二重丸の‘ヴァロットン展’!
名前は知っているが描かれた作品をほんの少ししかみていない画家は何人もいる、ヴァロットン(1865~1925)もそのひとり、こういう画家の場合、回顧展が開かれるといっても胸が高まるということはない。その逆で、展示会場へ入るにもおそるおそるという感じになる。
三菱一号館美で現在開かれている‘ヴァロットン展’(6/14~9/23)の鑑賞はそんな思いではじまった。ところが、作品をみていくうちに不安な気分はすぐ取っ払われ、チラシに踊っていたコピー‘パリで31万人が熱狂’がストンと腹に落ちた。そして思った‘ヴァロットン、やるじゃない!’と、この回顧展は昨年ブリジストン美で行われた‘カイユボット展’に次いで画家の才能の高さを思い知らされる展覧会になった。
縁のうすい画家の作品をみるときはひとつのアンカーが必要、碇を降ろせばこれを基準作にして作品に近づける。そのアンカーの役割を果たしてくれたのがよく知っているうえに大好きな‘ボール’。オルセーではじめてナビ派の画家に会ったころは、ヴュィヤールとヴァロットンがこんがらがっていた。でも、この絵だけはよく覚えている。俯瞰の視点にはっとし女の子の背中にあたる光とその影が強く心に刻み込まれた。
ヴァロットンで魅せられるのはまずはこの光の描写、ほかにもぐっとくる作品があった。思わず足がとまった風景画2点、斜めにのびる砂浜を二人の男が歩いている姿を後ろの高台から描いた‘白い砂浜、ヴァスイ’、そして構図がとてもいい‘ロワール川岸の砂原’、砂がもこっと盛り上がったところが手前から平行的に三つならび、中央には葉を沢山つけた丸い木がぽんぽんと配置される、よくみると左に釣りを楽しむ人物がみえる。
‘髪を整える女性’も‘化粧台の前のミシア’同様、部屋の中に強い日差しが入り込んでいる。おもしろいのは女性の顔をあえて隠していること。だから、女性には視線がむかわず、後ろにのびる椅子の影を追っかけることになる。この絵は大きな収穫だった。
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コメント
ヴァロットン展は、これまでのところ行く機会がなく、お盆休みにと思っていましたが、ご紹介の作品を見て、期待が高まりました。
私も『ボール』以外、実見した記憶がないのですが緑、青などの色の大きな面が印象に残りますね。
『髪を整える女性』の色合いもシュールで惹かれます。
できたら、お盆休み以前に行ってみようかと思います。
投稿: ケンスケ | 2014.06.29 11:59
to ケンスケさん
ヴァロットンにKOされました。パリでの回顧展に
多くの美術ファンが押し寄せたのがよくわかります。
もう2回書きますが、ぐっとくる作品がまだあります。
隠れたビッグネームという感じです。是非お楽しみ
下さい。
投稿: いづつや | 2014.06.29 23:08