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2013.02.28

生涯の思い出となる‘エル・グレコ展’!

Img_0001_2     ‘白貂の毛皮をまとう貴婦人’(1577~90年 グラスゴー美)

Img_0004_2     ‘神殿から商人を追い払うキリスト’(1610年 パレス・フィサ・コレクション)

Img_2     ‘聖アンナのいる聖家族’(1590~95年 トレド タベラ施療院)

Img_0002_2     ‘無原罪のお宿り’(1607~13年 トレド サンタ・クルス美)

東京都美で開催中の‘エル・グレコ展’(1/19~4/7)をみてきた。日本で27年ぶりに実現した大回顧展に加え、アメリカの美術館でも名作に出会ったから、今年はてんこ盛りのエル・グレコイヤーになった。

出品された51点のなかで感激の対面となったのが、‘白貂の毛皮をまとう貴婦人’。この絵を20年くらい前にみたとき、本当にこれがエル・グレコ(1541~1614)の作品!?という感じだった。それまでグレコの絵というと体が異常に引きのばされた人物を描く画家というイメージができあがっているので、こんなまともでしかも絶世の美女の肖像画が同じ画家によって描かれたことがにわかには信じられなかった。その謎は今も引きずっている

これが展示されているのはイギリスのグラスゴー美、ロンドンとか周辺の都市にある美術館なら訪問することはたやすいが、北のグラスゴーとなるとそう簡単には行けない。だから、この絵をみたいという思いは強いものの、この先も縁がなさそうだなと思っていた。ところが、優しいミューズの特別のお計らいで日本で会えることになった。こんな嬉しいことはない。言葉を失ってみていた。生の感じをいだかせるすばらしい女性の絵が16世紀の後半スペインに生まれたことは西洋絵画史における奇跡のひとつではなかろうか。

キリストの物語のなかでキリストが激しい行動をみせるのが神殿から商人たちを追い払う場面。ほかのどの絵よりもこのグレコの描いた右手を大きくふりまわすキリストが強く心に刻まれている。ワシントンのナショナルギャラリーでも別ヴァージョンに出会った。

1886年の回顧展(西洋美)でも展示された‘聖アンナのいる聖家族’はお気に入りの一枚。心の安らぐこの聖家族がまたみれるのだから幸運なめぐりあわせに感謝しなければいけない。目の大きな卵型の顔をした聖母マリアの美しいこと!ラファエロの聖母子像とともにこの絵をMy‘好きな聖母子像’の最上位に登録している。

‘貴婦人’同様、熱い思いで対面を待っていたのがトレドからやって来た‘無原罪のお宿り’。このグレコが晩年に描いた傑作をみないとグレコは済みマークがつけられないので3度目のトレド旅行を計画していた。その絵が日本に来てくれたので、トレドはもう行く必要がなくなった。

息を呑んでみていた。こんな傑作が日本でみれるなんて本当に夢のよう。日曜美術館で絵の下から聖母マリアをみあげると顔がまるくみえると解説していたが、たしかにそんな感じもする。それを確かめるため絵からすこし離れてみると、顔はやはり縦に長くみえる。聖母マリアと同じくらい興味深くながめていたのは下の黄色い衣装をつけた天使、腰の曲がり具合や足の動かし方がとても優雅、その上にいる聖母マリアにつながるラインはゆるくS字になっており、視線を上へと誘導していく。

満足度200%の展覧会を体験して、ますますエル・グレコが好きになった。

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2013.02.27

やっと‘歌舞伎図巻’がみれた!

Img_0003_2     ‘歌舞伎図巻’(重文 江戸時代17世紀 徳川美)

Img_0002_2     ‘歌舞伎図巻’(拡大図)

Img_2     ‘邸内遊楽図屏風’(江戸時代17世紀 サントリー美)

Img_0005_2     歌川国貞の‘役者はんじ物 市川団十郎’(1812年 千葉市美)

サントリー美で開催されている‘歌舞伎 江戸の芝居小屋’展(2/6~3/31)を楽しんだ。サントリー美へ出かけるのは久しぶり。帰るときミッドタウンのなかを通ったら3つの店舗が閉鎖されていた。ここの集客力ができたときより低下しているのだろう。案内嬢の話だと4月リニューアルするらしい。都内では今商業施設間の顧客争奪戦がヒートアップ。出店する店舗はおいしい食べ物や魅力ある商品を提供しないと生き残るのは難しいかもしれない。

もうすぐ完成する新歌舞伎座を祝って行われるこの展覧会、期待する絵が1点あって足を運んだ。それは25日で展示は終了した‘歌舞伎図巻’。今回下巻がでたのだが、最後の場面‘茶屋遊び’に描かれている男装した采女(うねめ)のカッコいい姿をぜひともみたかったのである。

じつはこの図巻は08年名古屋の徳川美でみることはみた(拙ブログ08/5/15)。ところが、展示替えがありこの場面はみれなかった。この采女との対面を楽しみにして乗り込んだのにとんだ肩すかし。こういうときはがっくりくる。どこの美術館でも名品はなかなか出さない。やっとサントリーでリカバリーのチャンスが巡ってきた。素直に嬉しい。

これをはじめてみたときびっくりしたのは保存状態の良さ。画面全体で色彩がこんなに輝いている風俗画はめったにみれない。そして、采女の思わず声をかけたくなる決めポーズ。この姿がなんともいい。顔のふっくらした采女は大刀に寄りかかり体を竹久夢二式美人のようにS字に曲げ、胸には流行のファッションアクセサリーとしてロザリオをさげている。これをみれたのは一生の思い出。

今回はほかにもサントリー美蔵の‘邸内遊楽図屏風’などがでており、館内は華やかな歌舞伎の雰囲気につつまれている。収穫ははじめてお目にかかった‘歌舞伎遊楽図屏風’(重文 文化庁 展示は25日で終了)。大きなオマケをもらったような気分。

人気役者を描いた浮世絵が沢山でている。最も多いのが歌川国貞と豊国の描いたもの。そのなかで市川団十郎は十二代が先頃亡くなったばかりだから、特別な思いでみていた。足がとまったのは‘役者はんじ物の市川団十郎’。また、勝川春章の‘岩井半四郎の大夫’などにも魅せられた。

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2013.02.26

書がわからなくてもはずせない東博の‘書聖 王羲之’展!

Img_2     ‘行穣帖’(唐時代7~8世紀摸 プリンストン大美)

Img_0003_3     国宝‘孔侍中帖’(唐時代7~8世紀摸 前田育徳会)

Img_0001_3     ‘定武蘭亭序(呉炳本)’(原跡:東晋時代永和九年・353年 東博)

Img_0004_2     与謝蕪村の‘蘭亭曲水図屏風’(江戸時代1766年 東博)

東博で行われている‘書聖 王羲之’展(1/22~3/3)をみてきた。日頃から書に親しんでいるわけではないが、王羲之(307~365)の書を集めた展覧会はやはり見逃すわけにはいかない。世の中には書を愛する人は沢山いるから、会場は大変な賑わい。そのため予定の倍の時間がかかってしまった。

漢字の三つの書体、楷書・行書・草書がどういうものであるかは理解しているが、どのように生まれてきたかはしっかり把握してない。だから、王羲之の書がどの書体に優れているかもよくわかっていない。こういうとき役に立つのが展覧会のチラシ。まずはここにでているものをしっかりみることにした。

王羲之の真跡は今日一点も残ってないから、目の前にあるものはすべて複製。その複製のなかで王羲之の真跡に一番近いとされるのが唐時代に精巧な技法で敷き写されたもの。これは世界で10点もないという。日本には奈良時代に伝わったものが4点あり、中国に3,4点、そしてプリンストン大美が所蔵している。これらは皆王羲之の尺牘(手紙)。

今回の目玉はプリンストン大美にある‘行穣帖’。隣にいた男性の目が輝いていたから、この摸本が特別なものであることは直感できる。だが、悲しいことにこの書が例えば清の時代の書と比べてどのくらいスゴイかはわからない。

次に日本にある3点が展示されている。国宝の‘孔侍中帖’と‘妹至帖’(個人蔵)はみたことがあるが、‘大報帖’(個人蔵)は最近発見されたものだという。世界初公開。それは大変!新聞にそのことがでていたので目をかっと開いてみた。

ここのコーナーをみたのであとは気軽にみた。有名な‘蘭亭序’の拓本が沢山あった。画像は東博にあるもの。07年に東博、三井記念美、台東区の書道博で開催された‘拓本の世界’を体験したので、この拓本には少し目が慣れている。今回は初見の‘蘭亭図巻’と与謝蕪村のお馴染みの‘蘭亭曲水図屏風’も一緒飾られていたので曲水の宴の様子がイメージしやすかった。いい趣向に座布団2枚!

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2013.02.25

いつか訪問してみたいクラーク美!

Img_0001_2     コローの‘ルイーズ・アルデュアン’(1831年)

Img_0002_2     コローの‘水辺の道’(1865~70年)

Img_0003_2     テオドール・ルソーの‘ランド地方の農場’(1844~67年)

Img_0005_2     ジェロームの‘蛇使い’(1879年)

三菱一号館はもう何回も足を運んでいるのに、館内をどう移動しているのか途中でわからなくなるときがある。案内の指示に従って上の階から下の階に降りてるはずなのだが、、外の景色が見える廊下を進んでいると壁にクラーク美を紹介するパネルが掛けられていた。

そこになんとピエロ・デッラ・フランチェスカの絵がでていた!これには驚いた。これまで知りえたこの美術館の作品情報はルノワールやモネのほかはほとんどなく、わずかサージェントとジェロームのみ。ミュージアムショップで購入した図録にはピエロの‘聖母子と四天使’とホーマー、そしてサージェントの知っている絵とは別のものが載っている。こうした作品を知ってしまうと、美術館にぐっと近づきたくなる。訪問をいつか実現させたい。

今回展示されているクラークコレクションは全部で73点、サブタイトルにあるようにルノワールとフランス絵画で構成されている。最初の部屋にお気に入りのコロー(1796~1875)が5点あった。どれも空の明るさが目を惹く風景画で人物を巧みに配置した画面構成に魅了された。

長くみていたのが遠くまでみえる山々を背景にして女性を手前に大きく描いた‘ルイーズ・アルデュアン’。こうい広々とした風景をバックにして描かれた女性の肖像画はこれまでみたことがないのですごく新鮮だった。また、‘水辺の道’にも思わず足が止まった。道の描き方がいい。左から右斜めにのび、真ん中あたりから左へ曲がっている。

ここに5人の男女が大きさのサイズを変えて描かれている。手前の女性から一番向こうにいる二人までの距離はかなりある。絵の中に時間が表現されている感じ。そして、北斎や渓斎英泉の浮世絵風景画にでてくる旅人の姿が重なってみえてきた。浮世絵が好きな方ならたぶん同じようなことをイメージされるにちがいない。

バルビゾン派のテオドール・ルソー(1812~1867)の風景画は長くみていることはあまりないのだが、この‘ランド地方の農場’はいつもの暗いイメージがなかったので大きな2本の木を細部までじっくりみた。これをみながら昨年国立新美であったエルミタージュ美展でもルソーのいい絵に遭遇したことを思い出した。

‘夢の美術館’でとりあげたジェローム(1824~1904)の‘蛇使い’がみれたのは大きな収穫。蛇は大の苦手だが、壁の青の美しさをみるためだったらしばらくは辛抱できる。それにしてもぬめっとした蛇の皮膚の質感といい少年の柔らかそうな肌の描写といいジェロームは相当高い技術をもっている。

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2013.02.24

もっとみたいルノワールとプラスαの収穫はこれ!

Img_0004_2     ルノワールの‘シャクヤク’(1880年)

Img_0005_2     ルノワールの‘ヴェネツィア、総督宮’(1881年)

Img_0002_2     モネの‘エトルタの断崖’(1885年)

Img_0001_2     モネの‘サッセンハイムのチューリップ畑’(1886年)

クラークコレクション展のメインディッシュはルノワール、とにかくすごいコレクションだが、ルノワールが好きでなかったり西洋絵画通ぶって‘ルノワールの絵ねえー’なんていっている人にはこの展覧会はたいして感動しないかもしれない。副食として用意されているほかの印象派はモネの3点を除いて目を見張らせるほどのものはなくアベレージクラス、だから、ルノワール、モネ以外を期待して出かけないほうがいい。印象派&ポスト印象派のことならお任せあれ!

で、2回目の感想記はルノワール(1841~1919)の女性画以外で大変魅了された作品とモネ(1840~1926)のお気に入りの風景画を選んだ。ルノワールの静物画をワシントンナショナルギャラリー、フィラデルフィア美、メトロポリタンで5点みたが、これらよりここにある‘シャクヤク’のほうが感激した。この赤の輝きは国立新美であったルノワール展にチューリッヒにあるビューレーコレクションから出品された‘ダリア’に匹敵するほど。これは忘れがたい一枚になりそう。

今回とても気になる風景画が2点あった。‘ヴェネツィア、総督宮’と‘ナポリの入江、夕刻’。2年前プラドでいつかみたいと思っていたこの2点と対面寸前のところまでいった。ところが、チケットの売り切れですーっと彼方に消えていった。ルノワールの風景画のなかではこの2点は最上位を占めると期待していたから、大ショックだった。もう縁がないかもしれないと諦めていた。その絵が目の前にある。ヴェネツィアの運河やナポリの海を思い浮かべながら感慨深くながめていた。三菱一号館美に感謝!

6点でているモネのお気に入りは‘エトルタの断崖’と‘サッセンハイムのチューリップ畑’と‘ジヴェルニーの春’。再会を待っていた‘エトルタの断崖’がみれただけでも大満足なのにオマケが2つついてきた。‘チューリップ畑’をみた瞬間オルセーにある‘オランダのチューリップ畑’が頭をよぎった。明るい青い空の下で鮮やかな赤や黄色のチューリップが咲き誇っている。流石、アメリカのコレクター、一流の美術館はやはりモネのいい絵をしっかり蒐集している。

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2013.02.23

極上のルノワールコレクションが三菱一号館美にやって来た!

Img_0001_2     ‘劇場の桟敷席’(1880年)

Img_0005_2     ‘眠る少女’(1880年)

Img_0003_2     ‘縫い物をするマリー=テレーズ・デュラン=リュエル’(1882年)

Img_0006_2     ‘鳥と少女’(1882年)

今年行われる西洋絵画の展覧会は昨年の後半同様、わくわくするような作品が毎月登場するという感じ。好きな画家の作品に思いをめぐらしながら開幕を待っていると日々の生活がとても豊かになる。最も期待している画家はルノワール(1841~1919)、その極上のコレクションをみるため三菱一号館美を訪問した。

2/9に開幕し5/26まで行われる‘奇跡のクラーク・コレクション展’への思い入れは通常の印象派展の2倍くらいあることは、展覧会プレビューでもふれた。わが家では今年はルノワールイヤー、11年のスペイン旅行のとき残念な思いをしたルノワール展(プラド美 拙ブログ11/2/18)のリカバリーが三菱一号館で実現し、またアメリカ美術館めぐりではフィラデルフィア美が所蔵する‘浴女たち’と対面するという大きなイベントがあったり、ワシントンのフィリップスコレクションでも‘舟遊びの昼食’と再会するからである。そして、夏には横浜美にプーシキン美にある‘ジャンヌ・サマリーの肖像’がやってく来る。

‘夢の美術館’でもとりあげたアメリカマサチューセッツ州ウィリアムズタウンにあるクラーク美(12/6/25)から今回おでましいただいたルノワールは全部で22点。このうち3年前国立新美であったルノワール展(10/2/21)で目を楽しませてくれた‘団扇を持つ若い女’と‘テレーズ・ベラール’の傑作2点は再登場。

ルノワール作品は展示される部屋が2つに分かれており、人工衛星の打ち上げに使われる2段式ロケットのように感動袋に2回火がつく感じ。一つ目の部屋で会えるのがプラドで入口の外から単眼鏡で姿をとらえざるをえなかった‘劇場の桟敷席’。やっと対面できた。やっぱり近くでみるほうがずっと感激する。この絵の横には2度目の2点が飾られているから、もう天にも昇るような気持ち。

最後の部屋にもびっくりするような傑作が揃っている。‘眠る少女’、‘縫い物をするマリー’、そして‘鳥と少女’。アメリカの美術館巡りをしたばっかりだから、ワシントンのナショナルギャラリー、フィリップスコレクション、,フィラデルフィア、メトロポリタンでみたルノワール作品は鮮明に記憶に残っている。

それらとクラーク美が所蔵するルノワールを比べてみると、‘舟遊びの昼食’と‘浴女たちは’は横におくとしてもそのほかの作品との比較では日本に帰ってきてみたクラークコレクションのほうが感激したというのが正直なところ。ルノワールでこれほどサプライズが続くのははじめてのこと。

とくにうっとりしてみていたのが‘眠る女’と‘鳥と少女’、これは手持ちの美術本には載ってない。こんな完成度の高いルノワールの絵がまだあったのか!という感じ。
2度目の出品となった2点とここにあげた4点、この6点はルノワールの女性画としては最強のラインナップかもしれない。別格扱いのオルセーやメトロポリタンとくらべても遜色ないような気がしてきた。

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2013.02.22

心が突き動かされるビッグネームの大きなカンバス!

Img_2         ウォーホルの‘花’

Img_0001_3         ケリーの‘赤・黄・青’

Img_0002_2         スティルの作品

Img_0003_2          リヒターの作品

ハーシュホーン美の鑑賞に使える時間は1時間、みおわると公園を挟んでこの美術館の向こう側に位置する自然史博物館に素早く戻らなくてはいけないからのんびりとはいかない。館を出る前いつものようにミュージアムショップで図録を購入しようとしたら、なぜか図録は作ってないという。これは珍しい。いい作品が結構あるので図録がないのは痛い!

ウォーホル(1928~1987)の‘花’シリーズははじめてお目にかかった。画集をみると花びらの色がみなちがうものもあればこの作品のように青一色というのもある。日本画では花や鳥は日本美の象徴として描かれるが、アメリカのアーテイストが花を描くときはオキーフでもウォーホルでも大きなカンバスにどーんどーんと描く。だから、花の絵をみているのに花鳥画を心穏やかに楽しんでいるという感覚ではなく、ものの存在感をしっかり確かめているという見方になる。

この美術館に来る前にいたナショナルギャラリーでは企画展示の部屋でケリー(1923~)のミニ回顧展が開かれていた。大きな絵はなかったが、明快な色彩で均一に塗られた色面が心をとらえて離さなかった。その余韻が残っているなかハーシュホーンに入ってみると、今度は大きなカンバスの作品が3点展示されていた。

色の組み合わせや明るい色調はアルバースの作品に似ているが、ケリーはカンバスの一部をカットしたり大胆に変形して色面をつくっている。平坦な抽象絵画の場合、画面がこのように大きいと色に対する感じ方がまったく違ってくる。目の前には形態はなく色の面だけなので、赤や黄色、そして青が心のなかにある感情のスペクトルと同化してくるような感じ。具象のさほど大きくない絵をみているかぎり色彩はそこまで体のなかに入ってこない。

スティル(1904~1980)も大きさ作品が3点あった。これまでポンピドー、テートモダン、NYのMoMA、METで体験したのはこれより小さいものだったので、すごく刺激的だった。作品の特徴としては黒や白で彩られたフォルムは不定形で先がぎざぎざしており、作家の激しく揺れる内面や荒々しい自然のイメージがカンバスに投影されているよう。

ドイツのリヒター(1932~)は川村記念美で一度回顧展をみたので、その激しく重層的な作風に目は少し慣れている。画面をおおう色彩は筆触がかすれ気味でいろんな色が重なりあい、ダイナミックに揺れ動いている感じ。リヒターに惹かれるのは多用される赤や青がとても鮮やかだから。こういう色彩の神秘にあふれパワーのある作品をみると現代アートをもっとみたくなる。

ワシントンにある美術館はこれで終わり、次に向かったフィラデルフィア美は国内の展覧会のあと書くことにします。

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2013.02.21

質の高い現代アートが揃うハーシュホーン美!

Img_3     ワシントン ハーシュホーン美とリキテンスタインのオブジェ

Img_0002_2     ミロの‘サーカスの馬’(1927年)

Img_0003_2     デ・クーニングの‘女’

Img_0004_2     ベーコンの‘ある肖像のための習作’

Img_0001_2     バッラの‘ボッチョーニの力Ⅰ’(1916~17年)

5年前ワシントンにきたとき航空宇宙博物館のすぐ隣にあるハーシュホーン美の前で写真を撮った。庭に飾ってあるリキテンスタインのオブジェに惹かれたからである。でも、ここは情報がなく訪問の対象ではなかった。その美術館のなかに足を踏み入れた。すると質の高い現代アートが次々と姿を現す。ここは知る人ぞ知る優れた現代アートの美術館にちがいない。

作品が展示されているのは2階と3階、企画展をやっている2階はパスして所蔵品のある3階に上がった。まず出迎えてくれたのは‘夢の美術館’(拙ブログ12/6/17)でとりあげたミロ(1893~1983)の‘サーカスの馬’、出足は好調。ミロにとってシンプルで自由に描かれたフォルムは人や鳥や動物の記号。この記号によってミロ独特の夢の世界が構成されている。もう一点、もうすこしにぎやかな作品にも魅了された。フィリップスコレクションに次いでここでもいい作品と巡り合えたのは幸運だった。

硬くて冷たいイメージのする抽象作品のなかでデ・クーニングの‘女’シリーズは親しみを覚える異色の作品。出会った4点は全部このシリーズ。とくに引き込まれた女がこの絵。きりりとした大きな目がやけに生々しいのに体のまわりは純粋抽象の線や色彩で表現されている。こういう具象と抽象の混じった作品では色彩そのものに命が宿っているようにみえてくる。

3月になると東京の美術館は西洋絵画の共演でいっそう活気づく。そのひとつが東近美で開催される‘ベーコン展’(3/8~5/6)。ベーコン(1909~1992)はロンドンのテートブリテンを数回訪れたのでその作風に一応目は慣れている。これまで体験した作品の数は少ない、でも画家のイメージはしっかりできている。それは幽霊を描く画家。

このイメージがつくられたのはNYのMoMAでみた‘ある肖像のための習作’。今回ハーシュホーンでなんとベーコン5点と遭遇したが、このなかにMoMAでみたものの別ヴァージョンがあった。これはベラスケスの‘インノケンティウス10世’(ローマ ドーリア・パンフィーリ美 10/3/4)のパロディ画、真っ暗な背景に建物の骨組みとなる鉄筋のような線は金色で彩色されて縦横にのび法皇なる人物をかこんでいる。どうみたってこれは幽霊。ベーコンはどうして幽霊にとりつかれたのだろうか?

通路は建物の形から円い帯になっており、ここにあまり大きくない彫刻やオブジェが飾られていた。ミロの‘女’というタイトルのついた彫刻があり、ほかにもお馴染みのムーアとかアルプ、バッラ、ジャコメッティなどなど。とくに強い磁力を放っていたのは未来派のバッラ(1871~1958)の赤い彫刻。躍動感のあふれた造形に元気をもらった。

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2013.02.18

ナショナルギャラリー(9) 古典絵画もしっかりリカバりー!

Img_2           エル・グレコの‘聖マルティネスと乞食’(1597~99年)

Img_0003_2     ルーベンスの‘パエトンの墜落’(1605年)

Img_0004_2     レンブラントの‘自画像’(1659年)

Img_0005_2     フェルメールの‘天秤を持つ女’(1664年頃)

今回訪問した美術館の感想記はお目当ての作品をみた順番に綴っている。で、ラストの20分であわただしくみた古典絵画は最後になった。

08年のときは鑑賞時間が3時間とたっぷりあったのとアメリカ絵画やスペイン絵画などの部屋が閉鎖中だったので、西館のルネサンスやバロック絵画が展示してある部屋はじっくりみてまわった。そのため今回必見リストに載せている作品は数点のみ。

その1点がエル・グレコ(1541~1614)の‘聖マルティヌスと乞食’。今東京都美で行われている回顧展にもこの絵の別ヴァージョン(台湾の美術館所蔵)がでているが、まずはワシントンで長年の思いの丈をはたすことになった。とても印象深いのが馬の白と画面の多くを占める緑の対比。グレコは緑の画家、ここでも聖人が乞食に与えたマントと背景に描いたトレドの風景に深い緑を使っている。この絵をみたのでグレココンプリートに大きく前進した。

アメリカの美術館でグレコを多く所蔵しているのはこことメトロポリタン。もしグレコがお好きならばアメリカ東海岸を巡るツアーをお薦めしたい。もちろんグレコをみるにはマドリードのプラドとトレド訪問が欠かせないが、アメリカが先になってもグレコ作品の真髄に接することができる。それほどこの2館にはグレコの傑作が揃っている。

今回展示してあったのは5点、そのなかに5年前はでてなかった‘ラオコーン’があった。23年ぶりの対面。はじめてみる隣の方も気に入った様子。一緒に感激した作品がもう一点ある、‘聖女アグネスと聖女マルティナのいる聖母子’またまた心を奪われた。

ルーベンス(1577~1640)の‘パエトンの墜落’は大作をイメージしていたが、実際はそれほど大きな絵ではなかった。こういう題材を扱ったバロック絵画だと大画面でないとなにか物足りない。で、‘ライオンの穴の中のダニエル’のほうに移動して再会を楽しんだ。

この2点をみたのであとはさあーっと各部屋をまわった。数の多いレンブラント(1606~1669)の部屋ではやはり‘自画像’と‘ルクレチア’の前で足がとまる。レンブラントの自画像はどれも特別な感じがする、レンブラント本人と今まさに会っているような気がしてならない。

ナショナルギャラリーに来てフェルメール(1632~1675)をみないで帰るわけにはいかない。3点あったが、好きなのは‘天秤を持つ女’だけなので、この絵だけを再度目に焼きつけて集合場所へ急いだ。

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2013.02.17

ナショナルギャラリー(8) 人気作家の作品を存分に楽しんだ!

Img_0001_2     オキーフの‘カラー、No.3’(1930年)

Img_2         ステラの作品

Img_0002_2        リキテンスタインの作品

Img_0003_2     ウォーホルの‘グリーン・マリリン’(1962年)

現代アートが中心の東館で多くの作品が展示されている部屋は西館と地下通路でつながっているコンコースと2階にある。最上階のタワーにも部屋はあるがここはニューマンの白黒作品専用で写真撮影はフラッシュなしでもNG、そして1階と2階の小部屋は所蔵作品のミニ回顧展とか企画展のために使われている。

大好きなオキーフ(1887~1986)の作品4点と遭遇したのは2階の部屋。必見リストに入れていた‘カラー、No.3’が姿をみせてくれたので心が踊った。手元の画集などを参考にするとここはこの連作6点の4点を所蔵している感じ。今回はそのNo.3,4,5がどんとでていた。08年のときはNo.4だけだったから大収穫。なにしろこのNo.3はTASCHEN本の表紙を飾っている作品、鮮やかな緑色を多く使いクローズアップでとらえられたカラーが具象と抽象半分々という感じで描かれている。しばらく気持ちよくながめていた。

ステラ(1936~)とリキテンスタイン(1923~1997)はオキーフが展示してある部屋と企画展が開かれている部屋をつなぐ通路の壁に飾ってあったもの。ここの空間にあるのはみな大作、ステラは画像の作品と‘同心正方形’と‘フリン・フロン’シリーズの3点、リキテンスタイン、そしてすでに紹介したダリの‘最後の晩餐’とデュビュッフェ。

複数の画材を用いコラージュのように構成されたステラの作品は川村記念美にある‘恐れ知らずの愚か者’(1885年)とよく似ている。アメリカで期待しているのはこういう圧倒されるようなスケールをもった作品。NYのMoMAにある作品もすごいが、ここのモダンアートもエンターテイメント気分をおおいに掻き立ててくれる。

リキテンスタインのすっきりポップアートがお気に入りなのだが、本物をみた機会はまったく少ない。これから美術館巡りはアメリカの美術館に軸足を移そうと思っているのはリキテンスタインやウォーホル、そしてポロック、ロスコ、ニューマン、ステラなどをもっとみるため。今回リキテンスタインは4点(ナショナルギャラリー2点、MET1点、フィラデルフィア1点)、もうすこしみたかったが、ここでこの自由の女神に出会ったからOKにした。どの作家も乾杯!というわけにはいかない。

前回まったく縁がなかったウォーホル(1928~1987)はコンコースで図録に載っている‘グリーン・マリリン’プラス1点をみた。これまでみたマリリン・モンローはMoMAにある‘ゴールド・マリリン・モンロー’が最も印象深いが、背景を緑にしたこの作品もぐっとくる。ミューズはほかの美術館でも微笑んでくれるだろうか?

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2013.02.16

ナショナルギャラリー(7) 期待を上回るロスココレクション!

Img_2          ロスコの作品

Img_0001_2     アルバースの‘正方形へのオマージュ’

Img_0004_2     ブランクーシの‘空間の中の鳥’(1925年)

Img_0002_2     デュシャンの‘なりたての未亡人(フレッシュ・ウィドウ)’(1920年)

忙しくみてまわった東館だが出会った作品の充実度は前回の3倍くらいあった。美術館めぐりで一番ショックなことは展示室が工事関係などで封鎖されいるとき。5年前の東館は追っかけ作品はことごとく期待を裏切られ満足度はまことに小さかった

ところが今回はとても調子がいい。前日出かけたフィリップスコレクションのロスコルームの余韻に浸っているのにロスコ(1903~1970)がまたも4点姿を現わしてくれた。目が釘づけになったのがピンクと黒と橙色の色面の組み合わせ。黒との対比でピンクが浮き上がっている。長方形の色面がニ、三重なる構成にはいろいろなヴァリエーションがあるが、こういう明るい色に惹かれていたので興奮状態でみていた。これでロスコは2日で8点、このあとNYのメトロポリタンで3点、MoMAで1点遭遇したので全部で12点、ロスコに対する熱い思いがミューズに伝わったのかもしれない。

薄塗りで輪郭のぼやけているロスコの作品に対して、アルバース(1888~1976)の色彩対比は整然としている。1950年から制作をはじめた‘正方形へのオマージュ’は千点以上にのぼる。この作品は一番外側が青、その次はグレイ、そして中央は黄色。じっと見ていると目の錯覚で色がこちらに向かってきたり奥に後退しているようにみえる。陰影をつけなくてもまた遠近法を使わなくても色調に変化をつけたり、色の間の相互作用によって絵画空間が立体的になり様々なイメージが喚起される。色彩の探求はじつに奥が深い。

ルーマニア出身の彫刻家、ブランクーシ(1876~1957)の生み出す抽象彫刻に限りない魅力を感じている。大理石でつくられた‘空間の中の鳥’は単純化を極めたそのフォルムがなんとも美しい、みるたびに思うのだがこれは鳥の姿ではなく三ケ月がしゃんと背筋を伸ばし夜空を照らしている光景をイメージしてしまう。

デュシャン(1887~1968)の‘なりたての未亡人(フレッシュ・ウィドウ)’は言葉遊びから生まれた作品。‘フランス窓(フレンチ・ウィンドウ)’と読み間違えることを狙っている。デュシャンは物とイメージと言葉の関係をいとも簡単組み替えてしまう、そして物体からすっと意味をはぎとることで次の作品レディメイドが誕生した。 

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2013.02.15

ナショナルギャラリー(6) 東館はエンターテイメント空間!

Img_2     カルダーの‘モビール’(1970年代)

Img_0001_2     マティスの‘黒人’(1952年)

Img_0005     ファイニンガーの‘自転車競争’(1912年)

Img_0003_2     デュビュッフェの作品

ナショナルギャラリーの館内はフラッシュをたかなければ写真撮影はOK、前回の訪問との違いはデジカメで展示されている作品をばかばか撮ったこと。今回の感想記では図版がないものについてはすこし画質が落ちるがこの写真を画像として使うことにした。

問題がひとつある。限られた時間での鑑賞なので、作品の写真は撮っても横にあるタイトルや制作時期が記されたプレートまでは手が回らないことがある。だから、これが不明な場合は作家の作品とだけ書くことにしたい。

はじめてこの美術館を訪れたのは1990年、もうずいぶん前のことだから東館(1978年開館)には現代アートの作品があったなというくらいで記憶の大半は消えている。それでもよく覚えていることが2つある。ひとつはタイミングよく開催されていたマティス展に画面がMyカラーの緑で多く占められた作品がいくつもあったこと、そして高い天井から吊り下げられたカルダー(1898~1976)の動く彫刻、赤と黒の‘モビール’。

この作品でカルダーが身近に感じられるようになった。頭の上に鉄線の先につけられた葉っぱの形やとがった三角形をした小さな金属片や木片がゆらゆらと不規則に動くのをみているのはわけもなくおもしろい。これなら自分でも作れそうだが、カルダーがこれを発表するまでは地上にどっしりと配置された彫刻作品をこんな風にして動かしてみようと考えた人は誰もいなかった。何事も最初にアイデアを思いついた人が一番偉い。

08年のとき閉鎖中だった‘マティスルーム’に23年ぶりに入った。ここにはマティス(1869~1954)が大病をしたあとの晩年にはじめた切り紙絵が5点展示してある。なかでも‘黒人’とこの絵の一年後に描かれた‘仮面のある大装飾’がとてもいい。この切り紙絵に大変魅せられているが、最もみたい‘王の悲しみ’(ポンピドー)との対面が果たせてない。次回パリを訪問したときミューズが微笑んでくれるだろうか?

ファイニンガー(1871~1956)の‘自転車競争’をみるのは2度目。前回ここでは姿をみせてくれなかったが、同じ年に横須賀美であった回顧展でお目にかかった。スポーツ競技の絵というとすぐオリンピックのポスターを想起するが、この絵が描かれた1912年のころ未来派のボッチョーニたちはスポーツをテーマにした作品をいくつも生み出し、スポーツが生み出すスピード感や肉体美を表現した。この自転車レースを描いた作品も前かがみになってスピードを競い合う選手たちの激しい息づかいが聞こえてくるよう。

現代アートで子どもの落書きみたいな作品がトレードマークになっている作家といえばなんといってもフランスのデュビュッフェ(1901~1985)。2階の通路の壁にお馴染みの簡略に描かれた人物を何人もぺたぺた張り付けたような絵が飾られていた。デュビュッフェのこんな大きな作品をみるのは久しぶり。しばらくニヤニヤしながらみていた。

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2013.02.14

ナショナルギャラリー(5) 心に響くコール、ホーマーの傑作!

Img_2     トマス・コールの‘クロウフォード・ノッチ’(1839年)

Img_0002_3     トマス・コールの‘生命の旅、老年’(1842年)

Img_0001_3     ホーマーの‘右に左に’(1909年)

Img_0006_2     ホーマーの夕食の‘角笛’(1870年)

5年前アメリカの美術館をまわったとき、ワシントンナショナルギャラリー、ボストン、メトロポリタンの3館はどこもアメリカ絵画を展示する部屋が改築のため閉鎖中だった。そして、シカゴ美ではホッパー展をみたのでパスせざるをえなかった。だから、今回はアメリカ人画家の制作した作品がとても新鮮に感じられる。

だが、どの画家も同じように目に力を入れているわけではなく鑑賞のエネルギーの80%はハドソンリバー派とホーマー、そしてホッパーに費やしている。ナショナルギャラリーの図録をみて今回は是非ともと意気込んでみたのがトマス・コール(1801~1848)の‘クロウフォード・ノッチ’と4枚連作の‘生命の旅’。

コールは前の日コーコランギャラリーで‘帰還’、‘出発’をみたので感激の2連チャン、壮大なスケールでしかも細部まで精緻に描写されたアメリカの自然に目がだんだん慣れていくのが素直に嬉しい。まさにこれがハドソンリバー派の絵なんだ、という感じ。

連作の‘生命の旅’は西館東側にある庭園に接する部屋に飾られている。最初の絵では天使に守られた赤ん坊が小舟に乗って川を進む場面が描かれ、最後の一枚は老人がまさに天国に導かれようとしている。ロマン主義と自然主義を融合したこの架空の風景画はイギリスのジョン・マーチンの作風を連想させる。

チェックリストに◎をつけていたのがホーマー(1836~1910)の‘右に左に’。これは前回も期待の作品、ようやく絵の前に立つことができた。じつはこの絵は日本にやってきたことがある。今から25年前、1988年西洋美で開かれた‘ジャポニスム展’に出品された。が、当時は目玉作品のマネの‘笛を吹く少年’や‘エミール・ゾラの肖像’に心が100%向かっていたので、アメリカの画家ホーマーのこの絵をみたという実感がまったくない。

この画家に開眼したのは08年シカゴ美でホッパー展と同時開催されていた水彩画を集めた回顧展、このあとワシントンへ移動したので‘右に左に’との再会?をたのしみにしていた。ところが、ナショナルギャラリーのアメリカ絵画がクローズ中、がっくり、、それから5年、ようやく対面が叶った。

この絵は浮世絵が好きな方ならすぐぴんとくるのではなかろうか、そう、ホーマーは北斎の描いた鳥の動きやポーズを参考にしている。海洋画を得意とするホーマーにも浮世絵は影響を与えていた。この絵をみて北斎の偉大さを再確認した。

ホーマーはほかに図録に載っている‘夕食の角笛’や‘秋’など5点でていた。そのなかで長くみていたのが‘夕食の角笛’、腰に左手をあて夕食を知らせる角笛を吹く若い女性。白のドレスが風になびく姿に心が和む。本当にいい絵に出会った。

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2013.02.13

ナショナルギャラリー(4) 風景画の共演!

Img_0004_2     ターナーの‘ヴェネツィアの光景’(1834年)

Img_0001_2     モネの‘アルジャントゥイユの橋’(1874年)

Img_0002_2     セザンヌの‘シャトー・ノワールの眺め’(1894~96年)

Img_0003_2     ヘーデの‘カティリアとハミングバード’(1871年)

ナショナルギャラリーにいたのは約2時間、はじめての美術館だとこのなかにミュージアムショップで図録や絵葉書を購入する時間も計算しておかなくてはいけないが、この度はその必要がないので追っかけ画との出会いに終始した。

前回まったく縁がなかったターナー(1775~1851)は図録に載っている‘ヴェネツィアの光景’、‘月明かりに石炭を積み込む水夫たち’プラス3点がイギリス絵画の部屋に展示されていた。昨年あった‘メトロポリタン美展’(東京都美)でヴェネツィアを描いたすばらしい作品にお目にかかったが、ここにも遠くにサンマルコ広場の鐘楼を描いた絵があった。これもなかなかいい。また、贔屓にしているコンスタブルのソールズベリー大聖堂もあったのでテンションが次第に上がってきた。

モネ(1840~1926)は有名な作品をおおよそみているので前のめりという感じではないが、モネの大ファンだから名画が現れるとすぐ‘みるぞ!’モードにスイッチが入る。‘アルジャントゥイユの橋’もついみとれてしまう一枚。今回の美術館めぐりはこれとよく似た絵をもうひとつみた、フィラデルフィア美が所蔵している橋の上を列車が走っている作品。10年グランパレでみたときの感激がよみがえってきた。

セザンヌ(1839~1903)については、次に向かうフィラデルフィアで念願の‘大水浴図’と‘サンクト・ヴィクトワール山’との対面という大イベントが控えているので、ここでは目慣らし気分。作品はお気に入りの‘画家の父などいい絵がいくつもでていたが、その中にリカバリーを期待していた‘シャトー・ノワールの眺め’があった。

浮世絵が好きになるとこういう風景画にはぐっと惹きこまれる。興味を覚えるのは中央の長方形のブロックを組み合わせて描かれた城が左右の木の枝でひし形にフレームされているところ。セザンヌの風景画はものの形態がシンプルに四角や三角や円にイメージされることに魅力を感じている。

今回重点鑑賞にしているアメリカ絵画のなかにとても刺激的な作品があった。それはヘーデ(1819~1904)が描いた‘カティリアとハミングバード’。ヘーデは南アメリカの自然に魅せられたようで、ブラジル旅行の体験にもとずいて大きな花と鮮やかな色の羽をもつハミングバードを描いている。背景がぼかされているので前面の花と鳥が強く印象づけられる。

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2013.02.12

ナショナルギャラリー(3) 大収穫のアンリ・ルソー!

Img_2     アンリ・ルソーの‘猿のいる熱帯の森’(1910年)

Img_0004_2     モディリアーニの‘ジプシー女と赤ん坊’(1919年)

Img_0002_2     ゴッホの‘麦わら帽子を被った若い農婦’(1890年)

Img_0003_3     ダリの‘最後の審判の秘蹟’(1955年)

海外の美術館めぐりをするときはいつも重点鑑賞画家を決めている。今回熱い思いを寄せていたのはアンリ・ルソー、ハドソンリバー派、オキーフ、ポロック、ロスコ。はたして、ポロックは期待の半分だったがほかの画家は大きな満足が得られた。

ワシントンでみたルソー(1844~1910)は‘猿のいる熱帯の森’、‘熱帯のジャングル’、‘岩の上の子ども’の3点、必見リストにはもうひとつ初期の作品‘森の中の逢引き’を入れていたが、これはダメだった。ほかの美術館でもみたルソーを先走っていうと全部で8点、うち追っかけ画は4点。08年のときはどこへ行ってもルソーがみれずまったく嫌になったが、この度はミューズはとても優しかった。

ルソー作品のなかで魅了されているのはやはり熱帯のジャングルを描いたもの。全点制覇を目標にしているが、アメリカにはこのタイプの絵がいくつもあるので一歩々進みたい。ナショナルギャラリーにある2点は動物たちが争う場面ではなく、ともに猿の群れが緑豊かな森のなかで平和に暮らす様子が描かれている。‘猿のいる熱帯の森’の構成はなかなか巧み、赤い草花と白や黄色の花びらが斜め平行的に配置され、猿たちはこれとクロスするように右の奥にむかう斜めのライン上に描かれている。

モディリアーニ(1884~1920)の‘ジプシー女と赤ん坊’にようやく会えた。この絵を画集でみてから久しいが、いつも戸惑うのが赤ん坊の頭、どこにあるの?本物を前にしてもこの謎は解けなかった。目の鋭さがジプシー女の気性の激しさを表している。今回モディはこの絵のほかにスーチンを描いたものなど3点飾られていた。こんなにモディがあったとは!コレクションの数の多さに感心する。

昨日紹介したゴーギャン同様、ゴッホ(1853~1890)はそれほど熱くなってない。手元のゴッホ全集で4点をマーキングしていたが、みれたのは‘麦わら帽子を被る若い農婦’と‘オリーブ摘み’。‘若い農婦’はゴッホは亡くなった年に描かれた作品、絵の存在を知ったのは前回ここを訪れたあとなので期待していた。ゴッホ特有の燃えるような色ではないが、柔らかいうすピンクからこの女性の心根の良さがうかがわれ大変魅せられた。

ダリ(1904~1989)が51歳のとき制作した大作‘最後の晩餐’が展示されているのは東館の2階、この東館の中を動き回るのは3回目なのだが展示空間の記憶がどうもあやふや、5年前も同じようなところをまわったはずなのに、‘最後の晩餐’には出くわさなかった。所蔵作品が多いので定期的にローテーションしているのだろうか。

それはともあれ念願の絵に対面できて嬉しい限り、時間の関係で長くみれなかったがキリストの上で両手を大きく広げる男の上半身を目に焼き付けこの場を離れた。

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2013.02.11

ナショナルギャラリー(2) マネの‘老音楽師’は大作だった!

Img_0003_2     マネの‘老音楽師’(1862年)

Img_0001_2     ロートレックの‘ボレロを踊るマルセル・ランデ’(1896年)

Img_2     カサットの‘舟遊び’(1893年)

Img_0005_2     ゴーギャンの‘海辺にて’(1892年)

美術館を再訪するのは過去の鑑賞で対面がかなわなかった名画をみるためであるが、ナショナルギャラリーとかMET、シカゴ、ボストンのように豊富な印象派のコレクションでその名が知られている美術館では追っかけ画に心は向かっていても傑作の数々に囲まれるとついついその絵の前に立ち止まってしまう。だから、鑑賞時間の段取りが大変。

印象派必見リストに載せている作品は17点。結果は8勝9敗、ヒット率は5割だが、◎の4作品が全部みれたから満足度は高い。その筆頭がマネ(1832~1883)の‘老音楽師’、前回マネは大好きな‘鉄道’をはじめとして7点みれたが、この絵は姿をみせてくれなかった。

画集の図版ではイメージできなかったが、縦1.86m、横2.47mの大きな絵だった。石のブロックのようなものにバイオリンをもった老人が腰を掛けこちらに視線を向けている。その前には幼子を抱いた裸足の少女がおり、後ろでは男の子がこの老音楽師をじっとみつめている。次の演奏を待っているのだろうか。これほど大きなマネの絵にこれまで遭遇したかどうかすぐには思い出せない。老人の存在感と裸足の女の子が強く心に刻まれた。

08年の美術館めぐりでアメリカにはロートレック(1864~1901)の油彩のいい絵が沢山あることがわかった。ワシントンにも画集に載っているものがいくつもある。前回は‘ムーランルージュのカドリー踊り’や‘ムーラン・ド・ラ・ギャレットの片隅’などを楽しんだが、この度の収穫はみたくてしょうがなかった‘シルペリック劇場でボレロを踊るマルセル・ランデ’、軽やかにステップを踏むマルセルの顔にスポットライトが当たりホールは楽しい気分と熱気につつまれている。TASCHEN本の表紙を飾る絵がみれたのだから、とても機嫌がいい。

カサット(1844~1926)の‘舟遊び’は長い間気になっていた作品。ようやくみることができた。カサットは母子を描くのがとびっきり上手い。もし彼女がルネサンスの時代の生まれていたら、腕のいい聖母子の画家になったことはまちがいない。ボートの漕ぎ手を後ろ向きにして大きく描くのは浮世絵の影響。これまでみたカサットは数は少ないが、これが一番気に入っている。

ゴーギャン(1848~1903)についてはみたい度の強い絵はおおよそ鑑賞済みなので、今回はリラックスモード。‘光輪のある自画像’など7点でていた。ゴーギャンで楽しみな色のひとつが紫、10年テートモダンで開催された回顧展では鮮やかな紫が印象的な作品が何点もあったが、この‘海辺にて’もその一枚。またまた美しい紫に魅了された。

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2013.02.10

ナショナルギャラリー(1) 念願のフラゴナール、ゴヤと対面!

Img_0001_3     ワシントンナショナルギャラリーの東館 西館

Img_2      フラゴナールの‘読書する少女’(1776年)

Img_0004_3     フラゴナールの‘ぶらんこ’(1765年)

Img_0005_3     ブーシェの‘恋文’(1750年)

Img_0003_3     ゴヤの‘サバーサ・ガルシア’(1806~11年)

ワシントン観光の目玉のひとつはナショナルギャラリーへの入館、パリのルーヴル見学のようなもの。館内には大勢の人がいる。ここでの鑑賞時間は2時間。

国会議事堂を空から撮影した写真でいうと左側のブロックの議事堂寄りの建物がモダンアートが中心の東館で手前が古典絵画や印象派、アメリカ絵画などの西館。二つの建物は地下の通路で結ばれている。最初に向かったのは08年のとき改築中だった西館の18世紀と19世紀初期フランスの部屋。

ルーム56にありました、ありました!最もみたかったフラゴナール(1732~1806)の‘読書する少女’、横向きの少女が小さな本を静かに読んでいる。明るい黄色い衣服が目に心地いい、この絵にはロココ様式の香りがせず、マネやルノワールの描いた女性と同じ感覚でみてしまう。マネが傑作‘鉄道’を制作したのが1873年、フラゴナールはこの100年前に生活感をじわーっと感じさせる女性の絵を描いていた。

フラゴナールはほかに大作の‘ぶらんこ’や‘目隠し遊び’など7点あり、同じロココ派のヴァトーやブーシェもリストアップしていた作品が次ぎ々現れる。なんだかルーヴルとかロンドンのウォレスコレクションに来ているような気分。アメリカのコレクターがこういうロココ調の絵画が大好きだとういうことがよくわかる。

ブーシェ(1703~1770)の甘美さのむんむん漂う‘恋文’や‘愛の神を慰めるヴィーナス’なども時間があればいつまでもみていたいが、ゴヤ(1746~1828)の絵をみなくてはいけないから頃合いをみて移動した。

ルーム52にお目当ての‘サバーサ・ガルシア’があった。ようやく対面できた。この若い女性の表情はスペイン人らしくない。はじめてこの絵をみたとき瞬時に若いころの薬師丸ひろ子をイメージした。日本人向きの顔かもしれない。

ゴヤはこの女性の美しさに惚れ込み、是非描かせてほしいと願い出たそうだ。ピカソ同様、とびきりの女性美に遭遇すると絵心が強く掻き立てられるのだろう。‘読書する少女’と‘サバーサ・ガルシア’、前回見逃してから5年対面を待ち望んでいたが、思いの丈が叶ってこれほど幸せなことはない。

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2013.02.09

またも望みがかなえられなかったフリーア美!

Img_0001_2     ワシントン フリーア美

Img_3     快慶の‘菩薩坐像’(鎌倉時代)

Img_0005_2     ホイッスラーの’孔雀の間’(1876~77年)

Img_0002_2     ホイッスラーの‘凍るテムズ川’(1860年)

ワシントンのスミソニアン博物館群で最も人気が高いのが航空宇宙博物館、名所観光には必ず入っている。でもはじめてのワシントン訪問で体験済みなので08年のときと同様、集合時間を確認してここから歩いて10分もすれば着くフリーア美をめざした。

事前の展示情報はなし、期待の作品が1点でもでていることを祈って日本美術が展示してある3つの部屋をまわった。が、追っかけ作品は全滅。残念!前回、北斎の肉筆画の‘雷神図’や‘玉川六景’(拙ブログ08/4/18)に遭遇したので勝手に‘富士と笛吹童図’(12/8/23)を心にえがいていたが、世の中そう思い通りにはいかない。そして、究極の追っかけ画、宗達の’松島図’や‘雲龍図’はまたしても遠かった。

気をとりなおしてじっくりみたのが快慶の‘菩薩坐像’、これは前回お目にかからなかった。、左右に飾られている掛け軸は誰かな?と思ったら、橋本雅邦(1835~1908)の‘寒山捨得図’と‘達磨図’だった。手元の画集にはフィラデルフィア美やボストン美にある名作が載っているが、フリーアにもしっかりコレクションされていた。また、隣の部屋には文士と従者が旅する姿を描いた与謝蕪村のなかなかいい六曲一双の屏風があった。これも収穫の一枚。

フリーア美は豊富な東洋美術、日本美術で有名だが、もう一つの看板はホイッスラー(1834~1903)の作品。風景画や肖像画を1200点所蔵してしおり、3つの部屋に常時15点くらい展示してある。前回このコレクションを体験した後ホイッスラーの画集を手に入れた。リカバりーリストをこれにもとづき作成していたのだが、4点のうち見れたのは1点だけ。

ホイッスラーがデザインした‘孔雀の間’のなかに足を踏み入れるといっぺんに日本モードになる。3面の壁に装飾された黄金の孔雀が優雅に舞い、暖炉の上には大作‘磁気の国から来た姫君’(08/4/19)が飾られている。着物姿の長身の美女が孔雀とコラボすることで醸し出される東洋趣味を気持ちよく楽しんだ。

初期の‘凍るテムズ川’は霞のただようノクターンシリーズとは違い、厚塗りの白と黒によって朝の寒々とした光景をかっちりと表現した作品。絵の中にぐぐっと引き込まれる。

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2013.02.08

コーコラン・ギャラリーにハドソンリバー派の傑作があった!

Img_3      ワシントン コーコラン・ギャラリー

Img_0002_2      ビーアスタットの‘コーコラン山’(1875~77年)

Img_0001_2     チャーチの‘ナイアガラ’(1857年)

Img_0003_2         サージェントの‘ヘンリーホワイト夫人の肖像’(1883年)

Img_0004_2     ホイッスラーの‘テムズ川 バタシー河畔’(1863~64年)

昨年‘夢の美術館’でとりあげたコーコラン・ギャラリー(拙ブログ12/6/11)はホワイトハウスのすぐ近くにある。作品情報はきわめて少なかったのに、ドガの‘カフェ・コンセールにて’に惹かれて足を運んだ。

作品は1階に展示してあるのが印象派やアメリカ絵画、2階はコンテンポラリーアートや写真が中心。1階の展示室は5つだけなので30分もあれば全部をざざっとみることができる。まずはお目当てのドガをさがした。が、ドガの作品は3点ほどあったのに肝心の‘カフェ・コンセール’はどこにも見当たらない。油彩の情報はドガとホッパーしかないのに、その絵がないなんて、まったく泣けてくる。

でも、ミューズはこのショックを掻き消してくれるすばらしい絵を用意してくれていた。それはハドソンリバー派の心を奪われる作品、コール、チャーチ、ビーアスタット、夫々2点、6点が専用の部屋にどんと飾ってあった。ハドソンリバー派の特徴である雄大な大自然を精緻に描いた風景画をこれだけまとまった形でみたのははじめてのこと。

08年シカゴやワシントン・ギャラリー、ボストン、メトロポリタンを訪問した時、必見リストにMETの画集に載っている3人の作品を書き込んでいたのに会えたのはチャーチの絵1点のみ。シカゴはホッパー展に遭遇したので時間がとれず、ワシントン、ボストン、METは展示室がクローズ中。だから、今回はそのリカバリーとプラスαを期待してハドソンリバー派は特◎鑑賞画家にしていた。

部屋に入った瞬間、おおー!という感じになったのがビーアスタット(1830~1902)の雪をかぶった雄大な山の絵。中央には滝がみえ、右の河畔には熊がいる。構図がばっちりきまったこういう大きな絵を見ていると気分がぐわーと高揚してくる。

チャーチ(1826~1900)はコール(1801~1848)の弟子でハドソンリバー派の第二世代の画家。METでこの派の風景画で最初に出会った画家だから思い入れが強いのだが、ここにも大迫力のナイアガラの光景を描いた作品があった。じっとみていると滝になかに吸いこまれていくようで足がすくむ。コーコランにこんなすばらしい作品が揃っていたとは!これは一生の思い出になる。

アメリカの美術館をまわっていてたびたび出会うのがアメリカ人のサージェント(1856~1925)とホイッスラー(1834~1903)、ここにも二人のいい絵があった。サージェントの描く女性の肖像画は大きな縦長の画面なのでみごたえがある。甲乙つけがたいとてもいい絵が2点あったが、画像はその1点。気品のある表情と光沢のある絹地の衣装の質感を息をのんでみていた。

ホイッスラーの絵はチェックリストに載せていた作品。ルノワールやモネ、そしてコロー、クールベもあったが、5点あったサージェントやホイッスラーのこの風景画の前では影が薄くなる。

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2013.02.07

心を打つロスコルーム!

Img_0001_2        ロスコ・ルーム

Img_3            ロスコの‘緑色とえび茶色’(1953年)

Img_0003_2      ミロの‘赤い太陽’(1948年)

Img_0002_2     クレーの‘アラブの歌’(1932年)

はじめて訪問する美術館の場合、展示室の配置状況がつかめず最初落ち着かない。ラミューズにでていた館内レイアウトをコピーしているが、館の中に入るとこれがすぐには役立たない。また、受付でもらったパンフレットも同じ。で、これを立ち止まってみる時間が惜しいからアバウトな方向感覚で展示室に向かうことになる。

オキーフの‘レッドヒル’同様関心の高かったロスコ(1903~1970)の作品が展示してある‘ロスコ・ルーム’はその位置を確かめず回っていたら、なんとなく行きあたった。入口に一度に入れる人数は8人と表示されている。部屋の広さは川村記念美にあるロスコルームの1/4くらいの感じ。ここに4点展示されている。

ロスコの作品は少ない色面の組み合わせで構成されているのが特徴。4点のなかでとくに印象深かったのは向かい合わせになっている‘緑とえび茶色’と‘赤と緑’。ダンカン・フィリップスは注目していたロスコの作品を1960年に購入し、このロスコルームを新たに増築した。

これまでロスコのカラー・フィールド・ペィンティングをまとまった形でみて心を動かされたのは09年の川村記念美で開催された‘シーグラム壁画展’(拙ブログ09/3/8)だけだったが、ここにある4点も色彩の力によって内面を表現しようとしたロスコの思いが強く感じられ大変魅了された。今回の美術館めぐりでロスコは重点鑑賞作家の一人、幸先のよいスタートとなった。

ラミューズに載った画像でその造形と色合いに惹かれていたミロ(1893~1983)の‘赤い太陽’も強い磁力を放っていた。黒と赤の対比がとても印象深く、強烈に目に焼き付いた。中央の墨で描いたようにみえる太い線をよくみると盛り上がっており、その質感は柴田是真の漆器を彷彿とさせる。これはミロがアメリカに8ケ月滞在したときに描かれた作品だが、画業の後半にみられるモチーフを黒を多用して表現したものではベスト5に入るほどの出来栄えではなかろうか。

クレー(1879~1940)は05年森アーツセンターの展覧会では2点公開されたが、館内にはクレー専用の部屋があり全部で10点くらい飾られていた。そのなかで足が止まったのが‘アラブの歌’、1914年のチュニジア旅行の体験の一コマがこんな風な表現になった。心臓から伸びた線が口とつながっているのがおもしろい。

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2013.02.06

フィリップス・コレクション訪問が実現!

Img_0001_2

Img_2     フィリップス・コレクションの入口

Img_0005_2     ルノワールの‘舟遊びの昼食’(1880~81年)

Img_0004_2      モディリアーニの‘エレーナ・パブロウスキーの肖像’(1917年)

Img_0003_2     オキーフの‘レッド・ヒル’(1927年)

旅行会社A社の団体ツアーに参加し、アメリカの美術館めぐりをしてきた。訪問したのはワシントン、フィラデルフィア、そしてニューヨーク。フィラデルフィアははじめてだが、ワシントン、NYは5年ぶり。このツアーはミュージアムめぐりが売りなので今回は名所観光は脇役といったところ。いつものように日程にくみこまれている美術館プラス自由行動で足を運んだ美術館で出会った名画の数々を目いっぱい紹介したい。

体験した美術館は次の10館、
(ワシントン)     ★ナショナル・ギャラリー
             ★フィリップス・コレクション
             ★コーコラン・ギャラリー
             ★ハーシュホーン美
             ★フリーア美
(フィラデルフィア) ★フィラデルフィア美
(ニューヨーク)   ★メトロポリタン美
             ★MoMA
             ★グッゲンハイム美
             ★ノイエ・ギャラリー

トップバッターはフィリップス・コレクション、2回にわたってとりあげたい。ワシントンの街の地図(拡大図)でおわかりのようにこの美術館はナショナルギャラリーがあるところからは少し離れており、北側の住宅街の一角にある。ツアーの行程にここは入ってないので、定番の国会議事堂、ホワイトハウス、リンカーン記念堂見学をパスしタクシーで急行した。

この美術館は典型的な邸宅美術館、資産家ダンカン・フィリップスの屋敷がそのまま作品の展示空間になっている。邸宅の中に入るのははじめてのことだが、ここにある絵画や彫刻は幸運なことに日本で2度もお目にかかる機会があった。美術好きの方なら、すぐ思い出されるのではなかろうか。

最初は05年にこの美術館のお宝中のお宝であるルノワール(1841~1919)の‘舟遊びの昼食’などが森アーツセンターで公開され(拙ブログ05/6/17)、つい2年前の11年には国立新美で‘アメリカンアート展’が開催された(11/10/12)。館を去る前に購入した図録には2回の展示でみた作品が多数載っている。だから、日本にいてとても有難い展示に接したことになる。こういう‘どうぞ、わが名品を見てください!’というサービス精神満点の心意気には好感度が大いにます。
 

館内で真っ先に目指したのはオキーフ(1887~1986)の‘レッドヒル’。この絵の存在を知ったのは20年前、週刊‘ラ・ミューズ フィリップス・コレクション’に載っており、太陽の光を背景にした真っ赤な丘が異彩を放っていた。以来、いつか対面したいと願っていたが、その丘が目の前にある。だが、本物は画像で印象づけられている燃えるような赤ではなかった。これにはちょっと拍子抜け、20年の間に少し退色したのだろうか?

ラミューズの情報で気になっていた絵はモディリアーニ(1884~1920)とルオーだったが、ルオーの‘サーカスのトリオ’は残念ながら姿をみせてくれなかった。モディの描いたエレーナ・パブロウスキーはモディと親しくつきあった女性、とてもいい絵をみた。

印象派のコレクションのなかで群を抜いていいのがルノワールの‘舟遊びの昼食’、今回は追っかけ作品に多くの時間をさいたので日本で対面したときのようにじっくりみれなかったが、この傑作と再会できた幸せをかみしめながらみていた。今年はクリムトと同様ルノワールイヤー、楽しいひと時だった。

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2013.02.05

13年前半 展覧会プレビュー!

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拙ブログは想定外のパソコンの不具合に見舞われたのとアメリカの美術館めぐりが重なり、1ヶ月以上もお休みしましたが、本日より再開します。また、おつきあい下さい。

まずは遅ればせながら今年前半に開催される展覧会のプレビューから。
★西洋美術
1/19~3/31   エル・グレコ展         東京都美
2/9~5/26    クラーク・コレクション展   三菱一号館美
3/2~6/2     ラファエロ展          西洋美
3/8~5/6     ベーコン展           東近美
3/9~4/21    ルーベンス展         Bunkamura

3/9~5/19    ミュシャ展           森アーツセンター
4/21~6/2    クリムト展           宇都宮美
4/23~6/30   ダ・ヴィンチ展         東京都美
4/24~7/15   一角獣展           国立新美
4/25~9/1    Love展             森美術館

★日本美術
1/12~4/7    円空展             東博
1/22~3/3    王義之展           東博
2/6~3/31    歌舞伎             サントリー美
3/6~3/25    杉山寧展           日本橋高島屋
3/9~5/6     かわいい江戸絵画     府中市美
3/30~5/12   山楽・山雪展         京博

4/9~6/2     大神社展           東博
4/27~6/26   北斎と暁斎          太田記念美
5/14~7/7    漱石の美術世界展     東芸大美
5/21~7/15   ファインバーグ・コレクション展    江戸東博
5/24~6/4    西陣織展           横浜高島屋
6/22~9/8    浮世絵展           三菱一号館美

(注目の展覧会)
昨年の後半は西洋絵画の名作を集めたビッグな展覧会がいくつもあった。この流れは今年に入ってからも続き、上野では東京都美でエル・グレコ、そして西洋美でラファエロというとても豪華な回顧展が開催される。とにかくすごい展覧会!

今週の土曜日から三菱一号館美ではじまる‘クラーク・コレクション展’への関心も高い。コレクションの中核をなすルノワールはいわくつきの作品。11年プラド美を訪問した際うまい具合に最初の世界巡回展と遭遇したのに、自由行動の日に出かけたらなんとチケットは売り切れ!そんな馬鹿な、で、展示室の入口と出口のところから出品作のほんの一部を単眼鏡を使ってうらめしくみた。その絵が三菱一号館にやって来る。今度は真正面からしっかりみたい。

現在愛知県美で行われている‘クリムト展’は東京をパスして宇都宮に巡回する。ここにみたい絵が2点でているので、宇都宮まで遠征するつもり。NYのノイエギャラリーでクリムトを6点、そしてメトロポリタンでも2点みたから今年はクリムトイヤーになりそう。

もうひとつの楽しみは‘一角獣展’、いつかこの連作タピスリーをみたいと願っていたのでちょっと興奮している。

日本美術では京博の‘山楽・山雪展’への期待値が最も高い。海外からの里帰り作品に心が向っている。また、ファインバーグコレクションも気になる展覧会、千葉市美で公開されたギッターコレクションを上回る内容だろうか。

来月早々日本橋高島屋で開催される杉山寧展にも心が躍る。これまでなかなかこの画家の回顧展に出会えなかったがようやく実現する。

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