ナショナルギャラリー(6) 東館はエンターテイメント空間!
ナショナルギャラリーの館内はフラッシュをたかなければ写真撮影はOK、前回の訪問との違いはデジカメで展示されている作品をばかばか撮ったこと。今回の感想記では図版がないものについてはすこし画質が落ちるがこの写真を画像として使うことにした。
問題がひとつある。限られた時間での鑑賞なので、作品の写真は撮っても横にあるタイトルや制作時期が記されたプレートまでは手が回らないことがある。だから、これが不明な場合は作家の作品とだけ書くことにしたい。
はじめてこの美術館を訪れたのは1990年、もうずいぶん前のことだから東館(1978年開館)には現代アートの作品があったなというくらいで記憶の大半は消えている。それでもよく覚えていることが2つある。ひとつはタイミングよく開催されていたマティス展に画面がMyカラーの緑で多く占められた作品がいくつもあったこと、そして高い天井から吊り下げられたカルダー(1898~1976)の動く彫刻、赤と黒の‘モビール’。
この作品でカルダーが身近に感じられるようになった。頭の上に鉄線の先につけられた葉っぱの形やとがった三角形をした小さな金属片や木片がゆらゆらと不規則に動くのをみているのはわけもなくおもしろい。これなら自分でも作れそうだが、カルダーがこれを発表するまでは地上にどっしりと配置された彫刻作品をこんな風にして動かしてみようと考えた人は誰もいなかった。何事も最初にアイデアを思いついた人が一番偉い。
08年のとき閉鎖中だった‘マティスルーム’に23年ぶりに入った。ここにはマティス(1869~1954)が大病をしたあとの晩年にはじめた切り紙絵が5点展示してある。なかでも‘黒人’とこの絵の一年後に描かれた‘仮面のある大装飾’がとてもいい。この切り紙絵に大変魅せられているが、最もみたい‘王の悲しみ’(ポンピドー)との対面が果たせてない。次回パリを訪問したときミューズが微笑んでくれるだろうか?
ファイニンガー(1871~1956)の‘自転車競争’をみるのは2度目。前回ここでは姿をみせてくれなかったが、同じ年に横須賀美であった回顧展でお目にかかった。スポーツ競技の絵というとすぐオリンピックのポスターを想起するが、この絵が描かれた1912年のころ未来派のボッチョーニたちはスポーツをテーマにした作品をいくつも生み出し、スポーツが生み出すスピード感や肉体美を表現した。この自転車レースを描いた作品も前かがみになってスピードを競い合う選手たちの激しい息づかいが聞こえてくるよう。
現代アートで子どもの落書きみたいな作品がトレードマークになっている作家といえばなんといってもフランスのデュビュッフェ(1901~1985)。2階の通路の壁にお馴染みの簡略に描かれた人物を何人もぺたぺた張り付けたような絵が飾られていた。デュビュッフェのこんな大きな作品をみるのは久しぶり。しばらくニヤニヤしながらみていた。
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コメント
東館のご紹介ありがとうございます。
実はワシントンのナショナル・ギャラリーへ行った時、東館はさっと入った程度でした。西館の作品の観賞で手いっぱいだったこともありあすが、19世紀以前の美術に比べると現代美術にはそれほど個人的関心がないため、東館ではカルダ―の『モビール』しか見た記憶がありません。
マティスの『黒人』、ファイニンガ―の『自転車競走』はともにカラフルな色彩で目を楽しませてくれますね。
私は現代美術の潮流について一通り読んだことがあるのですが、個々の画家に関しては詳しくありません。
いづつやさんのご紹介作品で今後もっと開眼できたら、と思います。
投稿: ケンスケ | 2013.02.23 09:20
to ケンスケさん
5年前と違って今回は東館では収穫がいっぱい
ありました。マティスの切り紙絵に久しぶりに
会えましたし、期待のオキーフも姿をみせてく
れましたのでハイテンション状態でした。
モダンアートは作家に最接近したといえるほど
作品をみてませんからまだまだこれからです。
フィラデルフィア美、MET,MoMA,グッゲンハ
イムの感想記でも現代アートはいくつも紹介
することにしてますが、抽象美を共有できる
作品が多くあればいいですね。
投稿: いづつや | 2013.02.24 01:14