満足のキメ手はリファレンス作品! 吸い込まれる青
ベリーニの‘聖カタリナとマグダラのマリアのいる聖母子’(1490年 アカデミア美)
フェルメールの‘手紙を読む青衣の女’(1663~64年 アムステルダム国立美)
アングルの‘ド・ブロイ公爵夫人’(1851~53年 メトロポリタン美)
ゴッホの‘夜のカフェテラス’(1888年 オッテルロー クレラー=ミュラー美)
海外にある美術館に何度も行くことはできないが、理想をいえば2回くらいは訪問したい。はじめてのときは興奮しているうえ、展示室のレイアウトがわからないので絵に対する集中力がどうしても少し落ちる。これが2度目となると、絵のある場所が頭に入っているので気持ちに余裕があり作品をじっくりみることができる。
10年ヴェネツィアのアカデミア美を再訪したとき、サプライズの絵があった。それはジョヴァンニ・ベリーニ(1434~1516)の‘聖カタリナとマグダラのマリアのいる聖母子’。この絵は一度みているのにこんなにすばらしい絵だったのか!というくらい気分が高揚した。画像では色がうまくでてないのが残念だが、真ん中のマリアの着ている衣服の青がもうすごい力をもっていて、吸い込まれそうになった。それ以来、ベリーニの絵に遭遇したときはこの傑作のことを思い出すようになった。
今年の1月、Bunkamuraでフェルメール(1632~1675)の作品が3点も公開された。日本ではフェルメールは特◎人気の画家だから、館内には大勢の美術ファンがおり息を呑んでみている。皆さんと同じようにじっくりみていたが絵にぞっこん惚れているからではない。関心を寄せているのは修復されオリジナルのフェルメールブルーを取り戻したという‘手紙を読む青衣の女’の青い衣服だけ。
フェルメール全作品をみて画面のなかで青の占める割合が多いのはこの絵と‘牛乳を注ぐ女’。‘牛乳’のほうはMy好きなフェルメールの上位に入っているのに対し、‘青衣の女’は関心の薄い作品だがこの青にはぐっと惹きつけられる。やわらかい光にあった青は詩的な雰囲気をかもし出しており心を揺すぶる。
アングル(1780~1863)の描いた夫人の青のドレスをみたときの感動は今でも忘れられない。絹のつやつやした質感描写がすばらしく、言葉を失なってみていた。こういう女性が目の前に現われたら気分がぐっと静まり、背骨がしゃんとするだろう。
青は広がりを感じさせる色、天体の青色という点ではゴッホ(1853~1890)の‘夜のカフェテラス’とクライン(1928~1962)の‘海綿レリーフ’に表現された青はつながっているかもしれない。ゴッホの夜景図はどれも魅力にあふれているが、この‘夜のカフェテラス’の夜空の青はとりわけ心をとらえて離さない。
クラインが創造する神秘的な青につつまれた深海や遠い星雲の世界に誘われていくと、その密度の濃い青で心のひだにたまった不純物がきれいに洗浄される感じがする。
| 固定リンク
コメント
今回の作品は、クラインをのぞき幸運にも実見したものばかりです。
その中で特に印象に残っているのは、18年ほど前に訪れたクレーラー・ミューラー美術館のゴッホの作品です。当時仕事でヨーロッパに住んでいたのですが、クレーラー・ミューラー美術館は森の中にあって、とても落ち着いた雰囲気の美術館だったことを思い出します。
さて『夜のカフェテラス』は、よく画集や美術史の概説に載っていますね。
美術史の概説に載っているからといって必ずしもその画家の代表作とは限らないと思いますが、『夜のカフェテラス』は青と黄色の対比が一度見たら忘れらないだけでなく、夜空の輝く星もひときわ美しくて、私の最も好きなゴッホ作品に数えらます!
どういった絵がインパクトを感じるかは、人それぞれ違と思いますが私の場合、自分にとっての美しさやメッセージの有無が大きいように思います。
投稿: ケンスケ | 2012.12.04 22:56
to ケンスケさん
1年前、やっとクレラー=ミュラーを訪問する
ことができました。ゴッホの大ファンですから
嬉しくてたまりません。
そして、念願の‘アルルのはね橋’に対面し、
‘夜のカフェテラス’と再会しました。隣の方
も同じなのですが、わが家ではこの2点が最上位
を占めてます。‘夜のカフェテラス’の青は本当
に美しいですね。
投稿: いづつや | 2012.12.05 00:12