ルーヴルの水彩‘出現’はみれるだろうか?
マティスの‘王の悲しみ’(1952年 ポンピドゥーセンター)
サロメを題材にした作品は多くの画家が手がけているが、衝撃度の強さではモロー(1826~1898)のサロメが一番。ヴァージョンがいろいろあり‘出現’、‘踊るサロメ’、‘牢獄のサロメ’といったタイトルがつけられている。これまで3点お目にかかった。モロー美とボストンのハーヴァード大フォッグ美が所蔵する油彩の‘出現’2点、そして西洋美にある‘牢獄のサロメ’。
モローが1876年のサロンに出品したのは水彩で描かれた‘出現’。この絵の存在を知ったのは26年前のこと。画集にはルーヴル美デッサン室の所蔵になっている。当時思ったのはこの絵が実際にルーヴルでみれるかどうかということ。あの広い展示室に飾ってあるのは大半が油彩、だからこいういう水彩は通常はでてこない。お目にかかれるのは西洋絵画の専門家とかモローの研究者にかぎられる。
一般の美術ファンがみる機会があるとすればモローの回顧展が開催されたとき。だから、これをずっと待っている。ところが、日本で回顧展を2,3回体験してもいずれもルーヴルの‘出現’が特別出品されるという‘事件’には遭遇しなかった。
もっともこの水彩だけでなくモロー美蔵の油彩‘出現’も日本にやって来たことはない。モロー美のものはたびたび展示されるが(現在汐留ミュージアムにも展示されている)、やはりお宝中のお宝は貸し出してくれない。これは仕方がないこと。
日本で‘出現’がみれたのは2002年にあった‘ウインスロップ・コレクション展’(西洋美)。このフォッグ美が所蔵する油彩の‘出現’はモローがサロンに出品した水彩画に基づいて制作したレプリカ。水彩画のサイズが縦105㎝、横72㎝であるのに対し、これは56㎝、47㎝の小品で顧客の依頼により描かれた。
2点の油彩‘出現’をみたのだから水彩もみてコンプリートしたいのだが、これから先も縁がないような気がする。この絵は西洋美とかBunkamuraあたりが動いてもダメなのかもしれない。
サロメ絡みの絵でもう一枚みたくてしょうがない作品がある。それはポンピドゥーセンターへ何度出かけてもふられ続けているマティス(1869~1954)の切り紙作品‘王の悲しみ’。この絵はヘロデ王の前で踊るサロメを描いたともサウル王がダヴィデの弾く竪琴を聴いて土師サムエルに見捨てられた悲しみを癒している場面を描いているともいわれている。
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コメント
出現の水彩版は3月1日までオルセー美術館で開催中の
「美術批評家ジョリス=カルル・ユイスマンス
フランチェスコ・ヴェッツォーリの視点によるドガからグリューネヴァルトまで」
という展覧会に出品されてます。
投稿: オペラ座の変人 | 2019.12.07 09:05
to オペラ座の変人さん
貴重な情報ありがとうございます。オルセーに
‘出現’が展示されているのですか! 孫悟空に
変身しすっ飛びたいです。
投稿: いづつや | 2019.12.07 15:25