日本の美 薄! 琳派のすすき
光悦・宗達の‘金銀泥薄下絵古今集和歌巻’(17世紀 畠山記念館)
琳派の画家たちが繰り返し描いた秋草図、その定番のひとつがすすき。ほかには菊、萩、桔梗(ききょう)、女郎花(おみなえし)、撫子(なでしこ)など、これから秋が深まれば目にとまるようになる。
秋の風情を感じさせるすすきが単独で描かれた巻物というと俵屋宗達が下絵を描き、本阿弥光悦(1558~1637)が古今和歌集を墨書した‘金銀泥薄下絵古今集和歌巻’がある。4.5年前まで畠山記念館へよく通い、珠玉の琳派コレクションをいい気分で鑑賞していた。薄が沢山描かれたこの巻物も心に響く一枚。
尾形光琳(1658~1716)の‘秋草図屏風’はMOAとサントリー美で体験した。サントリーのものは主役のすすきと菊が目立つように構成されているので、秋草図の屏風に描かれたすすきというとすぐこれを思い出す。光琳は宗達や宗雪の画風を受け継いでいるが、その画面構成は装飾性がより豊かになりデザイン的な表現になっている。
江戸琳派の酒井抱一(1761~1828)と鈴木其一(1796~1858)にもとても魅せられてすすきがある。正方形の画面が印象的な‘秋草鶉図’は屏風の前に立つたびに立ち尽くしてみてしまう。ハッとするのが低い位置に描かれた月、その配置にひっかかりをもちながら視線は月をとりかこむようにすっとのびるすすきに釘づけになる。可憐なすすきという感じ。すすきにばかり目を奪われて鶉はよくみてない。
‘芒野図’は画面いっぱいにうめつくされたすすきに目が慣れるまでちょっと時間がかかる。しばらくするとこのすすき野にはS字の道はできていることがわかる。土色のグラデーションをきかせて描かれた野原一面のすすき、一度みたら忘れられないほど強い存在感がある。
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