光の画家 バルテュス!
‘美しい日々’(1944~46年 ワシントン ハーシュホーン美)
昨年NYのMoMAでバルテュス(1908~2001)の‘街路’をみることができた。この絵をみるのに長い時間がかかったが、それから1年経ち今度は上野の東京都美で願ってもない大回顧展(4/19~6/22)。こんな風にこれまで作品に縁がなかった画家が短期間で近い存在になることがときどきある。
関心の高い油彩は全部で48点でている。よく描かれたモチーフは猫と少女、そして風景画も9点ある。今回大きな発見があった。それは画集の図版ではわからない光や影の描写、バルテュスは類まれな光の画家だった!
展示室では照明を通常より落としているのは自然の光のもとで絵肌を輝かせるように描いたバルテュスの思いをくんでいるから。
光の輝きに驚愕する作品が4点あった。‘キャシーの化粧’、‘夢見るテレーズ’、‘美しい日々’、‘読書するカティア’。一度ポンピドーでみたことのあるキャシー、白い肌が発光体のように輝いている。画面から少し離れてみるとその様子が実感できる。その横にいるのがバルテュス、大変なイケメン。
バルテュスのアトリエの近くに住んでいたテレーズ、思春期を迎えたこの少女に左から強い日差しがあたっている。曲げた片足のすねと傾けた顔の頬にあたる強い光と腿の部分の影のコントラストがとてもリアル。この絵がMETにあることは展覧会のチラシをみて知った。昨年この美術館を訪れた際はお目にかかれなかったから、嬉しい出会いになった。
‘美しい日々’はMET同様足を運んだワシントンのハーシュホーン美のコレクション、バルテュスのこんないい絵を所蔵していたとは。驚くことに今回ここから3点出品されている。アメリカの美術館はこれだからスゴイ。目を奪われるのは右の暖炉の火の輝き!火の勢いを調整している男に動きのあるポーズをとらせ、中央の静かに手鏡をみる少女に大人の魅力をまとわせた画面構成、思わず息を吞んでみていた。これが図録の表紙に使われているのは即納得。
今回最も魅せられたのは‘地中海の猫’、そのシュールな表現に200%KOされた。7色の虹からなんと魚が飛び出してくる!そして、最後にテーブルの上の皿に体を横たえる。これを目をつりあげた猫男が食べるのか、こんなおもしろいアイデアをバルテュスはどこから思いついたのだろうか?この絵をみたらダリでもマグリットでも裸足で逃げるにちがいない。
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