ズームアップ 名画の響き合い! 1917年
マレーヴィチの‘シュプレマティスト・コンポジション’(NY MoMA)
大きな絵はみたあと長くその印象が残る。ピカソ(1881~1973)がバレエ劇‘パラード’のための舞台装置として描いたこの緞帳も東京都現美でお目にかかって以来ずっと目に焼きついている。
東京都現美へは昨年吉岡徳仁の作品を見るために例外的に訪問したが、最近はほとんど行かない。ここで17年前大規模なポンピドーコレクション展があり、ピカソのあっと驚くような緞帳が一番大きな展示室に飾られた。サイズは縦が10.5m。横が16.4m。描かれているのはピカソのバラ色の時代に登場する道化師やさサーカスの芸人たちと白いペガサス。息を吞んでみていた。
この展覧会にはシャガール(1887~1985)の愛の香りの漂う‘杯を掲げる二重肖像’もやって来た。ベラに肩車されたシャガール、その上には二人を祝福する天使がみえる。普通はシャガールがベラを肩の上に乗せる構図を思いつく、そのほうが天使だって‘ベラ、おめでとう’と声をかけやすい。でもシャガールは逆にした。
この絵の構成は基本的には古典画と同じ。ダ・ヴィンチの‘モナリザ’ではジョコンダ夫人が大きく描かれその背景は遠くにそびえる山や川が小さく描かれている。シャガールは野山を故郷ヴィテブスクに変え、自分とベラを縦に長く描いた。そして天使もしっかり描き込んでいる。
28歳の若さで亡くなったシーレ(1890~1918)、風景画の傑作‘4本の樹’が描かれたのは天国に召される1年前。この絵をウィーンではじめてみたときは体が震えるlくらい感動した。等間隔にならんでいる4本の木に向こうに秋の空を赤く染めた太陽は沈もうとしている。この美しい赤が忘れられない。
マレーヴィチ(1878~1935)の生み出したシュプレマティズムの絵画で最も心を打つのはアムステルダム美にあるものとここにあげたNYのMoMAが所蔵するもの。この絵は運がいいことに日本でみることができた。円や細長の四角形の配置はアムス美のものと同様完璧な美しさを生みだし、そして色彩がとても優しく柔らかい。まるで魂と自然界が溶け合った天上の世界をみているよう。
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