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2013.11.30

パリ ギュスターブ・モロー美術館の忘れもの!

Img_0005_2       パリ ギュスターブ・モロー美

Img_0004_2            ‘出現’(1876年)

Img_2            ‘ユピテルとセメレー’(1895年)

Img_0003_2     ‘オイディプスとスフィンクス’(1864年 NY メトロポリタン美)

1月5年ぶりに訪問したNY、定番の市内観光のときは心はゆるりとしているがメトロポリタン美のなかに入ると俄然目、足、手に力が入ってくる。追っかけ画めざして忙しく館内を動きまわった。

お目当ての作品が次々と現れてくれるのでテンションは上がりっぱなし。鑑賞エネルギーの大半は必見リストに載せている絵画に注がれているので、一度みたことのある作品は名画でも我慢して歩きながらチラッとみるだけ。でも、なかには思わず見惚れてしまうものがある。ギュスターブ・モロー(1826~1898)の‘オイディプスとスフィンクス’もそのひとつ。モローの絵ではこれに最も魅せられている。

その次がオルセーにある‘オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘’、ギリシャ神話はライフワークだからこういう絵がお気に入りの上位にくる。3位は2点、幸運にも日本でみた‘キマイラ’(フォッグ美)とモロー美にある‘出現’。

今から22年前の1991年にパリで美術館めぐりをし、モロー美にも出かけた。お目当てはあの有名な絵、サロメの前に洗礼者ヨハネの首が現われる‘出現’。作品の情報はこれしかなくしかも絵が強烈なインパクトをもっているとどういうことがおきるか。今だにわからないのだが、頭のなかが妖艶なサロメの姿に完璧に占領されてしまった。そのため、ほかの絵のことはほとんど覚えてない。

わざわざモローが住んでいた家まで行って沢山飾ってあった作品をみたというのに、‘求婚者たち’や晩年に描かれた‘ユピテルとセメレー’をこの目でみたという実感がないのである。このもどかしい気持ちをずっと引きづっており、TVの美術番組でモロー美が紹介されるたびに大きな忘れ物をしたなという思いにかられる。

大作‘ユピテルとセメレー’を正気の状態でみたら、たぶんこの絵がお気に入りベストワンになるはず。今度は画面の隅から隅までじっくりつもり、願いは叶うだろうか。

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2013.11.29

わくわくワールドツアー! 観光客の数が8000万をこえるフランス

Img       国別観光客数ベストテン(2010年~2012年)

数日前、あるTV番組で日本を訪れる観光客の数が今年は1000万になることを話題にしていた。その際ほかの国のデータも紹介された。こういう数字はこれまで意識して記憶してなかったので、とても新鮮。で、今日はフランスの観光事情についての話を。

2012年、フランスを訪れた観光客は8300万人。断トツの1位、日本は837万だからちょうど10倍、フランスに多くの人が行っていることはわかっていたが、その数が8000万をこえていたとは!やっぱりフランスの人気は絶大だった。

フランス観光は大半が芸術の都パリの名所をめぐる旅。定番であるルーヴル、オルセーにいる時間を多くとり、絵画や彫刻の名品を心ゆくまで楽しんできた。だから、パリ以外で出かけたところは多くなく、団体ツアーのコースとかオプショナルツアーに入っているものばかり。ヴェルサイユ宮殿、バルビゾン、フォンテーヌブロー、ロワール川周辺の古城、モン・サン・ミッシェル。

このほか若い頃スイスのジュネーヴに住んでいたときクルマでプロヴァンス地方のアヴィニョン、コートダジュールのニース、カンヌを訪問した。こうしたところはモン・サン・ミシェルを除いてかなり前のことだから記憶もうすれており、フランスはパリ以外はあまり知らないといったほうがあたっている。

8300万の観光客が訪問する街の内訳がわからないが、パリを観光する人が圧倒的に多いことは容易に想像できる。この割合は8割くらい?パリ以外のところで大勢の人が押し寄せているのはやはり南仏のリゾート地、コートダジュールだろうか、ニースは一泊しただけだが、心は浮き浮き気分で何日もいたくなるようなところだった。あの地中海の青い海と光り輝く空をまたみたい!

新たに開拓したいところは北のノルマンディー海岸、モネが住んでいたジヴェルニー、シャルトル大聖堂、リヨン、そして、ゴッホが傑作を次々と生み出したアルル。
得意のプランス語に磨きをかけなくては、、ウソです。

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2013.11.28

イッピン 益子焼!

Img     濱田友緒の‘コーヒーカップ’

Img_0001      濱田友緒の塩窯で焼いた作品

Img_0002_2     益子焼の‘手洗い鉢’

Img_0003        モダンなデザインの手洗い鉢

今週火曜日に放送されたBSプレミアムの番組‘イッピン’(夜7時30分~8時)を楽しくみた。現在を生きる職人たちの熟練された手業にスポットをあてたこのイッピンは1年くらい前にはじまったが、お気に入りの番組なので関心のあるやきものなどがでてくるときは釘づけになってみている。今回とりあげてくれたのは栃木県の益子焼。

7,8年前益子へ出かけたが、どういうルートでクルマを走らせたかよく覚えていない。で、益子町のHPを検索してみた。アクセスの案内によると、三郷から常磐自動車道を北上し、友部JCTで北関東自動車道に入り桜川築西ICで降りる。そして県道41線を走るとICから益子までは20分で到着。地図をみると益子は以前よくでかけた笠間の上のほうにある。暖かい季節になったらまた訪問してみたい。

この番組で益子焼の現状がよくわかった。原宿にある洋服や雑貨を扱うセレクトショップでは若い人の間で色やデザインがモダンな益子焼は人気がありよく売れているという。ここに作品をだしているのが濱田庄司の孫の濱田友緒。

この人の作品は8年前京都の大山崎山荘美で開催された展覧会(拙ブログ05/11/20)でお目にかかったが、一目見て魅了された。とにかく造形が斬新で色のセンスがとてもいい。濱田庄司のDNAは息子ではなく孫に受け継がれたという感じ、世にいう隔世遺伝というやつ。そのあと作品をみる機会がなかったが、TVでその最新作の一端に接することができた。美術館めぐりで原宿の近くにでかけた際はセレクトショップをのぞいてみようと思う。

番組で案内役をつとめるモデルの女の子が訪問したショールームに興味深いものが飾ってあった。それは益子焼の‘手洗い鉢’。直径は35㎝以上ある。こうした陶器製のものはレストランとかホテルで時々みかけるが、今では個人の住宅にとりつける人が増えてきているらしい。値段が3~4万円で、オーダーメイドで大きさ、形、デザインが自由に選べるという。

大きなやきものがつくれる職人の確かな技と日常生活に潤いをあたえる現代感覚の色彩とデザインがうまく合致し新しい益子焼が誕生した。進化する益子焼の姿にとても刺激を受けた。

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2013.11.27

夢のマネ追っかけ旅行 ドイツ!

Img_0003_2

Img_0005_2      ‘ナナ’(1877年 ハンブルク美)

Img_0007_2     ‘昼食(アトリエにて)’(1868年 ミュンヘン ノイエ・ピナコテーク)

Img_0006_2      ‘マクシミリアン皇帝の処刑’(1868年 マンハイム市美)

東京富士美で想像もしなかったマネ(1832~1883)の‘アルジャントゥイユ’が日本にやって来るという情報に接し、ちょっと興奮している。これでマネの残っている追っかけ画のひとつは来年目途がついた。ではほかはいつみれるか。どの画家でも同じだが、作品のコンプリートは大変、高い壁があり夢の鑑賞のままで終わることはわかっている。が、心の隅ではいつかこの目でと思いつづけている。

今マネの絵でみたいものがドイツに3点ある。‘ナナ’、‘昼食(アトリエにて)’、‘マクシミリアン皇帝の処刑’。この追っかけはドイツを個人旅行することでしか実現しない。ドイツのなかをよく旅行したとはとてもいえないので、団体ツアーでなく個人で動くと楽な旅にはならないことは容姿に察しがつく。

北ドイツは若い頃ジュネーヴに住んでいたとき車でハノーファーまで走った。ハンブルクはそこからそう遠くない。ドイツ三大都市のひとつだから、一度は出かけてみる価値はありそう。BSの美術番組のお蔭でハンブルク美にはいい作品が揃っていることもわかった。やっぱりここで‘ナナ’に会いたい。

ミュンヘンは一度訪問したことがあるが、出かけた美術館は古典絵画を展示するアルテ・ピナコテークだけ。当時われわれの美術への関心は普通程度だったから、すぐ前に近代絵画を集めたノイエ・ピナコテークがあったことは知るよしもない。ところが、今はマネにどっぷりはまり‘昼食(アトリエにて)’の前に立ちたいと強く思うようになっている。人生どう変わるかわからない。

ゴヤの絵を連想させる‘マクシミリアン皇帝の処刑’があるマンハイムはハイデルベルクのすぐ近くにある街、ハイデルベルクはロマンチック街道を走ったとき立ち寄り古い城を見学した。ロンドンのナショナルギャラリーに‘マクシミリアン皇帝の処刑’の別ヴァージョンがあるが、マンハイム市美にあるものがとても気になる。

来年京都で念願の‘アルジャントゥイユ’をみたら、ドイツにある作品にも心がぐっと寄っていくかもしれない。

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2013.11.26

アートに乾杯! 今年お目にかかったマネ

Img_0001      ‘散歩’(1880年頃 東京富士美)

Img_0003     ‘若い女性の肖像’(ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0002     ‘マホの衣装を着けた若者’(1863年 NY メトロポリタン美)

Img_0005     ‘老音楽師’(1862年 ワシントンナショナルギャラリー)

今年多くの時間を割いて取り組んでいるのがMy図録づくり、これまで作家の回顧展が開催される度に買い込んできた図録のなかには古くなったものもあるのでこれらを解体して作品の図版だけを軸になる図録に貼り付けていく。また、別のファイルにおさめていた作品もここに集結させる。すると、ちょっと分厚くなってくるが結構いい作品の並んだ画集ができあがる。

マネ(1832~1883)の場合、回顧展を体験したのは2010年に三菱一号館美であった‘マネとモダン・パリ’しかないのでこの時の図録を使い、白紙のところに市販の画集に載ってない作品を丁寧に配置している。その数15点。この作業はコラージュをやっているのと同じだから楽しい。

この15点のなかには今年アメリカの美術館めぐりをした際、作品を撮影した写真も含まれている。訪れた5つの美術館でお目にかかったマネは全部で18点、幸いにも追っかけ画がかなりヒットしたうえ初見の作品にも多く遭遇したのだからいうことなし。美術館ごとにみると

★ワシントンナショナルギャラリー 4点  ‘老音楽師’、‘死せる男’など
★フィリップスコレクション 1点 ‘スペイン舞踊’
★フィラデルフィア美 5点 ‘ル・ポン・ポック’、‘海景画’など
★メトロポリタン美 7点 ‘闘牛士’、‘マホの衣装を着た若者’、‘マネ夫人’など
★グッゲンハイム美 1点 ‘イブニングドレスの女性’

国内の美術館で行われた展覧会でも3点のマネ作品と出会った。
‘花瓶のモスローズ’ クラークコレクション展(2月 三菱一号館美)
‘アントナン・プルーストの肖像’ プーシキン美展(7月 横浜美)
‘散歩’ 光の賛歌 印象派展(11月 東京富士美)

‘散歩’は三菱一号館美にも出品されたが、日本にあるマネでは一番いいかもしれない。富士美の自慢のコレクションのひとつ。この女性画をみてすぐ頭をよぎったのがワシントンナショナルギャラリーでみた若い女性の肖像。鑑賞時間の関係でタイトルを書きとめなかったが、とても魅了されたのですぐシャッターをきった。

マネはスペインが好きだったので闘牛士などスペインものの作品をいくつも描いている。アメリカでみたものではメトロポリタンにあった‘マホの衣装を着た若者’とワシントンナショナルギャラリーでの追っかけ画‘老音楽師’が強く印象に残っている。

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2013.11.25

マネの傑作を2点も所蔵するトゥルネー美術館!

Img_2     ベルギー ワロン地方の町トゥルネー

Img_0003_2     マネの‘アルジャントゥイユ’(1874年)

Img_0004_2     マネの‘ラテュイユ親父の店’(1879年)

先週八王子でみた‘光の賛歌 印象派展’(10/22~1/5 東京富士美)、今出かけてよかったなとつくづく思っている。出品作はルノワールの‘ブージヴァルのダンス’をはじめとして予想以上にいい作品が海外の美術館から集められており、印象派絵画の魅力をあらためて感じることができた。

絵画の好みは人夫々だが、印象派やポスト印象派が好きな人にとって日本の展覧会シーンは最高に思えるかもしれない。お楽しみ満載の展覧会が頻繁に開かれる。ここ数年でみても、2010年に‘オルセー美展 ポスト印象派’(国立新美)があり、2011年は‘ワシントンナショナルギャラリー展’(国立新美)、そして今年は三菱一号館美で‘奇跡のクラークコレクション展’と東京富士美の‘印象派展’、さらに国立新でも現在‘印象派を超えて 点描の画家たち’(10/4~12/23)が開催されている。

‘光の賛歌 印象派展’は図録を買うまでほかの美術館に巡回することを知らなかった。再掲すると
・福岡市博 2014/1/15~3/2
・京都文化博 3/11~5/11

展示される作品は少しづつ違うが3館のうち最も豪華なラインナップなのが京都文化博、というのもここではルノワールの‘ブージヴァルのダンス’だけでなくマネの傑作‘アルジャントゥイユ’もみれるから。富士美と福岡市博では‘アルジャントゥイユ’は残念ながら展示されない。

この絵を所蔵しているトゥルネー美はベルギーにある美術館。以前からここにマネ(1823~1883)の気を惹く絵が2点もあることは知っていたが、なにしろフランスの国境近くにあるトゥルネー(人口6.8万人)は個人旅行でしか行けないようなところなので、作品とは一生縁がないと思っていた。

ところが、‘ラテュイユ親父の店’がなんと三菱一号館美の開館記念展‘マネとモダン・パリ’(2010年)にやって来た!流石高橋館長、皆の期待値を200%上回るものを海外の美術館からもってきてくれるのだから嬉しくなる。そして、今度は‘アルジャントゥイユ’が出品されることになった。

図録を読むとこの作品は今年大修復が行われ、展覧会に登場するのは30年ぶりとのこと。ベルギーでこの絵を鑑賞するのに要する時間と費用に比べたら京都まで足をのばすのは楽なこと、来年も京都旅行がありそう。

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2013.11.24

2014年 トレドでエル・グレコ没後400年の展覧会!

Img_0003       トレドの景観

Img_2       ‘聖衣剥奪’(1577~79年 トレド大聖堂)

Img_0002     ‘聖衣剥奪’(1580年代 ブダぺスト国立美)

Img_0001_2     ‘オルガス伯爵の埋葬’(1586~88年 サント・トメ教会)

BS朝日の美術番組‘世界の名画’(金曜)は15日がベラスケス、22日がエル・グレコとスペインものが続いた。2日前の‘世界遺産トレドの旅 神秘と祈りの画家 エル・グレコ’は9月頃ほかのBS局でトレドの旅物語をみたから、今回はパスでもよかったが、エル・グレコ(1541~1614)にスポットをあてた番組を見逃すわけにはいかないのでビデオ収録しておいた。これが大正解、昨日みたら貴重な情報が含まれていた。

来年2014年はグレコ没後400年、そこでトレドでは1年にわたって様々な催しが企画されている。市の観光局の女性局長の話によると6つの展覧会が開催され100以上のグレコの作品が鑑賞できるという。これはグレコの大回顧展!グレコの大ファンだから血が騒ぐ。

勝手な予想だが、グレコの傑作がプラド美をはじめとするスペイン国内の美術館や教会からどどっと集められてくるのではなかろうか。そして、海外の美術館にあるものもスペインに里帰りすることだって十分ありうる。すぐ思いつくのはアメリカの美術館、質の高い名画が揃っているメトロポリタン美やワシントンナショナルギャラリー、そして1点あるシカゴ美。

また、ヨーロッパでは10年前‘グレコがここにこんなにあるの!’と感激したブダペスト国立美から‘聖衣剥奪’の別ヴァージョンが出品され、トレド大聖堂のお宝‘聖衣剥奪’と並べて展示されることだって可能性としてないわけではない。

トレドにあるグレコの絵で誰もが大きな感動を覚える作品というと、‘聖衣剥奪’、サント・トメ教会にある‘オルガス伯爵の埋葬’、そして今年1月日本にやって来た‘無原罪の御宿り’(サンタ・クルス美)。

この3つだけでも体はふらふらになるのに、もしもサント・ドミンゴ・エル・アンティーグオ聖堂やドーニャ・マリア・デ・アラゴン聖堂の祭壇衝立のために描かれた作品がプラド美やシカゴ美からもどって来て当時の祭壇が実現するとなったら、これはもうすごいイベント。ひょっとするとこの再現プロジェクトは静かに進行しているかもしれない。

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2013.11.23

目にとまったモネの初見作品!

Img_0001     ‘林檎の下、ヴェトゥイュ近郊’(1878年 アーカンソーアートセンター)

Img_0003     ‘プールヴィルの上げ潮’(1882年 ブルックリン美)

Img_0004     ‘アヴェル門からみた針岩、エトルタ’(1886年 カナダ国立美)

Img_0005     ‘日本の橋’(1918~24年 バイエラー財団美)

印象派の画家で鑑賞した作品の数が一番多いのはモネ(1840~1926)、モネの風景画が好きな人は世の中に大勢いるから回顧展は定期的に開催される。お蔭で図録がどんどん手元に残る。そしてそれらはモネファンにとっては大事に々扱う宝物になっていく。今その宝物は8冊。

東京富士美でみた‘光の賛歌 印象派展’(10/22~1/5)に出品された約80点のなかでモネの絵は27点、だからこの特別展も気持ちの上ではモネの回顧展をみているようなところがある。海外の美術館から集めてきているので初見のものも多い。で、目にとまった作品をいくつか紹介したい。

‘林檎の下、ヴェトゥイュ近郊’は色の輝きでいうとボストン美からやって来た‘ル・カヴェへの道、プールヴィル’とともに最も惹きつけられる作品。手前に描かれた林檎の赤に目を奪われる。赤い林檎に対して、白が強く印象づけられるのは海の波。チラシをみて気になったのがブルックリン美蔵の‘プールヴィルの上げ潮’。

この作品はこれまで図録に参考作品としてよくでてくるのでいつか対面したいと願っていたが、やっとみることができた。強い風に吹かれて白い波が連続して海岸にむかって打ち寄せていく光景がじつによく描かれている。こういう絵ではあまり絵に近づかないほうがいい。すこし離れると絵を描いている少し高い場所からみているような気分になり、風の音が聞こえ緊張感がだんだん増してくる。

興味深くみていたのがエトルタにある有名な奇岩を描いた‘アヴェル門からみた針岩’、アヴェル門を描いた作品はモネだけでなくクールベも体験したが、このようにアヴェル門のなかにその向こうにあるエギュと呼ばれる針岩を描いたものははじめてみた。この光景は絵柄としては確かにおもしろいが、針岩が大きすぎるのでビジーなフォルムにみえる。針岩を小さくして遠景をここに入れるという風にしたら、絵が引きしまるのだが。

晩年モネは白内障に苦しめられた。目がだんだんみえなくなり色の識別ができなくなる。そのため、この頃描かれた日本の太鼓橋はかなり粗っぽい筆使いで線が引かれ画面全体が抽象画的な表現に変化していく。そのなかでこの絵は例外的に緑色の重ね方が丁寧でまとまりのある橋の形になっている。思わず足をとめて長くみていた。収穫の一枚。

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2013.11.22

レンジャーズ タイガースの主砲フィルダーを獲得!

Img

レッドソックスのワールドシリーズ制覇で湧いた大リーグはその興奮がだいぶおさまり、今は来シーズンのチーム編成にむけて進められているトレード話やFA選手の獲得あるいは再契約交渉に関心が集まってきている。

そんななか、レンジャーズがトレードでタイガースの主砲フィルダー(29歳1塁手)を獲得したというニュースがとびこんできた。タイガースに移るのは主力選手のキンスラー(31歳2塁手)、これはサプライズの大型トレード!

フィルダーの今年の打撃成績は打率.277、25本塁打、106打点、ホームランの数は期待を下回っているが、大リーグを代表するパワーヒッターの一人であることは間違いない。年齢もまだ29歳。

レンジャーズが今シーズン地区優勝出来なかったのは打撃力の弱さが原因。だから、強打のフィルダーを獲得したのはチームにとってはグッドニュース。もしFAになっているクルーズ(27本塁打)が来季もレンジャーズでプレーしてくれたら、今年好調だったベルトレー(.315、30本塁打、92打点)、そして新加入のフィルダーで強力なクリーンナップができあがる。

フィルダーの移籍でダルビッシュの勝星はだいぶ上乗せができそう、今年ダルビッシュは0-1で敗けた試合が4つもあった。ロングを打てるのがベルトレーだけではゲームは思うように勝てない。フィルダーが期待通り活躍すれば、投球技術に磨きをかけさらなる進化をめざすダルビッシュの勝ちは20勝に近づきワールドシリーズへの進出も現実味をおびてくる。

レンジャーズにとって補強のポイントは打撃の強化、GMは次に獲得する選手を今いろいろ思案中だろう。かつてのように足を絡めてどんどん得点を重ねる攻撃のスタイルが復活すれば、ダルビッシュの投げる試合がぐんと楽しくなる。だから、このあとのチーム編成に目が離せない。

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2013.11.21

東京富士美にこんないい西洋絵画があったとは!

Img      ラ・トゥールの‘煙草を吸う男’(1646年頃)

Img_0001     ルブランの‘ユスーポフ公爵夫人’(1797年)

Img_0003     ターナーの‘ユトレヒトシティ64号’(1832年)

Img_0002     クールベの‘水平線上のスコール’(1872~73年)

印象派とポスト印象派の作品をみることをライフワークにしているから、国内の美術館にある作品はだいたい頭のなかに入っている。はじめて訪問した東京富士美の自慢の印象派コレクションで最初に遭遇したのは今回の‘光の賛歌 印象派展’(10/22~1/5)にも出品されているモネの‘睡蓮’。

同じくこの展覧会に飾ってあるモリゾの‘テラスにて’やマネの‘散歩’にもこれまでお目にかかった。そして、もう1点ルノワールの‘赤い服の女’は3年前国立新美で開催された回顧展で出会った。また、シスレー、ピサロ、カイユボット(いずれも印象派展に出品)もしっかり揃っている。特別展をみたあと平常展示の部屋をまわったら、さらにゴッホとカサットが目の前に現れた。カサットは日本でみたことあった?という感じ。

だから、東京富士美は印象派絵画をまとまってみれる美術館のひとつであることはまちがいない。ちなみにほかの美術館で同様の楽しみがあるのは西洋美、大原美、ブリジストン美、ひろしま美、ポーラ美、山形美(吉野石膏コレクションの寄託)。平常展を進んでいるうちにここの西洋絵画のサプライズは印象派だけでないことがわかってきた。否が応でもテンションがあがる。

ラ・トゥール(1593~1652)の‘煙草を吸う男’がこの美術館が所蔵するものであることを知ったのは、2005年にあった‘ラ・トゥ―ル展’(拙ブログ05/3/14)、40点くらいしかないラ・トゥールの真作の1点が日本にあることがとても誇らしく思えた。薪に息を吹きかける男の顔は焔で明るく照らされ闇のなかに浮かび上がっている。カラヴァッジョとともにラ・トゥールは一生つきあっていこうと思っている画家、この一枚でルーヴルにいるような気分になった。

ほかにこれもあるの!というのがロラン、カナレット、ブーシェ、ハルス、ルブラン、ターナー、クールベ、このなかでルブラン(1755~1842)の女性の肖像画は三菱一号館美で開催された回顧展(11/3/1)でお目にかかった。ロラン、ハルス、ターナーは西洋美にもないはず。隣の方と‘スゴイ!’を連発しながらながめていた。

ターナー(1775~1851)の海景画とクールベ(1819~1877)の荒れる海の波頭を描いた作品はコローやドービニーと一緒に印象派展のプロローグとして展示されており、図録にも収録されている。

東京富士美はこれから縁が深くなっていきそう。okiさんの情報によると、ロンドンのロイヤルアカデミーであった‘ターナーからラファエロ前派まで’展が来年ここに巡回する(9/17~11/24)とのこと。期待して待ちたい。

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2013.11.20

‘光の賛歌 印象派展’ セーヌ・ノルマンディーの水辺!

Img_2     シスレーの‘モレの橋’(1893年 オルセー美)

Img_0001  ピサロの‘ルーアンのポワエルデュー橋、日没’(1896年 バーミンガム美)

Img_0002     モネの‘荒天のエトルタ’(1883年 ヴィクトリア国立美)

Img_0003     カイユボットの‘トゥルーヴィルのレガッタ’(1884年 トリード美)

印象派の画家たちが光をもとめて出かけたところはセーヌ川沿いの町や切り立った断崖や海水浴場のあるノルマンディー海岸、‘光の賛歌 印象派展’(10/22~1/5)では作品約80点はこの二つの水辺の風景という切り口によって構成されている。

数の多いのがモネ、全部で27点でている。その次がシスレー、16点。そしてピサロは8点ある。展示はセーヌ川の水辺を光景を描いたシスレー(1839~1899)からはじまる。これまでシスレーというと光の描写が控えめな画家というイメージがあり、このため色彩が光り輝くモネに対する愛着度を10とするとシスレーは6くらいというのが正直なところ。

だから、16点ある作品のなかでぐっと惹きつけられたのは3点だった。昨日とりあげた‘春の小さな草地’とオルセーの‘モレの橋’、そして‘サン=マメスのロワン川’(ボストン美)。オルセーはシスレーを35点以上所蔵しているが、これまで何点みただろうか、常時展示されているのは‘ポール・マルリーの洪水’とか‘アルジャントゥイユの歩道橋’など数点だからせいぜい片手くらい。この明るい空の青と建物の赤橙色のコントラストが目を惹く‘モレの橋’も初見の一枚。これは大きな収穫だった。

光の輝き具合に圧倒されるのがピサロ(1830~1903)の‘ルーアンのボワエルデュー橋、日没’。ピサロの作品には結構出会ったが、これほど太陽の光が強烈に目にはいってきたのははじめて。橋の向こうの川の様子がよくつかめないほど馬車や人の行き交う橋と川と煙をあげる列車?がひとつに溶け合って描かれている。

このピサロの作品と同じくらい強いインパクトをもっているのがモネ(1840~1926)の描いた‘荒天のエトルタ’、海岸にうちよせる荒々しい波を表す白の激しいタッチがじつに印象深く、体全体が自然への畏怖の念でつつまれる。この絵は2010年パリのグランパレで行われたモネの大回顧展(拙ブログ10/12/2)にも出品された。

チラシをみて是非とも本物をと思ったのがカイユボット(1848~1894)の‘トゥルーヴィルのレガッタ’、魅了されるのはそのスッキリした構図と明るい色彩。図録にはもう一点、同じ建物を別のところから描いた‘トゥルーヴィルの別荘’(東京富士美蔵)が載っている。この絵は今ブリジストン美で開催中の‘カイユボット展’(12/29まで)に出品されているため、ここでは展示されない。

見終わっていつものように図録を買い、頁をぱらぱらめくっているとびっくり仰天の絵が目にとびこんできた。それはマネの画集に必ず載っている‘アルジャントゥイユ’(トゥルネー美)。ええー、この絵もやって来るの!?別の展示期間?一瞬あせった。でも、ここでの展示はなし。東京富士美、福岡市博のあとに巡回する京都文化博のみの展示だった。俄然追っかけたくなった。

・福岡市博 2014/1/15~3/2
・京都文化博 3/11~5/11

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2013.11.19

‘光の賛歌 印象派展’をみるため八王子へ!

Img     ルノワールの‘ブージヴァルのダンス’(1883年 ボストン美)

Img_0003     ピサロの‘小川で足を洗う女’(1894~95年 シカゴ美)

Img_0004     モネの‘ジヴェルニーの林’(1887年 ロサンゼルス郡立美)

Img_0006     シスレーの‘春の小さな草地’(1880年 テート)

東京富士美で開催中の‘光の賛歌 印象派展’(10/22~1/5)をみるため八王子までクルマを走らせた。この印象派展ははじめはパスのつもりだったが、6日に美術館めぐりをしたとき手に入れたチラシにとても気になる絵があったので予定を変更して出かけることにした。

東京富士美はまだ行ったことのない美術館、ここの西洋絵画のコレクションは展覧会でときどき遭遇するので一度訪問してみようという思いは前からあった。でも、横浜から八王子まで電車で行くとなると時間がかかりそうだからふんぎりがつかなかった。背中を押してくれたのが今回の展覧会のチラシ。

美術館の場所を示す地図が載っており国道16号線が目に入った。これまで電車だけが頭にあったが、16号線をずっと走ればいいのだったら、これは楽なアクセス。美術館までは1時間くらいで着きそう。隣の方も電車ならつきあわないがクルマなら一緒に行くという。で、1時半に家を出発、東名高速をこえて16号線を走るのは7,8年ぶり。そのため時間の計算を読み誤り、美術館到着までに1時間45分もかかった。

今回の印象派展は東京富士美術館の開館30周年を記念するものだから、展示作品のセレクションに相当気合が入っている。数は80点ほど。国内にある定番の名作が目を楽しませてくれるが、その大半は海外の美術館からやって来たもの。そのなかには印象派のコレクションで世界的に知られているオルセー、ボストン、シカゴ、ワシントンナショナルギャラリーなどのブランド美術館がしっかり含まれている。これは心強い。久しぶりの本格的な印象派展なので心打たれた作品を2回にわけて紹介したい。まずはルノワールのとびっきりの傑作から。

ルノワール(1841~1919)の‘ブージヴァルのダンス’がまたボストンからお出ましいただいた。前回みたのは国立新美の‘ルノワール展’(2010年)だからまだ3年しかたってない。この絵はみるたびに最高の気分にさせてくれる。モデルをつとめたヴァラドンの着る白の衣装がまるで発光体のように輝いている。

今年はルノワールの当たり年、1月に訪問したワシントンにあるフィリップスコレクションで‘舟遊びの昼食’と再会しこの絵の素晴らしさをあらためて心に刻み込んだ。そして、年末近くになってまた大傑作‘ブージヴァルのダンス’が目の前に現れてくれた。この2つとオルセーにある‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’はやっぱり特別な作品。2つもみれたのだから、今年はいい年だった。

チラシで気になった作品がシカゴ美蔵の‘小川で足を洗う女’、描いたのはピサロ(1836~1908)。08年シカゴ美を訪問したとき、この絵に出会ったかどうか定かでない。ピサロの点描を用いた作品はこれまで片手くらいみたが、これには思わず吸いこまれた。日本初公開。

モネ(1840~1926)の読書をしている女性をもうひとりの女性が描いている絵にも足がとまった。この絵は6年前にあったモネ展(国立新美)でもお目にかかった。モネの描く女性や子どもたちは光の溢れる草木の中で生き生きしているのが特徴。それは白を効果的に使うことによって生み出されている。しばらく二人をみていた。

シスレー(1839~1899)の作品が今回沢山でている。最初の展示室にある作品で惹かれたのが初見の‘春の小さな草地’。真ん中にいる前かがみの少女はシスレーの11歳の娘。シスレーの絵にでてくる人物をこれまで関心深くみたことはなかったが、この少女はちがった。日差しのあたった白い服が心をとらえてはなさない。

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2013.11.18

プラハ国立美に展示されているミュシャの‘スラブ叙事詩’!

Img     プラハ国立美に展示中の‘スラブ叙事詩’

Img_0003       ‘原故郷のスラブ民族’

Img_0001       ‘スラブ式典礼の導入’

西洋絵画の名画のなかにはとても関心が高いのにそれをみる機会がかぎりなく小さい作品がある。アルフォンス・ミュシャ(1860~1939)が14年の歳月をかけ描いた20枚からなる‘スラブ叙事詩’もそのひとつ。

ミュシャの存在を知ったのは1999年ころ。作品を見た瞬間昨日紹介したようなアールヌーヴォー調の装飾文様に飾られた衣装をまとった女性の虜になった。心がとろけるような整った顔立ちとしなやかな肢体、こんな女性を描くミュシャは当時パリっ子の関心を的だった。

そんな人気画家がアメリカをへて故郷のチェコに帰ると、スラブ民族のアイデンティティを強く意識するようになり千年以上におよぶスラブの歴史の連作を描きはじめる。1912年のこと、それから1926年までかけて20枚を描きあげ‘スラブ叙事詩’が完成する。

この連作はいつもはブルノ(昨日の記事の地図を参照方)の近郊にあるモラフスキー・クルムロフ城に飾られている。このことは1999年のころ情報としてはインプットされていた。でも、そのブルノがチェコのどのあたりにある街かがわかったのはそれからだいぶ経ったあと。

今、‘スラブ叙事詩’はプラハの国立美で展示されている。ネットでチェックしたら昨年の5月10日から展示されており、当初は9月30日までだったが、これが12月31日まで延長になっている。プラハ国立美は幸いにも10年前中欧を旅行したとき訪問した美術館。

収蔵品は8つの分館に展示されている。多くの人が足を運ぶのはプラハ城のすぐ近くにあるシュテルンベルク宮殿、ここでは古典絵画のすばらしいコレクションをみることができる。もうひとつ外せないのが19世紀から20世紀の絵画、彫刻、工芸品を展示しているヴェレトレズニ宮殿、‘スラブ叙事詩’が展示されているのはこの宮殿。

ここは旧市庁舎広場からはちょっと離れた北東3キロくらいのところにある。地下鉄に乗り、途中で何人もの人に聞いてようやくたどり着いた。この美術館でミュシャの絵、アンリ・ルソーの‘私自身、肖像=風景’とクプカの抽象絵画の傑作をみれたのは一生の思い出、ここで今ミュシャの‘スラブ叙事詩’が公開されている。孫悟空のように空を飛んで駆けつけたい気持ちになる。

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2013.11.17

3年ぶりの‘ミュシャ展’!

Img               ミュシャの生地イヴァンチッツェ

Img_0002      ‘オー・カルチェ・ラタン誌 特別号’(1898年)

Img_0003      ‘レスタンプ・モデルヌ誌 サランボー’(1897年)

Img_0004      ‘ウェイヴァリー自転車’(1898年)

横浜そごうで今‘知られざるミュシャ展 故国モラヴィアと栄光のパリ’(10/19~12/1)が開かれている。ミュシャ(1860~1939)の描く女性には特別の思い入れがあるので、これまでミュシャ展があると足がひとりでに美術館に向かっていた。

前回みたのは3年前三鷹であった堺市が所蔵するミュシャコレクション展、これを含め3冊も図録がたまったのでミュシャはもういいかなという感じ。だから、今年森アーツセンターギャラリーで行われたものはパスした。普通ならそごうの展覧会もお休みだが、招待券をいただいたので大観展と合わせてみてきた。

タイトルの‘知られざる’が気になるところ、そのわけは今回展示されている作品161点の大半がミュシャが生まれたチェコのイヴァンチッツェ近郊に住む医師チマル博士の祖父母から3代にわたるコレクションだから。このコレクションはヨーロッパ以外でははじめて公開されるのだとか。地元の人物が蒐集したものとなるとやはり期待したくなる。

作品のなかには女優サラ・ベルナールが演じる‘ジスモンダ’などを告知するお馴染みの縦長ポスターがあるから予定通りいい気持ちになった。次々とでてくるポスター、装飾パネル、商品広告に描かれた可憐で美しい女性は顔なじみのモデルが多い。でも、はじめてみる絵柄もずいぶんあり、ついつい惹きこまれた。

ハッとしたのが‘オー・カルチェ・ラタン’。女性の膝のところに腕に花束をもった男性や女性がいる。そして後ろにも着色されてない女性たちが沢山描かれており、同様に花を持っている。これはガリバーと小人たちの世界、ミュシャがこんなおもしろい絵が描いていたのは意外だった!

‘サランボー’は雑誌についているカラー版画。目が吸い寄せられたのが立ち姿の女性の背景に描かれた文様、流麗な曲線の描写がアールヌーヴォ―の魅力を強く印象づけている。隣にも同じく版画の‘サロメ’があり、うっとりしながらみていた。

ウェイヴァリー自転車はアメリカの自転車。この雑誌広告に女性が使われている、当時、自転車に乗っていたのは主に男性だと思うが、美女を登場させ需要を喚起しようという作戦。広告のABC理論というのがある。顧客にうける広告というのは‘A’(アニマル)、‘B’(ビューティー)、‘C’(チャイルド)がでてくる。このセオリーはこの時代からはじまっている。

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2013.11.15

三渓園で待望の‘今村紫紅展’!

Img_3     ‘護花鈴’(右隻 1911年 霊友会妙一記念館)

Img_0001_3          ‘伊達政宗’(1910年 横浜美)

Img_0005_5                 ‘枇杷ニうそ’(1913年 横浜美)

Img_0002_2                   ‘山村夕暮’(1913年 三渓園)

展覧会の華はなんといってもひとりの作家の作品を沢山鑑賞できる回顧展、だから、好きな日本画家の回顧展は規模の大小を問わず関心を持ちせっせと足を運んできた。絵をみる側からすれば、特定の画家だけでなく画集に載っているようなビッグネームであれば、あまり間隔をあけず回顧展に遭遇したいというのが切なる願い。

でも、実際はこちらの思うようにはいかず、回顧展に縁のない画家がでてくる。今年は嬉しいことに二人の画家についてはその状況が解消された。‘竹内栖鳳展’(東近美)と横浜の三渓園で開催中の‘今村紫紅展’(11/2~12/8)。今村紫紅(1880~1916)は‘横山大観展’(横浜美)のプラスフォーの一人だから、これをみたあと三渓園に向かへば紫紅にもぐっと近づくことができる。

三渓園行きのバスはJR桜木町駅前のバス乗り場2番からでている。本牧行きの8番に乗って25分くらいで着いた。ここから三渓園までは10分ほど。大観展のチケットをみせると100円引きになり700円で園内と展覧会が楽しめる。なかに入るのは3度目なので道順はわかっている。チラシを手にして展示室へ急いだ。

作品の数は全部で33点ほど、ほかに紫紅らが絵付けしたやきものが9点ある。東近美で開催されるような大規模な回顧展ではないが、なにしろ紫紅のはじめて体験する回顧展なので目に気合が入る。横浜美でも‘熱国之巻’(重文)や‘細雨’などいい絵をみたばかりだから、‘紫紅パート2’といった感じ。

期待通り目の前に現れてくれのが‘護花鈴’、これは5年前‘日展100年展’(国立新美)で出会い大変魅了された作品。大和文華館にある国宝の‘婦女遊楽図屏風’を彷彿とさせる人物描写を息を吞んでみていた。真ん中に桜の木がどんと配置され花見を楽しむ女たちがひとり々大きく描かれているので、視線は画面の右から左へとゆっくり進んでいく。一見すると平板な画面構成だが、鳥を追い払うために鈴のついた赤い紐が斜めに交差してはられているため奥行きのある空間になっている。まるでこの光景をすぐ近くでみているよう。

歴史人物画のなかでお気に入りは‘伊達政宗’、惹かれるのが構図の妙。背景の十字架は上が切れておりよくみないとこれが十字架であることに気付かない。もうひとつ上手いなと思うのは座った政宗の右足の端がこれまた画面からはみだしていること。紫紅は意図してこのように描き政宗の存在感を強調している。

紫紅の天性のカラリストぶりが発揮されているのが風景画や花鳥画。思わず足がとまったのが緑と黄色の組み合わせが目に心地いい‘枇杷ニうそ’。うそは雀よりすこし大きい鳥。枇杷の枝にとまっているうその位置がピタッときまっている。こういう構成は描けそうで描けない。本当にいい絵をみた。

‘山村夕暮’は南画の池大雅を連想させる作品、ぬくもりがありゆったりとした山村の情景が緑と墨の濃淡によって表現されている。こうしたほわほわもこもこタイプの絵が3点ある。肩の力が自然にぬけリラックスした気分でながめていた。

歴史や文化に高い見識をもち美術品に対する審美眼もそなわった原三渓(1868~1939)は今村紫紅の才能を高く評価し、作品を手に入れ支援しつづけた。その紫紅の回顧展を三渓園で体験するのは感慨深く、時の流れを感じさせる。満ち足りた思いで展示室を後にした。

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2013.11.14

大観の傑作‘夜桜’と再会!

Img_0001     横山大観の‘夜桜’(左隻 1929年 大倉集古館)

Img_0011              横山大観の‘井筒’(1897年 広島県美)

Img_0009     富田渓仙の‘若菜摘’(1912年 京近美)

Img_0007                今村紫紅の‘細雨’(1915年 横浜美)

横浜美で行なわれている‘横山大観展’の後期(11/1~11/24)に展示される作品をみてきた。今回の大観展は‘大観プラスフォー’というこれまでとちがったタイプの回顧展。だから、作品がバラエティに富んでいてとても楽しい。以前出光美で‘小杉放菴と大観’(2009年)をみたが、横浜美はこれにヒントを得たのかもしれない。

作品の数(通期)でいうと、
★横山大観  81点
★大観&ほかの画家の合作 4点
★今村紫紅  12点
★小杉放菴  13点
★小川芋銭  15点
★富田渓仙  16点

後期にでている横山大観(1868~1958)の目玉作品は昭和4年に描かれた‘夜桜’、5年ぶりにみた。大観作品のなかでこの絵に最も魅せられているから、いい気分でみていた。琳派狂いの目からするとこの‘夜桜’は加山又造の‘千羽鶴’(東近美)とともに琳派のDNAを受け継ぐ大傑作。

盟友の菱田春草が長谷川等伯の描いた‘松林図’を思わせるような静謐な世界を象徴的に表現した‘落葉’(重文 永青文庫)を残したのに対し、大観は琳派の意匠性や生き生きとしたリズム感をしっかり吸収し、赤いかがり火に照らされて浮かび上がる夜の山桜を装飾性豊かに描き上げた。これをみるたびに大観の画技の高さに感服させられる。

今回嬉しい絵と再会した。広島に住んでいるときにみた‘井筒’。拙ブログの名前が‘いづつや’になっているのはこの井筒が苗字だから。そのためこの絵には特別の思い入れがある。井筒とは井戸のまわりの囲いのこと。‘伊勢物語’にでてくる幼き恋の物語が絵画化されている。なんとも微笑ましい光景、もじもじする気持ちはよくわかる。

‘井筒’と同じくらいかわいらしい絵がある。それは富田渓仙(1879~1936)の‘若菜摘’、これは5,6年前にあった渓仙の‘回顧展’でお目にかかった。舟に乗っている3人の女は大人にはとてもみえない。その柿のように四角で丸い顔がとても愛らしい、舟のむこうの岩のところでは水が激しく流れ落ち緊張感があるのに、舟のまわりはほわっとした空気が流れている。このアンバランスな構成にわけもなく惹かれる。

今村紫紅(1880~1916)の‘細雨’にも思わず足がとまる。あまりみかけない雨の絵。雨はうす緑や茶色の細い線で表現されている。よくみるとこの線は縦長の掛け軸の上から下まで途切れることなく無数に引かれている。確かに雨はまっすぐ落ちているのだからこのような描き方は不思議でもなんでもないのだが、雨の絵というすぐ広重の‘大はしあたけの夕立’にみられる斜めの線を連想するから、この雨の表現は新鮮に感じられる。

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2013.11.13

開運! なんでも鑑定団 放送1000回

Img         ‘志野茶碗 銘曙’

Img_0001      ‘薩摩切子の鉢’

Img_0002     ‘柿右衛門様式の壺’

Img_0003     菱田春草の‘虎図’

昨日TV東京の‘開運!なんでも鑑定団’(3時間スペシャル)を楽しくみた。1994年にはじまったこの番組、今回でなんと1000回。いまや同じ美術番組の‘美の巨人たち’とともにTV局の看板番組のひとつになっている。以前は毎週みていたのだが、今はみていない。でも、番組欄をみると過去に登場したお宝が登場するというのだから見逃すわけにはいかない。

高額で鑑定されたものがでてきたときは番組は最高に盛り上がる。やきものはあの中島誠之助氏が真剣な顔をして値をつける。

★‘古九谷の皿’      6000万円
★‘志野茶碗’        6000万円
★‘光悦の白楽茶碗’   5000万円
★‘柿右衛門様式の壺’  5億円 (高額ランキング1位)

この4つのうち岡山の骨董趣味の人がもっている‘光悦茶碗’とドイツの古城にある‘柿右衛門様式の壺’はちょうどみていた。岡山の人は今は自宅を改造してやきもののお店にしていた。ここに自慢の光悦の白楽茶碗が置いてある。本物を直にみたーい!

18世紀、ヘッセン=カッセル方伯、ヴィルヘルム8世が収集した日本の磁器のひとつにサプライズの柿右衛門があった。大きくて赤や青が鮮やかなこんなすごい壺が有田からはるか遠くのドイツに運ばれていた。番組(拙ブログ05/9/30)をみていたときの興奮がよみがえってきた。

過去のお宝だけでなくライブの鑑定で二つすごいのがでてきた。鹿児島・指宿温泉の老舗旅館‘白水館’の社長が鑑定を依頼した‘薩摩切子の鉢’、本人は1000万円といっていたが、鑑定結果は2000万円。これまで登場した薩摩切子のなかではベストワンという。地元だからこんな名品があってもおかしくはない。

最後に用意されていたサプライズは菱田春草の描いた虎の絵。春草の生まれた飯田市からやってきた人は‘家族のものは150万円だといったが、私は倍返しで300万円にしました’とやや緊張気味、これに対し鑑定士のつけた値段はその10倍の3000万円!この絵がみれる機会がくることを強く願っている。

やっぱり‘開運!なんでも鑑定団’はおもしろい。これからどんな驚愕のお宝がでてくることやら。

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2013.11.12

アートに乾杯! マイセン磁器の魅力

Img             京都花鳥館

Img_0001      ‘スノーボール花瓶’

Img_0002             マイセン美術館

Img_0003     ‘スノーボールティ―ポット’

先般BS日テレで放送された‘マイセン磁器の誕生物語’に京都花鳥館という美術館がでてきた。京都へ何十回と行っているわけではないので街の西東に何があるかすぐにはイメージできないが、この美術館がある場所は西京区の西光寺の近く。このあたりはまだ足を踏み入れてない。

番組をみたあと、この花鳥館に俄然興味が湧いてきた。というのも、ここのマイセン磁器のコレクションに目を奪われたから。マイセンの有名な貼花装飾、スノーボールの花瓶や壺、食器セットなどがいくつもある。過去にマイセン磁器が展示されている美術館を訪問したりマイセン展を数度体験したから、スノーボールの美しさに目が少しばかり慣れている。でも、これほどの数は日本でお目にかかったことがない。

最近できたのかなと思っていたら、2006年に開館していた。2003年にマイセンを訪問し、磁器製作の実演をみせ商品の販売もするマイセン美術館に1時間くらいいたので、高級磁器マイセンにつけられているお値段がどのくらいのものかは一応頭に入っている。

これを勘案すると、花鳥館にあるマイセン磁器の価値は思わず唸ってしまうくらいの大きさになる。この美術館を設立した人は美術品に対する眼力があり、資金も十分にそなわったコレクターであることまちがいない。次に京都へ行く機会があったら、是非足を運んでみたい。

番組に登場したマイセン美の館長が手にしていたスノーボールのティーポットは2年前サントリー美で開催された‘マイセン磁器の300年’展に出品された。無数にくっつけられた小さな白い花弁と金色の輝きによりいちだんと存在感をますポットの丸いフォルムが今も目に焼きついている。

白の美しさが心を揺すぶるマイセン、ドイツは遠いので京都にあるスノーボールを追っかけようと思う。

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2013.11.11

東博の‘描かれた風景’展で全国旅行!

Img      風景画に描かれた名所(拡大で)

Img_0001     司馬江漢の‘総州利根河今井渡’(江戸時代・19世紀)

Img_0003               池大雅の‘那智濺瀑図’(江戸時代・18世紀 東博)

Img_0004     谷文晁の‘彦山真景図’(江戸時代・1815年 東博)

東博で二度目の‘京都展’を見終わったあと、本館に寄り所蔵作品を軽くみた。ほかの美術館で開催されている展覧会へも急がなくてはならないから、1階はパスして2階の江戸絵画や浮世絵がお楽しみの中心。通常はこれで退館するのだが、このたびは浮世絵が展示してある部屋の前の特別1室・2室で興味深いオマケに遭遇した。

‘描かれた風景ー憧れの真景・実景への関心ー’(10/28~12/8)というタイトルのついたミニ企画展、出品作38点は大半東博が所蔵するものだが、個人や九博蔵のものもまじっている。惹かれる作品があったので目にしっかり焼きつけようと思っていたら、薄い冊子風の図録(600円)がちゃんと用意されていた。これは気が利いている。

江戸時代、人気の名所や人々にとってなじみの深い風景は池大雅や谷文晁などの画才抜群の絵師や浮世絵師たちによって数多く描かれた。今回でている作品に描かれた名所は図録に掲載された地図(拡大)でみてわかるようにかなり広い範囲にわたっている。

旅好きだった池大雅が絵にしたところは東北の松島、浅間山、熊野の那智の滝。‘浅間山真景図’は体験済みだが、松島と那智の滝は初見。一番長くみていたのは那智の滝、大雅の描くうす緑と朱で彩られたもこもこ山をみるといつも気が休まるが、そのボリューム感たっぷりの山の真ん中からドラム缶に穴が開いたように大量の水が流れ落ちている。隣に飾られている文晁の描いた那智の滝のほうが実景に近いが、絵としての魅力は大雅のほうに軍配が上がる。

文晁の大きな絵‘彦山真景図’は迫力満点、福岡県と大分県にまたがる英彦山はまだ縁がないが、山々はこの絵のように濃い墨で強く印象づけるほどインパクトのある姿をしているのであろうか、近くの耶馬溪は一度訪問したことがあるので、英彦山とも対面してみたい。

名所図で欠かせないのが霊峰富士山が描かれたもの、4点でている。そのなかで足がとまったのが司馬江漢の絵。富士山を遠くにとらえている場所は江戸川区にある江戸川今井橋あたり。江戸川にこんなに多くの帆船が浮かんでいた?見る者を喜ばすためにこういう構成にしたのだろう。

みている時間は長くなかったが旅心を刺激するいい企画展だった。学芸員のなかに旅好きがいるのかな?

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2013.11.10

王朝文化へ誘う光悦の書!

Img     ‘鹿下絵新古今集和歌巻断簡’(江戸時代・17世紀 サントリー美)

Img_0001     ‘蓮下絵百人一首和歌巻断簡’(江戸時代・17世紀)

Img_0002     ‘花卉鳥下絵新古今集和歌巻’(江戸時代・17世紀)

Img_0003     ‘桔梗下絵新古今集和歌色紙’(江戸時代1606年 奈良 大和文華館)

琳派の絵画に優美で華麗なイメージを重ねあわせるのは画面全体に金泥や銀泥がふんだんに使われているから。本阿弥光悦(1558~1637)が和歌を書き写した巻物や色紙も下絵のモチーフがこの金銀泥や雲母で形どられ古の王朝文化の世界が再現されている。

光悦のこうした書をみると光悦の体の半分は琳派という感じがする。いや、俵屋宗達の絵とコラボしているのだから、琳派の大元締めといっていいかもしれない。光悦が選んだ新古今の和歌や百人一首はわずかしかなじみがないのに、琳派狂いゆえ宗達やほかの絵師たちが描いた鶴や鹿、そして蓮や桔梗などを前にすると敏感に反応する。

書についての知識が乏しいため光悦の書のスタイルはなにもわかっていない。でも、筆で流れるように書かれた漢字やひらがなの形の美しさは十分に感じとれる。これは外国人が漢字の形の美しさに魅せられタトゥーに使っているのと同じ感覚。

今回巻物、断簡、色紙が沢山出ている。巻物は展示スペースの関係で最初から最後まではみれないが、1/3くらいはみせてくれている。これに対し断簡はそのまま楽しめる。鹿が下絵に使われているものは通期で7点もでてくる。このなかで鹿が何頭も描かれているサントリー蔵のものがお気に入り。宗達の動きのある鹿の描写は本当に上手い。余白がたっぷりとってあるので鹿が今にも走りだしそう。

草花や木はいろいろある。蓮、竹、松、桔梗、すすき、梅、忍草、芍薬、雌日芝、藤、、、蓮の断簡は4点。これまでみたことのある二つの花びらを斜めに配置して墨で大きく描いたものの前にしばらくいた。竹がでてくる巻物はこれまで数点みたが、今回展示されている‘花卉鳥下絵新古今集和歌巻’は展覧会にはじめて登場したもの。太さの違う竹がいくつも描かれており、これにより画面に奥行きができている。

桔梗にすすきの下絵を描いた色紙はビジーそうにみえるが、全体のバランスは絶妙にとれている。光悦の書は濃く書くところと薄く流れるような細い線で書くところがあるので歌そのものが前後に揺れているようにみえる。絵は書によって動きを与えられ、そして同時に絵が書をつき動かし和歌のイメージする世界をつくりだす。

光悦ってやはりすごい芸術家、自然を前にして頭のなかにつまっている古典の教養を自在にとりだし下絵のモチーフとコラボさせ書と絵を一体化させる。これはある種のコラージュ、光悦にますますのめりこんでいく。

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2013.11.09

‘光悦展’の圧巻は20点の光悦茶碗!

Img     ‘黒楽茶碗 銘雨雲’(重文 江戸時代・17世紀初期 三井記念美)

Img_0001     ‘赤楽茶碗 銘乙御前(おとごぜ)’(重文 江戸時代・17世紀初期)

Img_0002   ‘赤楽茶碗 銘雪峯(せっぽう)’(重文 江戸時代・17世紀初期 畠山記念館)

Img_0003     ‘白楽茶碗 銘冠雪’(江戸時代・17世紀初期 楽美術館)

館内を新装した五島美が本阿弥光悦(1558~1637)の回顧展をするという情報を得たときは腹の底から嬉しかった。桃山から江戸初期にかけて活躍した大芸術家、光悦が生み出した作品のなかでとくに惹かれているのが俵屋宗達と華麗なコラボを展開した書と陶芸。この二つが今回の‘光悦展’(10/26~12/1)に期待した通りどどっと現れてくれた。まずは光悦茶碗から。

京都の北郊、鷹峯で光悦が作陶した黒楽茶碗、赤楽茶碗などが全部で20点でている。これは圧巻!もう天にも昇るような気分。過去、光悦茶碗をまとまったかたちでみたのは2回ある。最初が6点出品された‘茶の湯 名椀展’(2005年 五島美)、もう一回は2008年東博で開催された‘対決 巨匠たちの日本美術’、このときは5点展示された。

このほか他のやきものに交じって1点の茶碗と遭遇するたびに心をときめかせる体験を数度重ねた。それらは国宝の‘白楽茶碗 銘不二山’(サンリツ服部美)やサントリー美の‘赤楽茶碗 銘熟柿’など6点。今回通期で展示されている20点のなかで初見のものは11点。これで目のなかにいれた光悦茶碗の総数は29点になった。おそらくコンプリートにかぎりなく近づいているのではないかと思う。長年の夢が叶ったので今はかなり興奮している。

黒楽茶碗は腰が丸くなった半筒形の‘雨雲’にとくに魅せられている。光沢のある漆黒の釉薬が鋭い太い線になって斜めに流れる景色が激しい雨をもたらす雨雲を連想させる。横にはほぼ同じ形をした‘時雨’(重文、名古屋市博)と‘村雲’(楽美)が並んでいるので、見比べてながらみた。

赤楽茶碗では2,3年前重文に指定された‘乙御前’と畠山記念館のお宝‘雪峯’の前に長くいた。このピカピカした柿のような赤で焼かれた丸い茶碗に心底魅せられている。まだ数回しかお目にかかってないが、いつも夢中になってみてしまう。

そして、大きな収穫だったのが初見の白楽茶碗の‘冠雪’。茶碗の形は国宝の‘不二山’と同じ直線的な角造り、うす緑色になっている底の部分に目が吸い寄せられた。この‘冠雪’をはじめ滅多にみれない光悦の茶碗をあらたに11点もみせてもらった。五島美に拍手々!

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2013.11.08

期待通り名品の揃った‘井戸茶碗展’!

Img     国宝‘大井戸茶碗 銘 喜左衛門’(朝鮮時代・16世紀 大徳寺孤蓬庵)

Img_0001     ‘大井戸茶碗 銘細川’(重文 朝鮮時代・16世紀 畠山記念館)

Img_0002     ‘大井戸茶碗 銘有楽’(重美 朝鮮時代・16世紀 東博)

Img_0003     ‘青井戸茶碗 銘柴田’(重文 朝鮮時代・16世紀 根津美)

今秋二つの美術館で行われるやきもの展に1年くらい前から大きな関心を寄せていた。ひとつが根津美の‘井戸茶碗展’(11/2~12/25)、もうひとつは五島美の‘光悦展’(10/26~12/1)。同じ日にみたので、家路につくころは満ち足りた気分だった。

根津美の特別展に足を運ぶのは今は年に一度くらい。今年は‘井戸茶碗展’、根津や五島がやきもの展をやるというと期待値はすぐ膨らんでいく。出品されている74点は名品揃い、これだけ名の知れた井戸が集めてこれるのだから根津美はやはりブランド美術館。

侘び茶の茶碗の筆頭にあげられるのが井戸、もともとは朝鮮時代に民窯で日常的な雑器としてやかれたものなのに日本の茶人たちの目にとまり、茶の湯では欠かせない茶碗になった。そのなかでとりわけ茶人や戦国の武将たちの心をとらえたのが大ぶりな井戸茶碗、大井戸。全部で39点でている。

国宝に指定されている‘喜左衛門’と遭遇するのは2度目。前みたのは2002年五島美で行われた‘茶の湯名椀展’。惹きこまれるのは渋めの枇杷色と竹節状の高台にみられる荒々しい梅花皮(かいらぎ、釉薬のちぢれ)、手にとったら轆轤目の感触がよさそう。

畠山記念館で6,7年前やっとみることができた‘細川’もお気に入りの大井戸。ほかの大井戸よりちょっと大きく、高台いっぱいに美しい梅花皮ができている。そして、心をスッキリさせてくれるのが明るい枇杷色。‘喜左衛門’、‘加賀’とともに‘天下三井戸’と呼ばれるのもよくわかる。

‘有楽’は織田信長の弟、織田有楽が所持していたのでこの銘がついている。東博の平常展に長年通っていたから、やわらかい枇杷色と白い雲が魅力のこの大井戸とは何度となく出会った。だから、井戸茶碗のなかで一番馴染みのある井戸といえる。

小ぶりの‘青井戸茶碗、銘柴田’は高台からまっすぐに開いた形が真に美しい。まわりの青井戸とくらべてちょっと青みがかった淡い枇杷色と形の良さが際立っている。

展覧会の図録は井戸茶碗の名品で埋め尽くされているので宝物を手にいれた気分。そのなかで一点欠けているのが‘加賀’、この名椀はまったく縁がないが一体誰が所有しているのだろうか?

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2013.11.07

アゲイン ‘洛中洛外図屏風’に完全密着!

Img_0002_2     ‘歴博甲本 念仏踊’(重文 室町時代・16世紀 国立歴博)

Img_0005_2  ‘福岡市博本 通りのにぎわい 曲芸’(重文 江戸時代・17世紀 福岡市博)

Img_0006_2     ‘福岡市博本 通りのにぎわい 炭売りの大原女’

Img_0007_2     ‘池田本’(重文 江戸時代・17世紀 岡山・林原美)

東博で開催されている‘京都展’(10/8~12/1)は11/6から後期がスタート、重文の‘洛中洛外図屏風’が3点でてくるので喜び勇んで出かけた。

洛中洛外図をみるのは体力的にしんどい面があるが、残っている重文3点をみれば済マークがつくので完全密着してみた。前回同様通期に展示されている‘舟木本’はパス。まず列の最前列に並んで蟹の横這いをしたのは国立歴博にある最古の洛中洛外図‘歴博甲本’。

通りで営業している店が何を売っているのか見当をつけようと思うのだが、知識不足ではっきりとはわからない。当たっているかなというのは扇子屋、やきもの屋、魚屋、そして右隻の左端に公衆浴場があるのをみつけた。ここから視線を下に移すと辻では念仏踊の真っ最中。この洛中洛外図では祭りの場面がそれほど躍動的に描かれてないので、この輪舞する踊り手の姿に思わず足がとまる。通りには定番の動物、犬、闘鶏、猿がいた。

次にみた‘福岡市博本’は楽だった。屏風としては六曲一双だが、天地が短く通りがひとつだけしか出てこないので目をキョロキョロさせずにすみ、描かれているひとつ々の場面に気持ちが集中できる。目を惹いたのが女たちが夢中になってみている曲芸、女の後ろをみると煎茶売りが商売をしている。そして、その右にあるうどん屋の前では男が竹で子どもを打ちつけている。何が気にさわったのか?

右隻のはじめにおもしろい場面が描かれている。白い衣装を着た坊主が酔っぱらって千鳥足、女に支えられてやっと立っている感じ。隣で行なわれている勧進相撲に興じてつい飲みすぎたのかもしれない。イベントや祭りに酒がつきものというのは今も昔も変わりない。また、左隻にでてくる二人の大原女にも足がとまった。頭に炭をのせ元気よく歩いている。その前では人形使いが女、子どもたちの視線を釘づけにしている。

最後にみた‘池田本’(岡山・林原美)でびっくりさせられるのはまばゆいばかりに輝く金雲と描かれている人物の多さ、その数なんと3000人。画面のいたるところで賑やかな祭りの場面や見世物や踊りがみられ、京の町全体にあふれる活気と華やかさがあますところなく描かれている。単眼鏡で隅から隅までみたのでちょっと疲れた。

とくに興味深くみたのはエンターテイメント心に火をつける見世物。猿の被りものをしたパフォーマンスがあったり綱渡りの曲芸があったりするのでタイムスリップして観客のなかに紛れ込みたくなった。そして、目が点になったのが祭りに繰り出す武者たちの被る兜。クワガタの角を馬鹿デカくしたような形の兜、これには参った!また山鉾のまわりにくくりつけられている虎の皮にも目がいく。

前期も後期も洛中洛外図にすべての鑑賞エネルギーを注ぎ込んだ。この展覧会は一生の思い出になる。

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2013.11.06

都市風俗画の名手 カイユボット!

Img_2     ‘ヨーロッパ橋’(1876年 ジュネーブ プティ・パレ美)

Img_0002_2     ‘ヨーロッパ橋にて’(1876~77年 フォートワース キンベル美)

Img_0006_2     ‘シルクハットの漕手’(1877年)

Img_0005_2  ‘ジュヌヴィリエの平野、黄色の畑’(1884年 メルボルン 国立ヴィクトリア美)

ブリジストン美で開催中の‘カイユボット展’(10/10~12/29)をみてきた。昨年この美術館で‘ドビュッシー 音楽と美術展’があったとき、カイユボット(1848~1894)が弟をモデルにして描いた‘ピアノを弾く若い男’(拙ブログ12/8/8)にとても魅了された。カイユボットは08年シカゴ美で代表作に出会って以来気になる存在、だからこの絵との出会いを素直に喜んでいたが、美術館の人たちは作品の購入を機に回顧展まで突き進んでいた。

今回油彩が51点でている。これまでみたものはオルセーにある自画像、ブリジストンが手にいれたもの、そして2年前やって来たワシントンナショナルギャラリー蔵の‘ペリソワール’(11/6/24)の3点のみなので、どの絵もすごく新鮮にうつる。

最もみたかったのは美術本では長いこと対面している‘ヨーロッパ橋’、この絵を所蔵しているのはジュネーブにあるプティ・パレ美。若い頃ジュネーブに住んでいたが、当時は絵画への興味は普通程度だったから、この美術館へは足を踏み入れてない。

時が流れて今ではカイユボットに開眼するまでになり、何年か先に予定しているスイス美術館めぐりでこの絵との対面を果たそうと思っていた。それが幸運にも日本で叶えられることになった。この絵に描かれているのは橋の上、視線がむかうのは3つ。隣の女性となにか話しながらこちらにやってくる帽子の男、手前の犬、そして鉄の柵に体を倒し前方の駅の情景をみている男。

帽子の男が女性に話しかける姿は海外を旅行しているとよく目にする光景、男性でも女性でも二人でしゃべりながら歩いているとき彼らは互いの顔をときどきみながら話すので体を横にまげる。日本人はまっすぐ前をみながら話すことが多いのでこういうふうに体はくねくね左右に揺れない。日差しが強いので人物や犬の影がくっきり地面にでき、遠近法で描写された右の頑丈そうなX字の鉄のところにも光が当たり消失点まで続いている。図版でみる以上にすばらしい絵だった。

アメリカ・テキサス州のフォートワースにあるキンベル美が所蔵する‘ヨーロッパ橋にて’(展示は11/10まで)がみれるのは嬉しいかぎり。これはチラシに載ってなかったから驚いた。目に焼きつくのが帽子の男がみている列車の煙の白さ。輝いている。そして、男の手と顔、じつにいい色をしている。この絵は写真をみているよう。活気づくパリのひとこまがこの絵に封じ込まれている。

ぐっときた絵がもう2枚ある。お気に入りのカヌーの絵‘ペリソワール’の隣に飾ってあった‘シルクハットの漕手’。このいかにも裕福そうな男が力をこめてボートを漕ぐ姿に圧倒された。これは大収穫。モネの絵とみまがうほどに光が満ち溢れているのが‘ジュヌヴィリエの平野、黄色の畑’。カイユボットがこんな印象派全開の絵を描いていたとは!

満足度200%の回顧展だった。ミューズに感謝!

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2013.11.05

ボストン美の忘れもの!

Img_0001      ボストン美術館

Img_0002      サージェントの絵が展示されている部屋

Img_0004     ホーマーの‘見張り’(1896年)

Img_0010     ‘アフロディテ’(紀元前325~300年頃 大理石)

大リーグが好きな人はそれぞれ贔屓の球団をもっている。でも、その球団への思い入れはそこでプレーする日本人選手の活躍次第で変わってくる。彼らがほかのチームに移籍するとBS中継されないので、関心が薄くなることが多い。アメリカの球団だからこれは仕方がない。贔屓のチームというのかあくまでカッコつき。

このことは2007年松阪、岡島の入団により関心が一気にふくらんだボストン・レッドソックスについてもいえる。ワールシリーズを制したこの年から3年くらいは松坂が二桁勝利をあげるなど活躍していたし、チームも毎年ヤンキースと地区優勝を争っていた。だから、熱心に応援していたし愛着を覚えた。

ところが、松阪が肘の故障でTV中継に姿を現さなくなると、レッドソックスの選手たちの名前がどんどん頭のなかから消えていった。最下位に低迷した昨年はレッドソックスの試合をみることは一度もなかった。そして、今年も上原が入ったとはいえ、優勝争いに加われるかどうか?だったので、シーズン開始時点ではまったくノーマーク。

その関心の低さはシーズン後半からは急上昇し、今では07年頃と同じくらい球団への思い入れが強くなっている。上原がクローザーとして活躍し続けてくれたら、日本人ファンのレッドソックス好きはどんどん増えるだろう。

これは野球におけるボストンとのかかわり度合のことであるが、芸術に関してはボストンは日本人の心のなかに強く印象づけられている。それはボストン美術館が所蔵する美術品が長年にわたって日本で定期的に公開されているから。昨年は館自慢の曽我蕭白コレクションなど日本の絵画や彫刻の名品が沢山里帰りした。

来年も二つ展覧会がある
★‘華麗なるジャポニスム展’ 6/28~9/15 世田谷美
★‘ミレー展’ 10/17~1/12 三菱一号館美

ボストン美がつくっている図録をみると、そこに載っている傑作のかなりの数が日本にやってきた。ミレーの‘種蒔く人’、ルノワールの‘ブージヴァルのダンス’、モネの‘睡蓮’、‘ラ・ジャポネーズ’、マネの‘街の歌い手’、ゴッホの‘オーヴェールの家々’、そしてゴーギャンの‘われわれはどこから来たのか’。

現地へ2度でかけ日本でもいい作品に遭遇したから、追っかけ画はだいぶ少なくなった。是非ともみたいのは2点、ホーマー(1836~1910)の‘見張り’とホイッスラーの‘ウエストンミンスター旧橋のとり壊し’。そして、彫刻が1点ある。古代ギリシャの彫刻家プラクシテレスもしくは弟子が制作したといわれる‘アフロディテ’。

ヴィーナスを顔で選べば世界一といわれるこの貴重なオリジナル彫刻は何年か前名古屋のボストン美で公開されたが、日程の折り合いがつかず見逃してしまった。惜しいことをしたなと後悔している。だから、新装ボストン美を再訪したら、ここに真っ先に突進しようと思う。

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2013.11.04

わくわくワールドツアー! ボストン ガードナー美

Img_0001     ボストン ガードナー美

Img_0004          ボッティチェリの‘聖母子と天使’(1470年頃)

Img_0005     ピエロ・デッラ・フランチェスカの‘ヘラクレス’(1460~66年)

Img_0002     レンブラントの‘嵐のガリラヤ湖上のキリスト’(1633年)

ボストンへはじめて行ったのはちょうど20年前の1993年。そのころは今のように添乗員さんが何から何までやってくれる団体ツアーではなく、往復のフライトと宿泊ホテルだけ旅行会社でとってもらいあとは自由に動き回っていた。

NYからボストンへは確かシャトルフライトを利用したような気がする。名所観光はせず、ボストン美、ハーバード大のなかにあるフォッグ美、そしてイザベラ・スチュアート・ガードナー美を訪問した。夫々楽しい時間をすごしたが、どういうわけか鑑賞した作品の記憶がうすいのがガードナー美。

ここは邸宅美術館(4階建て)だから、建物の外観や館内のことはよく覚えている。中庭を囲む四方の建物はヴェネチア宮殿の建築をモデルにしており、ガードナー夫人はわざわざイタリアから建築技術者を招いて建物を完成させた。1903年のこと。

当時所蔵作品の情報がほとんどなく、事前に知っていたのはティツィアーノの傑作‘エウロペの略奪’だけだったのでこの絵をまずしっかりみた。あとかすかに覚えているのはラファエロの‘が茶目のトンマーゾ・インギラーミの肖像’と‘レンブラントの‘自画像’くらい。これは西洋画家への関心がまだ狭かったから、見れども見えずというやつ。その後TVの美術番組などでわかったのだが、この美術館のコレクションは古典絵画でも印象派などの近代絵画でも一級品揃いだった。

ボストンへまた出かけるときはこの美術館を再訪することは今から決めている。是非リカバリーしたい作品は
★ボッティチェリの‘聖母子と天使’
★ピエロ・デッラ・フランチェスカの‘ヘラクレス’
★レンブラントの‘嵐のガリラヤ湖上のキリスト’
★マザッチョの‘若者の肖像’
★ホイッスラーの‘青と銀の調和’
★サージェントの‘エル・ハレオ’
★マティスの‘サン・トロペのテラス’

2010年秋に新装なったボストン美への訪問を実現させたいという気持ちも強く、この街は美術館めぐりで忙しくなりそう。

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2013.11.03

長く語りつがれる‘上原物語’!

Img      レッドソックス優勝パレード

Img_0001     ファンに手を振る上原

Img_0002

ワールドシリーズを制したレッドソックスの優勝パレードが10/2ボストンのメインストリーで行われた。ボストンは2度訪れたことがあるので、ちょっとばかりは街の雰囲気はつかめる。といってもツアーのコースに組み込まれたフェンウェイパークがあるところとボストン美の位置関係とか、街全体の地形などはまるで頭に入ってない。

選手、監督、コーチ、スタッフ、そして家族たちは水陸両用の乗り物に乗りボストン市民であふれかえる5キロのコースを笑顔でパレードした。じつにいい光景。上原は散発してさっぱりしていた。

シーズンがはじまったとき、上原と田沢はブルペン投手のなかではセットアッパーの役割だった。昨年のオフTVに出演した上原は‘レッドソックスが一番熱心に誘ってくれたから入団した’と語っていた。そのときは正直言って、監督と選手の対立によりチームがガタガタになり最下位に沈んレッドソックスではメディアの注目も低いから、上原はたそがれ時だなと思った。

ところが、今年のレッドソックスは出だしから調子がよく勝利が続く。先発のバックホルツはワールドシリーズではいいチッピングができなかったが、前半は投げるたびに勝ち投手になり防御率1位だった。投手陣の誤算はクローザー、2人いた候補がともに故障したのでセットアッパーのなかからクローザーを選ぶことになった。ピッチャー出身のファレル監督が最初に指名したのは田沢だった。理由は球が速いから。

どこの監督もクローザーは球の速いピッチャーが適任と思っている。だから、監督の目には田沢だった。だが、田沢にはクローザーは荷が重すぎた。そして、6/21から上原がクローザーをつとめることになった。監督はこの時点では上原が最後をこれほどビシッと抑えてくれるとは予想してなかったはず。

クローザーをまかされた上原は神がかり的なコントロールのよさと誰も真似のできないフォークを武器にセーブポイントを積み上げていった。本人もいっているようにこれは出来すぎかもしれない。その出来すぎを支えたのが一度も故障しなかった体力。上原は例年何度か故障した。このため、期待値が高めに設定できない投手とみられていた。今年は何が変わったのかわからないが一度もケガに見舞われなかった。
38歳をむかえた年なのに。

上原のコントロールのよさは腕のいい職人の仕事のようにみえる。例えていうと、大工が口のなかに入れた小さな釘を金槌で正確に板に打ち込んでいくようなもの。狙ったコースに143キロのストレートをピンポイントで投げ込み、最後は得意球のフォークで三振にしとめる。わずか5分くらいでゲームは終わる。守っている野手たちは投球にあわせて小刻みに体をしばらく動かしていれば、笑顔でベンチに戻ってこれる。‘ウエハラって、まったくスゴイ奴だよな!’

同じ思いでボストンのファンは上原をみている。三振を期待するとあっというまにバッターはその通りになる。‘UEHARAは魔球を投げるぞ、野球が毎日楽しくてたまらないー!’。多くのファンは上原のおかげでレッドソックスはワールドチャンピオンになることができたと思っているにちがいない。そして、上原の快投は長く語りつがれるだろう。

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2013.11.02

わくわくワールドツアー! ドレスデン ツヴィンガー宮殿磁器美

Img     ドレスデンの定番観光名所‘君主の行列’

Img_0001     ツヴィンガー宮殿

Img_0002       ‘竜騎兵の壺’(中国 景徳鎮窯)

Img_0003      ‘色絵笠人物文壺’(柿右衛門様式 17世紀後半)

今日は新聞のTV欄で偶然みつけた美術番組‘マイセン磁器’(BS日テレ2~4時)を楽しんだ。番組のなかにでてきた街で旅心がいたく刺激されたのが10年前訪問したドレスデン。

ドレスデンで出かけた観光名所のうち記憶によくとどまっているのは街の中央にある大きな壁画‘君主の行列’と‘ツヴィンガー宮殿’。‘君主の行列’はザクセンをおさめた歴代の王が2万4千枚の磁器タイルを使って描かれている。ガイドさんが足をとめて説明してくれるのが中央に描かれているフリードリヒ・アウグスト2世(1670~1733)。

このアウグスト2世が生涯追い求めたのが中国や日本でつくられた白い肌をもつ磁器。そのコレクション2万点がおさめられているのがツヴィンガー宮殿。この宮殿のなかには古典絵画を展示するドレスデン美とほかにも磁器美などがある。ツアーでは絵画が展示されている部屋には入るが、磁器美まで時間はとってくれない。

ここにある古典絵画は傑作揃い、手にした‘週刊ラ・ミューズ’に載っている作品をチェックしながらジョルジョーネの‘眠れるヴィーナス’、ラファエロの‘サン・シストの聖母’、レンブラントの‘レンブラントとサスキア’、フェルメールの‘手紙を読む若い女’などの名画を夢中になってみた。

これから先ドレスデンを訪問する機会があったら、是非寄ってみたいのが磁器美。番組に目を惹くものがでてきた。中国の景徳鎮窯でやかれた‘竜騎兵の壺’は元は隣国プロイセン国王が所有していたもの。アウグストが譲って欲しいというと‘じゃあ、ザクセンの屈強な竜騎兵600人と交換しよう’と応じた。で、この名前がついている。

アウグストは柿右衛門様式の赤に魅せられ、熱心に蒐集した。その数100点あまり、いずれも質の高い柿右衛門。以前同じようなマイセン物語の番組があり、そこでもいつかこの目でと願っている3点の‘笠人物文壺’を取り上げていた。この磁器美のコレクションにはかなり興奮しそう。夢が叶うことをミューズに祈っている。

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2013.11.01

大揺れの日展!

Img_0001     2007年に開催された‘日展100年’展(国立新美)

本日開幕した‘第45回日展’(国立新美)の権威が10/30にでた朝日新聞の不正な審査が行われていたというスクープ記事によってガタガタと崩れ落ちている。そのため、今回は内閣総理大臣賞と文部科学大臣賞の選考が急遽中止になった。

日展はこれまで出かけたことがないのでこの国内最大の公募美術展にどんな作品がどのくらいの数展示されているのかよくわからない。朝日の記事によると、日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5科に毎年1万人以上が応募するらしく、入選をはたせば展示される。朝日が入選の不正をあばいた書は今年の例でいえば1万3919点の応募の7割をしめるという。

応募には1万円かかる。すると書に応募した人から社団法人日展に入る金額は
約1億円。書は絵画や彫刻と違って墨と筆と紙があればできあがるから、応募しやすいことは確か。書道教室は全国どこにもあり、月謝を払って通い日展の入選をめざすというのはごく自然な目標設定。

書に縁がないので朝日の記事にでてくる有力会派はいくつあるのかイメージできないが、09年度の審査にあたって日展の審査員は書道界の重鎮(日展顧問)の‘天の声’に従って会派別の入選数を事前に割り振って、この配分表を会派に送っていたという。

会派にはA、B、Cといったランクがあり、Aランクの会派だけに入選が割り振られ、B、Cの会派そして会派に属してない人は入選から除外されているのか、あるいは存在する会派A、B、Cには全部入選数を割り振り、会派に入ってない人だけがはじめから入選の可能性がゼロということなのか、よくわからない。

書道界ではこういう不正な審査が昔から行われていることは常識なのだろう。書道教室の金儲けを考えたらこれが一番いいやり方であることは子どもでもわかる。会派に入らなくて応募する人はごく少数なのではないか。だから、書で名を残したい人は入選数が多く配分される会派に入って精進をする。このことは文化庁だって知っていたはず。

応募の多い書でこういうことが公然の秘密として行われていたとなれば、ほかの日本画、洋画、彫刻、工芸でも同じような不正な審査があるのではないかと誰だって思う。この朝日の記事によって明るみになった美術界のドロドロとした醜聞がいろんなところに飛び火するかもしれない。

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