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2013.11.15

三渓園で待望の‘今村紫紅展’!

Img_3     ‘護花鈴’(右隻 1911年 霊友会妙一記念館)

Img_0001_3          ‘伊達政宗’(1910年 横浜美)

Img_0005_5                 ‘枇杷ニうそ’(1913年 横浜美)

Img_0002_2                   ‘山村夕暮’(1913年 三渓園)

展覧会の華はなんといってもひとりの作家の作品を沢山鑑賞できる回顧展、だから、好きな日本画家の回顧展は規模の大小を問わず関心を持ちせっせと足を運んできた。絵をみる側からすれば、特定の画家だけでなく画集に載っているようなビッグネームであれば、あまり間隔をあけず回顧展に遭遇したいというのが切なる願い。

でも、実際はこちらの思うようにはいかず、回顧展に縁のない画家がでてくる。今年は嬉しいことに二人の画家についてはその状況が解消された。‘竹内栖鳳展’(東近美)と横浜の三渓園で開催中の‘今村紫紅展’(11/2~12/8)。今村紫紅(1880~1916)は‘横山大観展’(横浜美)のプラスフォーの一人だから、これをみたあと三渓園に向かへば紫紅にもぐっと近づくことができる。

三渓園行きのバスはJR桜木町駅前のバス乗り場2番からでている。本牧行きの8番に乗って25分くらいで着いた。ここから三渓園までは10分ほど。大観展のチケットをみせると100円引きになり700円で園内と展覧会が楽しめる。なかに入るのは3度目なので道順はわかっている。チラシを手にして展示室へ急いだ。

作品の数は全部で33点ほど、ほかに紫紅らが絵付けしたやきものが9点ある。東近美で開催されるような大規模な回顧展ではないが、なにしろ紫紅のはじめて体験する回顧展なので目に気合が入る。横浜美でも‘熱国之巻’(重文)や‘細雨’などいい絵をみたばかりだから、‘紫紅パート2’といった感じ。

期待通り目の前に現れてくれのが‘護花鈴’、これは5年前‘日展100年展’(国立新美)で出会い大変魅了された作品。大和文華館にある国宝の‘婦女遊楽図屏風’を彷彿とさせる人物描写を息を吞んでみていた。真ん中に桜の木がどんと配置され花見を楽しむ女たちがひとり々大きく描かれているので、視線は画面の右から左へとゆっくり進んでいく。一見すると平板な画面構成だが、鳥を追い払うために鈴のついた赤い紐が斜めに交差してはられているため奥行きのある空間になっている。まるでこの光景をすぐ近くでみているよう。

歴史人物画のなかでお気に入りは‘伊達政宗’、惹かれるのが構図の妙。背景の十字架は上が切れておりよくみないとこれが十字架であることに気付かない。もうひとつ上手いなと思うのは座った政宗の右足の端がこれまた画面からはみだしていること。紫紅は意図してこのように描き政宗の存在感を強調している。

紫紅の天性のカラリストぶりが発揮されているのが風景画や花鳥画。思わず足がとまったのが緑と黄色の組み合わせが目に心地いい‘枇杷ニうそ’。うそは雀よりすこし大きい鳥。枇杷の枝にとまっているうその位置がピタッときまっている。こういう構成は描けそうで描けない。本当にいい絵をみた。

‘山村夕暮’は南画の池大雅を連想させる作品、ぬくもりがありゆったりとした山村の情景が緑と墨の濃淡によって表現されている。こうしたほわほわもこもこタイプの絵が3点ある。肩の力が自然にぬけリラックスした気分でながめていた。

歴史や文化に高い見識をもち美術品に対する審美眼もそなわった原三渓(1868~1939)は今村紫紅の才能を高く評価し、作品を手に入れ支援しつづけた。その紫紅の回顧展を三渓園で体験するのは感慨深く、時の流れを感じさせる。満ち足りた思いで展示室を後にした。

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コメント

今村紫紅展楽しみです。「御花鈴」は図版でしか観たことがなかったので、「いつかきっと…」と思っていたのですが、まさか三渓園で観られるとは。
これ以上わが身の「ご加齢」が進まないうちに、今日行ってきまーす(´∀`)/。

投稿: 楓 | 2013.11.16 06:06

to 楓さん
二度目の‘護花鈴’を堪能しました。人物が等身大
のような大きさで描かれていますので、一緒に桜を
みているような気分になります。どうかお楽しみ下さい。

ほかにも大観らと一緒に描いた‘東海道五十三次絵巻’
もあります。大観展にも出品されてますが、こちらに
は巻ニがでてます。また、東博蔵の‘説法’もあります
から、充実したラインナップです。

投稿: いづつや | 2013.11.16 09:56

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