日本画家の描いた富士!
日本画家で富士山を多く描いた画家というと、3人の名前がすぐでてくる。横山大観(1868~1958)、横山操(1920~1973)、そして片岡球子(1905~2008)。では、風景画家の代名詞みたいな東山魁夷は富士山を描いているか、描いていることは描いているが少ない。これまで見たのは3点のみ。
富士山に魅せられ続けている画家もいれば、富士山が特別なモチーフになっていない画家もいる。画家の好みもそれぞれ。大観の富士をこれまでどれくらいみたか数えたことはないが、沢山お目にかかったということは間違いない。だから、お気に入りの1点はすっとは決まらない。今回は蘆雪の絵と対照させるために‘霊峰飛鶴’を選んだ。
この絵を上野の不忍池の近くにある横山大観記念館でみたのはもうずいぶん前のこと。まだ一度しか対面してないが、画面いっぱいに富士を描く場合、周りに雲をたちこませることが多いのに対し、この絵は鶴の群れが前方を横切っていく構成になっているので強く心に刻まれている。
鶴の群れの配置を大観はいろいろ考えたはず、美しい富士の姿を引き立てるにはどういう飛翔のリズムがいいか。これは富士の表情をどう感じるかによって左右される。左の鶴たちが上昇し曲線をつくることで角ばってみえる富士山のイメージが和らぎ山全体が神々しくそびえている感じに仕上がっている。
6年前に描かれた福王寺法林(1920~2012)はとても印象深い作品。目の覚めるような赤で描かれた富士が背景の金地と斜めに流れる金の線にはさまれて浮き上がっている。ヒマラヤの画家として広く世に知られた福王寺法林は昨年2月91歳で人生に幕を下ろした。この富士の絵をみれたのは幸運だった。
横山操の富士も心に沁みる一枚。赤富士と雪の富士があり、白の富士では夜の静寂さに体がフリーズししんみりモードに陥る。赤富士はこの静寂さだけでなく霊峰富士の魂に体がつつまれる。ここには荒々しい自然の不条理さをみせつける富士の別の表情がある。
103歳まで生きた片岡球子は生命力あふれる富士山を沢山描いた。明るい色使いで富士の輪郭が太い線で形どられる。立体的ではなくマティスの切り紙絵のようにモザイク画的な富士、これほど元気をもらう富士はない。色彩の組み合わせがいいので何度みても感激する。
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