アートに乾杯! 心をときめかせる風俗画3点
今年の春、新歌舞伎座が完成したのを機に行われた‘歌舞伎展’(サントリー美)で待望の絵と出会った。名古屋の徳川美が所蔵する‘歌舞伎図巻’、何年か前現地でみたのだが、そのとき展示されていたのは残念ながら期待していた場面でなく追っかけがリセットされていた。
みたかったのは‘茶屋遊びの場’、男装した采女が舞台の中央で大刀に寄りかかっている姿。もう何年も前からしびれてきたこの体をS字にまげたカッコいいポーズ、やっとその前に立ちいい気持でながめていた。こういう鮮やかな色彩と繊細な文様が目を惹く衣装を身に着けた人物が登場する風俗画をみると心が大いにときめく。
この采女をみたので風俗画は大仕事が終わった感じ。ここまで来るのに何年もかかった。美術本に載っている主だったものはほぼ目のなかにいれたが、最も感激したのはこの‘歌舞伎図巻’と奈良の大和文華館にある国宝‘婦女遊楽図屏風(松浦屏風)’。
じつはこの2枚のちょっと大きめの図版をリビングの壁に飾っている。松浦屏風は奈良ではじめてみたときからだから、もう20年くらいになる。そして、この春から采女も一緒に飾っている。松浦屏風に描かれている遊女は普通イメージする遊女とはまったく異なり、自分の感性をしっかり主張する魅力にあふれる女性が文を書いたり遊戯に興じている感じ。
これと会ったときは修復が終わったばかりだったので、屏風全体が輝いていた。地の金箔に目がくらくらし18人の着る小袖の色の組み合わせと華麗な文様がえもいわれず美しく声を失ってみていた。まさに‘THE 風俗画’。それ以来日本画の好きな人がいるとこの屏風を薦めている。
出光美にある‘桜下弾弦図’も大変魅了されている一枚。これまで4回くらいみる機会があったが、いつも左の長いキセルをもつ人物にでれっとしている。桜が満開になるとこの絵がふと頭をよぎる。
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