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2012.11.20

美術に魅せられて! ‘目学問’のススメ

4470_2     ヴァイオリニスト 加藤知子

4471_2     ロンドン コートールド美

3ヶ月前、NHKの総合でコロンビアビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授が慶応ビジネススクールで行った講義を放送していた。講義のテーマは今年の2月にEテレ(拙ブログ2/13)でみたのと同じ‘選択の力’。そのなかに興味深い話がでてきたので今日はそのことを。

教授によると‘1万時間の法則’というのがあるそうだ。音楽家の練習時間と成功の達成度には相関関係があるという。
2000時間→優れたアマチュア
5000時間→音楽教師
10000時間→一流音楽家
これは実際に音楽家から統計をとって得られたことらしい。

ヴァイオリンでもピアノでもプロのレベルに到達するためには1万時間以上の練習を必要とし、一流の人たちは練習、練習に明け暮れるすさまじい日々をおくっているのである。

この話を絵画鑑賞に置き換えて考えてみた。絵画でも彫刻でもやきものでも美術品の美しさや味がわかるようになるためには、音楽家と同じように多くの作品をみることが欠かせない。とにかく豊富な視覚体験が作品をみるのに役立つのである。

美術関係の仕事についてない人間が美術品をみる力をつけるにはどうしたらいいか、それは限られた時間の使い方次第で決まる。仮に毎日仕事が終わって美術にとれる時間が1時間あるとする。そのうち美術本に載っている図版をながめるのに50分使う。そこに書いてある解説文を読むのはせいぜい10分までとする。

この方法を耳学問にならい勝手に‘目学問’(My造語)と呼んでいる。要するに知識を過剰に頭のなかに詰め込まないで自分の視覚体験をもとに美術のすばらしさの真髄に迫ろうという姿勢である。だから時間はかかる。解説なしで作品をながめるだけだから、西洋絵画の宗教画や歴史画、そしてシュルレアリズム、抽象画では一体何が描かれているのかわからないことが沢山でてくる。でもそれは気にしないで、画面構成、色使い、描写の精緻さ、画面の大きさ、絵肌の具合をしっかりみる。

もちろん、これは美術品の間接体験で本物をみているのとは違う。でも、間接体験でも貴重な視覚体験なのであり、本物の前に立ったときに脳にインプットされた図版の数々がいろいろなシグナルを送ってくれる。本物を体験し、その時味わったイメージや感動を体内につつみこみ、そのあとは購入した図録やポストカードでその感動をリフレインし続ける。このサイクルを繰り返すことでその作品にまつわるお話は知らなくても名画のほうから語りかけてくれるようになる。

美術館へ出かけ本物に接するときでも解説文を読むのに時間を使わず、この‘目学問’に徹するほうがいい。気に入った作品があれば全神経を集中させ‘見るぞ!モード’を全開させ、一番惹きつけられたこと、例えば色とか構図とか、タッチの細やかさとかを目に焼きつける。

美術品とはこの方法で長年つきあっている。美術鑑賞はロングレンジの楽しみ。それまでわかんなかったことが何かの拍子で腹にストンと落ちることもある。この‘目学問’、長い目ではとても役立つ。

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コメント

作品というのは、結局それぞれの人がそれぞれの方法で感じ取るものですよね。

故若桑みどりさんは、「傑作か否かは、見る人一人ひとりが決めるもの」ということを言っていましたが同意見です。

他者が作品についてどうこう言うことより自分で培った「目」で判断する、それが芸術作品との本来の触れ合いだと思います。

今50過ぎなので、老後は果てしなく奥の深い美術を一番の趣味に、と思っています。そのためになんとか少しでも作品を見る「目」を養っていきたいです。

でも若い時にはあまりいいと思えなかった作品のよさがわかってきたことは間違いありません。

幅が広がってきたと言ったらいいのでしょうか。いろいろな時代のいろいろな派や画家の違いが楽しめるようになってきました。

いづつやさんの紹介してくださる作品は、いつも私の視界を広げてくれています! ありがとうございます。

投稿: ケンスケ | 2012.11.21 23:12

to ケンスケさん
美術は奥が広いですから作品のもっている
すばらしさがわかるようになるには時間が
かかりますね。長期戦ですから、長生きでき
ることをいつもミューズに祈ってます。

好きな作家についてもその作品だけをみる
だけでなく、仰るようにほかの作家と比較し
てみたりするとだんだん関連性がみえてきて、
作家個々の独自性がつかめることがありま
すね。でも、ここまでくるのも大変ですが。

拙ブログはとにかくinformativeであること
を心がけてますから、手元にある美術情報を
フル動員しています。ですから文字情報は
横において図版を頻繁にながめています。
これも視覚体験の積み重ねです。

投稿: いづつや | 2012.11.22 01:23

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