ズームアップ 名作の響き合い! 1953年
展覧会に足を運んでいると妙に惹かれる作品に出くわしそれを描いた画家にもっと近づきたいと思うことがよくある。1997年東京都現美であったポンピドーコレクション展で遭遇したド・スタール(1914~1955)もそんな画家。
心をとらえたのは力強い色使いと半分具象、半分抽象の画面構成。1955年に自殺したスタールは1952年からそれまでの幾何学的な抽象画をやめて具象へ戻っていく。モチーフはサッカーや音楽、船など、‘楽士たち’は目の前でにぎやかな音楽が繰り広げられる陽気な作品。とても印象的なのは画面の多くを占める赤。これで楽器を吹いている楽士の黒のズボンがひきしまり粋な感じがでている。
ジャン・コクトー(1889~1963)の回顧展が2005年の日本橋の三越であった。それまでまったく縁のなかったアーチストだったが名前だけは知っていた。展示されていたのは絵画のほか彫刻、陶芸、ジュエりー、なんでもやる芸術家だった。このほかコクトーには詩人、脚本家、演出家といくつもの顔がある。
絵画はピカソの影響を受けていることは明白だが、一点この感覚はピカソにはないなと思わせるものがあった。黒をバックに描かれた‘眠る女’、造形はピカソのキュビスムだが、色彩の使い方はマティスの人物画を連想させる。
昨年東京近美でベーコン展があった。アップはしなかったが足は運んだ。ベーコン(1909~1992)は今、クリスティーの主催するオークションではびっくりするような高値がつくビッグネーム、だから多くの作品を体験するとひょっとして気にいるものがあるかもしれない、そんなことを心に抱きながらみた。しかし、やっぱりダメだった。
人物表現が生理的に受けつけない。ホラー映画をみているようで顔が小さく一つ目小僧みたいな生き物に襲われる感じで長くはみたくないというのは正直なところ。そんなイメージのなかで2点だけはOK.、ゴッホを描いたものとベラスケスの描いた法皇インノケンティウス10世の肖像をベーコン流にデフォルメした‘ある肖像のための習作 7番’、大きく口をあけた法皇、これくらいの怖さだとまあ乗り切れる。
アルプ(1886~1966)のもこっとしてやわらかい造形が特徴の彫刻作品に魅了されている。この‘雲の羊飼い’をみているとときどきニュースで取り上げられる女性の下半身をイメージさせる大根がダブってくる。
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