フィラデルフィア美(3) ここにもゴッホのひまわりがあった!
ゴッホ(1853~1890)がアルルで描いたひまわりを全点みるのが生涯の夢、今残っているのは3点。その1点がフィラデルフィア美にある‘12輪のひまわり’。ゴッホ美とかロンドンナショナルギャラリーにあるものとの違いは背景をうす青にしていること。そのため、絵全体がちょっと落ち着いている感じ。必見リストに載せているゴッホはほかに2点あったが、どちらも展示しあったのでニコニコ顔。
ゴッホ同様、マネ(1832~1883)のヒット率もよくお目当ての3点がみれたうえ、プラスαが2点あった。このうち4点が海の絵。日本であったフィラデルフィア美展でみた‘キアサージ号とアラバマ号の海戦’との再会を楽しんだが、飛び跳ねるイルカの姿が目を惹く海景画にも足が止まる。これまでみたマネの海景画は今回のぶんも含めて7点くらいだが、こうしてまとまった形でみるとその魅力がよく伝わってくる。すぐ思い浮かぶ海の絵の名手はクールベ、マネ、ホーマー、モネの4人。
銅版画作家エミール・ベローを描いた肖像画は大きな収穫だった。でっぷり太ったこの男性は右手にビールの入ったグラスをもち気持ちよさそうにはパイプをふかしている。おもわず‘ご機嫌だねえー、仕事がはかどったのかい’と声をかけたくなる。
今回◎の追っかけ画はアンリ・ルソー(1844~1910)の初期の作品‘カーニヴァルの夕べ’。この絵があるのはルノワールの‘浴女たち’やセザンヌの‘サント・ヴィクトワール山’が飾ってある部屋。ルソーは大変人気があるから、美術館のお宝中のお宝と一緒に展示しているのだろう。
この絵の隣には森の猿たちを描いた‘陽気なおどけもの’が並んでいる。このジャングル画は日本であったフィラデルフィア美展に登場し目を楽しませてくれた。ここには‘ピンク色の少女’と‘牛のいる風景’もあるのだが、パーフェクトとはいかなかった。
‘カーニヴァルの夕べ’で脳を本気にさせるのが精緻に描かれた木々、細い線で枝一本々までじつにていねいに描写されている。まるで加山又造の風景画をみているよう。細部へのこだわりがこれほどあるのだから、ルソーの心根は特別繊細なのかもしれない。
この絵は背の高い木をペタペタと横に貼っていき最後にその前に白い衣装で仮装した男女のシールを置いてできあがりという風にもみえるが、よくみると木の高さを変えたりして奥行きのある空間をつくっている。待望の絵なのでしばらく息を呑んでみていた。
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コメント
今回も素敵な画像ありがとうございます。
マネの『イルカのいる風景』は初めて見ましたが、青、黒、グレーでまとめられた色調はいいですね。
『エミール・ベローの肖像』は、ずいぶん前に画集で見たことを思い出しました。マネの肖像画家としての力量が伝わってくる傑作ですね。グラスの描写を見て、マネの静物を描く技術の高さを改めて認識します。今開催中のクラーク・コレクションにも、マネのガラスの花瓶の絵がありますが惹かれました。
『カーニヴァルの夕べ』は、背景の夕闇のオレンジと青、そしてシルエットになっている木々の対照がなんとも言えません。人形みたいな人物像が童話のような雰囲気を醸し出していますね。
投稿: ケンスケ | 2013.03.04 08:32
to ケンスケさん
マネの海景画が今回とても心に響きました。
そして、存在感のある太鼓腹の男性の肖像、
これも予想以上によかったです。マネはワシ
ントンやメトロポリタンでも調子がよく、
満ち足りた気分です。
ルソーの絵は詩情あふれる名画でした。おそ
らく初期の作品ではこれが一番いいかもしれま
せん。アメリカのコレクターはいいルソーを
集めてますね。その眼力の高さに感心します。
投稿: いづつや | 2013.03.04 20:22