東京都美の‘世紀の日本画’展は日本美術の祭典!?
上野で現在行われている3つの展覧会は事前にセットの割引前売り券(2400円)を購入していた。最初にでかけた東博の‘クリーブランド美展’ではまわりに引換券を手にしている人が結構いるから、このシステムは好評のようだ。お客を多く集めるために美術館同士が連携するのはとてもいいこと。
東博で‘クリーブランド美展&人間国宝展’をみたあと、東京都美へ移動して‘世紀の日本画’展をみた。だが、大きな勘違いがあった。それを生み出したのがチラシのキャッチコピー‘日本美術の祭典’とタイトルの‘世紀’、この展覧会が日本美術院再興100年を記念するものであることはちゃんと書いてある。
しかもチラシには橋本雅邦の‘龍虎図’をはじめ輝ける近代日本画の傑作が全部で10点載っている。まさに‘日本美術の祭典’であり‘世紀の日本画’をイメージさせる。ところが、作品をみていくうちに期待していた日本画展とはちがうものがでてきた。
大観や春草、さらには安田靫彦、小林古径、前田青邨といったビッグネームの作品と一緒にちょっと前まで院展に作品をだしていたそこそこ有名な作家や現役の作家の作品まで展示されている。こうした作品が前期(1/25~2/25)にでている63点のうち23点もある。そして後期(3/1~4/1)にも同じくらいの数が展示される。だから、この展覧会は近代日本画の祭典ではなく‘日本美術院の祭典’。
というわけで馴染みの傑作を中心にみて、40分ほどでひきあげた。再会した作品のなかで長くみていたのは女性を描いたものが多い。4点ある安田靫彦(1884~1934)は‘飛鳥の春の額田王’がお気に入り。この絵をみているとロマンあふれる古代飛鳥の世界に誘われるような気分になる。
小林古径(1883~1957)の‘楊貴妃’をみるのは2005年に東近美で開催された回顧展以来。所蔵する足立美(安来市)でも体験したが、中国の楊貴妃の話を翻案した謡曲‘楊貴妃’を題材にして描かれたものだから、その美形は能面で隠されて見えない。しかし、そこには幽玄な世界が広がり気品のある楊貴妃の姿が心のなかに浮かび上がってくる。
小倉遊亀(1895~2000)の‘径’と‘舞妓’に会うのも久しぶり。2点ともMy好きな小倉遊亀に登録している。色白で丸顔の‘舞妓’をみるたびに若い頃の(今でも子供顔?)安達祐実を連想する。
今回の収穫は中村岳陵(1890~1969)の川で泳ぐ裸婦像。一度岳陵の回顧展を横須賀市美でみたが、この絵はでてこなかった。静岡県美には‘残照’という傑作があるが、この絵も所蔵していたとは!それにしてもこの女性は長身。一瞬、鏑木清方が描いたあの‘妖魚’が岩から降りてゆっくりと泳ぐ姿が頭をよぎった。
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コメント
私も先月、行ってまいりました。
おっしゃるように『日本美術院の祭典』という形容がぴったりの展覧会ですね。
小倉遊亀の『径』は、私も好きな作品です。ふんわりと明るい庶民の生活感がでていて、心が軽やかになります。 『舞妓』も、小倉遊亀の女性像の中で魅力的な作品ですね。
中村岳陵の裸体で泳ぐ女性像には、私もしばし立ち止って見とれました。
日本画として新鮮な図像ですし、こういった陰影がない分、透明感のある描写は、まさに日本画の真骨頂ではないでしょうか。
投稿: ケンスケ | 2014.02.12 22:46
to ケンスケさん
今回、新世代の院展作家はのぞくと出品作は2点
をのぞいてすでにみているものでした。ですから、
わくわく感というのはないのですが、ここに紹介
したようなお気に入りの作品を楽しみました。
クラシックな日本画がこれだけ集まった展示空間
はやはり壮観です。モーツァルトやマーラーの
音楽を聴くのと同じ感覚ですね。
投稿: いづつや | 2014.02.12 23:45
まあ、知らない画家も沢山観れたので、僕はよしとしました。
世紀の祭典、20世紀の祭典、では、如何かと。
今は2月半ばで、四月からの一年を待っている段階でどの美術館にもあまりチラシないですね。
チラシ集めるの好きでして。
投稿: oki | 2014.02.13 23:55
to okiさん
毎年行われている院展へでかけることはありま
せんので、あたらしい作家の日本画には心が
動きません。村上隆の弟の作品がありましたが、
足はとまりませんでした。
昔の日本美術院と今では美術館における重みが
ちがいますから、最近の作品がこんなに多くある
と、感動が薄められる感じです。
投稿: いづつや | 2014.02.14 12:42