ズームアップ 名画の響き合い! 1915年
セヴェリーノの‘村を走る赤十字の汽車’(NY グッゲンハイム美)
マレーヴィチの‘シュプレマティズムの絵画’(アムステルダム市美)
以前池袋にあったセゾン美で忘れられない展覧会が二度あった。ひとつは‘クリムト展’でもう一つはこれまたビッグな‘グッゲンハイムコレクション展’(1991年)。
後者はNYとヴェネツィアにあるグッゲンハイム美が所蔵する作品で構成されたものだったが、いわゆる‘グッゲンハイムコレクションのいい絵全部みせます!’スタイルの豪華なラインナップだった。展示室にはピカソ、シャガール、ミロ、カンディンスキー、マルクなどのビッグネームがずらずらと並んでいるのでテンションははじめから上がりっぱなし。
そのとき、とくに印象的だった作品のひとつが未来派セヴェリーノ(1883~1966)の‘村を走る赤十字の汽車’、目に飛び込んでくる汽車が吐き出すもこもことした白い煙、まるでテニスの丸いボールがとんでいっているよう、そして汽車のまわりの田園風景を表す明快な緑や赤茶色の色面、忘れられない一枚になった。
未来派の影響をうけたマレーヴィチ(1878~1935)は1915年12月、はじめてシュプレマティズムの絵画を発表した。この絵はその39点の一枚。まだお目にかかってないが、幾何学形の四角形、三角形、細い線で構成された画面はその巧みな配置と互いの色彩を響かせ合う色使いによってえもいわれぬ抽象絵画の美しさに誘ってくれる。視線が釘付けのなるのが上部の黒の背景に浮かび上がる赤、青、黄色で彩られた大小の四角形。
同国人ピカソからその才能を高く評価されたグリス(1887~1927)は3年前、マドリードのソフィアセンターを訪問したときかなりの数の作品を見ることができた。そのため、グリスにだいぶ近づけた気がする。ポンピドーが所蔵する‘朝食’は日本であった展覧会でみた。、見慣れたキュビスム技法による静物画だが、おもしろいことに窓が描かれているので開放感のある朝のテーブルになっている。
圧倒的な存在感をもつ兵士が画面いっぱいに描かれているキルヒナー(1880~1938)の作品、この兵士よくみると右手がない。第一次大戦に志願兵として従軍したキルヒナーだったが、精神障害のためわずか2年で除隊された。この兵士は弱ったキルヒナーの自画像。でも、手がこのようになっているわけではない。
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