アゲイン ‘ルーベンス展’!
‘ロムルスとレムスの発見’(1612~13年 ローマ カピトリーニ美)
‘復活のキリスト’(1616年 フィレンツエ パラティーナ美)
昨年秋国立新美で開かれたリヒテンシュタイン美展の目玉として多くの美術ファンの目を楽しませてくれたルーベンス(1577~1640)、それからあまり時間が経ってないのにまた日本に上陸した。今度は渋谷のBunkamuraでワンマン興行(3/9~4/21)、早めに出動してきた。
バロック絵画というとルーヴルにあるルーベンスの‘マリー・ド・メディシスの連作’をみることが通過儀礼みたいになっている。この絵がバロックのスタートのはずなのにこれをみてしまうとルーベンスはもういいやという人も多いかもしれない。そして、ルーベンスは大きな絵でないと物足りないという気分も生まれてくる。
天井の高い部屋いっぱいに飾られたルーベンスの大作を日本で展示するのはまず無理。国立新美で公開された‘デキウス・ムスの連作’は例外中の例外。だから、Bunkamuraには見あげるようなものはでてない。
ローマのカピトリーニ美にある‘ロムルスとレムスの発見’は3年前現地でみた。絵の存在はずいぶん前に知っていたが本物と向き合うのに長い時間が流れた。ローマへ何度も出かけている方は別にして少ない訪問だとヴァチカン美へは足を運んでもカピトリーニ美にはなかなか縁がない。その意味ではこの絵が日本でみれるのは幸運なことかもしれない。惹かれるのはじつはロムルスとレムスではなく狼のほう。散歩のとき出会う犬がここにいるような感じがしてじっとみてしまう。
今回長くみていたのは肌の生感覚の描写に魅了される‘復活のキリスト’とアメリカから出品された‘熊狩り’。‘復活のキリスト’があるのはフィレンツェのピッティ宮、ここでは‘戦争の惨禍’や‘4人の哲学者’が記憶に強く残っているが、‘復活のキリスト’はまったく知らなかった。
‘熊狩り’は古代ローマのコロッセオで繰り広げられた剣闘士と猛獣の戦いの場面をみているような錯覚を覚える。獰猛な熊のうなり声が聞こえてくるよう。暴力的で緊張感に満ちた絵画表現はルーベンスの真骨頂。色の鮮やかさが弱い‘ヘクトルを打ち倒すアキレス’と比べるとこちらのほうに軍配があがる。
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コメント
ルーベンス展、楽しんでまいりました。
『ロムルスとレムスの発見』を見るのを楽しみにしていました。実は30年前、カピトリ―二美術館に行った時、カラヴァッジョの絵を見たことはよく覚えているのですが『ロムルスとレムスの発見』を見たことは覚えていません。
私はルーベンスの作品の中でも、動物が描かれている作品は、特に最高のエンターテインメント的要素があって面白いと思います!
『ロムルスとレムスの発見』はローマ建国の伝説に基づいているとはいえ、雌狼と二人の赤子の描写に妙なリアリティーがあって、絵画世界ならではの楽しさがあります。
『熊狩り』を見て、METやミュンヘンのアルテ・ピナコテ―クで見た『狼狩り』、『カバ狩り』、『トラ狩り』、『ライオン狩り』などを思い出しました。人物と動物が実際にはほとんどありえない乱闘をして、目を楽しませてくれますね。
投稿: ケンスケ | 2013.03.16 22:33
to ケンスケさん
バロック芸術がもとめたものは人々を緊張させ
驚かすことだったので、動物との戦いという
のは格好の題材だったのでしょうね。
これが動と動の描写だとすると動と静を混ぜ合わ
せたのが男性が女性を襲う場面ですね。ギリシャ
神話とか古代ローマにおこった女性の悲劇が絵画化
されました。バロックには物語がつまってますから
おもしろいです。
投稿: いづつや | 2013.03.17 01:04