ズームアップ 名画の響き合い! 1892年
印象派やポスト印象派が好きな人にとってパリのオルセー美は特別の美術館、日本で馴染みの東博のようにここへ頻繁に訪問できれば理想的なアートライフ。そういう風になりたいが、実現はまだまだ先。
オルセーでは印象派のオールスターたちの名画の数々が楽しめる。マネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ドガ、ロートレック、ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、この9人の作品でMYベスト5に入れているのはモネ、ルノワール、セザンヌ、ドガ、ほかの画家はオルセー以外の美術館が所蔵するものを選んでいる。
これは裏を返せば印象派の作品が世界中で愛されているということ。とくに名画がごそっと集まっているのがアメリカ。その感を強くしたのがロートレック(1864~1901)の油彩、08年美術館巡りをしたときシカゴ美で出会った‘ムーラン・ルージュにて’は忘れられない一枚になった。
この絵をロートレックのベストワンにしているのは構図に惹かれているから。浮世絵ファンならこの構成に間違いなく嵌る。ライトを下から浴びてうす青緑の顔が不気味に浮かび上がる右端の踊り子、顔の一部が画面からはみ出すところはまさに広重の描く浮世絵風。これが心を揺すぶる。
同じ年にメトロポリタンでみたゴーギャン(1848~1903)の‘昼寝’にも完璧にKOされた。描かれた4人のタヒチの女性はきれいに円をつくっており、後ろむきに座っている女が体を傾ける姿はロートレックの対角線の構図同様、画面に動きを与えている。そして目に焼きつくのが真ん中で横向きに寝そべっている女の衣服の赤。ゴーギャンの赤や緑、紫には強烈なパワーがある。この絵は一生の思い出。
セザンヌ(1839~1906)の作品ではこの‘カード遊びをする人たち’はどうしても外せない。肖像画の傑作も多く残したセザンヌだが、この人物画は風俗画だから、カード遊びに興じる農夫からは個性は消えている。二人は無表情でカードを静かに楽しんでいる。勝負がついたあとは、‘今日は俺の勝ちだな’とつぶやいて椅子から離れるのだろう。
4年前、国立新美で‘オルセー美展ポスト印象派’が開催され、ドニ(1870~1943)の作品が結構な数展示された。そして、2011年には損保ジャパン美で回顧展に遭遇。この二つの展覧会によりド二の画業にだいぶ近づくことができた。‘四月’はクレラー=ミュラー美で魅了された作品。S字に曲がる道にそって白い衣装を着た女性たちが野原の草花を摘んでいる。この絵の画面構成も浮世絵をみているような気分になる。
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