アンリ・ルソーワールドの魅力!
‘詩人に霊感を与えるミューズ’(1909年 モスクワ プーシキン美)
アメリカは美術大国だから美術館が所蔵する西洋絵画のなかにはヨーロッパを訪問するより充実した鑑賞体験だったなと思わせるものがある。その一つがアンリ・ルソー(1844~1910)。
08年にシカゴ美やワシントンナショナルギャラリーなどを訪問したが、そのときはルソーとはまったく相性が悪かった。だが、今年は大収穫、9点もみることができた。うち初見は5点。上々のヒット率だったので満たされた気分が1年中続いていた。
そのなかで最も心に響いたのはフィラデルフィア美でみた‘カーニバルの夕べ’、この絵のことは何年も前から知っていたものの、所蔵するのは遠い存在の感じがするフィラデルフィア美。このため、どうしても‘夢の絵画’になってしまう。その夢がようやく叶えられた。西洋絵画の鑑賞というのはやはり長い旅にでるようなもの。夢を持ち続けて本当によかった。
ルソーの作品でもう1点すごく感激したものがある。20年ぶりにみた大作‘夢’、NYのMoMAにはこの絵ともうひとつ有名な‘眠るボヘミアン’がある。前みたときはまだルソーに開眼してなかったためか、眠る女性の横におとなしくしているライオンばかりが気になり、‘夢’の印象は弱かった。
ところが、今回は‘夢’に200%KOされた。このジャングル画の人気は相当なもの、絵の前には大勢の人たちがいる。じっくりみて確信した。‘夢’がオルセーにある‘蛇使いの女’とともに最高傑作であることを。ルソーの技術、色彩感覚、構想力すべてがこの絵に結実している。
今年は日本の展覧会でもルソーのビッグな作品をみることができた。横浜美で開催されたプーシキン美展に出品された‘詩人に霊感を与えるミューズ’、こんないい絵と日本でお目にかかれるのだからたまらない。手が異様にデカいミューズのモデルはアポリネールの恋人ローランサン、ここでは本人と似ているかどうかは問題ではない。ルソーは小柄なローランサンを量感豊かな芸術の女神に変身させた。
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