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2014.08.31

ズームアップ 名画の響き合い! 1941年

Img_0003     ルオーの‘貴族的なピエロ’(アサヒビール)

Img     ミロの‘美しい鳥’(NY MoMA)

Img_0002     ピカビアの‘ブルドッグと女たち’(パリ ポンピドー)

Img_0001     マン・レイの‘女とその魚’(宮崎県美)

パリがドイツ軍に占領されるのは1940年、パリにとどまって制作活動を続ける芸術家もいたが、多くのシュルレアリストたちはパリを離れるかアメリカへ亡命した。

重苦しい生活を強いられるなか、ルオー(1871~1958)の描いた‘貴族的なピエロ’は名前のとおり天使のようなピエロ、卵形の顔にアーモンド形の大きな目、この端正な顔立ちが心を打つ。ルオーの作品は2000点以上にもおよぶがその3分の1がサーカスを描いたもの。いろいろなタイプのピエロをみたが、このホワイトピエロはお気に入りの一枚。

ミロ(1879~1983)は1940年1月から1942年の9月にかけてバルセロナやマジョルカ島へ逃れ、その間28点からなる連作‘星座’を制作した。その一枚が‘恋人たちに未知の世界を明かす一羽の美しい鳥’、ミロの大ファンとしてはこのシリーズをみないとあの世へ行けないのだが、今のところ幸運はまだやって来ない。

星と音符と目玉が画面にびっちり描きこまれた連作のなかでみたくてしょうがないのが5点ほどある。どれも親しみのもてるファンタジックな世界だが、‘美しい鳥’の印象を決定づけているのは右下のライオン?どうしてここにライオン?星座とライオンがどうつながるのか、シュール的なナゾはずっと解けないまま。

ピカビア(1879~1953)の享楽的な雰囲気につつまれた‘ブルドッグと女たち’はマリリン・モンローのイメージを彷彿とさせる。ピカビアは写真雑誌に載った女性のピンナップ写真を用いてこの絵を制作した。女性の引き立て役のブルドッグも同じく写真からの流用。こういう手法は後にポップアートのウェッセルマンの作品に受け継がれていく。

マン・レイ(1890~1996)、ダリは1940年にアメリカへ渡った。‘女とその魚’は裸婦と魚の親和性がいいので絵のなかにすんなり入っていける。マン・レイの真骨頂は写真にあることは確かだが、そのシュールな気分は絵にも存分に発揮されている。

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2014.08.30

わくわくワールドツアー! ヨセミテ渓谷

Img_0002

Img_0001    世界最大の一枚岩‘エル・キャピタン’

Img       ‘ファイアー・フォール’

今週の月曜日、BSプレミアムで興味深い番組に遭遇した。‘体感!グレートネイチャー 魅惑の大渓谷ヨセミテ’、たまたまチャンネルが合ってみたので前半は見逃したが、絶景が次から次にでてきたのではじめからみればよかったと思った。

次回アメリカを旅行するときは絵画鑑賞からは離れてアメリカの大自然を楽しむ旅にすることは決まっている。場所は多少のダブりはあるが、まだみていないアンテロープキャニオン、ヨセミテ国立公園が含まれている定番の西海岸の観光スポット。

ヨセミテ国立公園があるのはカリフォルニア州、サンフランシスコから東へ270㎞くらいいったところ。BS朝日で放送されている人気番組‘BBC地球伝説’は地質学関連のものが取り上げられるときは熱心にみているので、U字谷のヨセミテ渓谷が氷河が硬い岩を削ってできたことは一応頭のなかに入っている。

この渓谷を訪れたときまずみたいのは高さが1000mもあるという崖‘エル・キャピタン’、上までほとんど垂直、ここはロッククライミングの名所、高い技術と体力をもったトップクラスのクライマーがこの世界一登るのが難しい崖に挑んでいるという。

‘グレートネイチャー’のハイライトは流れ落ちる滝が真っ赤にそまる‘ファイアーフォール’、これは貴重な映像だった。案内役の現地の男性が‘われわれは魔法の時間のなかにいる、今はオレンジ色だが、最後の1,2分は赤くなるかも’といっていたが、太陽が沈む直前にその言葉通り、まるで溶岩が流れるような光景が現れた!この‘ファイアーフォール’がみえたのはわずか1分間。TVでこんなに感動したのは久しぶり。

これまでヨセミテ渓谷についてはあまり情報がなく、どこをみるのかな?という感じだった。この番組をみたの今はヨセミテへの期待値が一気に高くなった。

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2014.08.29

ズームアップ 名画の響き合い! 1940年

Img_0003     マティスの‘ルーマニアのブラウス’(パリ ポンピドー)

Img_0001     カンディンスキーの‘空色’(パリ ポンピドー)

Img_0004   エルンストの‘花嫁の着付’(ヴェネツィア グッゲンハイム美)

Img     ホッパーの‘ガソリンスタンド’(NY MoMA)

マティス(1869~1954)の絵をいくつもみたという思いが強いのはパリのポンピドーとサンクトペテルブルグのエルミタージュ、昨年横浜であったプーシキン美にもシチューキンの蒐集したいい絵がでていた。

ポンピドーにある‘ルーマニアのブラウス’は人物画のなかではベスト3にいれている。人体を単純化することにかけてはマティスは抜群の才能を発揮する。展覧会にはときどき素描が過剰すぎるほど多くあり間のびすることがあるが、マティスについてはそういう感情が起きず油彩と同じ感覚で見入ってしまう。のびやかな線描が女性のはつらつとした姿をいっそう魅力的にしている‘ルーマニアのブラウス’、まさに傑作中の傑作。

ミロのひょうきんな絵を連想させるのがカンディンスキー(1866~1944)の‘空色’、パリ時代のカンディンスキーは想像力が幾何学的なフォルムからやわらかく丸みをおびたものにも広がり、より自由で楽しい世界を生み出した。この絵はミトコンドリアやアメーバなどの微生物たちのお祭りに立ち会っているみたい。

ヴェネツィアにあるグッゲンハイム美へは2度でかけた。ここのコレクションで気になる絵が心のなかを占領しても、イタリアは遠いからすぐ本物がみれるわけではない。エルンスト(1891~1976)の‘花嫁の着付’を必見リストに入れたのは2010年2度目の訪問のとき。真っ赤なマントに身をつつんだ鳥女とその傍らで槍を手にして仕えるボデイガー役の鳥男、この緊張感の漂う画面を息を吞んでみていた。これは怖ーいシュール画。

ホッパー(1882~1967)の‘ガソリンスタンド’はアメリカ映画でよくみかける光景。でも、この雰囲気はとても物寂しい。給油するクルマはいないので余計にそう感じる。どういうわけか、この絵をみると映画‘チャイナタウン’を思い出す。

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2014.08.28

ズームアップ 名画の響き合い! 1939年

Img     マグリットの‘釘づけにされた時間’(シカゴ美)

Img_0004     デルヴォーの‘ピグマリオン’(ベルギー王立美)

Img_0002     レジェの‘二羽のオウム’(パリ ポンピドー)

Img_0001     ブローネルの‘アレキサンドリアのヘロン’(パリ ポンピドー)

マグリット(1898~1967)の回顧展を日本ではじめてみたのは今‘進化するだまし絵展’が行われているBunkamurade、今から12年前のことで以来このシュルレアリストの作品に魅了され続けている。

これまでみた作品の数を正確に勘定したことはないが、だいぶたまってきたことは確か。何年か前たまたま立ち寄った古本屋で一冊のマグリット本が目にとまった。1988年にも東京近美でも回顧展が開かれたようでその図録だった。貴重な本だからすぐ購入した。

マグリットの意表を突く対象の組み合わせは数限りなく生まれてくる感じ。どれもとても変だけどこういう並べ方もありか、とその意味するところを十分消化できないのにどこかわかったような気分でみてしまう。シカゴ美でみた‘釘づけられた時間’はおもしろい絵。なんと、暖炉の中から機関車が煙をあげて飛び出してくる。列車が飛行機のように部屋の中を移動するのだから、まるで子供のお遊びにつきあっているよう。

マグリットとほぼ同い年のデルヴォー(1897~1994)は97歳まで生きた。長寿の家系なのだろうか。待望の回顧展が2年前府中市美であったので、鑑賞作品の数も増えた。でも、まだまだ満足するレベルにはとどいてない。
シカゴ美で見逃した‘人魚の村’とかなかなか姿を現してくれないテートモダンの‘レダ’が当面のターゲット。

‘ピグマリオン’はこれまで一番デルヴォーを満喫したベルギー王立美(ブルッセル)でお目にかかったもの。現在は展示の仕方が異なっているが、以前はマグリットとデルヴォーの専用の部屋があり、いい絵がずらずらっと飾ってあった。そのなかで長くみていたのがこの‘ピグマリオン’、マザコンだったデルヴォーを豊満な体をしたヴィーナスがじっとみつめている。

レジェ(1881~1955)のお気に入りはともにパリのポンピドーにある‘余暇’と‘二羽のオウム’、日本にやって来たことのある‘余暇’にはハトが登場するからレジェは鳥が好きだったのかもしれない。‘二羽のオウム’は縦4m、横4.8mもある大きな絵、絵画の力に圧倒される。

ルーマニア人シュルレアリスト、ブローネル(1903~1966)の作品をみる機会はなかなかないが、2011年にあったシュルレアリスム展(国立新美)に19点展示された。手や足など体の一部を異様に変容させるのがブローネルの人物描写の特徴。ヘロンは1世紀ころアレキサンドリアで活躍した数学者、発明家。ヘロンは髪を左右に長くのばした女の魔術にかかって肉体が溶かされている。

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2014.08.27

納得の‘進化するだまし絵展’!

Img_0002     アンチンボルドの‘司書’(1566年 スコークロステル城)

Img ダリの‘海辺に現れた顔と果物鉢’(1938年 ワズワース・アテネウム美)

Img_0004     マグリットの‘白紙委任状’(1965年 ワシントン国立美)

Img_0001     ヒューズの‘生き写し’(2013年)

Bunkamuraで開催中の‘進化するだまし絵展’(8/9~10/5)を楽しんだ。世田谷美のジャポニスム展は2点買いの展覧会で、こちらのだまし絵展は1点買い、お目当ての作品が1,2点しかなくてもそれが特別魅せられるものであれば俄然でかける、美術鑑賞は量より質を重視するのが昔からの基本スタンス。

だまし絵展での期待はただ一点、アンチンボルド(1526~1593)が1566年ころ描いた‘司書’。多くの本を使って人間の上半身を形づくったこのへんてこな絵の存在を知ったのはTASCHENのアートシリーズを手にいれたとき。鬼才アンチンボルトには大いに関心があるから、この本に載っているものは1点でも多く対面したい。

しかし、この作品ははなから諦めざるをえない。なにしろ絵があるのはスウェーデンのスコークロステルというお城。どう考えても行けない。前回のだまし絵展に登場した‘ルドルフ2世’もこの城の所蔵だったが、Bunkamuraが抜群の企画力を発揮してくれ日本での鑑賞が実現した。そして、思った。‘2度目の奇跡は起こらないな、司書は本だけで楽しもう’

ところが、奇跡がまた起こった。目の前に本を抱えた‘司書’がいる。この絵で200%感心するのが頭の髪に開いた本を用いていること。一頁々が髪らしくみえるから不思議。また、下の付箋を手の指にみせているところもおもしろい。

ここでも大きなおまけがあった。アンチンボルドがなんともう1点でている。TASCHENに収録されてない‘ソムリエ’、大阪市がこの作品を手に入れていたとは!美術館は何年経ってもできないのに作品だけはせっせと買い込んでいる。

作品の前で思わず声がでたのがダリ(1904~1989)の‘海辺に現れた顔と果物鉢’、これは驚いた。Bunkamuraは本当にいい美術館。この絵はダリの追っかけ画リストに入れているが、本物に出会う可能性は極めて小さい。そんな絵がダリの回顧展でなくだまし絵に現れた。ミューズに感謝、真ん中の顔と右上の犬はすぐわかったが、左のうさぎは何度見てもダメだった。

マグリット(1898~1967)は3点あったが、‘白紙委任状’が再登場。これはお気に入りの作品。木々の間を女性を乗せた馬が走っているが、目の錯覚でこういう風にみえることがあるかもしれない。マグリットのシュールな絵はダリの夢の世界とは違ってこういう錯覚から生まれてくることも多い。

今回不思議でならなかったのがヒューズ(1939~)の‘生き写し’、どんなナゾかはみてのお楽しみ!

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2014.08.26

ジャポニスム展のビッグなおまけ!

Img_0001     モネの‘積みわら(日没)’(1891年)

Img     モネの‘睡蓮’(1905年)

Img_0003     マネの‘猫の逢引’(1868年)

Img_0002     ヴァロットンの‘にわか雨’(1894年)

世田谷美で行われているジャポニスム展は9月15日まで。あと2週間ちょっとなのでこれから入館者はぐっと増えるのではなかろうか。最後の3連休は大賑わいとなりそう。

ジャポニスムの名前がついた展覧会をみるのは二度目。最初の体験は1988年に西洋美で開かれたもの。これはパリのグラン・パレと西洋美で行われた超一級の展覧会だった。このときやって来たのが今国立新美のオルセー展に展示してあるマネの‘笛を吹く少年’。

ワンラウンドをこなしたジャポニスムなので、ボストン美のコレクションを軸にしたジャポニスム展はちょっと余裕をもってみられる。お目当てのモネの‘ラ・ジャポネーズ’とゴッホの‘ルーラン夫人’をみたあとはさらさらとみていたら、最後のコーナーにすごい絵が並んでいた。

モネ(1840~1926)の‘積みわら(日没)’,‘睡蓮の池’、そして‘睡蓮’、ええー、これが来ていたの!それならそうと早くいってよ、という感じ。ボストン美はモネのいい絵をたくさんもっているが、この3つはトップランクの作品。

連作‘積みわら’のなかで最も光に輝いているのがこのボストンにあるもの。はじめてこの燃え立つような積みわらをみたときは体が震えた。溶岩を思わせるような赤と背景の黄金の輝きにもみえる陽光の黄色。モネは日没の積みわらに大感激したにちがいない。この絵とここで会えるとは思ってもいなかったから、一気にテンションが上がった。

‘睡蓮’も‘積みわら’同様200%心を奪われている。モネが数多く描いた睡蓮には太鼓橋を入れて描いた‘睡蓮の池’と池に咲く睡蓮だけを描いた‘睡蓮’があるが、数では後者のほうが多い。ボストンにあるこの‘睡蓮’はオランジュリー美蔵の大作睡蓮などとともにベスト5に入れているほど思い入れの強い作品。日本ではこれまでBunkamuraと名古屋ボストン美でみる機会があった。

この展覧会は中間と最後の部屋に傑作が配置されていた。まさに‘ピーク&エンドの法則’を使っている。ほかに足がとまったプラスアルファは2点の版画。思わず笑ってしまったマネ(1832~1883)の‘猫の逢引’と今が旬のヴァロットン(1865~1925)の‘にわか雨’。ますますヴァロットンに嵌っていく。

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2014.08.25

ボストン美 華麗なるジャポニスム展!

Img     モネの‘ラ・ジャポネーズ’(1876年)

Img_0002     ゴッホの‘ルーラン夫人’(1889年)

Img_0001     ムンクの‘夏の夜の夢(声)’(1893年)

Img_0004     ピサロの‘雪に映える朝日’(1895年)

世田谷美に足を運んだ20日は猛暑だったのに、地下鉄用賀駅からでている美術館直行バスのなかは満員。国立新美のオルセー展同様、いつものことだが印象派と名のつく展覧会には大勢の人が押し寄せる。

今回、世田谷美の思い入れはジャポニスム、ボストン美が所蔵する日本の浮世絵や工芸、そしてモネやゴッホらの作品を贅沢に展示し、日本の美術品が西洋の芸術家たちにどのような影響を与えどんな作品が生み出されたかをみようというもの。会期は来月の15日まで。

目玉の作品はチラシにどーんと載っているモネ(1840~1926)の‘ラ・ジャポネーズ’、この絵の修復が完了したので日本の美術ファンには特別早くお見せしたいとボストン美はおっしゃる、日本との深い縁があればこそだろう。モデルはモネの妻カミーユ、こんなに綺麗だった?と思うほど完璧な化粧をしなんか分厚いどてらのような着物を着て笑顔を振りまいている。

この絵がすごく見栄えがするのはカミーユが身につけている着物の赤と金髪が強烈な印象を与えるから。そして日本趣味を演出するのは手に持っている扇子と背景の団扇。この素晴らしい肖像画をみるとモネが風景画だけでなく人物画にも力を注いでいたら、われわれはもっと楽しめたのにと思ってしまう。

今回もうひとつのお目当てはゴッホ(1853~1890)の‘ルーラン夫人’、ゴッホはこれを原画にして4点のヴァージョンを制作している。幸いにも5点全部みたのだが、好みの順番はシカゴ美のものが一番で次がこのボストンの原画。だから、絵の前ではいい気分でみていた。

ムンク(1863~1944)の‘夏の夜の夢(声)’をみるのは21年ぶり、6年前ボストンを再訪したときは展示室が修復工事中だったので対面が叶わなかった。ムンクの絵を見る機会は滅多にないのでこれは有難い。久しぶりにみる月光の柱を目に焼きつけた。

シスレー(1830~1903)の‘雪に映える朝日’はだいぶ前になるが定番のボストン美展が開催されたときお目にかかった。ピサロは雪とか霜の情景を描写するのが大変上手い。両手に桶をもった女性が立っている地面には雪が積もり高い木々の影が長くのびている。

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2014.08.24

カバネルのヴィーナスからホイッスラーの老母まで!

Img_0002     カバネルの‘ヴィーナスの誕生’(1863年)

Img     バジールの‘家族の集い’(1867年)

Img_0003     モリゾの‘ゆりかご’(1872年)

Img_0001     ホイッスラーの‘画家の母’(1872年)

オルセーに入館し作品をどういう順番でみていくか、これは美術館にやって来た回数により変わってくる。はじめてのときはガイダンス通りにまずは進んでみる。するとアングルの‘泉’が出迎えてくれる。この絵はつかみの作品としては最適。新規の美術館の場合、入館してしばらくはとても緊張しているからこういう美術の本に載っている有名な絵がでてくるとちょっと気が鎮まる。

この裸婦の前では心拍数はあまり上がらないのに、すこし行ったところに飾られているカバネル(1823~1889)の‘ヴィーナスの誕生’では状況は一転、心がザワザワしてくる。ボッテイチェリの立ち姿とはちがい、ヴィーナスは波の上に寝そべり、顔を手で覆いながらこちらをみている。

肌は抜けるように白くて気になる目つき、こんな官能的なヴィーナスなのに1863年のサロンで高く評価された。この人物描写と較べたら落選したマネの‘草上の昼食’の裸婦は穏やかなもの。

モネやルノワールと仲のよかったバジール(1841~1870)が描いた集団肖像画‘家族の集い’は日本発登場、印象派が好きになる最初の段階ではバジールの存在は薄い。現地にあった作品でどれがバジールだったけ?というのが正直なところ。今回‘家族の集い’とアトリエの様子を描いたものがでている。

バジールの顔は写真でみたことがあるが、アトリエにいるバジールはとても背が高い。2mくらいありそうだが、モネは実際は小さい男で、モネを脚色して大きめに描いたため自分がぐんと長身になったのかもしれない。

心が安まるのがモリゾ(1841~1895)の‘ゆりかご’、モリゾの姉がじっとみている赤ちゃんの寝姿がじつに可愛い。最近、散歩の途中このくらいの年の赤ちゃんと出会いあやしていたら、ニコッと笑ってくれた。小さな赤ちゃんが愛想よくしてくれると感激する。

12月横浜美で開催されるホイッスラー(1834~1903)の回顧展に大きな関心を寄せているが、そのプロローグといえる作品が国立新美に登場した。たしか以前日本でもお目にかかった‘画家の母’、真横の座像というのは珍しい肖像画。これにより存在感のある老母になっている。

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2014.08.23

印象派オールスター!

Img_0002     モネの‘アルジャントゥイユのレガッタ’(1872年)

Img_0003     セザンヌの‘レスタックから望むマルセイユ湾’(1879年)

Img_0004     ピサロの‘赤い屋根’(1876年)

Img     ドガの‘競馬場 アマチュア騎手たち’(1876~87年)

海外の美術館を訪問したとき図録を買うのはルーチン、オルセー美のものは今2冊ある。これに日本で開催されたオルセー展のものが加わる。そのためオルセーが所蔵する作品の情報はかなり集まってきた。

今回のオルセー展は充実したラインナップで構成されている。おかげで図録や美術本に載っている作品に済みマークの印、黄色のマーカーがだいぶついた。現地で手に入れた図録をみてあらためて感心するのはここに載っているものがどどっと国立新美で展示されていること。印象派の名画、全部みせます、お楽しみあれ!といってもらっているようで気持ちがいい。

モネ(1840~1926)は8点、‘アルジャントゥイユのレガッタ’や‘サン=ラザール駅’、‘かささぎ’のような傑作がさらっとおかれているのだからたまらない。そして、セザンヌ(1839~1906)も多く7点、そこに現地でみたという実感がなかった‘レスタックから望むマルセイユ湾’が含まれていたので嬉しくなった。セザンヌの風景画は構図に安定感があり大変魅了されている。

4点あったドガ(1834~1917)で長くみていたのは競馬場の光景をえがいたもの。ドガは馬でもバレリーナでも動きの瞬間をとらえるのが天才的に上手い。左の馬が興奮気味でいれこみすぎているのを騎手が懸命になだめている。激しいレースになりそうな予感。

印象派では兄貴格的な存在であるピサロ(1830~1903)の作品で最も惹かれているのが今回やって来た‘赤い屋根’、しばらく息を呑んでみていた。シスレーで足がとまったのはルーヴシエンヌの風景を描いた‘道’と‘雪’、昨年東京富士美であった印象派展でシスレー作品に数多く遭遇したが、その縁がまだ続いている。

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2014.08.22

久しぶりのクールベ、ミレー!

Img     クールベの‘市から帰るフラジェの農民’(1850年)

Img_0004     ミレーの‘晩鐘’(1857~59年)

Img_0003     ルパージュの‘干草’(1877年)

Img_0001     カイユボットの‘床のかんなかけ’(1875年)

パリを毎年訪問し東博や国立新美へ行く感覚でオルセーやルーヴルに入館できたらこれほど幸せなことはないが、世の中そう思い通りにはいかない。だから、現地へ足を運ばす日本にいてオルセーの名画と対面できるのはとても有難い。

海外の美術館でオルセー美はアメリカのボストン美とともに所蔵作品が頻繁に公開される美術館。20年くらいのスパンでみたら、かりにパリに縁がなかったとしてもこの美術館にある名画はかなりの数が日本にいてみれる。ミレーや印象派、ポスト印象派のファンのなかには関連の展覧会に欠かさず出かけ名画を楽しんでいる人たちがいるにちがいない。

会場に入ってすぐびっくりする作品が目の前に現れた。クールベ(1819~1877)の大作‘市から帰るフラジェの農民たち’、ええー、これがやって来たの、という感じ。クールベは6年前、パリのプラン・パレで大回顧展を体験したので特別の思い入れがある。先頭を進む二頭の牛とその隣の豚をまたじっとみていた。

ミレー(1814~1875)の‘晩鐘’は西洋美術史における定番の絵画、ミレーといったら条件反射的に‘晩鐘’か‘落ち穂拾い’を思い浮かべる。そして、この‘晩鐘’はある音楽と強く結びついている。それはドヴォルザークの‘新世界・家路’、じっとみていたらあの牧歌的なメロデイーが聴こえてきた。

自然主義の画家、ルパージュ(1848~1884)の‘干草’は確か日本初登場。この絵が気になったのは2度目のオルセーのとき。足と手を前にのばして地べたに座る女の姿が目に焼き付いた。きつい仕事からちょっと解放され一休みしている様子が写実性豊かに表現されている。人物の素の感じがこの絵の魅力。

昨年ブリジストン美で回顧展があったカイユボット(1848~1894)、画業全般がおおよそわかったから再会した‘床のかんなかけ’にも目に力が入る。右の男の横にワインの瓶が置いてあるのがおもしろい。かんなかけを続けるのがしんどくなったら一杯やるのだろう。

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2014.08.21

豪華なラインナップの‘オルセー美展’!

Img     マネの‘笛を吹く少年’(1866年)

Img_0002     マネの‘読書’(1865~73年)

Img_0003     マネの‘婦人と団扇’(1873~74年)

Img_0001     マネの‘ガラスの花瓶の花’(1882年)

現在国立新美で開かれている定番の‘オルセー美展’(7/9~10/20)は当初はパスのつもりだったので前売り券を買ってなかった。それがやはり行こうと思い直させたのはマネ(1832~1883)の絵。開幕後にネットで出品リストをみて驚いた。

チラシの表紙に使われているのはあの有名な‘笛を吹く少年’。マネはこの絵が目玉の作品としてやってくるのだからほかはないと思っていたら、今回なんと11点。この展覧会チラシ通りマネが主役だった! そのうちこれまでみたのは3点のみ。本場オルセーではほかの画家とのバランスで常時展示されているのは‘笛を吹く少年’だけと思われるが、美術本に載っているものがみれる貴重な機会がめぐってきたのだから、マネファンとしては見逃すわけにはいかない。

広い展示室のなかで多くの人が目を輝かしてみているのはやはり‘笛を吹く少年’、夏休み中なので親と一緒にみている子どもたちや学生風の男女が目立つ。母親は自分もみたいだろうが、子どもにも是非みせたいと思うのはよくわかる。名画を家族で一緒にみる、いい光景。

この絵で心に強く印象づけられるのは少年の上着にかけられている襷と靴下の白、粘り気のある白の油絵の具が厚く塗られており、上着の黒が白の美しさを浮かびあがらせている。そして、赤のズボンで目を引くのは縁取りに使われた黒の太い線、少年の顔に視線はあまり止まらず、この黒い線になぜか釘付けになる。

本物をいつかみたいと思っていたのがマネの夫人を描いた‘読書’と静物画の‘ガラスの花瓶の花’、‘読書’はふっくらとした丸顔の夫人が白いソファに安定感よく描かれている。どうも変なのはその横で手に本を持った男がちょこっと姿をみせていること。この男は一体誰?マネの息子という話だが、はたして。

静物画が4点あったが、静物画というと横長なキャンバスが普通だが、マネはガラスの花瓶の形を描きたかったのか縦長にしている。赤いカーネーションの配置がじつに巧み。ここでも白が画面に美しさを与えている。

‘婦人と団扇’をみるのは大昔に西洋美で行われた‘ジャポニスム展’以来のこと。背景に団扇がいくつも描かれているのはモネの‘ラ・ジャポネーズ’と同じ趣向、ソファに横たわる色白で目の大きい婦人、誰かに似ていると思ったら、4,5年前茶の間で話題になった女芸人のエド・はるみ、どうでもいいことだがまだタレントやっているのだろうか。

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2014.08.20

期待値を大きく上回る‘板谷波山展’!

Img     ‘葆光彩磁珍果文花瓶’(重文 1917年 泉屋博古館分館)

Img_0004     ‘葆光彩磁草花文花瓶’(1925年)

Img_0003     ‘彩磁金魚文花瓶’(1911年)

Img_0001     ‘彩磁更紗花鳥文花瓶’(1919年 泉屋博古館分館)

今年1月に板谷波山(1872~1963)の没後50年を記念した回顧展が作品を多く所蔵している出光美で開催された。造形、色彩ともにえもいわれず美しく、高い芸術性を秘めた波山のやきもの、その魅力につつまれて幸せなひとときだった。

このとき楽しみがもう一度あることを知った。場所はホテルオークラの近くにある泉屋博古館分館、会期は6月14日から今月の24日まで。出動が遅くなったのはこの回顧展に勝手なイメージをもっていたから。

じつは5年前ここでミニ板谷波山展があった。作品の数は重文に指定されている‘葆光彩磁珍果文花瓶’など20点あまり。で、今回の没後50年展はこれらに出品されなかったものを加えて住友がコレクションする波山を全部見せますスタイルになるのだろうと想像した。住友に全部で何点あるのか知らないが、40点くらいでてくると立派な図録がつくられるだろう。これは貴重な図録。狙いはこれを手に入れること。

でも、40点も所蔵しているのだろうか?という心配もあることはあった。ところが、館に入って驚いた。これまでみたものとか板谷波山本に掲載されている重要な作品が続々登場してきた。また、はじめてお目にかかるすばらしいものがヒョイと展示してある。

あとで図録をみるとこの回顧展はすでに茨城県陶芸美、山形美で行われ、8/24に泉屋博古館分館が終わると、兵庫陶芸美(9/6~11/30)に巡回することになっている。板谷波山を愛する専門家や美術館の人たちが立派な企画を実行していた。本当にエライ!だから、こんないい作品が集まっている。

初見では個人が所蔵する‘葆光彩磁草花文花瓶’にとても魅了された。そして、ぐるぐるまわってみたのが同じ葆光彩磁ですっきりした花瓶の形が心を打つ‘珍果文花瓶’や器面にびっしり図柄が描かれた彩磁の‘更紗花鳥文花瓶’、蝶をくわえた尾長鳥の姿にみとれていた。

嬉しい再会となったのが金魚の花瓶、ガレもこの波山のアールヌーヴォー調の金魚と波をみたら裸足で逃げ出すにちがいない。名品がずらずらと載った図録が宝物のように思えてきた。ミューズに感謝!

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2014.08.19

ズームアップ 名画の響き合い! 1938年

Img_0001     ドローネーの‘リズム’(パリ市近美)

Img_0003     エッシャーの‘昼と夜’(豊田市美)

Img_0002     バルテュスの‘夢見るテレーズ’(NY メトロポリタン美)

Img     カーロの‘フレーム’(パリ ポンピドー)

海外の都市で美術館巡りをしたのはパリが最初、1991年に二日かけて主だった美術館を目いっぱい回った。そのひとつがパリ市近美。

ここで印象に強く残ったのはマティスとルーマニア生まれのシュルレアリスト、ブローネル、そして抽象画のドローネー。ドローネー(1885~1941)の作品はエッフェル塔と円盤がすぐイメージされるが、パリ市近美にあるのは痺れるくらい美しく描かれた円盤、このシリーズはほかにもみる機会があったが、‘リズム’の完成度の高い抽象美が群を抜いている。

2002年Bunkamuraで開催されたエッシャー(1898~1972)の回顧展で最も魅了されたのが‘昼と夜’、とくに感心するのが左へ右へ飛んでいく黒と白の鳥、スタートした部分は野原の一角の横線の入った四角や三角なのにこれが移動するごとに鳥の胴体や羽に変容していく。しかも、夜と昼の風景に描き分けているところがスゴイ。本当にうまくできている。この作品でいっぺんにエッシャーのファンになった。

今年の大きな収穫はバルテュス(1905~2001)とヴァロットン。4月にみた‘夢見るテレーズ’がメトロポリタン美にあったとは知らなかった。MET蔵のバルテュスは日本であった展覧会に出品された‘目を覚ましたテレーズ’と‘山’だったが,‘夢見るテレーズ’までコレクションしているのだから流石ブランド美術館。また、MoMAでもバルテュスを楽しめる。‘街路’と‘居間’、‘アンドレ・ドランの肖像’、アメリカの美術館のコレクション力にはまったく恐れ入る。

メキシコ出身のの女流画家フリーダ・カーロ(1907~1954)には高い関心を寄せているが、これまでみたものは片手くらい。昨年MoMAで新規に2点が加わった。次のターゲットはポンピドーにある‘フレーム’、何年か前Bunkamuraでカーロ展があったそうなのだか、そのころ東京にいなかったからみること叶わなかった。当分回顧展にはめぐりあえそうもない。

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2014.08.18

黒田 レイズ戦に好投し8勝目! 

Img   前回とは違い格段に安定した投球内容だった黒田

Img_0001

ヤンキースの黒田がレイズとの一戦で前回とは格段にレベルアップしたピッチングをみせ、チームの勝利に貢献した。これで二桁勝利にあと2つの8勝目(8敗)。

前回の登板が散々だったので、期待より心配な面のほうが強かったが、今日の黒田は最初から気合が入っていた。初回に点をとられるというここ数試合のパターンをまた繰り返したが、2回から6回まではすべて3人でかたずける安定した投球内容。

投手がこういうリズムのいいピッチングをすると守っている野手もそれを後押しする好プレーがでてくる。すばらしい守備をみせたのが、三塁のヘドリーと二塁のプラド。プラドは初回レイズの4番ロンゴリアのセカンドゴロをうまく捕球したあと体がのびきったむつかしい体勢でファーストへ投げアウトカウントを増やした。これで1点が入ったものの、ライトにぬけていればもっと得点されていたところ。

黒田はこのプレーに勇気づけられたにちがいない。また4回にも2アウト後、三塁を抜けていくかという痛烈なライナーをヘドリーが横っ飛びで好捕。いいプレーがでると試合はしまり、徐々にヤンキースに勝機が生まれてくる。5回表、2アウトのあとチャンスが広がり1番ガードナー、3番エルズベリーのきれいなタイムリーヒットで3点をもぎとりゲームをひっくり返した。

黒田は6回1点をとられ、2アウトで降板。4安打2失点は上々の出来。今日のピッチングが黒田本来のもの。この調子が維持できれば、まだまだ勝てる。12勝くらいは達成してもらいたい。そして、防御率は3点の半ばくらいへ。いいピッチングをするときの黒田はまさにサムライ。じつにカッコいい!

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2014.08.17

ズームアップ 名画の響き合い! 1937年

Img_0001     ピカソの‘ゲルニカ’(マドリード ソフィア王妃センター)

Img_0002     ブラックの‘マンドリンを持つ女’(NY MoMA)

Img     ダリの‘のナルシスの変貌’(ロンドン テートモダン)

Img_0004     デルヴォーの‘夜明け’(NY グッゲンハイム美)

1937年に描かれた絵画ですぐ思い浮かぶのはピカソ(1881~1973)の代表作‘ゲルニカ’、本物をこれまで2回みる機会があった。はじめてみたのは現在展示されているソフィア王妃センターではなく、プラド美の別館。ずいぶん前のこと。

当時、この大作は水族館の大水槽を連想させる分厚い防弾ガラスで囲われていた。だから、画面に表現された重いテーマを緊張した面持ちでみていた。ピカソの感情表現は圧倒的な強さをもって心にぐさっと突き刺さる。馬がいななき、母親が手を天につきあげて泣き叫ぶ姿、この絵の前では声を失う。

ピカソの盟友、ブラック(1882~1963)のキュビスム作品はピカソと同じようなものだから、どうしても印象が弱くなる。そのためブラックの関心は1936年から1939年にかけて制作した人物画とか鳥の絵にむかう。それらはまだ数点しか体験してないが、お気に入りはNYのMoMAにある‘マンドリンを持つ女’、緑の室内にいる首の長い女のシルエットが妙に気になる。

ダリ(1904~1989)の‘ナルシスの変貌’は西洋絵画ではエポック的な鑑賞体験として強く心に刻まれている。ダリが好きになったのはテートギャラリー(今のテートブリテンは以前はこう呼ばれていた)でこの絵をみたから。

まず目にとびこんでくるのが卵をつかんでいる大きな指。よくみると、卵の殻を突き破って水仙の花がでてきており、親指には蟻が群がっている。ダリのシュールな感覚にかかるとナルキッソスの転身物語はこんな世界になるのか、という感じ。それにしてもこの指のインパクトは強烈!

デルヴォー(1897~1994)の‘夜明け’に登場する半裸の女たちはパッとみると人魚をイメージする。でも、これは樹木の精、ここは音ひとつ聞こえない静かな道端。中央には鏡があり、女性の乳房が映っている。画面のこちら側にも精はいるみたい。

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2014.08.16

ズームアップ 名画の響き合い! 1936年

Img_0003     カンディンスキーの‘主調曲線’(NY グッゲンハイム美)

Img_0002     デュフィの‘電気の精’(部分 パリ市近美)

Img      オキーフの‘夏の日々’(NY ホイットニー美)

Img_0001     ダリの‘ゆでたインゲン豆’(フィラデルフィア美)

カンディンスキー(1866~1944)の作品ではバウハウスで教鞭をとっていたころ描かれたものにとびっきり心を奪われるがが、それと同じくらい完璧な抽象美に魅せられるのが1933年パリに移ってから制作された作品。お気に入りの筆頭は‘主調曲線’。

この作品を日本で開催されたグッゲンハイム美展(1991年)でみたとき、即座にカンディンスキーの抽象絵画のとりこになった。こんなに美しくて心をふわふわさせる抽象絵画があったのか!申し分のない形のハーモニーとやさしい色彩の組み合わせ、円や矩形があり細い紙の帯がゆらゆら風になびいている。

23年前、パリを訪問したとき市立近代美術館へ足を運んだ。デュフィ(1877~1953)の‘電気の精’はそのとき記憶に残っている作品のひとつ。なにしろ大変大きな壁画だから忘れようがない。ちょっと前までBunkamuraで回顧展が開かれていたが、今回は出かけなかった。

パスした理由はデュフィがモネやゴッホほど好きではないから。最も有名な‘電気の精’は現地でみたし、1995年新宿の伊勢丹美であったデュフィ展でも質のいい作品が結構でてきた。そして、鎌倉大谷記念館のコレクションも目のなかに入れているから、同じような絵をみるより和幸のとんかつを食べたほうがいいという気分があったのが正直なところ。

オキーフ(1887~1986)の‘夏の日々’とダリ(1904~1989)の‘ゆでたインゲン豆のある柔らかい構造:内乱の予感’は残念ながらまだ縁がない。昨年フィラデルフィア美へ行ったのにどういうわけかダリのこの絵が展示されてなかった。長年追っかけていた作品だから、ガックリ。この絵とデュシャン、そしてセザンヌの‘大水浴’をリカバリーするためフィラデルフィアを再訪するつもり。

オキーフの空中に舞う牛の骸骨とホイットニー美で運よく遭遇できるかわからないが、この絵にはなんとしてもお目にかかりたい。

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2014.08.15

ズームアップ 名作の響き合い! 1935年

Img     ノルデの‘ひまわり’(ケルン メルツバーコレクション)

Img_0004     エッシャーの‘写像球体をもつ手’

Img_0001     デュシャンの‘ロトレリーフ’

Img_0002     ヘップワースの‘3つの形’(ロンドン テートモダン)

ドイツ表現主義のビッグネーム、ノルデ(1867~1956)についてはアバウトな情報だがベルリンにある美術館へ足を運ぶとかなり感激する作品に出会えるかなと思っている。そして、もうひとつインプットされている美術館はノルデが晩年の30年をすごしたデンマークとの国境近くの村にあるノルデ美。

ベルリンは将来また訪問する機会がありそうだが、ノルデ美のほうは可能性はゼロ。だから、そのコレクションをもし楽しめるとしたら、この美術館で改修工事がありその間日本の美術館で公開される場合のみ。でも、その話はおとぎ話のようなもの。で、これまでみた‘ひまわり’のようなゴッホを彷彿とさせる色鮮やかな作品をときどき眺めている。

来週、Bunkamuraではじまった‘だまし絵展’をみることにしているのだが、サプライズがどれだけ用意されているか、とても楽しみ。エッシャー(1898~1972)の‘写像球体をもつ手’はドキッとするふしぎな絵。ガラス球を支えている手はエッシャーの手? ガラス球のなかにいる男が広げている手と下の手が球の底でつながっている。この接点の具合がなんとも奇妙。

見る者を幻惑させることにかけてはデュシャン(1887~1968)がぴかいち。1923年に‘大ガラス’の制作をやめたあと、デュシャンは大好きなチェスに没頭していたが、1935年には錯視を生み出す‘ロトレリーフ’をつくった。目がまわりそうだが、この作品をみるとデュシャンの脳の働きはかなりのハイレベルであることがわかる。頭の良さそうな顔をしている。

バーバラ・ヘップワース(1903~1975)はイギリス出身の女性彫刻家、作品を沢山体験しているわけではないが現近代美術館でときどきお目にかかる。3年前オランダのクレラー=ミュラー美へ行ったとき、野外展示場に彼女の作品が数点あった。そのまるくて柔らかいフォルムに心が和む。‘3つの形’は未見だが、とても魅せられている。

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2014.08.14

岩隈11勝目、和田2勝目!

Img      安定したピッチングでマリナーズの4連勝に貢献した岩隈

Img_0001     ブリュワーズ戦に好投し2勝目をあげた和田

最近調子の上っているマリナーズはブルージェイズとの試合で勝利し、4連勝を果たした。この勝利に大きく貢献したのが岩隈、初回からまったく危なげないピッチングで6回2/3を無失点に抑えた。これで11勝目(6敗)。

ここ数試合、岩隈の制球力は安定しており、球を低めに思い通りに投げている感じ。内野ゴロが多く3ボールとか四球が少ないので安心してみていられる。今日の試合で四球は7番セカンドで先発出場した川崎に粘られて与えた1つのみ。コントロールの良さは今や岩隈の代名詞、与四球率はリーグで最も少ない。

マリナーズは現在西地区の3位、首位のアスレチックスとは8ゲームの差があるので地区優勝は難しいが、2つあるワイルドカードの獲得は大いに可能性がある。2位のエンゼルスは勝率5割8分で進んでいるので一枚目のワイルドカードはほぼ決まり。

残り一枚をタイガース(中地区2位)、マリナーズ、ブルージェイズ(東地区2位)、ヤンキース(東地区3位)で最後まで争うことになるが、現時点ではタイガース、マリナーズが優位に立っている。でも、このゆくえはわからない。終盤になると連勝して勢いずくチームがでてくるので、ワイルドカード争いは最後の最後までもつれる。

今日はもうひとつ嬉しいことがあった。ホームのブリュワーズ戦に先発したシカゴ・カブスの和田が6回2/3を2失点で投げきり2勝目をあげた。残念なことにライブ中継がなかったので、詳細はわからないが6回2アウトまで3安打はベストピッチング、アウトあと一つで降板というところで続けてソロホームランを食らったのは悔やまれるが全体としては素晴らしい投球内容。

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2014.08.06

お知らせ

拙ブログはしばらくお休みします。

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2014.08.05

ズームアップ 名画の響き合い! 1934年

Img_0003     マレーヴィチの‘走る男’(パリ ポンピドー)

Img_0004     ファイニンガーの‘赤い服のヴァイオリン弾き’

Img     ミロの‘つばめ・愛’(NY MoMA)

Img_0001     ニコルソンの‘ホワイト・レリーフ’(ロンドン テートモダン)

手元にあるマレーヴィチ(1878~1935)の画集にシュプレマティズム作品はいくつもでてくるのに実際にみたのは1点のみ。そうした抽象絵画の多くは現在NYのMoMAとアムステルダム市美が所蔵している。

昨年MoMAを再訪問したとき、まだみていない‘白の上の白’などとの対面を期待していたが、一点も展示されてなかった。カンディンスキーに比べると縁の薄いマレーヴィチだが、次にオランダ旅行するときはアムステルダム市美で存分に楽しめるようミューズにお願いしている。

マレーヴィチが亡くなる前年に手がけたのが‘走る男’、画風は1930年から具象画に戻っている。これはパリではなく日本でみた。大きく描かれた農民が脇目もふらず逃走している。何から逃れているのか、マレーヴィチを悩ませたツァーリスムと共産主義。後ろの白と赤の壁の建物がそれを象徴している。

ファイニンガ―(1871~1956)の描く人物は漫画チックなのが特徴。周りを建物で囲まれた都会の一角で狼みたいな男がヴァイオリンを弾いている。それを聴いている人たち、真ん中に黒の帽子を被った年取った女性はどことなくアンソールの絵に登場する老婆を連想させる。

MoMAはミロの作品をどのくらい所蔵しているのか正確にはわからないが、昨年訪問した際はこれまでみたものや図録で見慣れたものとは違う作品を5点みたからトータルでは10点以上あるのだろう。

なんとなく鳥が飛とんでいるというイメージがする‘つばめ・愛’は一度日本にやって来た。ミロの回顧展はよく開催されるがこの絵のように色が鮮やかで完成度の高いものはそうみれないので、食い入るようにしてみた。ここではつばめと人間たちが陽気に遊んでいる感じ。ついこの輪のなかに入りたくなる。

イギリス人のベン・ニコルソン(1894~1982)の場合、みた作品をきわめて少ない。たぶん、2,3点。そのひとつが‘ホワイト・レリーフ’、じつにシンプルでわかりやすい抽象画。雪を思わせる白いマホガニーの板に円と正方形が彫られ、下の板に重ねられている。ニコルソンが追求したのは形と形の関係、抽象画ではシンプルに表現することが画面に大きな力を与える。

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2014.08.04

ズームアップ 名作の響き合い! 1933年

Img_0001     ルオーの‘聖顔’(パリ ポンピドー)

Img_0004     ベックマンの‘出航’(NY MoMA)

Img_0002     バルテュスの‘街路’(NY MoMA)

Img     ジャコメッティの‘テーブル’(パリ ポンピドー)

最近は出光美へ出かけることが少なくなったので、ルオー(1871~1958)の作品にちょっと遠ざかっている。また、ポンピドーを除いて海外の美術館でルオーと会うことはどういわけかほとんどない。昨年ワシントンのフィリップスコレクションに足を運んだ際も、図録に載っているルオーは展示されてなかった。とにかくルオーとの縁は極めて薄い。

このため、ルオーというとポンピドーと日本の美術館で開催された回顧展が貴重な鑑賞体験になっている。‘聖顔’はキリストを描くルオーの心情が強く伝わってくる一枚。キリストが髭を生やしているので、とても人間臭い、この絵と‘傷ついた道化師’は納得の一枚だが、まだ美しい‘ベロニカ’とおでこのでた姿が印象的な‘見習い職人(自画像)’との対面が残っている。なんとしてもという気持ち。

二度目のMoMAでは必見リストに入れていたものが高いヒット率でみれた。その2枚がベックマン(1884~1950)の‘出航’とバルテュス(1908~2001)の‘街路’、ともに以前購入した館の図録(英文版)に掲載されているが、前回出かけたときは二人とも知らない画家だったので作品に関心をもちようがなかった。

でも、昨年は心が大変高揚し絵に釘付けになった。どちらも大きな絵、だから画家の画力に感心し描かれている人物一人々をじっくりみようという気になる。ベックマン、バルテュスとの付き合いははじまったばかり。追っかけはずっと続いていく。

3年前国立新美で‘シュルレアリスム展’が開催され、ジャコメッティ(1901~1966)のシュールな彫刻に出くわした。驚かされたのがテーブルの上においてある切断された手。ぎょぎょ!そして片目を隠した女性のびっくり眼に200%フリーズ、なんとリアルな表情、よほど想定外なことを体験したにちがいない。

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2014.08.03

ズームアップ 名画の響き合い! 1932年

Img_0001     クレーの‘パルナッソス山へ’(ベルン美)

Img     ピカソの‘夢’(NY ガンツコレクション)

Img_0003     レンピッカの‘マルジョリ・フェリーの肖像’

Img_0002     ルオーの‘傷ついた道化師’(パリ ポンピドー)

印象派以降の近現代絵画でよく個展の開かれる画家というと、まず筆頭にあげられるのはやはりピカソ、その次はクレー、シャガール、ダリあたりではないだろうか。部屋に積み上がっている展覧会の図録を数えてみるとこの4人のものが圧倒的に多い。

20年くらい前、名古屋にある愛知県美でクレー(1879~1940)の大規模な回顧展があった。この頃めぐりあわせのいいことに名古屋で仕事をしていた。そのときの目玉の作品がベルン美からやって来た‘パルナッソス山へ’、画面に近づくとこの絵が精緻なモザイク画だったので、ピラミッドを連想させる山や赤い円を声を失ってみていた。いつかベルン美を訪問したら、あの感動がよみがえることだろう。

ピカソ(1881~1973)への愛着度は正直言って70%くらい。カラヴァッジョとかモネ、ゴッホに100%惚れているのに対し、ピカソの30%がダメなのは描かれたモチーフが丸くなく直線的で角々したフォルムだから。

好きな作品のなかで最も魅了されているのがマリー・テレーズをモデルにして描いた‘夢’、のびのびとした柔らかい曲線と薄ピンクや黄色にもうどうしようもなく惹かれる。ミューズにこの傑作と遭遇できるようお願いしているのだが、まだそのお告げがない。一生、夢のままで終わるかもしれない。

レンピッカ(1898~1980)の女性肖像画は一度みたら脳裏に強く残る作品が多い。この‘マルジョリ・フェリーの肖像’もその一枚。横向きでポーズをとるこの金髪女性は古い時代のドイツ映画に出てくる女優のイメージ、ほかの肖像画に比べると女性のモダンさが少し控めになっているが、内面の描写にすぐれているので思わず足がとまる。

パリのポンピドーへ行くとき、画集に載っているルオー(1871~1958)のチェックに余念がないが、一度に全部展示されておらず、まだ3点残っている。‘傷ついた道化師’はこれまでみたなかでは一番ぐっときたもの、その理由は大きな絵だから、縦は2mもある。4,5年前日本でもこれくらいの大きさの別ヴァージョンをみたが、これもすごくいい絵だった。

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2014.08.02

ズームアップ 名画の響き合い! 1931年

Img_0004     ダリの‘記憶の固執’(NY MoMA)

Img_0001     デルヴィルの‘エレウシスの女たち’

Img     ロベール・ボンフィスの‘マノン・レスコーの装丁’

Img_0002  キスリングの‘魚(ブイヤベース)’(ジュネーブ、プティ・パレ美)

昨年久しぶりにNYのMoMAを訪問したが、ちょっと戸惑うことがあった。どういうわけかお気に入りのダリ(1904~1989)の‘記憶の固執’とシャガールの‘私と村’が展示してなかった。
 

MoMAにある作品で美術史の流れからみて‘お宝5!’は何かと聞かれたらすぐ反応できる。この2点とピカソの‘アヴィニョンの娘たち’、モンドリアンの‘ブロードウエイ・ブギウギ’、ウォーホルの‘ゴールド・マリリン・モンロー’、はじめてここに足を運んだときは‘記憶の固執’と‘私と村’を興奮状態でみたが、今は時代の気分があるから、常時飾っておく作品ではなくなったのかもしれない。

‘記憶の固執’は13年前日本にやって来た。画集でみる感じと違って小さい絵。なんといっても視線が集中するのはぐにゃっと曲がった時計、ダリは27歳のとき夕食に食べたカマンベールチーズからヒントを得て一気にこの作品を仕上げた。木の枝につるされた時計、こういうイメージは天才の頭の中からしか生まれてこない。

ベルギー象徴派のデルヴィル(1867~1953)、63歳のとき描いたのが‘エレウシスの女たち’。女たちを囲む紫の藤をみるたびに日本画家の山本丘人の名作‘地上風韻’にでてくる装飾的な藤棚を思い出す。デルヴィルの官能的な美の描写には心をとろとろにさせられる。

2005年東京都美で‘アール・デコ展’を体験した。その図録の表紙に使われたのがボンフィス(1886~1972)がデザインした‘マノンレスコー’の装丁、赤の背景にくっきり映える黒のシルエット、この洒落た感覚がたまらなくいい。

キスリング(1891~1953)の花などを描いた静物画は日本の美術館でもときどきみる機会がある、例えば鎌倉大谷美とか村内美、生き生きとした魚がどどっといるこの‘魚(ブイヤベース)’は横浜そごうで開催された回顧展に展示された。同じ画題の作品が松岡美にもあるが、ジュネーブのプティ・パレ美のものに惹かれる。

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2014.08.01

ズームアップ 名画の響き合い! 1930年

Img_0001     ロベール・ドローネーの‘生きる喜び’(パリ ポンピドー)

Img_0003  ファイニンガーの‘矢のある聖マリア教会、ハレ’(ミュンヘン州近美)     

Img     エッシャーの‘モラノ(カラブリア)’

Img_0002  オキーフの‘ジャック・イン・ザ・プルピットⅢ’(ワシントン国立美)

ロベール・ドローネー(1885~1941)の抽象画に興味を覚えるようになったのはポンピドーとパリ市近美を訪問したのがきっかけ。強く心に刻まれているその画風はちょっと傾いたエッフェル塔と画面に満ち溢れる円盤。

‘生きる喜び’はタイトルにすぐ相槌が打てる明るい抽象画、カンディンスキーの作品に登場する洗練された円に比べればドローネーの円盤はとてもナイーブ。だから、絵の上手い小学生ならこれくらい描けるのではないかとつい思ってしまう。でも、よくみるとこの円盤たちは巧妙に配置されている。

小さい円盤は2色しか使われていないが、大きくなるにつれ模様が凝ったものになっていき、最も大きな円盤は斜めの軌道を移動し画面の外に飛び出していく。円盤がどこを始点にして進んでいくのかいろいろ想像しながらみていると結構楽しい。

ドローネーとも交流のあったライオネル・ファイニンガ―(1871~1956)はNY生まれのドイツ系アメリカ人。キュビスム風の人物画もおもしろいが、それ以上に心をとらえるのが建物を描いた作品。

ガラス製品のカット面とか水晶を連想する‘ハレ’の連作シリーズではこの‘矢のある聖マリア教会’がもっとも出来栄えがいい。ドイツにある教会は古くて硬い感じがするが、その形を水晶の一部ととっ替えたように透明で光のあたるフォルムに再構成し教会のもつ荘厳さを見事に表現している。

エッシャー(1843~1956)の木版画は友人とイタリア半島の最南端にあるカラブリアを旅行したときに描いたもの。村の家々は実際にはこのように円錐形の土地に規則的に建てられてはいないので、この光景はエッシャーの心にある理想郷みたいなもの。でも、こういう村はどこかにありそうな気がするから不思議。

昨年アメリカの美術館巡りをしたとき、感激度のひときわ大きかった作品がいくつかあった。ワシントンのナショナルギャラリーが保有するオキーフ(1887~1986)の‘ジャック・イン・ザ・プルピットⅢ’はそのひとつ。強い緑の葉に目が釘付けになった。オキーフの絵ではこれに最も魅了されている。

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