サプライズの細密描写! 山雪の‘長恨歌図巻’
2年前、夢の‘日本美術里帰り展’でとりあげた作品(拙ブログ11/10/4)がなんと実際に京都にやって来た!それは狩野山雪(1590~1651)の描いた‘長恨歌図巻’(江戸初期 17世紀前半)。アイルランドのダブリンにあるチェスター・ビーティー・ライブラリーが所蔵するこの絵の存在を知ったのは今から13年前、朝日新聞の日曜版に‘名画日本史’という連載があり、これが一冊の本になった。
わが家ではこの本は西洋版の‘世界名画の旅’とともに傑作絵画を知るバイブル、だから追っかけ画の鑑賞計画を立てるときはいの一番にここにでている作品をチェックするのがルーチン。‘長恨歌’は裏彩色が施され色彩の鮮やかな絵巻というのでいつか対面したいと願っていた。その絵が今目の前にある。上巻と下巻があり、別々の部屋で会期中展示される。いつ行ってもみられるのでご安心を、長さは両方とも10m、そのため上巻については前後期で巻き替えされ場面が変わる。
体を屈め気味にみることになるのでちょっと腰が痛くなるが、目を見張らされる色彩の鮮やかさや木々とか楼閣とか人物の衣装の精緻な描写をみればそんなことは吹っ飛び玄宗と楊貴妃の悲恋を描いた場面展開を夢中になってみていた。これほど脳を本気にさせる絵巻をみるのは久しぶり。山雪、恐るべし!
上巻に蛍がでてくる。どのあたりかは見てのお楽しみ!前期(3/30~4/21)にでている上巻の場面は安禄山の乱が勃発し、反乱軍が長安城壁を目指して進軍するところまで。風に揺れる赤い旗が印象深く躍動感あふれる馬の描写が見事。後期(4/23~5/12)に出動される方は最後に描かれた楊貴妃が処刑される場面に立ち会える。
下巻の見どころは都を追われた玄宗とおつきのものたちが蜀の難所を進んでいくところ。急峻な山道を登り、崖沿いの桟道を恐る恐るわたっていく。TVの映像で蜀の桟道の跡をみたことがあるが、こんな切り立った崖の横にどうやって道をつくったの?という感じ。足を踏み外して下の川に落ちた者が少なからずいたに違いない。
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