ズームアップ 名画の響き合い! 1910年
マティスの‘ダンス’(サンクトペテルブルグ エルミタージュ美)
ルドンの‘ヴィオレット・ハイマンの肖像’(クリーブランド美)
ここ10年くらいクラシック音楽やオペラを聴く時間が極端に減り、美術のほうへどっぷりのめり込んでいる。クラシックへの興味がなくなったというのではなく、モーツアルトやマーラーなどクラシック全般にわたって名曲といわれるものはだいたい聴いたので正直なところクラシックもオペラもわかったという気分があるため。
世の中には筋金入りのクラシック通がごまんといる。こういう耳が肥えてる人はN響の音楽会に必ず出かけたり、同じ曲を別の交響楽団が演奏するものと聴き比べるためCDを買い揃えるのは当たり前、このAランク上クラスのひとにはとても敵わないし、またなろうとも思ってない。だから、当面は音楽を聴く時間は今の少ないままで増えていかない。
でも、これもあと1,2年くらい。美術のまとめがあるていど出来たらまた名曲の数々に一日中聴こうと思っている。じゃあ、そのとき美術はどうなるのか、もちろん美術との関わりはライフワークだからまだまだ続く、これまでとの違いは楽しむ作品が名画中の名画に絞り込まれるだけ。モーツアルトのジュピターを聴きながらヴァトーの絵をみる、またドビッシーのときは北斎の‘神奈川沖浪裏’とセットで楽しむ。
じつはそんな楽しみ方のためにこの‘ズームアップ’をつくっている。1910年も1907年同様この年にどんな名画が登場したかはすぐ思い浮かぶ。アンリ・ルソー(1844~1910)の作品のなかで最も大きな絵が‘夢’、昨年NYで久しぶりに対面し、その大きさと作品の完成度の高さに感動した。と同時にこれと‘蛇使いの女’がルソーの最高傑作であることを確信した。
エルミタージュ美でみたマティス(1862~1954)の‘ダンス’も忘れられない一枚、目の前に現れた裸の男女の体は赤色。たしかに生命の力を象徴的に表わす血の色に全身が染まったとみれば赤い体も納得がいく。その赤を引き立てるのが背景の青と緑。使われた色はたった3色、色彩のもっている力をこれほど感じる絵はほかにない。色彩の魔術師マティスここにあり!という感じ。
日本画のコレクションで有名なクリーブラン美は昨年名品展を開催するにあたってビッグなオマケとしてルソーの絵なども披露してくれた。とても有難い展示だったが、密かに期待していたのがルドン(1840~1916)の描いた‘ヴィオレット・ハイマンの肖像’、残念ながらこれはダメだった。いつか現地にみてみたい。
ノルデ(1867~1956)の描く人物は顔などが大きくはっきり描かれているので絵の中にぐっと惹きこまれる。キリストが登場しても宗教臭くなくがやがやしているため親しみを覚える。このあたりの雰囲気はアンソールの絵とちょっと似ている。
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