ズームアップ 名画の響き合い! 1876年
ルノワールの‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’(パリ オルセー美)
カイユボットの‘ローロッパ橋’(ジュネーブ プティ・パレ美)
昨年は多くの時間をさいて図録の大整理を行い、My図録全集をつくってきた。その作業もほぼ終了し今は脳がそこにおさまった美術品にたいしぐーんと本気になっている。
西洋絵画とは食わず嫌いにならず幅広くつきあうことを心がけている。でも、好みの濃淡は当然ある。どうしても心が向かわない画家がいる、例えば、幽霊やホラー映画にでてくる気持ち悪い怪物のイメージしか湧いてこないベーコン、また、ボナールも響かない。
こういう作家のものは除いてこれまで体験した絵画のなかで作家ごとに好きな作品ベスト5を選び、その描かれた時期を仕分けしてみる。すると、自分の好きな一枚が若い時に制作されたものとか晩年のものとかがわかってくる。作品の描かれた年というのは意外としっかり頭に入っていないもの。
日本でも西洋でも過去の歴史に大変興味がある。でも、何々の事件が西暦何年に起きたといっても知識としては頭に入っているがリアリティがないから脳はいまひとつ本気にならない。脳を本気にさせるひとつのきっかけになるのが関心のあることをベースにしてその時代に近づくこと。
さしむきこれを美術で行っている。第一回目の印象派展が行われた1874年から2年経った1876年、この年にどんな名画が生まれていたか、ベスト5からでてきた4点はルノワール(1841~1919)、カイユボット(1848~1894)、ドガ(1834~1917)、モロー(1826~1898)。
生きる喜びが全開モードの‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’がある一方、都市の華やかさと影の部分がひとつの画面のなかに描かれた‘ヨーロッパ橋’や何にも感動しないような表情をみせる女性がぐさっと胸につきささる‘アプサント’も同じ年に誕生した。そして、象徴派のモローが描いたのは19世紀末を彩るファムファタル(宿命の女)のイメージをつくったサロメ。
近代における芸術表現は一筋縄ではなくいろいろ複雑に絡み合う。だからこそ、アートに多くの人が魅せられる。
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