アートに乾杯! シャヴァンヌの魅力
‘洗礼者聖ヨハネの斬首’(1869年 ロンドン ナショナルギャラリー)
パリのオルセー美を2008年訪問したとき、シャヴァンヌ(1824~1898)は重点鑑賞画家の一人だった。だから、玄関ホールと10点くらい飾られていた部屋では一点々熱心にみた。
2011年秋に展示スタイルを一新したオルセー、玄関ホールにあった‘夏’は前と変わってないのだろうか?この絵は縦3.5m、横5mの大作で画面には大勢の人たちが描かれているので思わず見とれてしまう。壁画の魅力がこの絵には満ち溢れている。
シャヴァンヌルームで一番長くみていたのは‘夢’、Bunkamuraで‘諸芸術とミューズたちの集う聖なる森’(シカゴ美)の前に立ったとき視線がすぐ向かったのが湖の上に飛来し竪琴を奏でている女神と恋の歌を歌っている女神、そしてすぐこの女神たちと‘夢’に描かれた3人の乙女が重なった。
乙女たちは上手い具合に配置され、薔薇の花、月桂冠、金貨を手に持っている。これは‘愛、‘栄光、’富’を象徴しており、左で眠っている旅人にどの徳をとるのか問いかけているところ。この絵はギリシャ神話におけるパリスの審判の話を思い起こさせる。この一枚でシャヴァンヌがぐっと近くなった。
もう一点、忘れならない絵がある。それはロンドンのナショナルギャラリーでお目にかかった‘洗礼者聖ヨハネの斬首’、シャヴァンヌが45歳の頃描いたこの作品は例外的に激しい絵。オルセーの静かで穏やかな絵がイメージされているので、ちょっと面食らった。シャヴァンヌにこんな心がザワザワする絵があったの!という感じ。
死刑執行人のムーア人は画面に平行になるように真横に描かれている。この人物の描き方が連想される絵が回顧展にあった。それは描かれている場面はちがうが‘聖女マリアたちの上陸’。十字架を右手にもった左向きの老人はムーア人同様、画面にぺたっと貼りつけられたように平面的に描かれている。
さらに、跪く二人の女性のうち目をとじてまっすぐ正面をむいている左の女性のポーズにぴんときた。両手を横に少し広げる姿は斬首される聖ヨハネの両手の恰好と同じ。2枚の絵は強く響き合っていた。
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