心に響くホイッスラーの名画!
‘シシリー・アレキサンダー嬢’(1872~74年 テート・ブリテン)
‘白衣の少女’(1862年 ワシントン ナショナルギャラリー)
今から16年前の1998年に東京都美で‘テートギャラリー展’が開かれた。現在、森アーツセンターで行なわれている‘ラファエロ前派展’はテートギャラリーが所蔵するものによって構成されているが、東京都美のときはロセッティやミレイをはじめブレイク、ターナー、コンスタブルなどビッグネームがずらっと揃った豪華なラインアップ、テートにあるイギリス絵画の名作を全部みせますという感じだった。
そのなかにホイッスラー(1834~1903)も2点あった。その一枚が‘シシリー・アレキサンダー嬢 灰と緑のハーモニー’、この絵によってホイッスラーとの付き合いがはじまった。ホイッスラーは肖像画家という顔とジャポニスムに影響を受けた風景画家という二つの顔をもっている。
東京都美でホイッスラーを体験したあと、肖像画と霞のかかった川や海の情景を描いたものを半々ぐらいの割合でいくつかの美術館でみた。パリのオルセー美、NYのメトロポリタン美、フリックコレクション、ワシントンのナショナルギャラリーとフリーア美、コーコラン美、そしてフィラデルフィア美。
肖像画のお気に入りベスト3は‘シシリー・アレキサンダー嬢’、‘白衣の少女’、‘磁器の国の姫君’、もしこの3点のなかでお好きな絵をさしあげるといわれたら、すぐに‘シシリー・アレキサンダー嬢’を指さす。この愛らしいシシリーちゃんは8歳、お父さんは銀行家でコレクター。
シシリーはホイッスラーに70回以上もポーズをとらされたから、もうふくれっ面、‘おじさん、まだぁー?、もう遊びたいよー’と言っているにちがいない。我慢も限界にきているので顔の前に蝶々がひらひら飛んでいても心は和まない。本当にご苦労さん、とってもきれいに描かれているよ、といつも声をかけている。
風景画は‘ノクターン 青と金 バタシーの古橋’に魅せられている。この絵は歌川広重(1797~1858)の晩年の傑作、‘名所江戸百景 京橋竹がし’に構図を学んでいる。インパクトがあるのがなんといっても画面中央の橋桁、広重の‘名所江戸百景’の魅力のひとつになっているのがモチーフを手前でクローズアップでとらえる近像型と呼ばれる構図。ホイッスラーはこれを近景ではなく中景でおこない橋の存在感をだしている。
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