心が躍る‘プーシキン美展’
ゴーギャンの‘エイアハ・オヒバ(働くなかれ)’(1896年)
アンリ・ルソーの‘詩人に霊感を与えるミューズ’(1909年)
待望の‘プーシキン美展’(7/6~9/16)をみるため横浜美に足を運んだ。この美術館は前回木曜にでかけてえらい目にあった。休館日は月曜ではなくて木曜。要注意!月曜に美術館巡りをすることは滅多にないので、調子はちょっと変だったが、館に入るとすぐみるぞ!モードになった。
この展覧会をPRする美術番組がBS朝日の‘世界の名画’で2回放映されたから、プーシキン美の成り立ちや所蔵コレクションの内容がだいぶわかった。今回この展覧会がスゴイなと思うのは展示されている66点のなかにはTVで紹介された作品がかなり含まれているから。海外の美術館に焦点をあてた特別展があるとき、美術の本や画集に載っている有名な作品が3点もあれば◎となるのだが、今回これが両手くらいあるのだから、サプライズ200%のフランス絵画展といってまちがいない。
まずは期待の作品から。ルノワール(1841~1919)の‘ジャンヌ・サマリーの肖像’、もっとも好きな絵ということはないが関心は寄せていた。図版でエルミタージュにある立ち姿の女優ジャンヌと比べると筆致の丁寧さがちょっとないなと感じていたが、じっさいはそれが気にならなかった。この絵はあまり接近しないで少し後ろにさがってみたほうがいい。すると、明るくチャーミングなジャンヌの魅力がいっそう感じられるはず。画面全体が発光体のように輝いている。図版ではこれがわからない。
今回、最も対面を待ち望んでいたのがゴーギャン(1848~1903)の‘エイアハ・オヒバ(働くことなかれ)’、この絵はゴーギャンのどの画集にも載っているから、いつかこの目でと願っていたが幸運なことに日本で会えることになった。ミューズに感謝。タバコをもっているモデルはじつは男。でもどうみても女の雰囲気。だから、いっそのこと女としてながめることにしている。パリだってタヒチだって気品のある女性はいる。右手にタバコをもって座るこのポーズがゴーギャンの心をそしてわれわれの心をザワザワさせるのはこのモデルのもつ女性的な美が際立っていたということだろう。大変魅了された。
ゴッホ(1853~1890)の男性の肖像画は画集でみたときから惹かれていたが、本物はその通りだった。背景の緑には渦巻き模様のようなものが描かれているが、これがちっともビジーでなく青い服を引き立てている。そして、はっとさせるのが顎髭の下のピンク、こんな洒落た色使いがほかの絵にあっただろうか?この医師は絵が気に入らず手放したというが、後世の美術ファンはおおいに楽しませてもらっている。
今年わが家はアンリ・ルソーイヤー、1月のアメリカ美術館巡りで運よく追っかけルソー(1844~1910)がいくつも姿を現してくれた。そして、今回‘詩人に霊感を与えるミューズ’との対面が叶った。右のアポリネールに比べてミューズの体が二回りくらい大きいのがおもしろい。そして二人とも手が異様に大きい。ルソーは足を描くのが苦手だったから、その反動で手に思いをこめたのかも。熱帯のジャングルをイメージさせる背景の緑一色の木や葉を仔細にみたが、どこにも猿や鳥などはうごめいていなかった。
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