フィラデルフィア美(4) マティスの不思議な肖像画!
ミロの作品
折角念願のフィラデルフィア美にやって来たのだから必見リストに書き込んだ作品は全部みるつもりだった。ところが、3点思惑がはずれた。セザンヌの‘大水浴図’のことはすでにふれた。
もう2点はダリの‘茹でた隠元豆のある柔らかい構造ー内乱の予感’とデュシャンの遺作‘のぞき穴の向こうの世界’、館内をいろいろ動き回ったのだがみつからなかった。後からわかったことがこの原因かもしれない。というのは展示のパンフレットをよくみると地下1階に近現代美術を展示する部屋がもう2つあったのである。ひょっとすると、ここに展示してあったのかもしれない。
1時間半の鑑賞なので、心に余裕がない。しかもはじめての美術館のため展示室の配置がよくわからない。1階で印象派をみたあと、近現代美術のある細長い部屋に進んだ。事前にシミュレーションしておいた‘ラ・ミューズ’にでているレイアウトとまったく変わっていたから、案内図をみてここでダリもデュシャンも姿を現わしてくれるものとふんでいた。ところが勝手がちがう。デュシャンはお馴染みの木の箱などがすこしあった。でも、お目当ての小さな穴からのぞく遺作は見当たらない。係員に聞くと今はみれないという。拍子抜けした。
この時点でだいぶパニクりはじめてきた。ダリの隠元豆がみれないなんて!ショックは大きい。仕方がないから、頭を切り変えてほかの追っかけ画に集中した。ダリが地下1階の部屋にあったのか、それとも貸し出されていたかは不明。どこかへ出かけていて今回は縁がなかったと思うことにした。
ミロ(1893~1983)の作品は10点ほどあった。画像はそのうち足がとまったものの一枚、ワシントンのハーシュホーン美でみたのとモチーフの構成が似ている。ほかにも日本の展覧会に出品された‘月に吠える犬’のようなユーモラスなものもあった。
タンギー(1900~1955)の‘雷雨’は期待していた作品。雷雨とタイトルはついているが、ここは深海の底のイメージ、こんなところでも雷雨があるのだろうか?真っ暗な世界に印象的なのが水流や雲を思わせる白のフォルム。左では土のなかからぎょろ目の生物が顔をだしている。タンギーの絵というとしーんと静まりかえっていてだんだん不安な気持ちになってくる架空の情景を描いたものが多いが、この絵にはそうした雰囲気だけでなくどこかとぼけた味がある。
再会した作品のなかで、興奮気味にみたのがクプカ(1871~1957)の‘ニュートンの円盤’、これは1994年愛知県美で開催された‘クプカ展’のとき遭遇した。このスペースワールドを連想させるクプカの抽象絵画に200%魅せられているので、絵の前ですぐ反応した。19年前と同様赤や黄色の輪にいざなわれて体がふわりと宙に浮いてきた。
大きな収穫はマティス(1869~1955)の不思議な肖像画、女性の白い衣服のまわりに白い線が装飾的に描かれている。作品の制作過程でひいた体の輪郭線をそのまま残している感じ。こんな肖像画はみたことないが、なぜか強く惹きつけられる。
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