夢の先史壁画! カピバラ山地の岩面画
ブラジルのカピバラ山地
カピバラ山地の岩面画 ‘天体観測’
‘アルマジロを狩る人’
‘巨人像’
2011年、BSプレミアムで‘世界遺産 1万年の叙事詩’という番組(前年9月の再放送、9回シリーズ)があり、初回に先史時代の壁画が登場した。場所はそれまで聞いたこともなかったブラジルのカピバラ山地国立公園(1991年世界遺産に登録)。
この山地は世界一の壁画の宝庫でせりだした岩に描かれた壁画の数は3万点にのぼるという。ラスコーの洞窟があるヴェゼール渓谷で壁画が発見されたのは25カ所であるのに対し、カピバラ山地は600ヶ所と圧倒的に多い。驚くのが絵柄がヴァリエーションに富んでいること。描かれたのは2万2000年前~1万年前の旧石器時代、アルタミラやラスコーでは馬や牛などの動物が壁画の主役だが、ここでは動物ととも人々の暮らしの様子が描かれている。
とても興味深いのが夜空の星を楽しんでいる場面を表現した‘天体観測’とかミツバチを採集しているもの。また、妊娠している女性が描かれているのもある。そして、タッシリ・ナジェールでもみられた狩猟。動物は種類が多く親近感を覚えるものも登場する。トカゲ、カピバラ、アルマジロ。
このころ南米にいたアルマジロは今より大きかったらしい。だから、アルマジロを狩る人間を描いたもののほかに巨大なアルマジロに人が吹き飛ばされる壁画もでてくる。古代動物の知識はまったくないのだが、この番組でいろいろな動物を知った。1万年以上前にいた象によく似たマストドン(体重6トン)、そして南米大陸で最も繁栄した巨大哺乳類、グリプトドンは体重が2トンで長さは3メートルあった。
カピバラ山地の壁画を取材した写真家石川直樹氏(1977年生まれ)が一番興奮していたのがビルみたいな四角い姿をした巨人像。まるで子どものお絵かきをみているよう。最後にでてきたのはほかの洞窟壁画では見られないという大きな木。先史時代に植物は描かれないのが普通だが、ここでは木が巨人像と同様に畏怖すべき大自然の象徴として描かれ、その周りを囲む男たちが両手をあげて仰ぎみている。
南米を旅行する計画は今のところないが、このカピバラの壁画には大いに関心がある。壁画の発見は今もつづいているというから、素朴な線描きであっても動物や人間の生きるエネルギーや心のあたたかさがしっかり伝わってくる先史のアートがまた目を楽しませてくれるかもしれない。
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