ズームアップ 名画の響き合い! 1951年
ダリの‘十字架の聖ヨハネのキリスト’(グラスゴー セント・マンゴ美)
ブローネルの‘衝撃の意識’(ヴェネツィア グッゲンハイム美)
ダリ(1904~1989)が1940年代の後半から1950年代にかけて制作した宗教画のなかでとても惹きつけられる作品が3点ある。これまで幸運にもみることができた‘超立方体的肉体(磔刑)’(1954年 メトロポリタン美)、‘最後の晩餐の秘蹟’(1955年 ワシントンナショナルギャラリー)とまだ縁がない‘十字架の聖ヨハネのキリスト’。
これらはシュルレアリスムのイメージはまったく薄れ現代感覚の宗教画、そのため作品とはしっかり向かいあえる。‘十字架の聖ヨハネのキリスト’を所蔵しているのはグラスゴーのセント・マンゴ宗教生活・美術博物館。イギリスから離脱しないことになったスコットランドで訪問したことのあるのはエディンバラだけ、ダリのこのユニークな視点から描かれた磔刑図をみるためグラスゴーへもいつか行ってみたい。
現代リアリズムのビッグネーム、ルシアン・フロイド(1922~)の作品を体験したのはほんの数点。美術本に載っているものを含めても作品情報は片手くらいしかない。そのなかにはこんなところまでリアルに描くのかい、という人物描写があるので、もし回顧展に遭遇したら何度も心がザワザワするのではと余計な心配をしてしまう。
その精緻な描写が女性の不安定な心持ちを感じさせる‘女と白い犬’は東京都美であった展覧会でお目にかかったが、ずっと引っかかっている。それは人物描写の強い正面性のため、モデルをつとめる妻をソファーの右側に寄せて座らせ、正面から描く構図が印象的、足が真横に向くことは実際には痛くてありえないが、それが変な感じに思えないところがこの絵の魔力。
ブローネル(1903~1966)の‘衝撃の意識’にでてくる人間や鳥の造形はインカ帝国とかマヤ文明の壁画に描かれたものをすぐ連想させるが、じつはエジプト絵画にでてくるヒエログリフやモチーフを参考にしている。人物の腰あたりにピラミッドが二つみえる。
昨年MoMAに足を運んだとき期待していたニューマン(1905~1970)の‘英雄的にして崇高なる人’と対面した。川村記念美にかつてあった‘アンナの光’同様、大きな作品で力強い赤の色面に大きく包み込まれる感じだった。これまでみたニューマンではこれが最もいい。
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コメント
いづつやさんは、ダリがお好きなんですね。私は、気味の悪い作品(すみません!)は苦手ですが、『十字架の聖ヨハネのキリスト』のような絵は、素晴らしいと思います。視点を二つとって、シュールなところもいいですね!
ダリは、ベラスケスやスルバランの伝統を確かに引きついだ磔刑図を描いているのですね。ダリは、カタロニアの人でしたっけ? スコットランド同様、カタロニアも独立の運動がありますが、生きていたらダリはどう思うのでしょうか。
ブローネルの絵は初めて見ましたが、すぐエジプト美術を連想しました。いづつやさんの解説を読んで、やはり!と思いました。
投稿: ケンスケ | 2014.09.20 11:22
to ケンスケさん
ダリとのつきあいはミロやマグリット同様一生
続けるつもりです。いつも感心するのはダリの
緻密な筆使い、これがあるから魅力あるシュル
リアリズム絵画になります。下手くその画家の
シュールな絵はとてもみられません。
ダリはカタルーニャ人ですから独立は当然と思っ
ているでしょうね。フィゲラスにあるダリ劇場
美術館を訪れることを夢見てます。
投稿: いづつや | 2014.09.20 17:12
いづつやさん、お帰りなさいませ。
何時も思う単純な疑問ですが、いづつやさんは、旅行に出かけられる時にスマホなどは、持って行かれないのですか?
まあ、僕も入院中、スマホ使わなかったので、言えた義理でないのですが。
さて、ようやく、オルセー美術館展行ってきました。
いや、やはり、オルセー素晴らしい!
こんなものが日本に居ながら観られるのですから。
けど、図録の新しくなったオルセーの写真を観て、やはり、現地に行きたいなぁと。
投稿: oki | 2014.09.20 21:09
to okiさん
家をあけるときモバイルは持っていきますが、緊急
のときのためです。
オルセーは予想以上にいいラインナップでびっくり
しました。ロートレック、ゴッホ、ゴーギャンはあ
りませんが、マネ、モネ、ドガ、セザンヌ、シスレー
、ピサロらのいい絵がずらずらとありましたね。
今、まわりの美術好きにオルセー展をおおいにPR
してます。
投稿: いづつや | 2014.09.21 00:03