満足のキメ手はリファレンス作品! 遠近法の名画(2)
ユトリロの‘コタン小路’(1910~11年 パリ ポンピドー)
ホッベマの‘ミッデルハレニスの並木道’(1689年 ロンドン ナショナル・ギャラリー)
モネの‘オンフルールのバヴォール通り’(1864年 ボストン美)
デ・キリコの‘イタリア広場’(1956年 ケルン ルートヴィヒ美)
日曜画家が街の風景をうまく描こう思えば遠近法を使った構図にするのがまず無難なところ。これだと下手くそだねとは言われない。
風景画の名画で遠近法とくっついてすぐ思い浮かべるのはユトリロ(1883~1955)の代表作‘コタン小路’、モンマルトルのあの急な階段を登った経験のある方なら、ここに描かれた情景に親近感を覚えるかもしれない。今でも大勢の人が道を歩いているわけではなく、昔ながらの静かな通り。
17世紀に活躍したオランダの風景画家ホッベマ(1638~1709)は絵の題材が宗教ではなく風景だから古い時代の画家という感じがしない。村の光景のなかで並木道ほど遠近法で描くのにうってつけなモチーフはない。道の脇に植えられた木をみると結構高い。こんなに高い木が中央の先の先ではあんなに小さく描かれている。この空間の広がりを感じられるのが遠近法構図の魅力。
コロー(1796~1875)の‘ドウエの鐘楼’は08年にあった‘コロー展’(西洋美)に出品された作品のなかでは強く印象に残っている一枚。手前の建物は左右とも画面にちらっと描かれるだけ。建物をこういう風に大胆にカットするのはなかなかできない。アカデミーではこういう構図はNGと決まっている。
道は鐘楼のあたりで左に曲がっているが、モネ(1840~1926)が24歳のとき描いた‘オンフルールのバヴォール通り’では建物の影が映った道は右にゆっくりカーブしている。向こう側に歩いている人たちの配置がじつに上手く、ついふらふらと後についていきそう。
デ・キリコ(1888~1978)とシュルレアリスムのデルヴォーの作品では遠近法で描かれた背景が特徴。90点以上描いたといわれるデ・キリコの‘イタリア広場’、建物や大理石彫刻の長くのびる影が謎めいた雰囲気を醸し出しており、不安な気持ちがじわーっと体を包み込んでくる。
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