毎年おもしろくない朝日新聞の‘回顧2012 美術’!
今日の朝日新聞夕刊に‘回顧2012 美術’という記事が載った。定例の今年の美術展覧会のレビューであるが、美術、音楽、演劇、文学とあるなかで美術が一番おもしろくない。
編集委員大西氏のまとめは毎年こ難しいだけで、実際多くの美術ファンが楽しんだ美術シーンとはかなりズレている。とても熱心なのがコンテンポラリーアートやテーマ型の展覧会、これが展覧会のメインの潮流といいたい!?勘違いもいいとこ。 こんな前衛的な現代アートの世界を話の中心にした回顧なんてもうやめにしたら。
美術史家3人があげた‘私の3点’は、
・北澤憲昭氏★‘私の解体へ’(国立国際美)
★‘村山知義の宇宙’(世田谷美)
★‘3.11とアーティスト:進行形の記録’(水戸芸術館)
・高階秀爾氏★‘KATAGAMI Style’(京近美)
★‘紅型’(サントリー美)
★‘フィンランドのくらしとデザイン’(静岡市美)
・山下祐二氏★‘館長庵野秀明 特撮博物館’(東現美)
★‘お伽草紙’(サントリー美)
★‘会田誠 天才でごめんなさい’(森美)
海外では有能な女性美術史家は多いが、日本にもそういう人がいるのだから男性だけでなく女性も加えるべきと思うが、朝日はそこまで勇気がない。3人のうち文化勲章を受章された高階さんのものは共感できるが、あとの二人は大西氏同様お気に入りはこの3点?ふーん、美術史家というのは楽な商売ですね!と厭味のひとつもいいたくなる。こういう選択は美術史学会でどうぞやってくださいという感じ。
毎年常連の美術史家があげるものに共感しないのは美術シーンのストライクゾーンからはずれた個人趣味のクセ球ばかりだから。クラシックの回顧では誰もが絶賛した秀逸の演奏会が選ばれるのに、美術の回顧では何十年ぶりに開催されたとてもすばらしい作家の回顧展が無視され、明らかに受け狙いの現代アートばかりがとりあげられる。
海外では展覧会は回顧展が主流だから、例えば‘カラヴァッジョ展’(10年 ローマ)、‘大モネ展’(10年 パリ)やゴーギャン展(10年 ロンドン)、ホッパー展(08年 シカゴ)があると真っ先にこれらがリストアップされる。ところが、日本では回顧展をあげるよりはテーマ型の展覧会を指摘するほうが自分の価値が増すと勘違いしている美術史家が多いから、来場者の少ない天邪鬼タイプの企画展が過大な評価を受ける。まったく独りよがりなのに、
具体的に極上の回顧展をあげてみると、‘高橋由一展’(4月 東芸大美)、‘ポロック展’(2月 東近美)、‘セザンヌ展’(3月 国立新美)、‘草間彌生展’(4月 埼玉県近美)、‘バーン=ジョーンズ展’(6月 三菱一号館美)、‘シャルダン展’(9月 三菱一号館美)。
また、今年は中国から1月に‘清明上河図’というすごい至宝がやって来たり、ボストン美から曽我蕭白をはじめとするすばらしい日本美術の傑作が里帰りし多くの人たちがいい気持ちになったというのに、大西氏はこうした展覧会についてはひとことも触れてないし、美術史家も選んでない。毎年々こんな展覧会の回顧を読まされると美術を論じる人たちの能力のレベルを疑いたくなる。
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コメント
全く同感です いつも素晴らしい紹介をありがたく拝読しております。
東京在住55歳
投稿: この花咲夜姫 | 2013.01.06 11:16
to この花咲夜姫
返事が遅れても申し訳ありません。再開しま
したのでまたよろしくお願いします。
展覧会の振り返りはまったくおもしろくない
ですね。今世界的に評価が高まっている草間彌生
の回顧展すらとりあげない美術史家の感覚に呆れ
ています。
投稿: いづつや | 2013.02.05 22:37