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2013.02.28

生涯の思い出となる‘エル・グレコ展’!

Img_0001_2     ‘白貂の毛皮をまとう貴婦人’(1577~90年 グラスゴー美)

Img_0004_2     ‘神殿から商人を追い払うキリスト’(1610年 パレス・フィサ・コレクション)

Img_2     ‘聖アンナのいる聖家族’(1590~95年 トレド タベラ施療院)

Img_0002_2     ‘無原罪のお宿り’(1607~13年 トレド サンタ・クルス美)

東京都美で開催中の‘エル・グレコ展’(1/19~4/7)をみてきた。日本で27年ぶりに実現した大回顧展に加え、アメリカの美術館でも名作に出会ったから、今年はてんこ盛りのエル・グレコイヤーになった。

出品された51点のなかで感激の対面となったのが、‘白貂の毛皮をまとう貴婦人’。この絵を20年くらい前にみたとき、本当にこれがエル・グレコ(1541~1614)の作品!?という感じだった。それまでグレコの絵というと体が異常に引きのばされた人物を描く画家というイメージができあがっているので、こんなまともでしかも絶世の美女の肖像画が同じ画家によって描かれたことがにわかには信じられなかった。その謎は今も引きずっている

これが展示されているのはイギリスのグラスゴー美、ロンドンとか周辺の都市にある美術館なら訪問することはたやすいが、北のグラスゴーとなるとそう簡単には行けない。だから、この絵をみたいという思いは強いものの、この先も縁がなさそうだなと思っていた。ところが、優しいミューズの特別のお計らいで日本で会えることになった。こんな嬉しいことはない。言葉を失ってみていた。生の感じをいだかせるすばらしい女性の絵が16世紀の後半スペインに生まれたことは西洋絵画史における奇跡のひとつではなかろうか。

キリストの物語のなかでキリストが激しい行動をみせるのが神殿から商人たちを追い払う場面。ほかのどの絵よりもこのグレコの描いた右手を大きくふりまわすキリストが強く心に刻まれている。ワシントンのナショナルギャラリーでも別ヴァージョンに出会った。

1886年の回顧展(西洋美)でも展示された‘聖アンナのいる聖家族’はお気に入りの一枚。心の安らぐこの聖家族がまたみれるのだから幸運なめぐりあわせに感謝しなければいけない。目の大きな卵型の顔をした聖母マリアの美しいこと!ラファエロの聖母子像とともにこの絵をMy‘好きな聖母子像’の最上位に登録している。

‘貴婦人’同様、熱い思いで対面を待っていたのがトレドからやって来た‘無原罪のお宿り’。このグレコが晩年に描いた傑作をみないとグレコは済みマークがつけられないので3度目のトレド旅行を計画していた。その絵が日本に来てくれたので、トレドはもう行く必要がなくなった。

息を呑んでみていた。こんな傑作が日本でみれるなんて本当に夢のよう。日曜美術館で絵の下から聖母マリアをみあげると顔がまるくみえると解説していたが、たしかにそんな感じもする。それを確かめるため絵からすこし離れてみると、顔はやはり縦に長くみえる。聖母マリアと同じくらい興味深くながめていたのは下の黄色い衣装をつけた天使、腰の曲がり具合や足の動かし方がとても優雅、その上にいる聖母マリアにつながるラインはゆるくS字になっており、視線を上へと誘導していく。

満足度200%の展覧会を体験して、ますますエル・グレコが好きになった。

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コメント

今回のエル・グレコ展は、本当に画集に載っているような傑作が多くて、この先30年くらいはないような展覧会だと思いました。

『白貂の毛皮の貴婦人』は、確かに他のグレコの肖像画と違って、精緻な筆触で本当にグレコ作品なのかと思いますが、作品は文句なしに傑作ですね。

『聖アンナのいる聖家族』は、素晴らしい色彩のハーモニーです。こうした原色の表現力に満ちたグレコ作品を見ていると、後期印象派に近いものを感じます。

『無原罪のお宿り』は、何か電気でも帯びているような輝きに圧倒されました。離れて見るだけでなく、絵の前にうずくまって、見上げてしまいました。

今回はトレドからの傑作が多くて、トレドで見逃した作品の数々を見られて、大満足でした。

投稿: ケンスケ | 2013.03.01 08:31

to ケンスケさん
今回の出品作はトレドにあるものが多いですね。
トレド美に聖人などの肖像があることは知ってい
たのですが、これらがいくつもみれましたから
本当によかったです。そして‘聖家族’に初見の
‘無原罪のお宿り’、たまらないですね。


生感覚のする‘貴婦人’を唖然としてみてました
。白貂の毛一本々や婦人の髪のはえぎわなどの
描写がじつにリアルですね。画技の高さに感心
します。グレコ、ベラスケス、ゴヤ、スペインが
生んだ大画家たちは皆すばらしい肖像画を残しま
したね。

‘無原罪のお宿り’は体が熱くなるくらいの傑作
ですね。これを日本でみれたのですからねえー、
動きを感じさせる人物描写と計算された配置、
グレコは真にすごい画家ですね。

投稿: いづつや | 2013.03.01 09:47

今回は、トレド近郊イリェーカスから送られた『聖母戴冠』や『受胎告知』もすばらしいと思いました。『受胎告知』の天使の衣の緑は、グレコ円熟期の天使に特徴的ですね。これほど美しく映える原色の緑は、後期印象派の画家の作品でも見られないと思うのですが。

おっしゃる通り『無原罪のお宿り』は、聖母といい手前の天使といい上昇するダイナミックな動きを感じさせる作品ですね。グレコ自身が著した絵画論を少し読んだのですが、「絵というのは動いているように見えるのがいい」云々と書いてありました。

引き延ばされた人物はマニエリスム的、大画面の動的な描写はバロック的で、同時にゴッホやゴーギャンを先駆する色彩の表現力。

三つの要素が組み合わされた絵画表現は、ほかに類を見ない独自性がありますね!

投稿: ケンスケ | 2013.03.01 11:44

to ケンスケさん
今回イリュカスからやってきた4作品は大きく
て見ごたえがありましたね。このうち2点は
1886年の回顧展にも出品されました。

マリアの緑の輝きに目が釘づけになります。
グレコの色彩表現はヴェネツィアで学んだティ
ツイアーノやヴェロネーゼの色使いの影響で
しょうね。これに20世紀の初頭にでてきた
ドイツ表現主義の画家たちが強く惹かれます。

ひきのばされた人物のフォルムについては
ミケランジェロの描き方とか、マニエリスム
様式、また当時人々の心をとらえた神秘主義で
いわれた炎とかがいろいろ影響しているので
しょうね。グレコは謎の多い画家ですが、最近
は研究が進み実像がすこしずつみえてきたので
興味がいっそう掻き立てられます。

投稿: いづつや | 2013.03.01 18:23

いづつやさん、熱いですね!
そうですか、無原罪のお宿り、を観るためにスペイン行きまで計画されていたとは!
まずエルグレコのこちらをじっとみる肖像画の人々の視線にこの画家はただ者ではないなと。
宗教画コーナーでその想いは強くなりますね。
ギリシャ人として、パウロに共感あったようですね。
さて、明日からラファエロがはじまります。
上野の森は、バロックの共演ですね!

投稿: oki | 2013.03.01 21:22

to okiさん
‘無原罪のお宿り’はずっと気になっていた
作品です。最後に残った傑作ですから、トレド
行きは考えていました。その絵が日本でみれ
たのですから、幸運でした。

さて次はラファエロですね。グレコの聖母マリア、
そして三菱一号館美のルノワールとの共演で東京の
春は一気に華やぎます。このまたとないコラボを
今親しい人にPRしまくってます。

投稿: いづつや | 2013.03.01 23:36

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