王朝文化へ誘う光悦の書!
‘鹿下絵新古今集和歌巻断簡’(江戸時代・17世紀 サントリー美)
‘桔梗下絵新古今集和歌色紙’(江戸時代1606年 奈良 大和文華館)
琳派の絵画に優美で華麗なイメージを重ねあわせるのは画面全体に金泥や銀泥がふんだんに使われているから。本阿弥光悦(1558~1637)が和歌を書き写した巻物や色紙も下絵のモチーフがこの金銀泥や雲母で形どられ古の王朝文化の世界が再現されている。
光悦のこうした書をみると光悦の体の半分は琳派という感じがする。いや、俵屋宗達の絵とコラボしているのだから、琳派の大元締めといっていいかもしれない。光悦が選んだ新古今の和歌や百人一首はわずかしかなじみがないのに、琳派狂いゆえ宗達やほかの絵師たちが描いた鶴や鹿、そして蓮や桔梗などを前にすると敏感に反応する。
書についての知識が乏しいため光悦の書のスタイルはなにもわかっていない。でも、筆で流れるように書かれた漢字やひらがなの形の美しさは十分に感じとれる。これは外国人が漢字の形の美しさに魅せられタトゥーに使っているのと同じ感覚。
今回巻物、断簡、色紙が沢山出ている。巻物は展示スペースの関係で最初から最後まではみれないが、1/3くらいはみせてくれている。これに対し断簡はそのまま楽しめる。鹿が下絵に使われているものは通期で7点もでてくる。このなかで鹿が何頭も描かれているサントリー蔵のものがお気に入り。宗達の動きのある鹿の描写は本当に上手い。余白がたっぷりとってあるので鹿が今にも走りだしそう。
草花や木はいろいろある。蓮、竹、松、桔梗、すすき、梅、忍草、芍薬、雌日芝、藤、、、蓮の断簡は4点。これまでみたことのある二つの花びらを斜めに配置して墨で大きく描いたものの前にしばらくいた。竹がでてくる巻物はこれまで数点みたが、今回展示されている‘花卉鳥下絵新古今集和歌巻’は展覧会にはじめて登場したもの。太さの違う竹がいくつも描かれており、これにより画面に奥行きができている。
桔梗にすすきの下絵を描いた色紙はビジーそうにみえるが、全体のバランスは絶妙にとれている。光悦の書は濃く書くところと薄く流れるような細い線で書くところがあるので歌そのものが前後に揺れているようにみえる。絵は書によって動きを与えられ、そして同時に絵が書をつき動かし和歌のイメージする世界をつくりだす。
光悦ってやはりすごい芸術家、自然を前にして頭のなかにつまっている古典の教養を自在にとりだし下絵のモチーフとコラボさせ書と絵を一体化させる。これはある種のコラージュ、光悦にますますのめりこんでいく。
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