館の歴史のことや作品のイメージがおおよそつかめたが、収穫はこれだけではない。エンディングのところで興味深いことを耳にした。チューリヒ美は現在拡張工事を進めており2017年に新しく生まれ変わるという。サプライズの情報は同じチューリヒにあるビュルレ・コレクションがここに加わること。

へえー、あの美術の本によくでてくるビュルレ・コレクションとチューリヒ美が統合されるのか!という感じ。これはビッグな話。将来スイスの美術館をまわるという計画をもっているので、チューリヒ美ですごす時間がとても楽しみになったきた。

チューリヒ美で最もみたいのは西洋美のホドラー展(1/12まで)に下絵が展示されていた壁画‘無限のまなざし’。館内の階段吹抜けの壁面を飾っていた。なかなか見ごたえがありそうな女性群像画。また、ホドラー専用の部屋に展示された作品も鑑賞欲を刺激する。

ビュルレ・コレクションについては関心の的はなんといっても数年前盗難にあったセザンヌの‘赤いチョッキの少年’、この絵との対面が叶うことを長年望んでいるが縁のかけらもないまま。この絵が2017年以降はチューリヒ美でお目にかかれる。

若いころジュネーブに住んでいたときチューリヒはクルマで通ったことはあるが、街のなかを歩いたことはない。この番組をみたことでチューリヒへの関心がぐっと深まった。いつか夢を実現させたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.13

マネの‘春’、75億円で落札!

Img_2     マネの‘春(ジャンヌ・ドマシーの肖像)’(1881年)

Img_0001_2    マネの‘秋(メリー・ローランの肖像)’(1881年 ナンシー美)

先週ネットでマネ好きにとっては痛快な新聞記事をみつけた。11/5、NYで行われたクリスティーズ主催のオークションにマネの絵が競売にかけられ75億円で落札されたという。

その絵は1881年に描かれた‘春(ジャンヌ・ドマシーの肖像)’、落札額はマネの作品としては過去最高値となった。手に入れたのは記事によるとロサンゼルスの美術館、勝手な想像だがポール・ゲティ?それともハマー?この絵をもっていたのはNY在住の個人。絵の写真をみてびっくりした。

昨年1月ワシントンのナショナルギャラリーでみたものとすごく似ている。画像はそのときカメラにおさめたもの。たぶん同じ作品だと思う。ではなぜこの絵がナショナルギャラリーで展示されていたのか?ちょうどこのときここに寄託されていたのかもしれない。たしかにとても惹きつけられる女性の肖像画、手元にあるマネ本でみたことなかったからしっかり写真に撮った。今から思うと幸運な出会いだった。

マネ(1832~1883)はアントナン・プルーストから四季を女性像で表す絵を依頼され2点仕上げた。一点は女優のジャンヌ・ドマシーをモデルにした‘春’、もう一点は高級娼婦であるメリー・ローランを描いた‘秋’。‘秋’は4年前、三菱一号館美の開館記念展‘マネとモダン・パリ’に出品された。

今年わが家は昨年同様マネの当たり年、5月には京都へ巡回した‘光の賛歌 印象派展’を追っかけていき待望の‘アルジャントゥイユ’と対面、そして8月のオルセー展(国立新美)では‘読書’など10数点を目のなかに入れた。マネとの相性は昔からいいのでこれからも楽しくつきあっていけそう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.12

ズームアップ 名画の響き合い! 1965年

Img     ウッセルマンの‘ヌード’(パワーズ・コレクション)

Img_0001     リキテンスタインの‘空想’(パワーズ・コレクション)

Img_0002     ラウシェンバーグの‘突破Ⅱ’(パワーズ・コレクション)

Img_0003     ジョーンズの‘地図’(パワーズ・コレクション)

絵画や彫刻などの美術品をみるため定期的に美術館へでかけることが日常化してくると、ときどき‘この展覧会はいいか、パスして和幸のヒレカツでも食べよう’と、花より団子に走ることがある。作品への期待値が上がっていき鑑賞体験がそこへ近づいていくと、満足度は以前ほど大きくなくなるからである。そういうとき自然な流れとして関心が新たに向うのがまだ未開拓の分野。

そのひとつがモダンアート、とくに心を寄せているのが世界的に名をなしたアメリカ人アーティストの作品、昨年アメリカの美術館をまわりようやく第一歩を踏み出すことができた。抽象表現主義、ネオ・ダダ、ミニマルアート、ポップアート、コンセプチュアルアート、こうした作品のどこがおもしろくどこに美しさがあるのかだんだんわかってきた。

また、日本の美術館でもここ数年期待する作家の回顧展に運よくめぐりあうことが多く、魅了される作品の数もふえる傾向にある。昨年は特別楽しい展覧会に遭遇した。パワーズ・コレクションがどどっと公開された‘アメリカンポップアート展’(国立新美)。

ここで最も刺激的だったのがウッセルマン(1931~2004)の‘ヌード’、目が点になったのはヌードの見せ方。女性の顔は眼から上はみせず描いているのは口と首と乳房のみ、この大胆なカットをみたら‘名所江戸百景’で見る者をうならせた広重も裸足で逃げ出しそう。

リキテンスタイン(1923~1997)の‘空想’はアメリカ漫画そのもの、でもここにはマジックがある。漫画ではごく小さな一コマなのにこれが拡大されて目の前にガーンと現れると訴求力は2倍3倍に増幅する。漫画はアートに変身しその力はパワーアップして人々を楽しませる。本当におもしろいアイデア。

ポップアートの先駆けとなったのがラウシェンバーグ(1925~2008)の‘突破Ⅱ’やジョーンズ(1930~)の‘地図’、いろんなイメージな脈絡なく集まっている‘突破Ⅱ’にはどういうわけかベラスケスの‘鏡を見るヴィーナス’が左右を逆にして使われている。古典絵画がでてくるというのがいい。

‘地図’は黒一色なので戸惑うが、よくみるとアメリカの48州の境界線のみがかすかにわかる地図。こういう黒があったのかと強い衝撃を受けた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.11

近代日本画 I  LOVE 猫!

Img        菱田春草の‘黒き猫’(重文 1910年 永青文庫)

Img_0002     竹久夢二の‘黒船屋’(1919年 竹久夢二伊香保記念館)

Img_0001     竹内栖鳳の‘班猫’(重文 1924年 山種美)

Img_0004     加山又造の‘猫’

近代日本画家で猫をもっとも多く描いたのは誰だろうか、浮世絵師ならすぐ歌川国芳で決まりだが、正確な答えを出すには少し時間がかかる。手元にある作品情報でみると、菱田春草(1874~1911)が一番多いが、奥村土牛(1889~1990)と加山又造(1927~2004)も何度も描いているから断定はできない。

東近美で開かれた菱田春草展に出品された猫の絵は全部で8点、白い猫が2点であとは黒い猫。春草本にはプラス2点(ともに白い猫)載っている。ひとつは足立美でみたもの。すると10点、これに個人蔵などを考慮するとトータルで15点くらいかもしれない。

白い猫より黒い猫のほうが存在感があるのは黒猫のほうが目に鋭さを感じ、毛がふわふわした印象をうけるからだろう。このふわふわ感は美の巨人たちでその描き方を解明してくれたのでいっそう目が寄っていく。

ほかの画家の描いた猫でとくに身近なのは竹久夢二(1884~1934)の‘黒船屋’、この絵を部屋に飾っているので家で猫を飼っているいるようなもの。この黒猫、顔はみせてくれないが後ろ姿はとてもかわいらしい。色白でくりっと目をした女性に大きな手でやさしく抱かれているので幸せ気分だろう。

9年前鑑賞の予約をとって伊香保の記念館までクルマを走らせ長年の夢を叶えた。だから、この絵は特別の思いれがある。そして、それから2年後また予約をとり今度は‘五月之朝’と対面した。夢二式美人に心をとかされ続けている。

昨年東近美では竹内栖鳳(1864~1942)の回顧展があり‘班猫’の人気が沸騰した。くにゃっと曲がった体の柔らかさと青い目が忘れられない。じっと見つめる視線はやがて猫から女性なり、妖艶な香りを漂わせる。すごい目パワー!

加山又造(1927~2004)は家に猫を何匹も飼っていたようで、猫は得意のモチーフ。春草と同じく牡丹との組み合わせにしたり、この絵のように蝶々と戯れる猫の姿を描いている。2007年のオークションでは又造の‘猫ト牡丹’は1億5千万円の高値で落札された。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.10

お楽しみTV美術番組!

Img_0001     11月からスタートしたBS朝日の‘アーツ&クラフツ商会’

Img

わが家ではTVで放送される美術番組をみることは日常生活における楽しみのひとつ、だから毎週定番の番組を熱心にみている。

地上波、BSともに美術番組は制作されている。これらの視聴率がどのくらいになっているのか数字的なイメージがまったくないが、例えば、日曜美術館とか美の巨人たちは何%くらいとっているのだろう。長年続いているのだから、多くのファンが毎週欠かさずみていることは間違いない。

美の巨人たちは最近、予算枠が増えたのか番組を進行させる人物に結構売れているお笑い芸人とか俳優が出てくるようになった。また、海外ロケでもいろんなところに出かける。先週あったシニャックでは南仏の港町サン=トロペがでてきた。

このようにパワーアップしている人気の美術番組がある一方で、消えていった番組もある。BS朝日の‘世界の名画’(金曜10時)、10月から放送されなくなった。若手俳優の要潤のナレーションが気に入っていたから、すごく残念。これで、楽しみにしていたBSの美術番組はすべて終了した。BS東京、BSTBS、そしてBS朝日。

11月からひとついい番組がはじまった。BS朝日の‘アーツ&クラフツ商会’(月曜日 夜11:00~11:30)、初回(11/3)の‘江戸切子’はなかなかおもしろく手仕事の魅力が存分に伝わってくる内容だった。今日は‘美濃和紙’

NHKの‘美の壺’と‘イッピン’にこの番組が加わるので工芸品の情報の束が太くなってきた。新番組に期待したい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.09

ズームアップ 名作の響き合い! 1964年

Img_0003     ジム・ダインの‘等身大の二重自画像’(ホイットニー美)

Img     ステラの‘同心正方形’(川村記念美)

Img_0002     リキテンスタインの‘アポロン神殿 Ⅳ’

Img_0001     ポモドーロの‘球体No.4’(ヴェネツィア グッゲンハイム美)

NYで近現代アートを楽しめる美術館というとMoMA、グッゲンハイム、そしてホイットニー、現地で豪華なコレクションと対面するのがベストだが、所蔵作品が日本にやって来てくれるとコスト的には助かる。

10年?くらい前府中市美でホイットニー美展があり、遠出をした。一番のお目当てはオキーフだったが、展示室にはぐっと惹きこまれる作品が結構な数あった。そのひとつがジム・ダイン(1935~)の‘等身大の二重自画像’。

目を奪われたのはバスローズに使われている色彩の取り合わせ、ぱっとみるとデパートとかスーパーの子ども服売り場に紛れ込んだ感じ。ダインのほかの作品は片手もみてないのにこの1点でその名前が深く胸に刻まれている。

千葉の佐倉にある川村記念美はステラ(1936~)とロスコ、そしてニューマン(今はなし)の作品で世界中に誇れる美術館。ステラの‘同心正方形’の前ではいつも心が弾む。色彩学の本によくでてくる沈む色と飛び出す色をこの絵は実感させてくれる。ケリーやアルバースと比べステラが選択する色は多い、ここでは一番外側の枠には紫色が使れている。

リキテンスタイン(1923~1997)は一生つきあっていこうと思っている現代アーテイスト、だから、その作品情報は手に入る限り集めている。昨年はワシントンナショナルギャラリーで嬉しいことに2点みることができた。でも、まだとても少ない。

いつかリキテンスタイン作品にぐるっと囲まれるのが夢、そのなか入っているのが‘アポロン神殿 Ⅳ’、神殿の背景になっている海と空はいつものドット、これによって生まれる揺れ動くような感じがアポロン神殿の姿をいっそう荘厳なものにしている。

イタリアの彫刻家アルナルド・ポモドーロ(1926~)の名前はローマのヴァチカン美を訪問したときに覚えた。‘ピーニャの中庭’に展示してある黄金の球体‘球のある球体’をつくったのがこの人物。ここ数年火山のことに関心を寄せているので、この大地の割れ目をイメージさせる球体にはことのほか興味がある。

ヴェネツィアで訪問したグッゲンハイムではどういうわけか目にしなかった。どこにあったのだろう?日本では福山美にあるらしい。そして、東京にあるのか調べてみたい。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.11.08

ズームアップ 名画の響き合い! 1963年

Img_0002     マグリットの‘大家族’(宇都宮美)

Img     デルヴォーの‘行列’(ポール・デルヴォー財団)

Img_0001     フランケンサーラーの‘湾’(デトロイト美)

Img_0003     ケリーの‘青・緑・赤’(メトロポリタン美)

マグリット(1898~1967)が亡くなる4年前に描いた‘大家族’、この絵によってマグリットの虜になった。絵の存在を知ったのは今から30年近く前のことで、朝日新聞の日曜版に連載されていた‘世界名画の旅’にこの絵が登場した。

このときは絵の所有者は個人となっていたが、2002年Bunkamuraで開かれた‘マグリット展’ではじめて本物と対面したときは宇都宮美となっていた。だから、こんないいマグリットが日本にあることがわけもなく嬉しくなった。どのくらいの値段で買い取ったのだろうか。

マグリットはシュルレアリスムの画家、でもダリとはちがって画面から感じるシュールさは重くない。そのため絵の中に意外なほど入っていける。‘大家族’というタイトルと海上に現れた巨大な鳥とはすぐにはつながらないが、白い雲が鳥の体とダブルイメージになっていることにはそれほど違和感はない。空に浮かぶ雲の形が普段見慣れたものに似ていることがよくあるから、そんなことを思って作品をみるとマグリットとは長くつきあえる。

マグリットについての情報をひとつ、すでに情報を入手されている方もいるかもしれないが、来年国立新美で‘マグリット展’(3/25~6/29)が開催される。監修は2011年に訪問したベルギー王立美(ブリュッセル)のなかにあるマグリット館なので、充実したラインナップになるのではと大いに期待している。

デルヴォー(1897~1994)は大変長生きをした画家、60歳をすぎてもその創作活動は旺盛で1963年には‘行列’を描き上げている。2年前府中美であった回顧展ではこの絵に最も魅せられた。遠近法によってつくられた広々とした空間の中央を上半身裸の女性たちがこちらに向かってくる。その横を列車が走っているが、これはあまり気にならず、圧倒的な存在感をもつ女性たちと右半分に描かれた太い木の幹に視線は釘付けになる。

アメリカの女流画家フランケンサーラー(1928~2011)はオキーフ同様気になる存在、でもこれまで体験した作品は片手くらいしかない。昨年はワシントンのナショナルギャラリーで一点遭遇した。カンバスに絵の具をにじませる手法が墨のたらし込みなどと似ているから抽象絵画なのにやさしい感じのする色面に親近感を覚える。‘湾’をみる機会があるといいのだが。

これに対し、ケリー(1923~)の‘青・緑・赤’は色を感じる楽しさが見た瞬間に得られる作品。大作なので目に飛び込んでくる緑の画面に体全体がつつみ込まれる感じ。絵画に期待するのは古典画でも抽象画でも色のもつ力、だから、大きな画面で濁りのない緑や青や赤をみると爽快な気分になる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.07

ズームアップ 名作の響き合い! 1962年

Img_0001     ウォーホルの‘ゴールド・マリリン・モンロー’(MoMA)

Img_0002     ローゼンクイストの‘マリリン・モンロー Ⅱ’(MoMA)

Img     シーガルの‘バスの運転手’(MoMA)

Img_0003     ルイスの‘第三要素’(MoMA)

美術館が所有する作品のなかには門外不出的な扱いを受けているものが必ずある。NYのMoMAの場合、ウォーホル(1928~1987)の‘ゴールド・マリリン・モンロー’もその一枚。昨年、ここを久しぶりに訪問しじっくりみた。

MoMAのモナリザと呼ばれているこのマリリンモンロー、背景に使われた黄金が1962年の8月4日に睡眠薬を飲みすぎて亡くなったマリリンモンローを神々しく浮き上がらせている。まさに黄金の肖像画。

そして、目に焼きつくのが緑のアイシャドー。じっさいにこんなアイシャドーをして街を歩く女性は仮想行列とかサーカスのピエロに変身するようなときくらいしか見ないのに、色彩感覚の豊かなウォーホルにかかるとこの化粧が見る者をワクワクさせる。

ローゼンクイスト(1933~)もウォーホル同様、モンローの死にすぐさま反応、‘マリリン・モンロー Ⅱ’を描いた。画面を4つに仕切ってそこに分解されたマリリンの顔の一部を2枚は逆さまにして張り付けた。

この逆さまの画像を組みこむのはローゼンクイストのお得意の手法。はじめは面食らうが、慣れてくると逆さでも落ち着いてみれるようになり、ダイナミックにトリミングされた雑誌や広告などの写真に好奇心を強く刺激される。

MoMAをはじめて訪れたのは24年前、そのころはシャガールの‘私と村’やピカソの‘アヴィニョンの娘たち’といった教科書に載っている作品の鑑賞に夢中、だからシーガル(1924~2000)のシの字も記憶に残らない。注意が向かっていないと見れど見えずになる。

昨年は前もって作った必見リストに‘バスの運転手’に入れ、この日常風景の一角を切り取った彫刻作品をぐるぐるまわってみた。運転手が目の前にいるようだった。

絵の具をカンバスにうすくしみこませて色の面をつくるルイス(1912~1962)の‘第三要素’にすごく興味があるが、まだ縁がない。にじみのある色彩世界は水墨画を見慣れているからいろいろと想像が膨らむ。互いに重なり合いながら垂直にのびる赤や緑などの色のコラボをいつかみてみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.06

菱田春草と下村観山!

Img_0003     菱田春草の‘落葉’(重文 左隻 1909年 永青文庫)

Img     下村観山の‘木の間の秋’(1907年 東近美)

Img_0001  俵屋宗理の‘楓図屏風’(18世紀後半 ファインバーグコレクション)

Img_0002     鈴木其一の‘夏秋山水図屏風’(左隻 19世紀中頃 根津美)

東近美で行われた菱田春草(1874~1911)の大回顧展で落葉のタイトルがついた作品が5点展示された。これが回顧展の醍醐味であり、主催者の春草に対するオマージュの強さを表している。

重文に指定されている永青文庫蔵をはじめ一点々はすでにみたものであるが、展覧会がこの風景画と同じ秋に実施されたことでいっそう‘落葉’への愛着が深まった。

5点を見比べてみるとやはり永青文庫にあるものに一番体が反応する。これは絵のなかにすっと入っていけるから。静けさにつつまれた雑木林を歩いているような気分になり、足は自然に枯れた葉っぱをながめながら落葉を踏みしめ奥のほうへむかっていく。

琳派のたらし込みの技法で描かれた太い幹が同じようにでてくるのが下村観山(1873~1930)の‘木の間の秋’、この絵の前ではどうしても立ち尽くしてしまう。ここは森の奥にある神秘の世界にむかう入口みたいな感じ、すすきの折れ曲がる姿に心が寄っていき、緑の葉の葉脈に用いられた金の装飾的な仕上げに一瞬はっとする。写実と装飾を見事に融合させる観山の画技はほかの画家はまねすることができない。

江戸時代に描かれた作品にも垂直に立つ幹が印象深いものがある。18世紀の後半に俵屋宗理(~1782?)によって描かれた‘楓図屏風’と鈴木其一(1796~1858)の代表作‘夏秋山水図屏風’。‘楓図屏風’は装飾性の強い琳派そのものの一枚、金地に映える真っ赤な楓が心を打つ。

‘夏秋山水図屏風’は大変魅了されている作品。奥行きを感じさせる木々の配置がじつに巧妙で広々とした空間のなかを青々とした川の水が勢いよく流れている。この空間構成は春草の‘落葉’と相通じるものがある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.05

もっと見たい春草の名画!

Img_0001          ‘月下の雁’(部分 1907年)

Img_0003     ‘帰舟’(1906年 播磨屋本店)

Img_0002     ‘六歌仙’(1899年 永青文庫)

Img      ‘砧’(部分 1904年 茨城県近美)

今年開かれる日本美術の展覧会で最も期待していた菱田春草展が11/3に終了した。思い入れの強い画家の回顧展にめぐりあえる喜びというのは格別なものがある。開幕した9/23の翌日に出かけて以来、毎日のように図録をながめ春草の作品のすらしさを腹の底から噛み締めている。

春草に限らず人気の作家の回顧展が開かれる場合、作品がみられる美術館の中だけでなく、展覧会に連動して美術雑誌で特集が組まれたりTVの美術番組で紹介されるので、作家の歩んできた創作活動や名画についての情報量は相当増えることになる。

だから、回顧展というのは普段気になっていいる作家に最接近する絶好のチャンス、やはり仕事と同じで趣味や道楽の世界でも真に楽しもうと思うと選択と集中が大事。春草展が開催されている間、春草の目指した新しい日本画や技巧についての理解が飛躍的に増大したのは二つの美術番組のお蔭。

美の巨人たちと日曜美術館で作品の再現を試みてくれたのが東芸大の荒井経さん。今美術番組ではこうした専門家による作品の再現が以前に比べるとすごく増えてきており番組の魅了度を上げているが、今回は特別目に力が入った。
 
‘黒い猫’の黒さの秘密、そして近年の科学調査で明らかになったという‘賢首菩薩’に使われた西洋の絵の具の話、再現の実演では菩薩の袈裟に塗られた合成ウルトラマリンブルーの上にカドミウムイエローに朱を混ぜてつくったオレンジで点をつけていくところが目に焼きついた。

展覧会ではいくつもあった追っかけ作品に会うことができ、そしてTV番組では春草の卓越した色彩感覚を表現する技を解明してくれた。こうした体験は次に狙う作品との対面を充実したものにしてくれるにちがいない。

その見たい度の強い作品はここにあげた4点。
今回‘月下の雁’とよく似た絵があったが、よくみるとちがっていた。雁が大きく描かれたこの絵は個人の所蔵、はたしてみる機会があるか。播磨屋本店の大観の作品はいろいろみたが、春草の‘帰舟’はまだ縁がない。なかなかよさそう。

永青文庫にある‘六歌仙’も一度はみてみたい作品。‘落葉’があり‘黒き猫’(ともに重文)があり、これも永青文庫のコレクション。声がでないくらいすごい。そして、一番みれる可能性が高いのが‘砧’、茨城県近美は3回訪問したがいずれも姿を現してくれなかった。次は夢を叶えたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.04

ホドラーとクリムト、山口蓬春!

Img_0001     ホドラーの‘選ばれし民’(1893~94 ベルン美)

Img  クリムトの‘ベートーベン・フリーズ 歓喜’(1902年 分離派館)

Img_0002     ホドラーの‘リズミカルな形’(1908年)

Img_0004     山口蓬春の‘山湖’(1947年 松岡美)

ホドラー(1853~1918)という画家のことを思うときはすぐ二人の画家も顔を出す。一人はウイーン世紀末の画家クリムト(1862~1918)、もう一人は日本画の山口蓬春(1893~1971)。

クリムトが1902年に描いた‘ベートーベン・フリーズ’には明らかにホドラーの平行主義(パラレリズム)の影響がみられるが、この話を知ったのは10年前鎌倉にある行きつけの古本屋で手に入れた‘クリムト’(ネーベハイ著 美術公論社 1985年)という本。

1969年に上梓されたこの本にホドラーの代表作‘選ばれし民’が掲載されており、ホドラーとウイーン分離派の密接な関係が詳しく書かれている。この絵は1901年の第12回分離派展に‘春’とともに出品された。この子どもを半円をつくるようにして囲む6人の天使に魅了され続けているがまだ縁がない。オルセーであった回顧展(2008年)では残念なことに展示されなかった。

クリムトの‘ベートーベン・フリーズ’の最後の場面が第9に呼応する‘歓喜’、抱き合う男女のむこうではパラレリズムで描かれた天使たちが‘喜びの歌’を大合唱している。まさにホドラーとクリムトは200%コラボレーション。

ホドラーの作品は1904年の第19回分離派展で大々的に紹介された。‘選ばれし民’、‘夜’、‘真理’など31点が一挙に公開されホドラーが国際的な評価を受ける突破口になった。

ホドラーと響き合ったもう一人の画家山口蓬春(1893~1971)、代表作である‘山湖’もみればみるほどホドラーの‘リズミカルな形’などの風景画が重なってくる。この絵が描かれたのは終戦の2年後の1947年、蓬春は1940年頃からホドラーに関心を抱いていた。

描かれた場所は初夏の裏磐梯の五色沼、蓬春はホドラーの作風に刺激をうけ明るい色彩でモダンな風景画に仕上げた。今年はホドラーの作品を沢山みたから、‘山湖’にもまた会いたくなった。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014.11.03

満足度の高い‘青磁のいま’展!

Img     岡部嶺男の‘粉青瓷大砧’(1969年)

Img_0001     深見陶治の‘瞬Ⅱ’(1998年 茨城県陶芸美)

Img_0005     川瀬忍の‘青磁花入 銘参里’(2014年)

Img_0004     神農巌の‘堆磁線文壺’(2012年)

東近美で菱田春草展の後期をみたあと、ここから歩いて5分くらいのところにある工芸館へ急いだ。遅い出動となったが、現在ここでお楽しみの‘青磁のいま’(9/13~11/24)が行われている。

工芸館へ来るのは本当に久しぶり、前回みた企画展が何だったかすぐ思い出せない。この美術館で行われる展覧会の情報にノータッチというわけではないが、ここ数年は足を運んでいない。だが、今回のテーマは青磁、これは見逃せない。

関心があるのは‘いま’のほう。作品の数は全部で43点あるが、前半の南宋時代に焼かれた瓶やお椀はお馴染みのものだからさらっとみて、これまであまり縁のなかった作家の作品を中心に楽しんだ。知らない作家も何人かいる。

10/11からホテルオークラの隣にある智美で回顧展が行われている岡部嶺男(1919~1990)、何年か前に工芸館で大規模な回顧展があった。そのとき気にはなっていたがパスした。やきものを趣味でやっている友人がこれをみていて‘岡部はスゴイ’と高く評価していた。そのことがあるので今は智美で岡部をみるぞ!という気になっている。こういうときはえてして情報の束が太くなるもの、ここでも7点並んでいた。

お気に入りは複雑な貫入と下の膨らんだ形が目を惹く‘粉青瓷大砧’、これが岡部の青瓷か、という感じだが、友人の鑑賞談が腹にすとんと落ちた。智美での第2ラウンドも期待がもてそう。

深見陶治(1944~)は以前から気になる陶芸家、茨城県陶芸美でこの‘瞬Ⅱ’をみたことがある。先がとがった鋭いフォルムとうすい青緑が心をとらえてはなさない。はじめてみたとき瞬間的に頭をよぎったのはアメリカの戦闘爆撃機ステルス、だから、深見の作品はステルスのイメージがつきまとう。4点のうち一つは宇宙観測用の大きなパラボナアンテナのような形をしていた。

刺激的な作家が2人いた。川瀬忍(1950~)と神農巌(1957~)、川瀬(6点)のほうは名前はインプットされており1点か2点みた記憶があるが、まあ知らないのと同然。そして、神農(5点)については名前すら知らなかった。とくに心を揺さぶられた‘青磁花入 銘参里’と‘堆磁線文壺’はどちらも格式のあるブランドホテルのそこかしこに飾ってありそうなすばらしい作品。

2011年智美であった川瀬忍展を迷ったあげくパスしたことが今となれば悔やまれる。川瀬忍にはもっと注意を払うべきだった。そして、また魅力いっぱいの陶芸家が現れた。板谷波山の作品を彷彿とさせる神農の壺。器面にゆるやかに刻まれた線文がなんともやさしく優雅なこと、これから神農巌を追っかけることにした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014.11.02

大入りの‘ボストン美浮世絵名品展 北斎’!

Img_0001     ‘吉原遊郭の景’(部分 1811年)

Img     ‘菖蒲に鯉’(1808~13年)

Img_0002     ‘鵤 白粉花’(いかる おしろいのはな 1834年)

Img_0003     ‘稚遊挙三番続之内 石’(1823年)

ボストン美の浮世絵コレクション展はこれまで2008年(江戸東博)と2011年(山種美、千葉市美)にあった。3回目は昨年末から名古屋、神戸、北九州で順次開催され、9/13からは上野の森美で行われている(11/9まで)。

10/23の美術館巡りのとき、国立新美から上野の森美へ移動しまず北斎をさらっとみようと思っていた。ところが、美術館に着くと大勢の人が列に並んでおり入館まで50分待ちの表示、ええー、こんなに待つの!これはまったく想定外、ここで2倍の時間をとられると夜の宴会までに予定の美術館へいけるかどうか心配になってきた。

待ち時間が長くても摺りのいい浮世絵が期待できるボストンのコレクションをみないわけにはいかない。なかに入ると今回展示されている140点のうち、これまでみた覚えのないものに鑑賞エネルギーを注ぎしゃきしゃきと進むことにした。

流石にボストンの浮世絵コレクションは質が高く、はじめてお目にかかるものがところどころで目の前に現れる。まず、目を見張らされたのが三枚続きのワイド画面に描かれた‘吉原遊郭の景’、こういう沢山女性たちを描いたものというと清長や歌麿が相場と決まっているが、北斎もしっかり描いていた。大収穫。

北斎の描く鯉の絵に大変魅了されているので、団扇に描かれた‘菖蒲に鯉’の前ではいい気分だった。世界でこの一枚しかないそうだから幸運なめぐりあわせになった。鯉はもう一枚あるが、みてのお楽しみ!

今回一番長くみていたのは花鳥画シリーズ、全部で16点でている。これほど多くみたのは2005年の北斎展(東博)以来のこと。一つの美術館でこれほど揃えられるのだからボストン美というのは本当にスゴイ。鳥でお気に入りなのが‘鵤 白粉花’(いかる おしろいのはな)、以前これを名古屋ボストン美でみてころっと参ったから再会できたことを腹の底から喜んでいる。色の鮮やかさが本当にすばらしい。

北斎の楽しみのひとつが摺物、最後のコーナーにずらずらと飾ってあったので目をこらしてみた。注目は金箔や銀箔が使われた豪華な摺物3点、初見の‘五歌仙’、‘朝比奈と月小夜’、そして一度みたことのある‘稚遊挙三番之内 石’。絵の前ではかがみこんで下からながめ光る金銀箔を確認した。こんな状態のいい摺物を日本で味わえるのははじめてかもしれない。ちょっと興奮した。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2014.11.01

人気を集める春草の‘黒き猫’!

Img_0001          ‘黒き猫’(重文 1910年 永青文庫)

Img_0002        ‘躑躅双鳩’(1901年 福井県美)

Img_0003_2           ‘躑躅’(1906年 遠山記念館)

Img     ‘四季山水’(部分 1910年 東近美)

東近美で開催中の‘菱田春草展’は11/3で終了となるが、後期にでた22点をしっかり目のなかに入れてきた。会場は大入り満員、定番の美術番組、日曜美術館と美の巨人たちが同じタイミングで取り上げたことも展覧会に対する関心が高まった一因かもしれない。

美の巨人たちが今日の一枚としたのは菱田春草(1874~1911)が亡くなる1年前に描いた‘黒き猫’、春草がこの黒猫のふわふわした毛をどうやって描いたのかを再現していた、これが大変興味深かった。だから、絵の前では墨に胡粉を混ぜたことや裏彩色を施していたことを思い浮かべながらみていた。この番組は視聴率が高いから隣にいた人も頭のなかは同じかなと思ったりした。

春草の画集で‘躑躅双鳩’の存在を知ったのはずいぶん前のことだが、ようやく本物をみることができた。鶴や鴛鴦の絵はすぐあれこれ思い出すが、鳩を描いたものは意外にでてこない。この鳩はとても優しそうな感じですごく惹かれる。

春草は天性のカラリストだなと思わせる作品が3点ある。前期にでた‘春丘’と後期出品の‘躑躅’、そして通期に展示されている‘四季山水’。じつはもう一点色の綺麗さに惚れ込んでいる絵がある。それは熱海のMOA美が所蔵する‘富士の巻狩’(1902年)、残念ながら今回でてこなかった。

じつはMOAは春草を3点もっていて1901年に描かれた‘群鷺’もびっくりするほどの名作。MOAは春草に限らず、大観でも松園でも清方でも回顧展にほとんど貸し出さない。だから、現地でみるほかないのだがその名作揃いのコレクションにはほとほと感服させられる。

東近美の常設展示でよくお目にかかる‘四季山水’、この絵をみるたびに春草がもっと長く生きていたら、この絵のような明るい色合いの風景画が沢山生まれただろうなと思ってしまう。そしてこの傑作はいつも重文としてみている。本来なら重文にしないとおかしいのだがそうなってないのは春草はもう4点が重文指定になっており、ほかの画家のことを配慮しているから。やはり、春草は誰もが認める天才画家。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年10月 | トップページ | 2014年12月 »