メトロポリタン美(7) ホッパー、オキーフに出会う喜び!
メトロポリタン美で近現代美術が展示されているところは1階と2階の左奥、順番としては印象派をみたあとの流れで2階をみて1階へ降りていくことになる。今回の重点鑑賞、ホッパーとオキーフがあるのは1階。
1階ではちょうどマティス展が開催中、すごく誘惑に駆られたが時間がないので当初の鑑賞計画を貫徹することにした。ホッパー(1882~1967)は追っかけ画の‘小さな町のオフィス’とシカゴであった回顧展でみた‘夫人のためのテーブル’の2点。今回ホッパーはワシントンナショナルギャラリーで期待していた作品が姿を現してくれなかったので、結局この2点にとどまった。
アメリカの小さな町を体験したことはないが、ここにも大都市同様アメリカ現代社会に潜む影の部分が厳然と存在している。大きな窓のあるオフィスで強い孤独感を感じさせるこの男性、この角度からでは顔の表情はよみとれないが、視線の焦点は定まってないだろう。
‘夫人のためのテーブル’をみているとはドガやマネの描いたパリのレストランやビアホールで働く女の姿が重なってくる。受付係と奥のテーブルで話している男女、そして手前でテーブルを準備しているウエイトレスが三角形構図をつくり画面に奥行きができている。この絵は風俗画の系譜のなかでは傑作に数えられる一枚ではなかろうか。
08年の訪問の際20点の作品があったオキーフ(1887~1986)は今回7点でていた。半分以下に減ったのはマティス展のため展示の部屋が制限されたからかもしれない。とくに惹かれたのは天空に巨大な動物の頭骸骨が描かれた‘遠くて近いところから’。古い映画で恐縮だがザ・ピーナッツが出演した‘モスラ’が目の前をよぎった。
抽象画はどうやって生まれるかを理解する上でいい例がオキーフの絵。花のモチーフを極限にまで拡大すると画面は具象が消えたフォルムとその空間を彩った色彩の面でおおいつくされる。‘ブラックアイリスⅢ’はまだ具象の姿を残しているが、部分々をみると抽象表現そのもの。この度の美術館めぐりでオキーフは15点みることができた。この偉大な女流作家にだいぶ近づいてきた。
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