ズームアップ 名作の響き合い! 1954年
ニューマンの‘最初の光’(ヒューストン メニル・コレクション)
マグリット(1898~1967)は‘光の帝国’を全部で22点描いている。これはブリュッセルにあるベルギー王立美が所蔵する最初に描かれたもの。2002年Bunakamuraで開催された回顧展にでてきたのは1961年に制作された別ヴァージョンで、現在は王立美に寄託されている。
この作品は一見するとシュールさを感じない。空が昼で、屋敷と前の池は夜の情景、ここには昼と夜が一枚の画面の中に同居しているが、夕暮れ時にはこういう光景に出くわすことがあるから、すっと絵に入っていける。この絵をみるといつも高速道路で早めにライトをつけて走るクルマを思う浮かべる。
4月東京都美でみたバルテュス(1908~2001)の絵の余韻がまだ続いている。日本でバルテュスの回顧展に遭遇することは全然予想してなかったので、美術の本に載っている作品をいくつもみられたことは後々までいい思い出になる。夫人がびっくりするほど美しい日本人というのもバルテュスに関心を抱かせる一因。
満足度200%の展覧会だったが、この絵があればもう最高だったかもしれない。それは‘コメルス・サンタンドレ小路’、なんといってもこれがバルテュスの最高傑作。個人の所蔵なので、本物をみることはまずないだろうが、夢だけはもち続けたい。
日本の美術館でヘンリー・ムーア(1898~1986)の抽象彫刻をみたのはMOA、箱根 彫刻の森美、,国立国際美、大原美、松岡美など11か所。でも、強く印象に残っているのは比較的大きなMOAの家族の彫刻くらい。ほかはほとんどが小さな作品、だからどうしてもムーアをみた!という気にならない。
これまでムーアを全身で感じたのは1点だけ、ローマにある国立近代美でお目にかかった‘リクライニングの形’、横が2m10㎝ある大作なのでムーアの特徴である穴の開いた生命感あふれる造形を夢中になってみた。これから訪問する海外の美術館で楽しみにしているのはイサム・ノグチとムーアの彫刻。新たな刺激に出会いたい。
ヒューストンのメニル・コレクションは現代アートの作品が相当数ある感じ。マグリットやエルンスト、ウォーホル、そして抽象表現主義のニューマン、4年前川村記念美でニューマン(1905~1970)に回顧展があり、‘最初の光’がやって来た。黒の色面と両サイドを縁どる薄緑のマッチングが見事に決まっている。黒と薄緑の相性がとてもよく深遠で上品な香りを漂わせている。
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