ズームアップ 名作の響き合い! 1881年
ルノワールの‘舟遊びの昼食’(ワシントン フィリップスコレクション)
モネとルノワールが好きなので、彼らが絵を描くためにでかけたセーヌ川沿いの町の場所が行ったこともないのに、地図の上ではイメージできるようになった。作品と親しんでいるうちに覚えた町のなかでもお気に入りの絵にでてくるところは強い思い入れがあり、いつかその場に身を置いてみたいと思うことがしばしば。
シャトゥーはそのひとつ。ルノワール(1841~1919)は1872年から1882年の間、たびたびここに滞在していい絵をいくつも描いている。その2点に200%魅せられている。1881年に制作された‘舟遊びの昼食’と‘テラスにて’。モデルたちがいるところはどちらもシャトゥー島にある家の2階につくられたレストラン‘ラ・メゾン・フルネーズ’。
‘舟遊びの昼食’はルノワールの友人や知人たちが生き生きと描かれた見事な群像肖像画、2005年日本で会ったときの喜びは一生忘れられない。そして昨年、ワシントンで2度目の対面をし、この絵がオルセーにある‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’とともに最高傑作であることを確信した。
また、2008年シカゴ美でみた‘テラスにて’もMy‘好きなルノワールベスト5’の一枚。赤い帽子を被り深い青色の服を着ているモデルは女優のダルロー、娘を愛するやさしい母親役にはぴったりの女性。アメリカの美術館にはこの2点のほかにも、‘ブージヴァルのダンス’(ボストン美)や‘劇場の桟敷席’(クラークコレクション)などルノワールのいい絵がいくつもある。つくづくアメリカの美術館巡りをしてよかったなと思う。
4年前、横浜美で待望のドガ展を楽しんだとき、ドガ(1834~1917)が制作した馬や踊り子の彫刻が全部で17点も展示されていた。そのなかで際立つ存在感をみせていたのが過去にオルセーやメトロポリタンなどでみたことのある‘14歳の小さな踊り子’。ほかの作品と違ってこの踊り子はドガが生前に発表した唯一の彫刻。みるからにバレリーナという感じで本人が目の前にいるようだった。
シャヴァンヌ(1824~1898)の‘貧しき漁夫’は心を揺すぶる作品、Bunkamuraでシャヴァンヌの描いた大作壁画の縮小版を何点か体験したが、この画家のイメージはまだ半分以上がこの絵で占められている。貧しい漁夫の家族の光景が描かれたシンプルな画面構成、男の深い内面描写によって生きていくことの尊さが静かに伝わってくる。
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