アートに乾杯! ワイエスのスーパーリアリティ‘徴描写’
‘ウィンター・フィールド’(部分 1942年 NY MoMA)
今年1月念願のフィラデルフィア美を訪れたとき、いの一番にめざしたのはルノワールとセザンヌだったが、もう一人期待していた画家がいた。それはアメリカの国民的画家ワイエス(1917~2009)。でも、必見リストのなかにワイエスの作品は載ってない。
事前にこの美術館が所蔵する作品をいろんな美術本でチェックしたのだが、ワイエスの絵はでてこなかった。が、心のなかでは諦めてなかった。それは誰かの美術ブログに7,8年前フィラデルフィア美で大規模なワイエス展が開催されたという話がでていたから。一般的にある画家の回顧展が開かれるときは、主催する美術館は画家の代表作の一枚といえるような作品を所蔵していることが多い。だから、フィラデルフィア美はワイエスをきっと何点かもっていると期待したくなる。
そんなことがあり、具体的な作品情報はないのにワイエスが目の前に現れてくれることをひそかに願っていた。ところが、どこにもなかった。所蔵していれば当然展示してあるはず、ということはやはりこの美術館はワイエスをコレクションしてないのか、どうも腑に落ちないのだが、、、
このようにワイエスのまとまった情報が手元になく、お目にかかった作品も少ない。回顧展を体験したのはBunkamuraで08年に開催されたものだけ。そのなかでワイエスという画家が特別の存在であることを強く思わせる作品はMoMAにある‘クリスティーナの世界’と福島県美で偶然出会った‘ガニング・ロックス’。
風景でも人物でもそれが目の前にあるように、またその人物が至近距離のところに存在しているように描かれていると、視線は画面のなかに吸いこまれていく。対象を細かいところまでとらえ、その生の存在感を静謐な世界に描き出すワイエスの‘徴描写’、これを一度でも体験するともうワイエスからは逃れられない。20年前MoMAで‘クリスティーナの世界’のなかにみられる黄土色の草花の細密描写に200%KOされた。今年その絵とまた会うことができたのは幸せというほかない。
‘カニング・ロックス’の赤ら顔の皮膚の感じがじつにリアル。以前仕事でケンタッキー州へ行ったときこんな人物とよく出会った。まさに逞しく生きるカントリーの男。この絵も‘三日月’もBunkamuraであった回顧展に展示された。‘三日月’で視線が集中するのは軒先から垂れるつららと庇の下に掛けられている蔓籠。この籠の高い写実性はダリの描いたパンの入った籠を思い起こさせる。
次回のNY旅行で出かけようと思っているのがホイットニー美、ここにとても惹かれるワイエスの‘ウィンター・フィールド’がある。運よく展示してあるかわからないが、作品のある場所がわかっているのはこれしかないので是非ともみてみたい。
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