心が突き動かされるビッグネームの大きなカンバス!
ウォーホルの‘花’
ケリーの‘赤・黄・青’
スティルの作品
リヒターの作品
ハーシュホーン美の鑑賞に使える時間は1時間、みおわると公園を挟んでこの美術館の向こう側に位置する自然史博物館に素早く戻らなくてはいけないからのんびりとはいかない。館を出る前いつものようにミュージアムショップで図録を購入しようとしたら、なぜか図録は作ってないという。これは珍しい。いい作品が結構あるので図録がないのは痛い!
ウォーホル(1928~1987)の‘花’シリーズははじめてお目にかかった。画集をみると花びらの色がみなちがうものもあればこの作品のように青一色というのもある。日本画では花や鳥は日本美の象徴として描かれるが、アメリカのアーテイストが花を描くときはオキーフでもウォーホルでも大きなカンバスにどーんどーんと描く。だから、花の絵をみているのに花鳥画を心穏やかに楽しんでいるという感覚ではなく、ものの存在感をしっかり確かめているという見方になる。
この美術館に来る前にいたナショナルギャラリーでは企画展示の部屋でケリー(1923~)のミニ回顧展が開かれていた。大きな絵はなかったが、明快な色彩で均一に塗られた色面が心をとらえて離さなかった。その余韻が残っているなかハーシュホーンに入ってみると、今度は大きなカンバスの作品が3点展示されていた。
色の組み合わせや明るい色調はアルバースの作品に似ているが、ケリーはカンバスの一部をカットしたり大胆に変形して色面をつくっている。平坦な抽象絵画の場合、画面がこのように大きいと色に対する感じ方がまったく違ってくる。目の前には形態はなく色の面だけなので、赤や黄色、そして青が心のなかにある感情のスペクトルと同化してくるような感じ。具象のさほど大きくない絵をみているかぎり色彩はそこまで体のなかに入ってこない。
スティル(1904~1980)も大きさ作品が3点あった。これまでポンピドー、テートモダン、NYのMoMA、METで体験したのはこれより小さいものだったので、すごく刺激的だった。作品の特徴としては黒や白で彩られたフォルムは不定形で先がぎざぎざしており、作家の激しく揺れる内面や荒々しい自然のイメージがカンバスに投影されているよう。
ドイツのリヒター(1932~)は川村記念美で一度回顧展をみたので、その激しく重層的な作風に目は少し慣れている。画面をおおう色彩は筆触がかすれ気味でいろんな色が重なりあい、ダイナミックに揺れ動いている感じ。リヒターに惹かれるのは多用される赤や青がとても鮮やかだから。こういう色彩の神秘にあふれパワーのある作品をみると現代アートをもっとみたくなる。
ワシントンにある美術館はこれで終わり、次に向かったフィラデルフィア美は国内の展覧会のあと書くことにします。
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コメント
リヒターの作品は初めて見ましたが、焼き物を思わせる色合いが実にいいですね! 特に青、紫、赤系統の輝き。それにわずかに使われている黄色。色と筆触だけで十分に引き込まれます。
スティルの作品では、ごくわずかに使われている青、オレンジ、赤が大きな存在感を持っています。
現代アートだけの展覧会には普段行かないんですが、何も解釈など要求されない、色彩や形体だけに酔う世界もいいですね!
投稿: ケンスケ | 2013.02.23 21:38
to ケンスケさん
現代アートでは大きなカンバスに描かれること
が多いですから、色彩とがっと向き合うことに
なります。
黒でも鮮やかな赤や青でも、またケリーのような
明快な色彩でも、とにかく色の力というか魅力に
体が敏感に反応するという感じです。こうした
アートに接するのも結構楽しいです。
ロスコ、リヒター、スティルのように色面が
重層的でこれににじみやかすれが絡んでくるよう
な画面には心がぐっと惹きこまれますね。
投稿: いづつや | 2013.02.24 00:38