ズームアップ 名画の響き合い! 1894年
ロートレックの‘ムーラン街のサロン’(アルビ ロートレック美)
セガンティーニの‘悪しき母たち’(部分 ウィーン オーストリア美)
ロートレック(1864~1901)の油彩をもっとみたいと思うようになったのは2008年にアメリカで美術館めぐりをしてから。昨年は幸運なことにワシントンのナショナルギャラリーでTASCHENのロートレック本の表紙に使われている‘シルペリック劇場でボレロを踊るマルセル・ランデ’にお目にかかることができた。
これで残りは3点。そのひとつがロートレックの故郷アルビにあるロートレック美が所蔵する‘ムーラン街のサロン’、ここは客を待っている娼婦たちのいる部屋。ぱっとみると人物や部屋の様子が平板に描かれている感じだが、女たちの配置がよく計算されており、部屋がとても広くみえる。右の立ち姿の女は体の半分が画面の外にはみ出しているが、これは明らかに浮世絵の影響。
4.5年前サントリー美で充実した内容のロートレック展があった。アルビからも数点出品されたが、この絵はダメだった。やはり、美術館の目玉だから期待すること自体だいそれている。日本にやって来るとすれば改築工事のため休館するときくらいだろう。まあ、これも可能性は低い。だから、どうしてもこの美術館を訪ねていくしかない、夢が実現するだろうか?
11年前ウイーンを旅行したとき、クリムトのあの有名な‘接吻’が飾ってあるベルヴェデーレ宮殿へ出かけた。予定通りお目当ての絵を楽しんだが、それとは別に意外なイメージをいだかせる絵と遭遇した。それはセガンティーニ(1855~1899)の描いた‘悪しき母たち’、‘ええー、セガンティーニにこんな官能的な女性の絵があったの!?’というのは率直な反応だった。
この画家の画風は大原美にある‘アルプスの真昼’でできあがっていたから、二つの絵のギャップの大きさに正直とまどった。この絵によりセガンティーニには象徴派という顔もあることを知った。クノップフにしてもデルヴィルにしてもベルギー象徴派の絵に登場する女性はとても美形。描かれた舞台は静かで霞がかかったような演出がされているのでよけいに女性の容貌の美しさに惹かれていく。
夜景画を得意としたヌンク(1867~1935)の‘夜の天使’は月明かりに照らされた夜の森の情景だが、絵全体の雰囲気はセガンティーニの絵と通じるものがある。天使の羽と衣装が一体となって緩やかな円弧をつくり、これに呼応するように道も左右にまがりながら遠くまでのびている。
ボッティチェリの‘春’を連想させる‘フローラ’を描いたのは陶芸家のウィリアム・ド・モーガンの妻、イーヴリン(1855~1919)。ボッティチェリの作品をこよなく愛しているので、この絵を15年くらい前日本の展覧会でみたときは心に響いた。ルネサンスモードに満ち溢れているのはこの絵がフィレンツェで制作されたためかもしれない。
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