ナショナルギャラリー(2) マネの‘老音楽師’は大作だった!
ロートレックの‘ボレロを踊るマルセル・ランデ’(1896年)
美術館を再訪するのは過去の鑑賞で対面がかなわなかった名画をみるためであるが、ナショナルギャラリーとかMET、シカゴ、ボストンのように豊富な印象派のコレクションでその名が知られている美術館では追っかけ画に心は向かっていても傑作の数々に囲まれるとついついその絵の前に立ち止まってしまう。だから、鑑賞時間の段取りが大変。
印象派必見リストに載せている作品は17点。結果は8勝9敗、ヒット率は5割だが、◎の4作品が全部みれたから満足度は高い。その筆頭がマネ(1832~1883)の‘老音楽師’、前回マネは大好きな‘鉄道’をはじめとして7点みれたが、この絵は姿をみせてくれなかった。
画集の図版ではイメージできなかったが、縦1.86m、横2.47mの大きな絵だった。石のブロックのようなものにバイオリンをもった老人が腰を掛けこちらに視線を向けている。その前には幼子を抱いた裸足の少女がおり、後ろでは男の子がこの老音楽師をじっとみつめている。次の演奏を待っているのだろうか。これほど大きなマネの絵にこれまで遭遇したかどうかすぐには思い出せない。老人の存在感と裸足の女の子が強く心に刻まれた。
08年の美術館めぐりでアメリカにはロートレック(1864~1901)の油彩のいい絵が沢山あることがわかった。ワシントンにも画集に載っているものがいくつもある。前回は‘ムーランルージュのカドリー踊り’や‘ムーラン・ド・ラ・ギャレットの片隅’などを楽しんだが、この度の収穫はみたくてしょうがなかった‘シルペリック劇場でボレロを踊るマルセル・ランデ’、軽やかにステップを踏むマルセルの顔にスポットライトが当たりホールは楽しい気分と熱気につつまれている。TASCHEN本の表紙を飾る絵がみれたのだから、とても機嫌がいい。
カサット(1844~1926)の‘舟遊び’は長い間気になっていた作品。ようやくみることができた。カサットは母子を描くのがとびっきり上手い。もし彼女がルネサンスの時代の生まれていたら、腕のいい聖母子の画家になったことはまちがいない。ボートの漕ぎ手を後ろ向きにして大きく描くのは浮世絵の影響。これまでみたカサットは数は少ないが、これが一番気に入っている。
ゴーギャン(1848~1903)についてはみたい度の強い絵はおおよそ鑑賞済みなので、今回はリラックスモード。‘光輪のある自画像’など7点でていた。ゴーギャンで楽しみな色のひとつが紫、10年テートモダンで開催された回顧展では鮮やかな紫が印象的な作品が何点もあったが、この‘海辺にて’もその一枚。またまた美しい紫に魅了された。
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コメント
マネの絵は色調といい、リアルな貧しい人の描写といい、ベラスケスやムリーリョを思わせるスペイン風の魅力的な作品ですね。山高帽を被った人物はマネ自身だったように思うのですが。
ロートレック作品は、ライトに照らされた色の醸し出す雰囲気が素晴らしいです!
カサットの作品は、ワシントンのナショナル・ギャラリーを訪れた時、印象に残りました。斬新な構図は、浮世絵風の意外なアングルを意識しているのでしょうか。
ゴーギャンの紫の波の色は、目を楽しませてくれますね。素描や版画でなく絵画作品である以上、やはり色が一番目に訴えかけてきます。
投稿: ケンスケ | 2013.02.15 12:24
to ケンスケさん
‘老音楽師’は大きな絵でした。マネは
ベラスケスに心を奪われたのでしょうね。そして、
黒の画家に。おっしゃるようにここにはムリー
リョの絵にも通じるものがありますね。
今回ロートレックは5点ありました。そのなか
で追っかけ画の‘マルセル・ランデ’に出会えた
のは大きな喜びです。それにしてもここのロート
レック、ゴーギャンのコレクションはすごいで
すね、感心します。
以前から気になっていたカサットの絵も大収穫
でした。前回カサットはどういうわけか縁が
ありませんでしたから、リカバリーできとても
満足してます。
投稿: いづつや | 2013.02.15 19:57