修復されたダ・ヴィンチの‘聖アンナと聖母子’がみたい!
修復されたダ・ヴィンチの‘聖アンナと聖母子’(1510年頃 ルーヴル美)
パリをまた訪問することがあったら短時間でもいいから寄ってみたい美術館がある。西洋絵画の殿堂、ルーヴル美。展示される部屋が大きく変わったオルセーは2時間くらいは館内にとどまっていたいが、ルーヴルは30分でOK。
では、その30分に何をみるのか。お目当ては1点、ダ・ヴィンチ(1452~1519)が最後まで手元においていた3点のうちのひとつ‘聖アンナと聖母子’。先月‘美の巨人たち’でこの絵がとりあげられたとき、なんでこのタイミングと思ったがそこにはちゃんと理由があった。この絵は2009年から2012年まで3年かけて修復され、聖母マリアの衣服の青が見事に甦った。番組をみるまで修復の話はうかつにもNOタッチ。
美術番組の‘美の巨人たち’や‘世界の名画’をいつも熱心にみているのはこういう新しい情報に接することができるから。修復によりこれまでみていた実物のイメージがガラッと変わった。目を奪われるのは明るく輝くラピスラズリ―が使われた聖母マリアの衣服の青、絵の前に立ったらこの青に体が震えそう。そして聖アンナの背景に描かれた遠くの山々、青みをおびたうす明るい色合いがなんとも目に心地いい。これぞ空気遠近法の真髄という感じ。
これと同じ色調でぼんやりした感じの風景を2010年12月に開催された特別展‘ダ・ヴィンチ モナ・リザ25の秘密’(日比谷公園)で体験した。フランスのパスカル・スコットは自らが発明したマルチスペクトル高解像度カメラを使って‘モナ・リザ’が描かれた当時の姿を再現してくれた。これは絵ではなく画像なのに半端じゃないほど心を打つ。モナ・リザの顔の表情や髪の毛や衣服の襞の精緻な描写、そして紫もまじった明るい青で描かれた遠くの山々の光景を息を吞んでみた。
この青みがかった風景が本物の絵で甦った。‘聖アンナと聖母子’をみるだけでもルーヴルへ足を運ぶ価値がある。パリでの楽しみがひとつ増えた。
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コメント
ヨーロッパの美術館で修復以後の作品を数多見てきましたが、数百年の間のニス焼けを取り除いたり、絵具の退色した部分を塗りなおしたり(油彩画には後で除去できるよう水彩絵具が使われるそうですが)すると、まったく別の作品のように生まれ変わりますね。
さて『聖アンナと聖母子』は修復後、ルーブルで特別展が開かれたようで、そのカタログを日本の図書館で何度か見ました。青が以前とあまりに違うので、やはり驚きますね。
『モナリザ』のほうは、あまりに貴重な絵だから修復は危険だと、今のところ見合わせているそうです。
投稿: ケンスケ | 2013.12.07 07:45
to ケンスケさん
‘聖アンナと聖母子’は好きなダ・ヴィンチ作品
ですので、修復によって鮮やかに甦った青にくら
くらしてます。描かれた当時はこんなだったの
ですね。やっぱりダ・ヴィンチの絵は特別な感じ
がします。
いつも興味をもってみているのが空気遠近法で
描かれた背景の風景なものですから、この聖アンナ
の後ろにはとても魅せられます。早くみてみたいです。
そして、同様に修復が完了したロンドンのナショ
ナルギャラリーが所蔵する‘岩窟の聖母’とも再会
したいですね。BBCの番組で修復の様子がでてきまし
たが、地道な作業を長いことつづけ名画の元の色を
よみがえらせるのですから、やりがえのある仕事
ですね。
そしてわれわれはこういう人の手をへて生まれ変
わった名画をみてあらためてその美に感動する。
絵画の鑑賞って楽しいですね。
投稿: いづつや | 2013.12.07 09:16